ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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 少々流血描写がございます。苦手な方はご注意ください。


Life.17 修行、はじめました。

『ヤッホー』

(ヤッホー)

 

 どこかの登山者が、山彦をしているらしい。平和なことだ。

 

「ほら、イッセー、早くなさい」

「美味しいですわよー」

 

 既に部長たちは、一段高い開けた場所で休憩している。

 馬鹿でかいリュックサックを背負った俺とは違い、軽装だ。

 

「あ、あの……私も少し荷物を……」

「いいのよ、イッセーはあれぐらいこなさないと」

 

 アーシア、ありがとう。そして部長、さらっと鬼ですね。

 まあ、確かにそんなに苦でもないですけど。

 十トンの重りを背負わされて、活火山をひたすら登頂させられるよりは何百倍もましだし。

 

 今俺たちは、ライザーとのレーティングゲームに向けた特訓を行うために、山奥にあるという部長の別荘に向かっている。ていうか、この山々のほとんどがグレモリー家の所有地というんだから恐れ入る。金はあるところに集まるか……。

 

 にしても、荷物の量が多い。俺の荷物は着替えと水や食料と、包丁を除けば、ゲームくらいしか入ってないからかなり軽いはずなんだけど、ほとんど部長と朱乃さんの荷物だ。アーシアのも混ざってるけど、二人に比べてそんなに量はなかった。何をどうしたら登山の荷物がここまで膨れ上がるんだろう。

 

 俺の先を歩く木場なんかは、俺と同じくらいの荷物で涼しい顔をしている。相変わらずいつでもさわやかな野郎だ。

 小猫ちゃんなんて、俺達の十倍以上はあろうかという荷物にもかかわらず、平然と運んでるし。あの子って絶対、俺より体重軽いはずだよな? 

 

 平地につくなり、荷物を背負ったままペットボトルから水を飲む。

 

 一息ついたところで、昨日のライザーとの一悶着の後の、グレイフィアさんと部長の会話を思い起こす。

 

 

 

『ゲームの期日は、十日後と致します。ライザー様とお嬢様の経験と戦力の差を鑑みて、このくらいのハンデはあって然るべきかと……』

『……悔しいけど、そのとおりね。そのための修行期間として、ありがたく受け取らせてもらうわ』

 

 

 

 プライドの高い部長が、自分の不利と実力差を認めて、時間をもらったんだ。俺も、可能な限り強くならないと!

 

 なんて考えてるうちに、目的の別荘に到着した。

 なんでも、この別荘は普段は魔力で風景に溶け込んでいて、人前に姿を見せない仕組みらしい。

 

「さあ、中に入ってすぐ修行を始めるわよ」

 

 すぐですか。ちょっと休憩しません?

 っと言いたいところだけど、俺より大量の荷物を運んでいた小猫ちゃんが、汗ひとつかかずに黙々と動き出しているので、俺も情けないところは見せられない。

 

 中に入って、リビングに荷物を置いて、動きやすいジャージに着替える為に、女性陣は二階に上がり、男二人は一階の適当な部屋で着替える。

 

 木場と二人でパンツを晒しながら、ふと思った。木場と二人で話すことがなかったことに思い至った。

 ていうか、俺基本的にイケメンは嫌いだし。そうでなくともコイツとはB足すL的なことを最近騒がれているんだ。下手な接触は腐った魂に火をつけるだけだ。

 

 でも、こいつのことで気になることがひとつある。

 アーシアを助けるために、教会に乗り込む直前。俺が助太刀の礼を言った時の、あの言葉。

 

『それに、教会や神父は個人的にも好きじゃないんだ。憎いほどにね……』

 

 あのときの言葉にこめられた憎悪は、計り知れないものだった。それこそ、相当な辛酸を舐めてきたと確信させられるほどの、黒い感情が見えた。こいつにもコイツの事情があって、部長に拾われたんだろう。

 

 俺もまた、部長に命を救われた。だからこそ、主の為、自分の為に、なんとしてもあのホスト崩れの焼き鳥野郎に勝たなきゃ!  

