ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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 原作からの引用が多い部分が存在します。問題があれば改訂いたしますのでご指摘ください。


Life.2 人間、やめました。

『オキナサイ! オキナサイ! オ、オキナイナラ、キ、キス、スルワヨ……』

「………」

 

 ツンデレボイスを上げる目覚まし時計を、床から起き上がって止める。ああ、また床に転げ落ちたのか……。

 本当にここ最近は夢見が非常に悪い。いつもいつも、夕麻ちゃんに殺される夢ばかり見る。

 

「起きなさい、イッセー!」

 

 階段からのお袋の声に、俺は思考を打ち切って慌てて返事をする。

 

「わーってるよ! 今起きる!」

 

最悪な気分を圧して、俺は制服に袖を通す。最近の日課は、そのすぐ後に溜息をつく事に成ってしまっている。

 

「行ってきます。ファッ……」

 

 欠伸を噛み殺しながら、俺は家を出る。

 

 おかしくなっているのは、夢だけじゃない。どういう訳か、やたら太陽がキツイ。異常に日差しが強いわけではなく、俺が異様に弱くなった。お陰で最近は母さんに叩き起こされないと起きられない。

 

 逆に夜には何と言うか、体の内から異様に何かが湧き上がってきて、異様にハイテンションになる。完全な夜型人間だ。

 

 どう考えてもおかしい。

 

 体の内側から、説明できない力がどんどん溢れてくる感覚。試しにこの間は夜中に外へ出て、全力で走ったら、自分でも驚くほど速くなっていた。おまけに、フルマラソン並みに走ったというのに、ほとんど疲労を感じない。

 

 昼間にも走ってみたが、予想通りというべきか、普段と変わらない結果しか出なかった。

 昼夜でここまで力に差が出るとは、一体何がどうなっているのか。

 

 神さんに相談したい所だが、生憎今は連絡が取れない。神さんが唐突に音信不通になるのはいつもの事だが、今ほどそれをもどかしく思った事は無い。

 

 その上、何故かドライグまで全然出てこない。今までにも深く眠って少しの間話が出来なくなった事はあったが、最長でも三日だった。長い時間を生きてきただけあって、俺など足元にも及ばない知識量を誇るドライグなら、この一件にも何かしらの答えをくれると思うんが……

 

 あの日、夕麻ちゃんとのデート。あの時に、一体俺に何が起こったのか。

 

 

 

 私立駒王学園。

 俺の通う高校だ。

 

 現在は共学だが、数年前まで女子高だったせいか、男子よりも女子の割合が大きい。

 学年が下がるごとに男子の比率は上がるが、それでもやはり全体的に女子が多かった。

 

 二年生である俺のクラスでも男女比は、三対七だ。三年生だと二対八。

 発言力も未だに女子のほうが圧倒的に強く、生徒会も女生徒のほうが多くて、生徒会長も女性だ。

 

 男子が強く出られない校風だが、それでも俺は通っていた。単純な話で、ここには女の子が多い。それだけで全てが構わない!

 難関と言われる試験を突破してきたのも、全ては俺のスケベ根性が為したもの。

 

 女子に囲まれて授業を受けたいとおもって何が悪い! スケベで何が悪い! 俺の人生だ! 誰にも文句は言わせない。俺はこの学園で、ハーレムを築いてみせる!

 

 しかし、そんな入学時の志虚しく、現実は非情だ。所詮は一部のイケメンがモテモテで、俺などは女子の眼中にも入らず、廊下のゴミクズも良い所だ。

 溜息をつきながら俺は教室に到着するなり、自分の席に腰を深く落とした。

 

「よー、心の友よ。貸したDVDはどうだった? エロかっただろ?」

 

 声をかけてきたのは丸刈り頭の友人その一、松田。爽やかなスポーツ少年に見えるが、日常的にセクハラ言葉が出る変態だ。

 

 中学時代様々な記録を塗り替えてきたほどのスポーツ万能少年だが、所属している部活は写真部。理由はレンズを通して女子高生の全てを撮影したいという下心全開の動機だ。

 

 別名『エロ坊主』、『セクハラパパラッチ』。

 

「ふっ……今朝は風が強かったな。おかげで朝から女子高生のパンチラが拝めたぜ」

 

 キザ男のように恰好つけているメガネが友人その二である元浜だ。メガネを通して女子の体形を数値化できる特殊能力(スカウター)を持つ。メガネを取ると戦闘力が激減する特異体質。

 

 こちらの別名は『エロメガネ』、『スリーサイズスカウター』。

 

