遊戯王VRAINSーIrregular'sMemoryー   作:シューティング☆

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どうもこんにちは、シューティング☆です。この小説ではキャラの募集を行っています。
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https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=337561&uid=85147

それではどうぞ


プロローグ

それは本来、何気ない日常の一部。デンシティハイスクールの放課後直後、体格のいい高1の少年、島直樹とその彼に絡まれあしらっている中々に奇抜な前髪の少年、藤木遊作がいる。

遊作が直樹に絡まれた理由は、遊作が授業終わりまでどころか他の生徒が直樹しかいなくなるまで居眠りをしていたところ、遊作の傍を直樹が通った際に遊作が起きたことで絡まれたのだった。

 

直樹が遊作にあしらわれた際に恥ずかしいことを言われたのか何なのかはともかく、顔を赤くし教室内のモニターの方へ体を向けた時

 

「直樹〜、どうしたー?」

「あ、ハジメ!」

 

2つに別れた前髪のみ茶髪、他は黒髪のハジメと呼ばれた少年、名前は夕立一(ゆうだちはじめ)が、教室の外から入ってきた。ハジメは直樹と遊作を交互に見て、直樹と一緒に遊作から離れヒソヒソ声で作戦会議を始める。

 

「直樹、友達増やしたいからってガンガン話していたか?」

「よ、よく分かったな」

「友達だからな。少し予想はできる。前にも言ったけど、ただガンガン話すんじゃ、友達は増やせないぜ?」

「でもよ、知ってもらうことも大事って言っていただろ?」

「限度がある」

「うぐっ⋯確かに言ってたな」

「まあここはオレがお手本になろう。オレも友達増やしたいし」

「マジか、ありがとなハジメ!」

 

作戦会議が終わり、ハジメが教室から出ようとしている遊作のところへ向かう。

 

「確か、藤木、だよな」

「⋯そうだが?」

「オレは夕立一(ゆうだちはじめ)。あいつは島直樹、さっき直樹が何言ったかは知らないが、ごめん!」

 

そう言い頭を下げる。それを何となく見た遊作は、特に抑揚もなく気にしていない素振りで話す。

 

「別に、オレは気にしていない」

「お、おう。それで、良かったらさ、直樹と友達になってくれないか?」

「⋯理由は?」

「まあ、直樹、友達少ないからさ、オレとあいつの姉ちゃん以外との接し方学ばせないと」

「それはオレが関わる必要があるのか?」

「⋯ないな!よし直樹!今日は諦めよう!」

「お手本〜!?」

 

遊作の言葉に潔の良い降参がハジメから出される。お手本になってないと直樹も理解し思わず叫ぶ。

 

「直樹、藤木と友達になるのは結構遠い道のりだ。あの感じだと心の壁が硬いか厚い。幸い同級生だから機会はこの後もある、これからもアプローチし続けるしか友達になる道はない」

「だったら別の奴のが良くね?」

「困難な道のりだからこそ経験値も多くなる。人とのコミュニケーションを学ぶためにも藤木と友達になる過程でしっかり学ばないといけないだろ。もちろん他にも友達作ってな」

「なるほど」

 

ハジメと直樹がこんな会話をしているが、遊作のほうはアホらしいと全く興味を持たずさっさと教室から出ようとしていた。

 

「あ!お、おいちょっとー!藤木ー!また明日なー!」

「⋯」

 

直樹の呼びかけに一瞬足を止めた程度で、振り返りもせず教室から出た遊作。

 

「⋯そういやハジメ、なんか教室に用あんのか?」

「あー⋯いや、うん、今日週一の掃除の日だろ?⋯掃除、頼まれてさ」

「⋯なんか、都合の良いパシリにされてないか?」

「ハハハ⋯頼む直樹!手伝って!広場でなんか奢るから!」

「んー、どうすっかな⋯」

「ちなみに掃除ができる男はモテるぞ」

「よーしやるかー!」

「ごめんさすがにチョロくないか?」

「でも代わりにちゃんと奢れよな?」

「もちろん」

 

 

