ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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 ライザーって、描写上最悪な印象しか受けないですけど、結構根はいい人のはずなんですよね。
 短編集での彼の出番が楽しみです。


Life.16 喧嘩、売ります!!

 部長とグレイフィアさんの乱入から、ざっと半日後。朝の通学路をアーシアと二人で歩きながら、昨日の出来事に考えをめぐらせる。

 

 興奮冷めやらず、なかなか眠れない自分を何とか静めて寝付いたが、それでも昨日の出来事がありありと頭に浮かんでくる。そう、目を閉じれば、部長の裸体がありありと浮かんでくる。

 

 理由は知らないが、あのときの部長はどう考えても自棄を起こしていた。拒んだ事は間違っていないと確信できる。

 

 ……何故望まれていながら手を出さなかったと叫ぶ自分がいるのも、紛れもない事実だけど。

 

 ちなみに、自分でぶん殴って腫れた頬は、既にアーシアの神器で回復済みだ。やっぱりアーシアの聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)は凄いな。いや、この場合、聖母の微笑みの能力を十全に引き出せる、アーシアが凄いというべきか。

 

 回復系の神器(セイクリッド・ギア)も、普通の神器と同様、扱う者によって性能に差異が発生するらしい。悪魔にとって弱点である光の傷も簡単に癒せるほどの回復力は、紛れもないアーシアの才能あってのものだ。

 

 ……朝っぱらから劣等感に浸ってるのは、さすがに卑屈が過ぎるよな。隣のアーシアも、何事かと顔を覗き込んでるし。

 

 ちなみに、朝練は予想通りというべきか、部長から連絡がきて中止になった。まあ、あんなことがあった後じゃ、顔を会わせづらいしな。

 ……それとも、グレイフィアさんが来た用件で相当揉めてるのか。

 

 いや、よそう。俺みたいな下っ端が悩んだ程度で、部長の悩みの種がどうこうとは思えない。

 その時が来たら、眷属の俺たちにも、ちゃんと説明してくれるだろう。俺はそのときに最善を尽くせばいい。

 

 

 とか、ツラツラ考えてるうちに学校に着いた。教室を目指して廊下を歩いていると……。

 

「イッセェェェェェェェェェェッ!!」

 

 前からは松田が。

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 後ろからは元浜が、全力で走ってきた。二人同時にラリアットの体勢に入る。

 

 危ないのでアーシアを端にやって、二人の二の腕が俺の首を挟み込む三秒ほど前に、俺はバック宙の要領で飛び上がると、大きく脚を開いて、二人のラリアットを靴底で止めた。

 

 足首をつかみに来た松田の手から、元浜のほうを蹴って空中へ逃げると、そのまま松田の顔面に足跡をつけて、更に飛び上がり、床に着地。

 

 この間、ざっと十五秒。我ながら悪くない。出来る限りにこやかな声で話しかけてやる。

 

「やあ、君たち。朝から元気だけど、いったいどうした」

「ふざけんな!!」

「イッセー、お前って奴は!」

 

 はいはい、お前らの用件は把握してるよ。どうせ『ミルたん』のことだろ。

 

「ふざけんなよ! なんだ、あれ!? どう見ても格闘漫画の強敵みたいな漢じゃねぇか!! しかもなんでゴスロリなんだよ、最終兵器か!?」

「しかも、お前! お友達とか言って、何の集会か分からないけどさ! 『ミルたん』と同じようなのが複数集まって来たんだぞ! 怖かったよ! 死ぬかと思ったよ!!」

 

 ミルたんと同じようなのが、数人……それは想像を絶するものがあるな。

 

「魔法世界について延々と語られたんだぞ! なんだよ、『魔法世界セラビニア』ってよぉぉぉ! そんなの俺しらねぇよぉぉぉぉ!!」

「俺なんて、邪悪な生物『ダーククリーチャー』に出くわしたときの対処法なんて習ったよ……。死海から抽出した塩と夜中しか咲かない月見草(ムーンライトフラワー)を焼いて潰して粉にして作る特殊なアイテムで退けるらしいぞ……。どう考えてもミルたんの正拳突きの方が効果的だと思うんだ……」

 

 こいつら……俺が思ってた以上の地獄を味わったらしいな。哀れな……さすがにフォロー入れておくか。

 

