貴殿転生 元の知識で本気出す   作:肉と米と愛

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この世界のルーデウスはヘルスと同じ地球ではなく別の世界線の地球からきたルーデウスです。なのでワンピースのことを知りません


9話 天才

 

 

 

 ルーデウス

 

 フィットア領のブエナ村という所で生まれた男の子。

 どこにでもいる一般家庭の男の子。

 そんな少年が、なんと現在は水王級魔術師でもあるロキシー・ミグルディア直々の弟子となり、水聖級魔術師に5歳にしてなったという。

 

 そして今、そんな化け物じみた経歴をもつルーデウスと、まさに魔術ありの真剣勝負をしようとしている。

 

 俺とルーデウスは互いに向かい合い、俺はデリックに貰った杖をもち、

ルーデウスは手ぶらで立っていた。

 

 「始め!」

 

 「はあッ!」

 

 戦いが始まった瞬間。

 俺は最速でスプラッシュ・フロウを無詠唱で打ち込んだ。

 

 

 本来魔術で戦うのならば、ルーデウスに勝ち目はない。

 しかし俺には利点がある。

 

 そう、無詠唱で魔術を使えることだ。

 

 この世界では魔術を使うにはやはり詠唱が必要らしい。

 もちろんそれが魔術師にとってのデメリットである為、研鑽を積んだ熟練の猛者達は、詠唱を短く短縮したりする。

 

 俺はその詠唱をはぶき、即魔術を発動できるのだ。

 

 ルーデウスは先程、治癒魔法を詠唱を使いながら行なっていた。

 つまり、詠唱が彼にも必要だと言うこと。

 

 であればやる事は一つ、彼が詠唱を行う隙をなくして魔術を使わせなければいい。

 

 これなら時間は掛かるだろうが、勝てる……!

 

 そう考えながらスプラッシュ・フロウを放った俺は、この一瞬で勝負を決めるつもりだった。

 しかし、俺の出したスプラッシュ・フロウは、ルーデウスの出したスプラッシュ・フロウにぶつかり消えた。

 

 「は……?」

 

 嘘だろ?

 

 『無詠唱!?』

 

 俺とルーデウスは同時に驚く。

 なんだ、ルーデウスも無詠唱を使えるのか!?

 つまりさっきのは俺を騙すためのフェイク?

 

 だとしたらかなりまずい状況だ。

 とりあえずもう一発……

 

 続けてスプラッシュ・フロウを出そうとしたとき、突然足が沈み始め体制を崩す。

 

 何をされた?

 

 足元を見ると、先ほどまで固かった地面が、今や沼の様に柔らかくなっていた。

 

 これは、泥沼……?

 

 困惑している間にも、俺の足はどんどん沈んでいっている。

 

 とりあえず逃げよう。

 

 ボン!

 

 足を抜こうと前を向いた瞬間、俺の目の前から炎の玉が飛んできた。

 

 「うお!?」

 

 俺はそのまま体を地面につけ、ギリギリ回避する。

 こりゃあ当たっていたら丸焦げ……にはならないだろうが火傷は免れなかったろう。

 危なかった。

 

 このまま距離を置かれていては負ける。

 そう確信した俺はルーデウスに突撃する。

 

 ルーデウスは後ろへと後退するが、その動きは酷く遅い。

 

 やはり、いくら魔術が凄いと言っても体は9歳。

 まだ年上である俺の方が速い。

 

 「これで終わり……だッ!」

 

 俺はルーデウスに拳を振り下ろす。

 だが次の瞬間、ルーデウスが横に瞬間移動した。

 

 「なッ!?」

 

 瞬間移動魔法?

 いや違う、ルーデウスの手からは風が出ている。

 恐らく、風魔法で自分を横に移動させたのだ。

 

 それならば、自分の体が小さくても魔術で速さを補える。

 

 天才だ……

 

 いや感心している時間はない!