そうして掃除を済ませ、部活動もなかったため早々に下校、その途中でデンシティにある広場へと立ち寄る。ここには外壁に大きなモニターのあるビルがあり、SOLテクノロジーというIT企業が運営するVRワールド、LINK VRAINSでの、カリスマデュエリストと呼ばれる実力者のデュエルが見られ、それを見に人が集まることからキッチンカーが集まる場所として知られている。

 

「今日は⋯クレープと、ホットドッグ、アイスにポテトか」

「ならホットドッグ食おうぜ?オレチーズドッグな!」

「んじゃあオレはチリドッグで行くか⋯あ、藤木!」

「え?あ、マジだ藤木じゃん!」

 

ホットドッグを買いにCafe Nagiというキッチンカーのほうへ向かうと、Cafe Nagi側のイスに、先ほどの遊作が座りホットドッグを食べていた。

気がついたハジメが声をかけると、遊作がハジメ達のほうを向き、訝しげな顔をする。

 

「なんだ藤木はホットドッグ好きなのか〜」

「⋯まあ、そうだな」

「オレ達も食いに来たんだホットドッグ!店長さーん!チーズドッグとチリドッグ1つずつくださーい!」

「はいはい!チーズとチリ、っと。それじゃお会計は、1000円となります」

「はい、1000円っと」

 

ハジメがサイフを出し、そこから1000円札をCafe Nagiの店長へと渡した。そして店長から声を掛けられる。

 

「⋯君達は、遊作とは友達なのかい?」

「いやー、まだまだクラスメイトってだけですね⋯」

「そうか。オレは草薙翔一(くさなぎしょういち)、遊作の、まあ、保護者みたいなもんだ。これからも遊作と仲良くしてくれるかい?」

「まだまだこれからですね」

「まあ、確かにそうだな。はい、チーズドッグとチリドッグ!熱いから気をつけてな」

「ありがとうございます。ほい直樹、チーズドッグだ」

「サンキュー!お〜、チーズたっぷりだぜ〜!」

 

チーズソースがたっぷりのチーズドッグに直樹が、チョリソーと甘辛いチリソースのかかったチリドッグにハジメが齧り付き食べていく。

 

「そういや藤木のは⋯おっ、普通のか」

「別にいいだろ、シンプルのが好きでも。まあでも!チリドッグがうまいんだ、普通の奴もシンプルでうまいに決まってんだろ」

「チッチッチ。ハジメよ〜、それでも一番うまいのはもちろんこのチーズたっぷりのチーズドッグに決まってんだろ〜!チーズの味に、ケチャップの酸味がいい感じに合うんだよな〜!」

「それを言ったらチリドッグが一番だろ。この辛いソーセージに加え、甘辛く作られたチリソースで辛さを増しつつ少しの甘味が加わることで、その、奥深い味わいって奴になるんだよ!」

 

直樹とハジメ、その2人によるCafe Nagiのベストホットドッグは何かをちょっと言い争ってはいるが、遊作は気にせず、こいつらバカだなくらいにしか思わず、草薙さんも初めてで好きになってくれたのはいいけどなと思いつつ苦笑いだ。

 

「まあまあ。メニューは他にもあるから、また今度、別のを食べて欲しいな」

「⋯まあ、それもそうか。ごちそうさまでした」

「⋯他のも試すか〜。ごちそうさまー!っと、うーし、それじゃ帰ろうぜ〜。藤木またなー!」

「そうだな。藤木、また明日ー」

 

そうしてハジメと直樹は広場から離れ帰っていった。

 

「仲良くやれそうか?遊作」

「別に。悪い奴らじゃないが、ちょっと鬱陶しい」

「ハハハ、そういうとこは素直だな⋯」

 

 

 

「ただいま〜」

「お帰りハジメ〜。帰ったら」

「手洗いうがい!分かってるって〜!」

 

ハジメは帰宅後、軽く母との会話を済ませ、手洗いうがい、ついでに軽く歯磨きを済ませ、そのまま夕飯まで学校からの課題を進める。明日期限の課題はないものの、やっておかないと後で泣くのは自分と両親に教え込まれているため進める。

そうこうしているうちに夕飯となった。

 

「兄さん姉さん夕飯だよー!」

「お!分かったすぐ行くー!」

 