「よかったじゃないか。これから『ダーククリーチャー』に出くわしても勝てるぞ」

 

 せっかくの慰めに憤った連中が仕掛けた技を軽くいなして、ダブルパワーボムを決めてやった。

 今度ラーメンでも奢ってやるか。

 

 

 

「部長のお悩みか。たぶん、グレモリー家に関わることじゃないかな」

 

 放課後、アーシアと一緒に旧校舎へ向かう途中、合流してきた木場に、部長のここ最近の変化を問いただしてみたら、こんな答えが返ってきた。やっぱりそうだよな……。

 

「朱乃さんなら、知ってるよな」

「朱乃さんは部長の懐刀だから、もちろん知ってるだろうね」

 

 とはいっても、大体の察しはもうついたけどな。まあ、既成事実なんて言って、家の者がそれをとめに来る時点で、なんの話か薄々察しはついてたんだけど……これ以上は、直で聞くのが一番か。

 部室の扉を前にして、木場が突然立ち止まって目を細める。どうやら感づいたらしい。

 

「……僕が、ここまで来て初めて気づくだなんて……」

 

 甘いぞ、木場。生活圏内程度の範囲の変化に気づけないようじゃ、自然界じゃ生きていけねぇぞ。まあ、俺も最近油断して刺されたりしてたから、気が張ってるだけなのかもしれないけど。

 なんにしても、こんな大物が尋ねてきたんだから。

 

「ちわーっす」

 

 かまわず俺が扉を開けると、部長、朱乃さん、小猫ちゃんと、あと一人。―――グレイフィアさんの姿があった。

 

 部長は見るからに機嫌が悪く、朱乃さんも表情こそいつもどおりのニコニコ笑顔だが、纏っている空気が冷たい。小猫ちゃんも、ソファーに座って我関せずな態度だ。

 

 部屋の空気が張り詰めている。もう少し茶化してもいい空気なら適当に崩すんだけど、そうも行かない感じ

だよな。

 木場は「まいったね」とつぶやいて、アーシアも不安そうに俺の服の裾を掴んでる。とりあえず、アーシアの頭をなでて安心させてやる。

 

「全員揃ったわね。少し、話があるわ」

「お嬢様、私がお話しましょうか?」

 

 そう申し出るグレイフィアさんを手で制すると、部長が口を開――こうとした時だった。

 

 部屋の魔方陣が、見たことのないまったく別の文様へと変化した。そこから炎が巻き起こり、部室内を照らし出す。

 

 炎はすぐに収まり、魔方陣の中心には赤いスーツ姿の一人の男が、後ろ向きで佇んでいた。

 

「フェニックス……」

 

 木場が、そうつぶやくの聞こえる。フェニックス……不死鳥?

 

「ふぅ、人間界は久しぶりだ」

 

 男が、振り返る。

 その顔は、なかなかに整っていて、十分にイケメンと呼べるが、赤いド派手なスーツと相まって、なんかホストくさい。ワル系のイケメンってところか。

 

「会いにきたぜ。愛しのリアス」

 

 ……いきなり何抜かしてんだ、このホスト崩れ?

 

「誰だ、こいつ?」

「この方は、ライザー・フェニックス様。純血の上級悪魔であり、フェニックス家の御三男。そして、グレモリー家の次期当主の婿殿です」

 

 俺の漏らした声に、グレイフィアさんがすらすらと答える。……今言ったとおりなら。

 

「グレモリー家の次期当主ってことは……」

「はい。リアスお嬢様のご婚約者であらせられます」

 

 ……やっぱりですか。

 

 

 

「いやぁ、リアスの女王(クイーン)が入れてくれた紅茶は美味しいものだな」

「痛み入りますわ」

 

 部室のソファーに膝を組んで座り、隣に部長を侍らせ、肩を抱きながら朱乃さんの紅茶を啜る。そんな状態で茶をほめられてうれしいわけがあるか、タコが。

 

 朱乃さんも、表面上はさっきと変わらないけど、いつもの「あらら」や「うふふ」がない。結構きてるな。

 

 にしてもこの野郎。幾ら婚約者だとは言え、部長にベタベタ引っ付きやがって……煙たがられてるのがわかんねえのか。髪まで弄繰り回して、太ももも撫で回して、キャバクラのセクハラ親父だってもうちょい遠慮があるぞ。

 

 とはいえ、所詮俺は下僕、他のみんなと一緒に、立って待機しているしかない。

 

 なんて歯がゆい思いを必死で耐えていると、部長が突如ソファーから立ち上がった。

 

「いい加減にして頂戴! ライザー、以前にも言った筈よ。私はあなたと結婚なんてしないわ」

 

 おお、ついに部長が啖呵を切った!