 

 ……ん? なんか盛り上がってたら、木場がズボンを履く途中で止まってる。で、こっちを見ながら、口を開くと……

 

「見ないでよ、エッチ」

「テメェ、マジで殺すぞ!」

 

 冗談っぽくほざくのが、またむかつく。いや、ガチで言われたらそっちのほうがいやなんだけど……。

 やっぱ、こいつは嫌いだ。イケメン死ね!

 

 二人揃って部屋を出ると、既に女子メンバーはリビングに集まっていた。赤いジャージの部長が俺を視界に捉えると、不適に笑う。

 

「さて、さっそく外で修行開始よ」

 

 

 

 『レッスン1 木場と剣術修行』

 

 木場と木刀を持って対峙し、互いに正眼に構えを取る。そして……

 俺は即座に、木刀を木場目掛けて投擲した。木刀はかなりの速さで、先端から飛んでいく。

 

「なっ!?」

 

 驚きつつも木刀を弾く木場の真横に移動して、木刀を回収しつつわき腹に蹴りを叩き込む。

 蹲った木場に、木刀を突きつけてやる。

 

「見たか、邪道剣法の真髄! 剣なんざ飛び道具だ!」

「邪道に過ぎるよ……ていうか、なにあの見事な木刀の投げ方」

 

 わき腹を押さえながら、木場が呻く様に文句を言ってくる。

 すげぇだろ。今じゃ木刀だけでなく、短刀だろうがナイフだろうが鉛筆だろうが完璧に飛ばせるぞ。

 

「イッセー! 効果的なのは認めるけど、ちゃんと剣術修行をなさい!」

 

 部長からお叱りを受けてしまった。駄目ですか。まあ、そうですよね。

 

 気を取り直して、再び正眼の構えで向かい合う。

 

「おりゃああぁ!」

 

 木刀を全力で振るうが、木場は軽やかに俺の攻撃をいなす。まるで当たる気配がない。

 

「基礎は出来てるのに、型がない。かなり我流混じりだね、イッセーくん?」

「俺はどっちかっていうと、拳で語るほうなんでな! 剣術はもっと余裕が出来てからってんで、基本的に拳法ばっか習ってた!」

「なるほど」

 

 やっぱり、木場と俺の技量さは歴然だ。さすがは『騎士(ナイト)』。最小限の動きで俺を押さえに来る。努力量、剣にかける覚悟、何より、剣の才能が桁違いだ。

 

「ほら、まだまだいくよ!」

 

 さっきの恨みか、木場の攻撃はやたら鋭かった。

 

 

 

『レッスン2 朱乃さんとの魔力修行』

 

「魔力は身体全体を覆うオーラから、流れるように集めるのです」

「んぎぎぎ……」

 

 腕を突き出し、言われたとおりに力んでみるが、覇気しか出ない。駄目だ。どうしても身に染み付いたほうが先に出ちまう。

 

「そうじゃなくて、意識を集中させて、魔力の波動を感じるのですよ」

 

 朱乃さんが伸びた俺の右腕に、白魚のような手を這わせてくださるが、なにも出やしない。これ以上力むと、間違えて気弾を撃っちまいそうだ……。

 

「できました!」

 

 思い悩む俺を尻目に、アーシアは既に魔力の塊を手のひらから出していた。聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)と同じで、綺麗な緑色だ。

 

「あらあら、やっぱりアーシアちゃんは、魔力の才能があるのかもしれませんね」

 

 賞賛を受けて、ぽっと頬を染めるアーシア。かわいいな。

 

 しかし、俺も負けてはいられない。とか思うものの、幾ら力んでも米粒程度の大きさのがやっとだ。才能のない己が恨めしい。今まで通り、練習あるのみか。

 

「二人とも、ちょっと手を休めて、これを見てください」

 

 と、朱乃さんが水の入ったペットボトルを取り出し、テーブルに置くと、それに手をかざした。

 そして、次の瞬間、中の水がいきなり凍りつき、形を変えてペットボトルを突き破った!