ハジメの2人いる妹のうち7つ下の妹、弥生がハジメ、そしてハジメのもう1人の妹、燈子を共に呼び、燈子もハジメと同じような返事をし、それぞれすぐにリビングへ向かう。

ハジメのほうが先につき、すぐに茶色のメッシュ(地毛)が右側に入った黒髪ツインテールの14歳の少女、燈子がリビングに入る。

 

「夕飯何かな〜。お、ナポリタン」

「ママー夕飯何ー、あ、ナポリタン」

「今日は私が作ったナポリタン!召し上がれ〜!」

「お、弥生が作ったのか〜。弥生、ナポリタン大好きだからな〜。よし、頑張って作ったご褒美だ、兄ちゃんの少し食べな」

「弥生が作ったんだね〜。ナポリタン、弥生の大好物だからね〜。お姉ちゃんの分けてあげるね〜」

「兄さんも姉さんもちゃんと食べて!」

 

茶髪を一本結びにした9歳の少女である弥生がムッとした顔で兄と姉を叱る。

 

「そうよ。弥生、みんなに食べてもらいたくて頑張って作ったのよ。ね?」

「お母さんの言う通り!だから、ちゃんと食べて!」

「「はーい⋯」」

「⋯というか兄貴真似しないでよ」

「最近燈子が冷たい⋯母さん、父さんは?」

「ちょっとトラブルがあって、その対応で忙しくて帰りが遅くなるって。だから、先に食べちゃいましょ」

 

そうして夕飯に歯磨きに風呂を済ませたハジメは自室に戻り、自室にデカデカと張られた青髪ツインテール、背中に白い羽のついた少女のポスターを見て、ベッドに寝転ぶ。

 

「よーし、今日はこれからブルーエンジェルのデュエル配信!確か別のカリスマの、えーっと、まあいいか、別の人とコラボに観戦者との交流デュエル!よーし行くぞオレ!イントゥ・ザ・ヴレインズ!!」

 

イントゥ・ザ・ヴレインズの掛け声により、ハジメの感覚が一気に変わる。辺りが青色の空間になり、目の前にいくつもの線が走り飛び交い、すぐに明確な形が作られる。

これはVR空間、LINK VRAINSでのハジメの姿、アバターを呼び出しているところであり、ハジメがその線で構築されたアバターの形に目掛け飛び込むことで立体となり、LINK VRAINSへ降り立つ。

VR(バーチャル・リアリティ)、仮想現実であるLINK VRAINSはVRの最先端を行くVR空間。何せ腕につけられる大きいアクセサリーサイズのもので意識をデータ化してこの世界にログインできるほど小型化した端末は他にない上、画質も高くラグもまったくない超高品質なものである。ハジメのものは最新でこそないが充分使える比較的新しいもの。最新はもっと高品質であるとの話しだ。

 

そんなLINK VRAINSでのハジメ、アバター名はローウルフェン、狼頭のロボスーツを着た戦士、という設定の元にハジメが丹精込めて作ったかっこいいアバターである!ちなみにロボスーツは着脱可能。

そんなかっこいいアバターで何をするかと言うと⋯。

 

「よーし生ブルーエンジェル!見るぞー!」

 

アイドルもとい、カリスマデュエリスト、ブルーエンジェルのファンをやっている。なんなら掛け声にオタ芸もやるタイプ。

カリスマデュエリストは、LINK VRAINSにおいて数万人いるユーザーの中で、デュエリストランキング上位50位以上を3ヶ月以上キープし続けているものがそう呼ばれる実力者、その中でもブルーエンジェルは20位以上をしばらくキープしている上位の実力者である。

 

ブルーエンジェルは白い上着に青のスカート、ハートの意匠のある白い羽、青髪ツインテールの少女アバター。可愛らしい印象のアバターと元気で強気な物言いと高いデュエルの腕前から、アイドル的人気とカリスマデュエリストとしての実力を兼ね備えたスターである。

今回彼女は別のカリスマデュエリスト、毛先が燃える炎のように揺らめいている赤とオレンジ、黄色のポニーテールの長髪に、赤白黒のフリルの入ったワンピースの少女アバター、リヒトメーヒェン(40位から32位の間を行き来している新人カリスマ)とのコラボデュエル。ブルーエンジェルとリヒトメーヒェンとのデュエル後には観戦者とのデュエルが行われる。