 また距離を取られる前に詰めなくては。

 

 追いかけようと横を向くと、今度はドリルのごとく回転する鋭い岩が俺に迫ってきた。

 

 「ッぶねぇ!?」

 

 俺はそれを武装色をつけた拳で殴り、木っ端微塵に砕く。

 が……それは悪手だった。

 

 砕いた瞬間、岩の中に入っていた粉塵が俺の周りに飛び散る。

 

 「ケホッケホ!」

 

 まずい……視覚を奪われた。

 

 「うぅッ!」

 

 激痛が走る。

 痛みの発生源は、俺の股間……

 

 土魔術で俺の足元に岩をつくったのか!?

 そんな使い方俺は知らないし、そんな事できるかよ。

 なんでもありじゃねぇか!

 

 続いて放たれた風魔術に飛ばされ、壁にぶち当たった。

 

 「く、くぅぅ……」

 

 痛いけど、人型でも動物系の体のタフさは現れるからか

傷は少ない。

 

 だが傷が浅くても、このまま続けていればいつかは負ける。

 

 変身魔法を見せなければ。

 これはギレーヌとの戦いに温存しておきたかったが、そんな余裕は俺にはもうない。

 

 年下にやられっぱなしってのも、癪に触るしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜ルーデウス視点〜〜〜

 

 

 

 やりすぎたか?

 

 俺は向かってくるヘルスをあらゆる手段で押し返したが、流石にやりすぎてしまったな。

 

 しかし心配する俺とは別に、壁にぶつかったヘルスにはまだ意識がある。

 どんだけタフなんだあいつは、壊れない人形かよ……

 

 そう思っていた瞬間。

 

 ヘルスの周りからいきなり煙が舞い始める。

 周囲を警戒するが、周りから何かがくる気配はない。

 

 煙の方をよく見てみると、中から影が現れてきた。

 

 しかしそれはヘルスの影ではない。

 

 身体がデカく、首が異様に長いし、耳が上についているシルエットが見える。

 

 あれ、この姿、どこかで見た事が……

 

 そうして煙が消えたとき、俺は驚いた。

 

 そこには、ヘルスの服を着ている二足歩行の動物がいたのだ。

 

 そして姿は、前世の記憶にある動物に非常によく似ていた。

 

 

 

「キリン………?」

 

「ッ!?お前、この姿を知ってるか?」

 

「えぇ、以前本で見たことが」

 

 咄嗟に嘘をついたが、まあこいつが知ってるって事はこの世界にもいるって事だろう。

 

じゃあこの世界にはライオンとかもいるのだろうか?

 

 いやいや、それよりまずなんでヘルスがあんな姿になっているんだ?

 そんな魔法聞いた事ないぞ?

 

 「その姿はどうやってなるんですか?」

 

 好奇心に駆られた俺は、迷うより先に口を開いていた。

 

「……それはこの戦いが終わったら教えてやるよ」

 

 なるほど、血気盛んだこと。

 

 よくわからない姿になっているが、俺のやる事は変わらない。

 距離をとりつつ、隙があれば攻撃する。

 

 面白くない戦い方だが、こいつに勝つためにはそうするしかないのだ。

 仕方ないだろ。

 

 再び魔術を放とうと構えた時、俺はヘルスの体が気になった。

 

 先程まで1mか1.5mほどあった首が、今では元の姿の首と同じ長さになっている。

 

 ヘルスが俺に頭を下げる。

 

 どういうことだ?

 その姿になってやるのが降参?

 

 いや違う……

 絶対に何かしてくるんだ。

 

 まずは避け……

 

 「麒麟マン槍櫓!」

 

俺が距離を取ろうとしたその時、ヘルスの首はものすごい勢いで伸び、俺の腹にぶつかる。

 

「うッ!」

 

 そんなの……ありかよ……

 

 壁に当たった俺は、そのまま意識が失ってしまう。

 

〜〜〜ヘルス視点〜〜〜

 

 

 「はあ……はあ……」

 

 危なかった。

 

 本当に負けると思った。

 

 あの『麒麟マン槍櫓』は、最後の賭けだった。

 あれで倒せなければ、身体能力が上がった俺でも、ルーデウスの技術には勝てなかっただろう。

 

 多分……

 

 ルーデウスを倒し安堵していると、ギレーヌが俺の横にいた。

 

 「お前、やはり凄いな」

 

 「そうか?俺は今日年下2人に負けかけたんだぞ」

 

 「あの二人をまだ年下として見ているのか?あいつらはもう一人前の冒険者として活動できるレベルだ」

 

 なんだって?