 

「集中させた魔力を、炎や水、雷に変化させます。慣れればイメージから生み出すことも出来ますが、初心者はこんな風に、実際の火や水を魔力で動かすほうがうまくいくでしょう。

 アーシアちゃんは、次はコレを真似してください。イッセー君は引き続き、魔力を集中させる練習をするんですよ」

「はい……」

「魔力の源流はイメージ。とにかく、頭に浮かんだものを具現化するのが大事なのです。得意なもの、いつも想像しているものならば、比較的早く具現化できるかもしれませんわ」

 

 得意ねぇ……。殴るんなら具現化よりも直でボコったほうが早いし、気弾も覇気でやったほうが慣れてる分、消費効率も威力も使い勝手も断然向こうが上だ。他には……駄目だ。どれもこれも、今の俺じゃ耐えられそうにない。

 

 あとは、いつも想像しているもの……あっ。

 

 ああああ。思いついてしまったら、そのまま一気に頭の中で固まってきた。そのノリで、朱乃さんの胸元なんかチラ見してみる。

 

 ………―――みえた! 二つの白き巨峰にそびえる、桜色の宝玉が!

 

「あらあら、どうしました?」

「はぃっ!!」

 

 しまった。チラ見のつもりがいつのまにか凝視していた。

 

「な、何でもありません! 頑張ります!」

 

 何でもなくはないですけど、頑張るのは本当です。

 

 

 

『レッスン3 小猫ちゃんとの組み手』

 

 ドゴッ!

 

 小猫ちゃんの放った拳を腹に受けるが、足で大地を踏みしめなんとか耐え切る。これで十発目……流石にキツイな。

 

「……頑丈ですね、先輩」

「よく言われるよ」

 

 小猫ちゃんは、心なしか少し感心してるように見える。あんな重い拳を何発も受け止めてれば、普通のヤツならとっくに身が出てるからな。

 

 小猫ちゃんはやっぱり凄い。立ち技、寝技、他にもさまざまな格闘技が扱える。我流が混じって見えるから、多分格闘技の本とかを見て自己流で覚えたんだろう。

 それに加えて、戦車としての攻撃力と防御力に、元の体格か本人の資質か、けっこう俊敏で、今の俺じゃあ、見えていてもかわすのは難儀する。

 

 最初はだいぶ手加減されてたんだけど、一発、二発と耐えるたびに力が強くなってきて、多分五発目くらいでマジになったと思う。

 

「……先輩、何で全然反撃しないんですか? 何度か反撃の機会はあったと思うんですけど……」

「え? ああ、まあ、やむにやまれぬ事情というか……そんな感じ」

「……私じゃ、練習相手にもならないってことですか?」

 

 あれ? 小猫さん、なんか怒ってらっしゃる?

 いやいや、別にそんなことは。ただ、部長から覇気と赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)は使っちゃ駄目って言われてるから、安全の為……ね?

 

「……それじゃあ、本気を出させる為にも、もう1セット行きます」

 

 ……俺の身体よ、もってくれ。

 

 

 

『レッスン4 部長と!』

 

「随分余裕があるわね、イッセー」

 

 特訓の大半を終わらせて、部長から飛び出た台詞がコレです。

 

 内容は、岩を括り付けられて山道を往復ダッシュ。巨岩を背中に乗せての腕立て数百回等、基礎トレーニングの数々。普通なら半死半生になってるはずだけど、より想像を絶する苦行をつまされた俺には、肉体的な疲労はともかく、精神的な疲労はそこまでない。

 

「じゃあ、帰るわよ」

「はい」

 

 返事をして、立ち上がったその時。

 茂みから猛然とダッシュしてきたのは、かなりの大きさの猪。牙を構え、俺目掛けて突っ込んでくる。

 

 部長が突然の出来事に目を白黒させている中、俺は右腕で猪の顎を掴むと、軽く放り上げ、あらわになった胸部に、左腕の手刀を突き刺した。

 

 ドスッ。

 

 久しぶりの、心臓の感触。血潮を浴びないように注意しながら腕を抜くと、猪を抱えて持ち上げる。

 

「とりあえず、夕飯の肉が確保できましたね」

 

 俺がそういうと、部長はニコッ、と笑った。

 風に煽られ、夕日に映える紅髪を纏わせたその笑顔は、とても素敵だった。

 

