「ほら、ベッドへお行きなさい。私も支度をするから」
俺にそう言いながら、部長は制服を脱ぎだした!!
え? なにこれ? 夢じゃないとしたら、なんなのこれ!?
バッ!
スカートを脱ぎ捨て、魅力的過ぎる脚線美を惜しげもなくさらす部長! うわ、やっぱり俺の仮設当たってた! 部長は普通の女子よりは羞恥心が低い! でも眼福です!!
そのまま、上着にも手をかけた!
「ぶ、部長! 何がどうなって……」
わけが分からず混乱する俺だけど、しょうがないだろ! いきなり部長が部屋に来て、『抱いて』だぞ!? 必要以上に健全な男子高校生としては、落ち着いていられるか!
バサッ。
う、上着を脱いで、ブ、ブ、ブラジャーがぁぁ!! 布地からでる白いお乳様から、目が離せない!!
と、下着姿になった部長が、こっちへきて、俺の目の前で腰に手を当てて優雅に立ち止まる。それは必然的に、俺の目の前に部長のお体がさらされるわけで……あああ、神様ありがとう! もしくは紅魔の吸血鬼お嬢様!!
「私では駄目かしら?」
「そんなことは断じてありえません!!」
部長の切なげな声に、思わず反射的に否定の言葉が出た。
「……色々考えたのだけれど、コレしか方法がないの。既成事実ができてしまえば、文句はないはず。……まだ足りない部分はあるけれど、あなたには素質があるわ」
……話がぜんぜん見えません! あと、素質があるなんて言われたのは初めてです。ありがとうございます。
「裕斗では駄目。彼は根っからのナイトだから、絶対に拒否するわ。数分で情事までいってくれそうなのは、あなたしかいなかった」
木場に勝ったのはうれしいですけど、なんか理由が喜べるんだかそうでないんだか!
混乱しっぱなしの俺をベッドに押し倒して、俺に馬乗りになると、部長はそのまま背中に手を回す。
そして……
パチン。
ブラが落ちた。
――
――――
――――――――
――――――――――――――――空前絶後の絶景。
以前見たときとは違い、猛烈に漢心をくすぐる仕草と表情を見せた部長と、類まれな豊かな胸部の凶悪コンボ。
正直、あと少し衝撃が少なければ、部長に飛びついていてもおかしくはなかった。そういった意味では、惜しかったのかよかったのか。
部長が身をよじるたびに、その峰がたゆんたゆんと弾むさまを見せ付けられる。
これは何のご褒美or拷問ですか。
「イッセーははじめてよね? それとも、経験がある?」
「い、いえ、初めてです!」
寸前までは行ったことありますけど。
ご破算になった原因は主に俺の出血多量です。
いや、鼻血とかじゃなくて、寸前までの切実な生存競争で。一応勝ちました。
「私もよ。お互い至らない点も多いでしょうけど、何とか事を成しましょう。大丈夫、私のここにあなたのを収めるだけよ」
そういって、部長は自分の下腹部に指を当てる。
迂遠な表現のはずなのに、なぜか生々しい。
あ゛あ゛あ゛! 全身の血が沸騰しそうだ!!
むにっ。
……こ、この素敵な感触は……。
反射的に、五指が蠢いた。
むにゅぅ。
「ぁあっ!」
なんということだろう。俺がてんぱってる間に、部長の手によって、俺の右手が部長のお乳に導かれてしまっていた! しかも揉んじゃったよ!
人生で五度目に揉んだ胸は、今までに劣らず、非常に柔らかかった。部長はどっちかというと、弾力に秀でているらしく、揉み応えがある。
同時に、右手を介して部長の心臓の鼓動が伝わってくる。ひどく大きく、激しいビートを刻んでいる。
でも……
「分かる? 私も緊張してるの」
それは察せます。直に感じてるんですから。けど、この鼓動から感じられる感情は、決して愛情とか、恋愛じゃない。
そうと分かれば、このまま流されるわけには行かない。それでは、部長に後悔が残るかもしれない。だけど……それでも、
―――おっぱいの感触が素敵すぎるぅぅぅっ!! たかが高校生のあって無きがごとしな理性が抗うには、この相手は強大すぎる! だけど、流されちゃだめなんだぁぁぁぁ!!