 あんな毛も生え始めたてそうな子達が、冒険者の大人達と肩を並べれるだと?

 

 まあ、実際戦ってみた感じ、本当に出来てしまいそうな強さだったが……

 

 「そうなのか?ならよかった、年下みんなあんな感じなのかって思ったからさ」

 

 「そんな訳ないだろ……それにしてもお前のその身体、不思議だな。それも魔法の力か?」

 

 「まあ……そんな感じだ」

 

 「動物に変身か、その姿……あまりフィリップ様はサウロス様には見せない方がいいぞ」 

 

 ギレーヌは苦笑しながら倒れているルーデウスの方を向いた。

 

 「なんでーーー」

 

 「エリーーース!!!」

 

 その時、とんでもない大声が城中に響いた。

 

 「サウロス様……!」

 

 ギレーヌは俺の横を走り抜け声の主の元へ駆けつけて行く。

 

 サウロス……!

 その名前を聞き、俺は背筋が凍るのを感じた。

 

 俺の父に執拗な嫌がらせをしていたあのサウロスが、俺の後ろに……

 

 

 気がつけばエリスは既に起き上がっていてルーデウスの所に座り、顔を叩いている、起こそうとしてるのか?

 

 さっきエリスが気を失った時もルーデウスが駆けつけてたし、お互い恋人同士なのだろうか?

 

 いやいや……年齢的にないか、ただの友情だろう

 

 「エリス!!なんだこの生き物は!!」

 

 気づけば声の主は俺の真後ろにいた

 

 後ろを向くとそこには大柄な、雷のような爺さんが立っていた。

 

 こいつが、サウロスか?

 

 「初めましてサウロス様、私はピレモンの息子、ヘルス・ノトス・グレイラットです」

 

 一応俺はここに居させてもらっている立場。

 挨拶はしておくべきだ。

 

 

 

 「何!?貴様がか!?」

 

 耳が痛い、こいつ……声のボリュームってのを知らないのか?

 

 「あの腰抜けの息子が、こんな生き物なはずないだろう!」

 

 腰抜け?

 

 「……お言葉ですがサウロス様、私の父は腰抜けなどではございません」

 

 「なんだと……」

 

 「確かに父上は自分で決断する事が苦手です。しかし、父上は私を剣王ギレーヌの弟子にするために、自分の頭を下げ、自分へ嫌がらせをしたあなたの息子にお願いしたのです。それは腰抜けには到底できない行為です」

 

 「ほう、言うではないか!」

 

 あ、終わった。

 俺は今、この領の領主のことを悪く言った。

 

 最悪アスラ王国に送り返される。

 でも、もうそれでもいい。

 父を馬鹿にしたことに対して反抗はできたのだ。

 

 

 

 「その度胸気に入った!!この館への滞在を許す!!」

 

 「……え?」

 

 

 

 なんか許された。

 

 

 

 

 

 

 「だが今の失言をにするのはボレアスの名に傷がつく。代償は払ってもらおう!」

 

 「………なんでしょう」

 

 固唾を飲み込む俺の頭を、ボレアスが鷲掴みにする。

 

 なんだ……ここから俺の地獄の拷問が……

 

 「その身体を触らせてくれ!!」

 

 「………は?」

 

 ………は?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 「こちらがヘルス様のお部屋になります」

 

 「は……はい」

 

 

 

 獣族のメイドに案内され、用意されていた自分の部屋に入る。

 俺は荷物を取り出したりするのはやめて、ベットに倒れ込んだ。

 

 ギレーヌが警告していた。

 変身魔法はフィリップやサウロスの前で使わない方がいい。

 これは本当だった。

 

 まずはサウロスに撫で回された、頭や背中、腹、尻尾まで全てをだ。

 

 そして次にエリス。

 エリスはいつのまにかサウロスと共に参加していて、俺の頭の耳を中心に触られた。

 

 そして止めに入ったフィリップ。

 彼は救世主かと思ったが、やはり糸目キャラの裏切りは必須。

 