 けど、ライザーはソファーに腰掛けたまま、そんなことはどこ吹く風という風に両手を広げた。

 

「ああ、リアス。それは以前にも聞いたが、君の御家事情は、そんな我侭が通用しないほど切羽詰まってると思うんだが?」

「家を潰すつもりなんてないわ! 婿養子だって迎え入れるつもり。けれど私は、私が認めたものと結婚するわ」

「先の戦争で激減した純血の悪魔を絶やさない為というのは、悪魔全体の問題でもある。君のお父様も、サーゼクス様も、未来の事を考えてこの縁談を決めたんだ」

「父も兄も一族の者も、皆急ぎすぎているのよ。当初の話では、私が人間界の大学を出るまでは自由にさせてくれるはずだったわ」

「そのとおり、君は基本自由だ。大学に行ったらいいし、下僕も好きにしたらいい。ただ、戦争を脱したとはいえ、天使や堕天使とはいまだ拮抗状態。小競り合いで跡取りを失い、御家断絶したなんて話もある。純血の上級悪魔の新生児が貴重なことは、君にだってわかるだろ?」

 

 随分政治的な話だ。こいつも単なる色ボケた御坊ちゃまじゃないって事か。

 

「新鋭の悪魔。キミの下僕みたいに人間からの転生悪魔が最近は幅を利かせているが、それじゃあ俺たちのような古い家系の上級悪魔の立場がない。力があるというだけで、転生悪魔を迎える旧家もある。

 まあ、それはいいとしても、純血の悪魔を絶やすわけには行かない。俺とキミは選ばれたんだ。フェニックス家には兄がいるから問題ない。だが君の家は、兄君が家を出て、リアスしかグレモリー家を次ぐものはいない。キミは長く続いた家を潰すつもりなのか? この婚約には、悪魔の未来がかかってるんだ」

 

 なるほど、筋は通ってる。純粋な悪魔を残すというのも、大切なことは大切なんだろう。

 

 ノブレス・オブリージュ。高貴なるものの義務。部長の政略結婚も、そういってしまえばそれまでだろう。だが、常に臨機応変は必要だし、古い仕来たりにいつまでも縛られてる場合じゃないはずだ。

 

 何より、下僕の俺にとって一番大事なのは、部長の意思だ。

 

「ライザー……二度は言わないわよ。貴方とは結婚しない、ッ!」

 

 部長が拒絶を口にした瞬間、ライザーは詰め寄って、部長の顎を掴んだ。

 

「……俺もな、リアス。フェニックス家の看板を背負ってきてるんだ。名前に泥を掛けられるわけにいかないんだ。こんな狭くてボロい人間界の建物なんかに来たくなかったしな。

 というか、俺は人間界があまり好きじゃない。この世界の炎と風は汚い。炎と風を司る悪魔としては、耐え難いんだよ」

 

 ライザーの周囲を炎が駆け巡る。さっきの召還のときとは違い、確かな殺意と敵意をもった炎だ。

 

「俺はキミの下僕を全部燃やし尽くしてもキミを冥界に連れて帰るぞ」

 

 ライザーに呼応するように、部長の魔力が高まっていく。

 

 おいおい! 上級悪魔二人がこんなところでやりあったら、周りがただじゃすまないぞ!