 

「後20分!あ〜、緊張してきたー!!よーし、行くぞー!」

 

無駄にテンションの上がったまま目的地へ向かう。ログイン位置はある程度自由にする方法があるものの、ローウルフェンとしては気持ちの高まりを制御するためにちょっと離れたところにログインして歩きながら始まるまで落ち着こうという算段であった。

 

「な〜!いいだろお嬢ちゃん〜!」

「ん?」

 

不意に声がし、その方向へ向くと、イケメン、というにはどこか顔がゴツゴツな金髪の男に、1人の女性が絡まれているようであった。

女性は青い長髪に青いドレスと青が多い。顔立ちが整っていて美女と言える。だがそれ以上に。

 

「(LINK VRAINSでナンパって、勇気あるな)」

 

アバターは自由自在、筋肉ムキムキのおっさんが魔法少女のような可愛らしく小さなアバターを使い、アバターの設定にある美少女ボイス(美少女にイケボ等、無料から有料まで種類豊富に幅広く取り揃えております。By運営)を使い喋って動き回れることはローウルフェンでも知っている。動物のアバターだってあるのだ、余程ルール破らない限り何者にもなれる。

但しブルーエンジェルはマジモンの美少女!絶対!とハジメと直樹は言っている。

そんなVR空間において、外見がいいからと中身の性別が不明の相手にナンパなんてするものは、いない訳では無いがかなり珍しい。何せ時折ナンパした相手が美少女ボイス切って、見た目の小柄な美少女とは程遠い低い声で追い払うなんてこともあるのだ。

 

「なあいいだろ〜、オレと、いいことしようぜ?な?」

『⋯』

 

だがナンパされている女性はどこかなんとも言えないような、微妙な顔をしている。ローウルフェンとナンパ現場の距離は、それなりに声が大きいとは言え聞こえるくらいには近い距離、ローウルフェンはそこへ近づく。

 

「⋯あー!あー、いたいたごめんごめん待たせたね〜!」

「あ゛?なんだお前」

『え?』

「す、すみませんオレ、か、彼女と用事があるので!そ!それじゃー!」

「は?いやその反応どう見ても嘘だろ!待てコラー!」

「ひ〜!」

 

 

青い女性の手を引き走り出す。唖然としていたナンパ男は一瞬で気を取り戻し、ローウルフェン達を追う。

ローウルフェンは路地へ路地へと走り回り、どうにか隠れ、ナンパ男をやり過ごした。

 

「⋯と、とりあえず、行った、か⋯?」

『⋯』

「あ、え、えっと、大丈夫ですか?」

『⋯』

「オレは、ローウルフェン。あなたは?」

『⋯何故、私を連れ出したのですか?』

「えっ」

 

女性の言葉に、ローウルフェンの頭には思わず、お節介だったか?と過る。

 

「え、えと、なんか微妙そうな顔、してたから⋯困っているかなって思って、つい⋯」

『⋯私が、でしょうか?』

「え?あ、はい、そうです」

『⋯そうでしたか⋯ありがとうございます』

 

そう言うと女性はしっかり腰を曲げ、お辞儀をする。

 

「あ、いやそこまでしなくても⋯」

『こういう時に御礼をするものと、教わりましたので』

「いやでもそんなしっかりとお辞儀をしなくても⋯」

「見ーつーけーたーぞー!」

「!うげ、さっきの!」

「テメェの考えなんざ知らないが、ここはLINK VRAINS、やりたいことがあるなら、デュエルで勝ってからやりな!」

 

そういい相手は手首に機械のついた左腕を胸の前に置く。これはデュエルの構えである。

 

「デュ、デュエルか。う、受けて立つ!」

 

そういいローウルフェンも構える。緊張感漂う空気の中、突如空間が揺れる。

 

「なんだ?」

『?これは⋯』

「⋯あ!確か今日、なんかLINK VRAINSを止めないでスキャンするってあったような⋯それ今から!?」

 

これから生ブルーエンジェル(11分後)を楽しみにしていたローウルフェンにとって、それに影響のありそうなスキャンなど望まない、さっさと終わらせていて欲しかった。

 