 結局彼には一番長く撫でられた、ルーデウスは撫でることこそしなかったが、俺を興味深そうに遠目で見ていた。

 

 そのまま呼ばれた夜飯の時も気が気ではなく、俺は暗殺者に狙われている感覚を味わいながら恐ろしい食事を終えた。

 

アリエルも、あんなプレッシャーの中で生きていたなんて、こりゃあ今度ご褒美のお菓子でも買ってやろう。

 

 

 

 

 とりあえず、俺は疲れ切った体を休める為にベットで横になった時、一つのことを思い出した。

 ルーデウスの事だ。

 食事中に聞いた事だが、あいつは夜にギレーヌから獣人語を教わっているらしい。

 

 家庭教師の身だ。

 あの凶暴なエリスを手懐けて勉強をさせ、空いた少ない時間に自分も他の言語を学ぼうとしている。

 努力の天才だな。 

 

 そしてこれは憶測になるのだが、あいつは魔神語を使えるかもしれない。

 彼の師匠であるロキシー・ミグルディアは魔族らしく、もしかしたらその時に魔神語を教えてもらっているかもしれない。

 

 もし知っていたのならば、教えて貰うのもアリだ。

 

 「……何事も、まずは挑戦か」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 俺は残る力を振り絞って、俺はルーデウスの部屋の前に到着した。

 

ドアノックをすると、気の抜けた返事が聞こえたので中に入った。

 

 部屋の中には、本を座って読んでいるルーデウス。

 

 「あ、ヘルスさんこんばんは、何かご用で?」

 

 「あぁ、実は聞きたいことがあるんだが……」

 

 話をしようとした時、ルーデウスの横にある物に目がいく。

 そこには、見事なまでに美しいフィギュアが陳列されていた。

 

 「……すごいな、なんだそれ」

 

 「ああこれですか?これは人形ですよ。例えばこれは、父さんの形を模したものです」

 

 何かルーデウスのスイッチを入れてしまったのだろうか?

 ルーデウスは聞いてもいない人形のモチーフを語り始めた。

 

 

 そこから五分程度し、人形の説明が終わる。

 

 「それにしてもこの人形、よくできているな。お前が作ったのか?」

 

 「ええ、随分と暇だったもので」

 

 少し顔を赤らめているルーデウスはそう言うが、それらの人形は空いた時間に作るには無理がある相当な出来だった。

 王都にも、これ程までの技術を持つものはいないだろう。

 

 ルーデウスは将来何になるんだろうか?

 そんな疑問が頭をよぎった。

 

 天才魔術の子供。

 そう、子供なのだ。

 

 ぜひとも真っ当な道を進んで欲しいが、何かの手違いで、闇堕ちして世界を滅ぼすなんて言い出すかもしれん。

 末恐ろしい。

 

 おっといかんいかん、目的を忘れる所だった。

 

 「すまん、話が逸れた。聞きたいことっていうのは、お前って、魔神語わかるのか?」

 

 「魔神語ですか?一応簡単な文までなら……まだ勉強中ですが」

 

 「そうなのか?獣人語を学んでいるとは聞いていたが、まさか魔神語まで学ぶとは、凄いなルーデウス……」

 

 「いえいえ、最近師匠に魔神語をわかりやすくした本を貰いまして、それが分かりやすいのが大きいですね」

 

 ルーデウスはそう言いながら、引き出しの中に入っていた分厚い本を取り出した。

 これが、あの大魔法使いロキシーから渡された本。

 

 「そうか、あの……できれば良いんだが、俺にも魔神語を教えてくれないか?」

 

 「僕でいいんですか?」

 

 「ああ、先生がいてくれた方が俺も楽だしな」

 

 年下に教えてもらう事には抵抗があるが、そんな事言ってたらいつまで経っても成長はできない。  

 ルーデウスができて俺ができないのならば、できるルーデウスから教えてもらうのが一番効率がいな。

 

 「なるほど……そういうことなら喜んで引き受けましょう」

 

 「ありがとう、助かるよ」

 

 無事魔神語を教えてもらえる約束を取り付けた俺は、再び部屋に戻ると即座にベットに倒れ込み、そのまま深い眠りに落ちた。

 

 

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