 

 一触即発の二人の間に、静かな声が割り込んだ。

 

「お納めください。お嬢様、ライザー様。私は、サーゼクス様の命を受けてこの場に下りますゆえ、主の名誉のためにも、一切の遠慮はしないつもりです……」

 

 平坦な、落ち着いた声色。しかし、こめられた圧力はすさまじく重い。

 殺気だっていた二人は、いとも簡単に落ち着いて、一旦距離をとった。

 

「最強の女王(クイーン)と称されるあなたにそんなことを言われたら、流石に俺も怖いよ」

 

 おどけた様子のライザーだが、こいつ実力差がわかってないのか? たぶんお前程度の魔力じゃ、グレイフィアさんの小指一本分の魔力弾で消し飛ぶぞ。

 

「旦那様方もこうなった場合のことは予想しておられました。正直に申し上げますと、これが最後の話し合いの場だったのです。よって、決裂した場合の最終手段も仰せつかっております」

「最終手段? どういうこと、グレイフィア」

「お嬢様が、ご自身の意思をそこまで押し通すのでしたら、レーティングゲームで決着をつけられてはいかがでしょうか」

「!!」

 

 グレイフィアさんの言葉に、部長が言葉を失ってる。

 

 レーティングゲームって、たしか、下僕をチェスのコマに見立てて戦わせるってやつだよな? 

 確かに今回みたいな問題の解決にはうってつけだろうけど、確か部長はまだゲームの経験はなかったんじゃなかったけ?

 

「お嬢様もご存知のとおり、公式な『レーティング・ゲーム』は、成熟した悪魔しか参加できません。しかし、非公式の純血悪魔同士のゲームならば、半人前の悪魔でも参加できます。この場合、多くが――」

「身内同士、または、御家同士のいがみ合いね。つまり、お父様方は私が拒否したときのことを考えて、最終的にゲームで今回の婚約を決めようというハラなのね? ……どこまで私の生き方をいじれば気が済むのかしらっ!!」

 

 部長も、かなり本気で怒ってる。そりゃ、こんな出来レースみたいな真似をされたらな……。

 

「へー。いいのかい? 俺は既に成熟して、公式のゲームも経験しているし、勝ち星も多い。それとリアス。念のために確認しておきたいんだが、キミの下僕は、ここにいる面子で全てなのかい?」

「だとしたらどうなの?」

「フハハハハ!」

 

 ライザーは滑稽そうに笑うと、指を打ち鳴らす。すると、魔方陣から再び炎が巻き起こり、無数の人影が出現する。

 

「こちらは十五名。フルに駒がそろっているぜ?」

 

 ……通常のチェスに当てはめて考えれば、向こうはキングのライザーを含めて、十六。確かに、通常のチェスと同じ数だ。

 一方の俺たちは王、女王、騎士、戦車、僧侶が一人ずつに、兵士にいたっては俺一人。……あれ?

 たしか、もう一人僧侶がいるって言ってなかったっけ?

 

 まあ、いまはそれはおいておこう。目の前の現状のほうが、よっぽど重大だ。

 

 ……なんてったって、あの十五人……

 

「そろいも揃って、美女、美少女ばかり……ライザー・フェニックス!! なんて……なんて漢なんだーーーッ!!」

「……お、おい、リアス。キミの下僕君。俺をみて号泣しているんだが」

 

 ライザーは俺を見て若干引いた様子だが、好きにしろ! お前に好かれたくなんてないやい!

 

「……その子の夢が、ハーレムなの」

 

 ああ、はい、そうです、そのとおりです。夢の到達点をみて、若干涙腺が緩みました。すいません。

 

「えー、なにこいつ」

「キモーい」

 

 相手の眷属からまでこんな風に言われる始末だし。しまらない奴ですいません。

 

「ふっ、そういうことか……。ユーベルーナ」

「はい、ライザーさま」

 

 ユーベルーナと呼ばれた女性が、ライザーに歩み寄る。結構な魔力だな。たぶん、あの人が女王かな。

 なにをするのか……って、おい!

 

 ライザーはユーベルーナの顎に手を当てると、顔を上に向かせて、そのままキスした! うわ、しかもあれ、舌まではいってんじゃねえか!?

 

 部長はあからさまに嫌悪の表情を浮かべてるってのに、お構いなしか! でも目が離せない!

 

「はうはぅはぅぅぅ~」

 

 アーシアは赤面しながら頭から湯気が出てるし! とりあえず、背中にかくまおう。アーシアには刺激が強すぎる。俺は見るけどね!

 

 あ、今度は身体をまさぐりだした! この野郎! 俺じゃ一生こんなことはできねえだろって顔してやがる! 勝ち誇りやがって!