「なるほどな。だが関係ない。やるぞ!デュエル!」

「やるしかない、デュエ」

 

デュエルが始まろうとしたその時、空間が先ほどよりも強く揺れ、近くの建物が僅かに崩れ、別々の位置の空に3つの穴が開き、そこから揺れと共に黒い機械のモンスターが3体現れる。

その機械の頭部には、仮面に白フードに白の服を着た同じ姿の男性アバターがそれぞれ1人ずつ、計3人乗っている。

 

「な、なんなんだあれ!?」

「あのアバターって⋯おいおいハノイの騎士かよ!?」

「ハノイの騎士?」

「ヤベェハッカー集団だ!クッソ、運営は何してやがる!」

 

そういうとナンパ男はローウルフェン達を無視してその場を逃げ出した。だが。

 

「!うわああ!」

「へ?うおおお!!?」

 

ナンパ男が逃げ出した先に機械のモンスターのブレスが着弾、辺りが崩壊しナンパ男はそれに巻き込まれ消えた。アバターが崩壊に巻き込まれたことで強制ログアウトとなったのだろう。

その崩壊の余波は少し離れたローウルフェン達にも届いた。ローウルフェンは女性の手を引き咄嗟に反対方向へ逃げ出す。

 

「ヤバいヤバいヤバいヤバい!」

 

だが無情にも、他の攻撃が当たったことで崩壊が広がり、ローウルフェン達へ迫る。

 

「くっそー⋯すみません、そー、れ!」

『え?』

 

ローウルフェンは崩壊に追い付かれる直前、女性を振り回し、遠心力を掛けて崩壊のないところへと投げる。それと同時に、ブルーエンジェルのデュエル開始10分前に仕掛けたアラームが鳴る。

 

「(あー、生ブルーエンジェル、後10分なのに⋯)」

 

そう思い、台無しになったことを理解しながら目を閉じ、直後、一瞬水中へ入ったような感覚が、ローウルフェンを襲う。

 

「⋯へ?」

 

思わず目を開けば、辺りは少し薄暗くなり、崩壊は止まり、至る所にラグが起き、ブレが生じている。

 

「これは、いったい」

『大量のデータを使い、辺りの速度を遅くしました』

「へ?ど、どういう⋯?」

『ここに来たのは、私を助けるために連れ出した結果です。恩を受けたのであれば、返すものと教わりました』

 

そう言いながら、女性はローウルフェンの元へ向かい、右手を掴み、ローウルフェンを引き寄せる。投げ飛ばして後ろへ倒れそうなままだったローウルフェンの姿勢が戻る。

 

「あ、ありがとうございます」

『⋯デュエルディスクの損傷を確認』

「え?⋯嘘だろ!?お、オレの腕⋯あ、それはともかく、デッキ⋯え、エラー!?データが読み込めません!?」

『⋯先ほどの崩壊に、左手首から先が巻き込まれていたようです。幸い、あのモンスターの直接攻撃ではないので、一部分の損傷程度に済んでいます』

「へ?じゃあ、直撃は?」

『ユーザーデータが消し飛ぶ可能性が、非常に高いです』

「⋯嘘だろ、じゃあ、さっきの人は⋯」

 

ローウルフェンの左手は、手首のデュエルディスク諸共吹き飛んでいた。アバターなので大きく問題はないものの、デュエルディスクはデッキデータが保存されており、コレがないとデュエルはできない、LINK VRAINSのほとんどを楽しむことが出来なくなる。

 

『⋯移動しましょう。ここはまだ、危険です』

「え、でも止まって」

『部分的にデータ量を多くし、データの処理を遅くしているだけです』

 

そうして女性の言葉に従い、ローウルフェンと女性はその場を離れる。ある程度離れると、止まっていた崩壊が再開し、完全に崩れていく。

 

「⋯」

『⋯すみません、私を助けたばかりに、巻き込んでしまいました』

「いや、その、こんな状況ならいずれ巻き込まれていましたよ⋯はあ、ログアウトするかな⋯」

『提案、よろしいでしょうか』

「提案?なんです?」

『今ここで、新たなデッキを用意します』

「へ?」

『⋯あそこの彼らに、やり返したくはありませんか?』

 