「イッセー! わ、私に恥をかかせるの?」
ボンッ!
究極的な台詞に、俺の理性は吹っ飛んだ。このままいけば、獣のごとく部長に襲い掛かるだろう。
部長の圧倒的な魅力と対峙するには、俺ごときの紙のような理性では論外だ。
―――が、しかし。
ドゴッッ!!
「え……」
「ガッ、ハァ!」
自分自身の左手から繰り出された拳。その痛みが、俺のスイッチを切り替えた。
人間――いや、悪魔だけど、とにかく、生き物が理性で本能に抗うのは非常に難しい。だから、本能には本能をもって対抗するしかない。
師匠との修行によって、俺の魂にまで刻まれた闘争本能。魔術や毒などによって、自分自身の意識が曖昧になり、俺がそれを危機だと感じたとき――俺は本能的に自分自身に痛みを与えることで、自力でそこから戻ることができる。
そして、俺を暴走させかけた性欲も、三大欲求のひとつであり、立派な本能ではあるが、その目的はあくまで種の維持。
さすがに自分自身の命以上の優先順位はない。
いや、命の危機でもなんでもないのは確かだけどね? そのくらいの融通は効くのさ。
なんにしても、これでやっと少しは冷静に話ができる。
部長は呆然と呟き、俺を見てくる。さっきまでただ只管性欲しか篭ってなかった俺の目に、急に冷静な光が宿ったからだろう。
「すいません。どんな理由でも、部長の相手に選ばれたことは本当に光栄です。……でも、今の部長には、そんなことはできません。だって、部長はほとんど『俺』を見てはいないですよね?」
伊達に何度も戦ってきてはいない。対峙した相手の挙動、力加減、仕草、鼓動で、相手の内心を推し量るくらいのことはできる。積み重ねた経験は、例えひどく力を落とした今でも、俺の身体に染み付いてるんだ。
さっきの鼓動で感じた、何かに対する強い叛意、反骨心。それと同時に、逃避的な感情も感じた。
ヤケを起こしている、といってもいい。それでも、俺に対する好意が、ほんの少しは感じられるのが救いだろうか。たとえ、異性に向くものではなくても。
「何を思い悩んでるのかは知りませんけど、切羽詰ったからって、こんなことをしても、後悔するだけですよ! もっと自分を大事にしてください!」
「イッセー……」
俺の言葉に、部長が悲しそうな、でも、どこかうれしそうな目をした時だ。
部屋の床が再び光り輝き、部長がそれをみて嘆息しながら、俺から少し離れた。
この文様って、グレモリー眷属? いったい誰が?
思い悩む俺の前に姿を現したのは、銀髪の、メイド姿の女性だった。
「こんなことをして、破談に持ち込もうというおつもりですか? こんな下賤な輩に操をささげると知れば、旦那様とサーゼクス様が悲しまれますよ」
その出で立ちに、口が動きそうになるのを何とか留める。
おちつけ、いくら似てるからって、俺んちに咲夜さんがくるわけないだろう。大体、咲夜さんがグレモリー家の魔方陣からなんて、出てくるわけないだろう。
それに、よくよく見てみれば、全体的な印象こそ咲夜さんに似てはいるが、顔つきとか、メイド服のデザインとか、結構違うところも多い。なにより、あのむ……
……これ以上はよしておこう。次元を超えてナイフを突き立てられそうだ。
なんにしても、この人はグレモリー家の関係者でいいんだよな?
ていうか、旦那様はともかく、サーゼクス様って? なんか、どっかで聞き覚えがあるような名前だけど……。話の流れからして、部長の兄妹かな?
「私の貞操は私のものよ。私が認めたものに捧げて何が悪いのかしら? それと、私のかわいい下僕を下賤呼ばわりするのは許さないわ。例えあなたでもね。グレイフィア」
部長ぉぉ! 即座に俺をかばって頂けるなんて。
罵倒されるのは慣れてるから別になんてことはないんだけど、それでもうれしいです!