 俺の悪友二人だが、朝からこいつらの顔を見ているとただでさえ低いテンションがさらに下がる。最早マイナスだぞ。

 

「いいもん手に入ったぞ」

 

 松田が自分の鞄を開けて、惜しげもなく俺の机の上に鞄の中身を置いていく。

 ドカドカと机の上に積み上げられていくのは、見るからに卑猥な題名の本やDVDだ。

 

 遠くで女子が軽く悲鳴を上げ、更に『朝から最低~』、『エロガキ死ね』と蔑んだ声を上げる。

 

「騒ぐな! これは俺らの楽しみなんだ! ほら、女子供は見るな見るな! 脳内で犯すぞ!」

 

 相変わらず発言が最低だ、松田。

 少し前の俺なら、この机の上に置かれた品々に目を輝かせただろうが、最近は朝が辛い為にそんな元気がわいてこない。

 あまりと言えばあまりな変わりようの俺に、松田が嘆息する。

 

「おいおいおい、これだけのお宝を目の前にして何だよ、そのしけた顔は」

「最近、ノリが悪いぞ。おかしい。実におかしい。今までのお前らしくもない」

 

 隣で元浜もメガネをクイッと持ち上げながらつまらなさそうに言う。まあ、こいつらの言いたい事も大いに分かる。

 

「俺だって、『すげぇ! 何だよ、これ! 俺を猿にするつもりか!?』って言いたいところなんだがな。いかんせん、ここんとこ精力減退しててな」

「病気か? いや、まさかな。エロの権化であるお前が風邪になるわけがない」

 

 元浜が失礼な物言いをしてくる。エロさと風邪に対する耐性になんの因果関係があるんだよ。そもそもお前に言われたくないっての。

 

「あー、アレか? 俺には彼女がいたーっていう例の幻想の影響か? 夕麻ちゃんだっけ」

「……夕麻ちゃんのこと、マジで覚えていないのか?」

 

俺の言葉に、二人は可哀想な者を見る目でかえしてくるだけだ。

 

「だからさ、俺らそんな子知らないって。マジ、病院とか言った方がいいんじゃないか? なあ、元浜」

「ああ、何度も言うが俺達は夕麻ちゃんという女の子を紹介なんてされてない」

 

 ……そう、俺がいくら夕麻ちゃんの話を振ってもこいつらはこれだ。

 最初は俺をからかっているものだと思ったが、一度真剣に話した結果、そうではないと確信する。

 

 俺は確かにこいつらに夕麻ちゃんを紹介した。その時の二人の驚きっぷりも、失礼極まりない物言いも、「お前らも早く彼女作れよ」と余裕の言葉を突きつけた事も強く記憶している。

 

 なのに、二人ともその事を覚えていない。いや、夕麻ちゃんが居た事さえ覚えていないんだ。こいつらの言う通り、天野夕麻という少女自体が、最初から存在しなかったように。

 

 夕麻ちゃんと過ごした日々の事はしっかりと覚えている。しかし、二人の証言を裏付けるように、彼女の電話番号も、メールアドレスも俺の携帯のメモリには入ってなかった。

 覚えている番号にかけても、その番号は現在使われていない、という無機質な回答しか得られなかった。

 

 俺の記憶以外に彼女の痕跡は何一つ見つからない。

 

 思えば俺は、彼女の住所も知らない。彼女は他校の生徒だった。夕麻ちゃんが着ていた制服から学校を見つけて、在校生に訪ねてみたが、結果は……

 

 そんな生徒はいない。いなかったんだ。

 

 以前、ドライグと神さんから聞いた事がある。この世には悪魔と天使、更に堕天使が居て、三つ巴の争いをしている、と。そして、夕麻ちゃんのあの黒い翼。アレは間違いなく堕天使のそれだった。

 

 堕天使の陣営が俺のなかの神器を危険視して、俺を殺す為に彼女として近づき、目的を果たした後に全ての痕跡を消した、と考えれば辻褄は合う。

 

 しかし、それでは俺が今ここで生きている事がおかしくなってしまう。それとも、夕麻ちゃんの事そのものが俺の幻想だった? 