女性はそういい、上を向く。その先にはブレス攻撃をするモンスターと、指示をしているであろう者達、ハノイの騎士がいる。

 

「⋯本当に、用意できるんですか?」

『はい』

「⋯本当なら⋯やり返したい。でも、それ以上に、これ以上あいつらを放ってはおけない!」

『デッキの件、了承と受け取ってよろしいですね』

「はい⋯本当に、できるんですか?」

『出来ます。では、始めます。クリアマテリアル、生成』

 

不意に女性から透明な何かが溢れ、満ちていくに伴い、ローウルフェンは水中にいるような感覚になる。先ほどの感覚と同じだが、先ほどとは異なり辺りは明るい。

そしてその透明な明るさがローウルフェンの左手首に集まり、そのまま手首を、手を、デュエルディスクを作り、そして少しして水中の感覚が抜けていき、元に戻っていた。

 

『⋯データ形成完了しました』

「⋯オレの、新しいデッキ⋯見たことないカードばっかりだ」

『では、行きましょう』

「はい!⋯でもどうやって?」

『これを使います』

 

女性がそう言うと、いつの間にかそこに浮かんでいる機械的な羽の板を指さす。

 

「⋯あれで?」

『はい。名称、Dボード。データストームを使い空を行く板です』

「で、データ⋯?⋯ま、まあともかく、よーし、やるぞー!」

『制御は私が行いますので、こちらに失礼します』

 

そういうと女性は分解されローウルフェンのデュエルディスクへ入っていく。

 

「え⋯ええ!?」

『⋯自己紹介がまだでした。私の名前はイブ、AIです。よろしくお願いします』

「え!?ちっさ!?」

 

デュエルディスクの液晶部分より、女性⋯AIのイブが小さくなって現れる。

 

「⋯って、AIって⋯マジ?」

『はい。本当です。では、行きましょう』

「お、おお、おう。い、行こう⋯うお!?」

 

イブが人工知能、AIであると知り驚き、衝撃が抜けきらないうちにDボードに乗る。そしてすぐに猛スピードで前に進みつつ上昇し始めた。

 

「待って待って速い速い速い!落ちる落ちるぅ!!」

『⋯すみません、初心者であることを考慮していませんでした。少々お待ちください』

 

イブがそう言うと、Dボードが少し減速してから形を変え、その淵に沿うよう壁が形成される。そうして変化が終わる頃には、ローウルフェンの腰ほどの高さのある壁がついた、ちょっとした白い船のようになっていた。

 

「⋯他に形、ありませんか?」

『初心者用で落下防止を講じた結果、こうなりました。安心してください、落下防止用の安全ロープに加え、舵もついて操作できるようにもしました』

「そ、そうですか⋯あれ?なんか下に⋯なんだ?」

『⋯データストームと呼ばれる、超高密度のデータの流れです』

「さっき言っていたのって、これのことですね」

『はい、そうです。それと、接触10秒前です』

「え?」

 

そのイブの言葉と共に、後ろから圧を感じたローウルフェンが、ゆっくり振り向くと⋯。

 

「そこのお前、何故ここにいる。何を隠している」

「!げー!」

 

黒いモンスターが、頭部にハノイの騎士を乗せたまま迫っている。

 

「近い近い!」

「まあいい。ここはLINK VRAINS、デュエル⋯いや、この状況であれば、スピードデュエルだ!」

「スピードデュエルって何ー!?」

『答えます。スピードデュエルは、魔法・罠ゾーン及びメインモンスターゾーンが、それぞれ3箇所となり、初期手札の枚数が4枚、ライフポイント4000で行われるデュエルです。限定要素として、条件を満たすことで使用できる、スキルがあります』

「行くぞ!たあ!」

 

掛け声と共にハノイの騎士がデータの流れに向かって飛び降りると同時に、板型のDボードが現れそのまま着地して乗る。

 

「スキルって何!?」

『説明は後です。来ます』

「スピードデュエル!」

「や、やるしかない!スピードデュエル!」

 




思ったより長くなったのでデュエルは次に持ち越しとなります。
誤字脱字があれば指摘してもらえると嬉しいです。

誤字報告ありがとうございます。
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