グレイフィアと呼ばれた女性は、床に脱ぎっぱなしになっていた部長の衣服を拾う。
「何はともあれ、あなたはグレモリー家の次期当主なのですから、ご自重くださいませ」
そういって、部長の肩に上着をかけると、俺のほうへ視線を移して、頭を下げた。
「はじめまして。私は、グレモリー家に使えるグレイフィアというものです。以後、お見知りおきを」
優雅な物腰で、挨拶をいただいた。
クールっていうか、瀟洒な雰囲気の人だな。こういうところも咲夜さんによく似てる。
銀髪は後ろで一本の長い三つ編みにしている。目の色も銀色で、非常にクールな印象を受ける。
美人だなぁ……まさに大人の女性って感じ。こういうのもいいかも……
ぎゅうぅぅぅっ。
なんて見惚れてたら、なぜか部長に頬を引っ張られています。痛い、痛いですよ。部長。
「グレイフィア。兄の女王であるあなたが人間界へ来るなんて……それは、あなたの意思? 家の総意? それとも、お兄様?」
「全部です」
部長の問いに、即答するグレイフィアさん。こういうところも瀟洒だ。ますます咲夜さんに似ている。
でも、実力で言うなら、この人のほうが上かな? 美鈴さんなら分からないけど。
「わかったわ」
部長は嘆息すると、俺の頬から手を離して、こっちを向いた。
「イッセー、ごめんなさい。私も冷静ではなかったわ。あなたの言ったとおり、『貴方』を無視しすぎていたわ。今日のことは、お互い忘れましょう」
……あんなこと言っておいてなんだけど、何もなく終わってしまうとそれはそれで悔しいな。結局俺、部長の家のゴタゴタに巻き込まれただけってことでいいのか? いや、眷属なんだから、無関係ってわけじゃないんだろうけど。
「イッセー? まさか、この方が……」
「ええ、兵藤一誠。私の兵士よ」
「……『
グレイフィアさんが、今までにない目で俺を見てくる。ていうか、彼ってもしかしなくても、神さんだよな。この人、神さんをしってるのか?
「グレイフィア、私の根城へ行きましょう。話はそこで聞くわ。朱乃も同伴でいいわよね?」
「『雷の巫女』ですか。構いません。上級悪魔たるもの、女王を傍らに置くのは常ですので」
そこでいったん話が途切れて、部長が再度こっちを向いた。そして、ベッドに腰掛ける俺に目線を合わせる。
「迷惑を掛けたわね」
「い、いえ、そんなこと……」
チユッ。
………………へ?
なにやら、右の頬に素敵な感触が襲った。
乳房以上の弾力と瑞々しさを持ったそれを、人は唇という。
―――すなわち。
部長にキスされたぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっ!!!
「今夜はこれで、許して頂戴」
いや、それはもう!
くだらない説教かましたお礼がこれなんて、望外の幸福です!
「また明日。部活で会いましょう」
そういって、部長はほんの少しだけ悲しい目をして、ベッドから離れた。
そして、魔方陣が展開され、二人は一瞬で部屋から姿を消した。
「……」
沈黙が戻った部屋で、一人胡坐をかいて途方にくれる。
「イッセーさん。シャワー上りましたー」
すぐにアーシアの声が聞こえた。
思い悩んでも仕方ないので、一風呂浴びて頭を整理しようと、俺は着替えを持って、部屋を出た。
「きゃあああぁ!! いいい、イッセーさん! ど、どうしたんですか、その顔!」
廊下で鉢合わせたアーシアに悲鳴を上げられて、手渡された手鏡で顔を確認すると、左頬がかなりはれていた。
ああ、さっき自分で殴ったときのだな、これは。
「アーシアちゃん! イッセーが何かし……って、きゃあー!」
「うおお、イッセー! アーシアちゃんに襲い掛かって撃退でもされたか、このエロ息子!」
アーシアの悲鳴に反応して、両親も乱入で更に混乱する。とりあえず、親父は一発しばこう。
結局、寝ぼけてベッドから転げ落ちたってことにして、事なきを得た。
にしても、部長。何があったんだろう……。