 

 深夜に湧いてくる得体の知れない力といい、なにかがおかしい。

 考えれば考えるほど、神さんに縋りたくなる。せめて、ドライグが目覚めてくれればこの間の事が現実かどうかはっきりするのに。

 

 思い悩む俺の肩へ松田が手を置く。

 

「まあ、思春期の俺らにはそういう訳の分からない事が起きるかもしれない。よし、今日は放課後に俺の家へ寄れ。秘蔵のコレクションを皆で見ようじゃないか」

「それは素晴らしい。松田君、是非イッセーを連れていくべきだよ」

「勿論だよ、元浜君。俺ら欲望で動く男子高校生だぜ? エロい事をしないと産んでくれた両親に失礼というものだ」

 

 グフグフといやらしい笑い声をあげる二人。

 変態だ。どこからみても変態すぎる。そして、その中に俺も入っている。

 まあ、いいさ。俺も変態で生きる男子さ。

 

「わーったよ。今日は無礼講だ! 炭酸飲料とポテチで祝杯をあげながら、エロDVDでも鑑賞しようじゃないか!」

 

 半ばヤケクソ気味な俺の賛同に、松田と元浜のテンションも盛り上がる。

 夕麻ちゃんの件はこの際保留だ。どの道これ以上調べようがないのなら、神さんが戻ってくるまで放っておくしかない。今までの経験上、最長でも三カ月ぐらいな筈だ。

 

 それまで、たまには息を抜く! 今日ぐらいは欝な気分を抜け出して、年頃の男子として生きてやる!

 

 そんな風に、三人の結束を新たにした時だった。

 

 俺の視界に鮮やかな紅が映る。

 教室の窓からみえる光景。一人の女子の通学風景が俺の瞳を釘付けにする。

 

 真紅の髪をした少女。人間離れした美貌を持った我が高校のアイドル。スラリとした体は、日本人のそれではなく、北欧の出身だと聞く。父親の仕事の都合で日本の高校に通っているそうだ。誰もが彼女の美しさに目を奪われ、一瞬で心をも捉われる。

 

 リアス・グレモリー。この学園の三年生にして、学園一の有名人だ。

 気づけば、俺以外の者たちも男女問わずして彼女に釘付けだが、これは毎朝の事だ。彼女の通学を、歩く姿を多くの生徒が見詰める。

 

 美しい。彼女を一言で表すならばそれだ。それ以外の言葉は要らないだろう。

 俺もその美貌と高貴な雰囲気に夢中だった。その姿を見かけるたびにそのときしていた行動を止めてまで彼女に見入っていた。

 

 だけど、このごろ、余りに美しすぎる彼女の美貌を少しだけ怖く感じるようになり、いつしか心の隅で畏怖していた。

 なぜ、そんな風に思うようになったかは分からない。だが、そう思うようになった時期は夕麻ちゃんが消えた日からだ。

 その時、彼女の視線が動く。透き通るような碧眼が、俺を捉えていた。

 

 ―――っ!!

 

 一瞬で心まで掴み取られる感覚に陥る。

 この感じ、今までに何度も経験したことがある。神さんに連れられて、とんでもない実力者と対面したり、戦う事になった時の感覚。かなりのレベルの強者に当てられた時のような……。

 

 彼女は青い双眸を細め、少しだけ口元を微笑ませた。

 俺に向けた物? 馬鹿な、俺と彼女の間に接点は無いじゃないか。

 

 そう思った時、不意に夢の出来事を思い出していた。

 夢の最後、紅色の髪をした誰かが俺に話しかける。

 それと彼女が重なって見えた時、すでに彼女は視界から消えていた。

 

 

 

 

「おっぱい揉みてぇなぁ!」

 

 これは魂の叫びだ。

 学校から帰宅して、無駄に高いテンションのままエロDVD鑑賞を始めたわけだが、興奮も時間と共に冷めていき、「なぜ俺達には彼女がいないんだろうか」と真剣に思いだし、泣けてきてしまった。

 

 松田は三作品目辺りから涙が止まらず、元浜もメガネの奥に涙をためて先日女子にカツアゲされた事を暴露し、俺も泣きそうになった。

 

 エロDVDで欝になる俺ら三人は何なんだろうか。

 そんなもん、聞くまでもない。モテない男子高校生三人組だ。

 

 ちくしょう、今頃同世代の男女がくんずほぐれつしていると思うとこの世界に怒りを抱いてしまう。俺の場合、少し洒落に成らないんだが。

 そんな事を思いながら最後の作品を見終わると、既に空は暗かった。時計を見るともう十時だ。

 

「さて、そろそろ帰るか」

 

 俺の一言で全員がその場で背伸びして、準備を整える。

 

「じゃあな」

 

 玄関で松田と別れ、元浜と歩き出す。元浜は夜空を見上げながら訳の分からない事を呟き、大きなため息をついた。テンション下がりすぎだろ。

 まあ、明日に成ればいつもの調子に戻っているだろう。元浜と帰り道の途中で分かれて、元気の無い様子に後で激励のメールでも送ってやろうか。

 