 

「お前じゃ一生こんなことは出来ないだろう。下級悪魔くん」

「俺の思ったことそのままいうんじゃねえよ! 部長を口説きに来たのに、その横で他の女に手を出すなんざ、不届きにも程があるぞ! お前みたいな女たらし、部長と不釣合いだ!」

「だがお前は、そんな俺にあこがれてるんじゃないのか?」

「ふざけた事抜かしてんじゃねえ! 俺はテメェみてえな、女を自分のアクセサリーかコレクションみたいに扱う野郎が一番嫌いなんだ! 大体、さっきから傍若無人にも程があるんだよ! 日本じゃあな、女口説くにも礼儀がいるんだ!! 郷に入っては郷に従え、この種まき焼き鳥野郎が!」

「……お前、自分の立場を弁えろよ」

「……イッセーさがりなさ…」

「知るか! 俺の立場は、部長の下僕ってだけだ! それ以上でも以下でもねえ!」

「!!」

 

 左腕を翳して、赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)を出現させる。

 

「ゲームなんざ関係ねぇ!! この場で全員ぶっ飛ばす!」

『Boost!』

 

 音声とともに、身体に力がみなぎる。ライザーめがけて飛び出すが、ライザーは嘆息すると、眷属のほうを向く。

 

「ミラ!」

 

 飛び出してきたのは、長い根を持った少女。

 

 杖術使いか? なら!

 

「ふっ!」

 

 そらきた! まっすぐな突きを見切って、スレスレでかわして、懐に飛び込みつつ、右肘を鳩尾に叩き込む!

 

 ドッ!

 

 殺気で次の手がみえてんだよ!

 

「がっ!」

 

 突撃の勢いよろしく、ライザーの横まで飛んでいった。それを、奴は右手で受け止める。

 

「ちっ!」

 

 ライザーの奴が眉を跳ね上げた。ざまあみろ、この野郎!

 

『Boost!』

「イザベラ! 雪蘭(シュエラン)!」

 

 と、今度は仮面の美女と中華風の服装の美少女が二人揃ってかかってきた。初手のパンチと蹴りを防いで、ワンステップで距離をとろうとするが、すぐに仮面の女が距離を詰めて殴りかかってきた。型がめちゃくちゃだ! 喧嘩屋か!

 

 そのままインファイトでなんとかよけるが、中華風のほうも、攻撃の合間を縫って仕掛けてくる。動きから見て、コイツは戳脚門か!

 

『Boost!』

 

 一発でもいいのをもらっちまったら、強化が解除される! ……だったら!

 

 パンッ

 

 一旦攻防の手を止めて、両手を合わせ、相手の拳をかわす要領で伏せて、両手をつける。二人がまとめて止めを刺そうと迫るが、遅い!

 

 バシュウ!

 

「「なっ」」

 

 猛烈な勢いで俺の足元の床がせり上がり、勢いもそのままにライザー目掛けて突撃する。

 

『Boost!』

 

 四段階目! これでいくか!

 

『Burst!』

「オラァ!」

 

 覇気をこめたとび蹴りをかますが、間に割り込んだユーベルーナとかいう女の防御壁で防がれた。かまわない、このままぶち破――

 

 ゾッ!!

 

 背筋に寒気を感じて、空を蹴って床に着地する。寒気のしたほうを見てみると、グレイフィアさんがとんでもない殺気を纏って俺を睨んでいた。

 

「一誠様。先ほど申し上げましたとおり、私はサーゼクス様の命を受けてこの場におります。サーゼクス様の名誉を傷つけるのでしたら、(さかき)(じん)の弟子であるあなたでも、容赦はできかねますので……これ以上続けるお積もりでしたら、相応の覚悟をもって、判断くださいませ」

 

 ……一気に頭が冷えた。フェニックス眷属の連中も、ライザーも、同じ様子だ。俺は神器を解除して、グレイフィアさんに頭を下げた。

 

「……かっとなりました。すいません」

 

 そういうと、グレイフィアさんは殺気をあっという間に霧散させて、部長に声をかけた。

 

「では、お嬢様。決着は、レーティングゲームで、ということでよろしいでしょうか」

「ええ」

「ライザーさまも……」

「ああ、かまわない。」

「承知いたしました。お二人のご意思は私グレイフィアが確認させていただきました。ご両家の立会人として、私がこのゲームの指揮を執らせてもらいます。よろしいですね」

「ええ」

「ああ」

 

 ……なんだか、とんでもないことになった。

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