 でも、野生動物をしとめた瞬間を見て笑うのは恐いです。

 

 

『レッスン4・バージョン2 レッツクッキング』

 

 エプロンをして台所に立つ、俺とアーシア。大量の食材と、調理器具が並ぶその場で、ジャージ姿のままの部長が言った。

 

「魔力を使って、お料理ですか?」

「そう。もちろん、出来る範囲でかまわないわ。無理だと思ったら、普通に料理してもいいから。それじゃ、お願いね」

 

 最初はオロオロしていたアーシアも、鍋に水を張って手をかざし、一呼吸して……

 

「お、お湯さん。沸いてください……」

 

 とつぶやくと、かざされた手から魔力が緑色の光として降り注ぎ、見事鍋から湯気が立った。流石はアーシア。朱乃さんが太鼓判を押すわけだ。

 

 俺のほうは、朱乃さんの講義で思いついたことを試すべく、玉ねぎを手に取り、目を閉じて意識を集中させる。

 

 ……イメージしろ。想像するものは、常に最高の乳だ。

 

 ―――朱乃さんのおっぱい!!

 

 バリッ。

 

 脳内に鮮やかな巨乳が映し出された瞬間、皮はあっけなく弾け飛び、玉ねぎはその白い実を晒した。

 

 もう一度。ジャガイモを掴んで、今度は部長のおっぱいを思い浮かべる。

 

 シュビッ。

 

 まるで瞬時に皮をむいたように、らせん状に皮が落ちる。

 

「へえ、ジャガイモも楽勝じゃんか」

「凄いです、イッセーさん!」

「フッ、本気を出せば、ざっとこんなもんさ」

「流石です!」

 

 アーシアは目を輝かせてくれるけど、根本的にあるのは完全な煩悩です。本当にすみませんでした。

 

「これは……」

 

 頭の中で、どんどんイメージが固まる。

 

 横を見て、アーシアを一目。一瞬で頭の中にその慎ましくも自己主張する美乳が思い浮かび、触れずとも無数の玉ねぎが剥ける。

 

「もしかして!」

 

 更に、小猫ちゃんのささやかな愛らしい微乳が再生され、ジャガイモ達の白い実をあらわにする。

 

「俺は無敵になれるかも!!」

 

 宣言と共に、グレイフィアさんのおっぱいを脳内に創造。残った果実が、一斉に皮を脱いだ。

 

「イッセーさん!」

「へ?」

 

 と、アーシアが、突然あせった声。

 

「これ、どうするんでしょう……」

 

 アーシアの視線は、厨房内に溢れる野菜の数々に向けられている。いずれも俺の手によって、その魅力的な姿を晒している。

 

「大丈夫大丈夫。じゃ、後は手でやりますか……」

 

 そういって、俺は愛用の包丁を取り出し、無数の野菜と、俺がしとめた猪に向き合った。

 

 

 

 皆のリクエストも聞いていなかったので、とりあえず和洋中と多種多様に作ってみた。テーブルに皿を運びながら、皆の様子を伺ってみる。

 

「美味しい!!」

 

 最初に声をあげたのは、アーシアだった。

 

「これは……凄いね」

 

 木場も、爽やかよりも喜色が勝った表情を見せる。

 

「……」

 

 小猫ちゃんは、賞賛よりも一心不乱に料理を食べている。 

 

「あらあら、ほっぺが落ちてしまいそう」

 

 朱乃さんも、にこやかにほめてくれる。頬に手を添える仕草がまたかわいいです!

 

「どの料理も素晴らしい出来栄えだわ。イッセー、一流の腕前よ」

 

 部長も、優雅に食べ進めながら褒め称えてくれた。

 

「いえいえ、俺なんかまだまだですよ」

 

 謙遜しつつも、手料理を美味いと言われることがうれしいことに変わりはない。

 

 さて、それじゃ俺も食うか。

 

 パンッ!

 

 練成の時のように両手をあわせ、ジャガイモ、玉ねぎ、猪。その他の数多の食材に対して、感謝の意を示す。

 

「この世の全ての食材に感謝をこめて……いただきます」

 

 食材一つ一つの味をかみ締めながら、箸を進める。

 とても美味い。特訓で疲労した筋肉に、栄養が染み渡るのが分かる。

 命を、存在を喰らっているという事実と共に、料理を味わう。

 生き物の身体は食によって作られる。食事もまた、大事な修行の一つだ。

 

「イッセー。今日一日修行してみて、どうだったかしら?」

「はい。俺が一番弱かったです」

 

 赤龍帝の篭手無し、覇気もなしじゃ、俺が最弱なのは目に見えている。魔力の扱いも含めたら、下手したらアーシア以下かも。 

 

「そうね。それは確実だわ。でも、貴方の赤龍帝の篭手も、アーシアの回復も貴重な戦力よ。敵も当然そこを理解しているはずだから、最低でも、逃げるくらいの力はつけなさい」

 

「「はい」」

 

 実力で大きく離れた敵に無策に背中を向けるなんて、殺してくれっていってるようなもんだしな。

 

 それに、アーシアは素質はともかく、性格は戦闘向きな性質じゃない。あくまで、聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)を活かした後方支援が主だ。アーシアの分も、俺が強くならないと!

 

「さて、食事を終えたら、お風呂に入りましょうか。ここは温泉だから、素敵なのよ」

「お風呂!!?」

 

 温泉って事は、露天! つまり、覗きの絶好の機会!!

 

「あら、イッセー。私たちのお風呂を覗きたいの?」

 

 部長は小さく笑って、俺を見る。

 

 やっぱり分かりますよね! でも大丈夫。要塞並みのトラップがあったって、俺はそれを越えてみせます!

 

「ならいっそ、私たちと一緒に入る? 私は構わないわ」

 

 !!???

 

 いま、なんとおっしゃられましたか?

 

 一緒に入る。女子と一緒に、お風呂に入る。つまりは……

 

 混・浴!!

 

 夢の一つをかなえられるだなんて、そんなの甘美なことがあってもいいんですか!?

 

「美味しい食事を作ってくれた、ご褒美も兼ねて、ね」 

 

 おおおおおお! 俺の料理にそこまでの価値を見出してもらえましたか! 重ね重ねありがとうございます! この世の全ての食材よ。今一度、全身全霊の感謝を捧げます!!

 

「朱乃はどう?」

「イッセーくんなら構いませんわ。うふふ、殿方の背中を流してみたいですし」

「えええええ!?」

 

 マジか……俺、特訓で気絶して、森の中で放置されて夢見てるんじゃないだろうな。つねってみる。痛い。よかった、現実だ!

 

「アーシアだって、愛しのイッセーなら大丈夫よね?」

 

 アーシアは顔を真っ赤にして、小さく頷いた。

 

 な、なんだこの展開……本当にあの吸血鬼お嬢様が運命を操作してるんじゃないだろうな。気まぐれでやりそうだから、一概に否定できない!

 

 なんにしても、これは、これはもしかすると……!

 

「小猫は?」

「嫌です」

「じゃあ無しね。残念」

 

 もしかしなかった!! い、いや。反応としては至極真っ当なわけで、むしろ今までの流れが悪乗り過ぎる面が大きかったわけで……でも、惜しいことに変わりはない! こうなったら、せめて正々堂々覗きを――

 

「……覗いたら、恨みます」

 

 先に釘刺されました。除き終了のお知らせです。本当にありがとうございました。

 

 畜生……こうなったら、食に没頭してやる! 

 飯を書き込む俺の肩に、木場がポンッと手を置く。

 

「イッセーくん、僕と裸の付き合いをしよう。背中、流すよ」

 

 しみじみと、同情する口ぶりで言った。

 

 ブチッ。

 

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!! マグマの海に叩き込むぞ、木場ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 怒りの咆哮が、夜の山に響いた。

 

 一部のキャンプ中の人々がこの叫びを聞いた結果、後日に『祟り神の憤怒』と言われ、都市伝説となったと聞く。

 

 結局、俺は壁を一枚挟んで妄想するしかなかった。己の無力が恨めしい……。

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