 元浜と別れて数分、帰り道を只管歩く俺だが、内側から溢れてくる力の疼きが酷かった。確か、初めて禁手化(バランス・ブレイク)した時もこんな感じだったっけ。

 家の中の話声が聞こえてくるし、街灯がない暗闇すらもはっきりと見える。有り得ない程に高まる力は、日に日に強くなっていく気がする。

 

 しかし、これは気のせいなんかじゃない。数え切れないほど場数を踏んで、慣れ親しんだものが、前方から感じられる。他者の視線と、俺に向けられる冷たいもの。

 体をゆっくりと動ける状態にしていく過程で、頭の中で数日ぶりの声が響いた。

 

『相棒』

「ドライグ……ちょうどよかったと言おうか、何と言おうか。聞きたい事はあるんだが、とりあえず今はそれどころじゃないらしい」

 

 眼前、道の先から俺に向けて得体の知れない空気が漂っている。

 男だ。スーツ姿に帽子をかぶった男が、俺を睨んでいる。親の敵とでも言いたげなほどの剣呑さだ。

 分かりやすい殺気を放ちながら、男は静かに俺に近寄ってくる。

 

「これは数奇なものだ。こんな都市部でもない地方の市街で貴様の様な存在にあうのだものな」

 

 予想通り、敵だ。しかもすでに殺る気でいる。下手をすると、こんな市街地で襲ってきかねない。

 ここでは戦えない。後ずさりをしつつ、距離をとる。

 

「逃げ腰か? 主は誰だ? こんな都市部から離れた場所を縄張りにしている輩だ、階級の低い者か、物好きのどちらかだろう。お前の主は誰なんだ?」

 

 わけわからないっつーの!

 

 バッ!

 

 俺は振り向きざま、一気に来た道を戻った。全速力だ。夜の闇を掻きわけて、俺は只管逃げた。途中で道を曲がったりしながら、見知らぬ街道を走る。

 もっと遠くへ。最低でも、住宅街では絶対に争えない。十五分ぐらい走った所で、開けた場所に出た。

 

 ――公園だ。

 

 足を一旦止め、歩みを変える。少しだけ息を整えながら、噴水の辺りまで歩を進めた。

 公園の街灯下で周囲を見回しながら、俺は不可思議なものに囚われていた。

 

 ――知っている。この公園を俺は知っている。ここは夢の――夕麻ちゃんとのデートで最後に訪れた公園だ。

 

「ドライグ、一つ聞きたい事がある」

『何だ』

「夕麻ちゃん。あの子……確かにいたよな」

『俺もお前とまったく一緒の幻覚でも見ていない限りはな』

「そうか。じゃあ、俺……」

『ああ、相棒は一回死んだ。その後、誰かがお前を蘇生させたんだ』

「蘇生? それって、もしかして神さんか?」

『いいや、違う。紅い髪の女だ。恐らく』

 

 ドライグが皆まで言おうとした時、俺の眼前を黒い羽根が舞った。

 

「逃がすと思うか? 下級な存在はこれだから困る」

 

 俺の前に現れたのは黒い翼を生やしたスーツの男。

 ……堕天使だ。

 

「お前の属している主の名を言え。こんな所でお前たちに邪魔をされると迷惑なんでな。こちらとしてもそれなりの……まさか、おまえ、先日の小僧か?」

 

 やっぱりだ。こいつは夕麻ちゃん…俺を殺した堕天使の仲間だ。あの時、砂塵と吹っ飛ばした三本の光の槍。あの内の一本がコイツだったんだろう。

 

「ふむ。主の気配も仲間の気配もなし。消えるそぶりも見せない。魔法陣も展開しない。状況分析からすると、お前は『はぐれ』か。すぐに逃げ出した口だな。ならば、殺しても問題あるまい」

 

 物騒な事を口走る男は、俺に向けて手を翳してくる。

 耳鳴りがする。男の手に光が集まっていき、光は槍のようなものに形成されていった。

 周囲に気を向けるが、誰もいない。間違いなく、この場には俺とこいつの二人だけだ。俺は左手を前に翳し、その腕に篭手を具現化させる。

 

「はははっ、たかが龍の手(トゥワイス・クリティカル)程度の神器で、何ができる! まだしもこの間の魔術の方が面白みがあるぞ!」

 

 相手を最初から格下と決めつけて、過信ばかりが大きくなっている。戦闘じゃ致命的な行為だ。とはいえ、現時点で俺があいつよりも格下というのは事実だろう。だから…一気に決める!

 

「行くぜぇぇぇ!!」

Maximum(マキシマム) Drive(ドライブ)!』

 

 篭手の宝玉から響く音声と共に、リミッターが取り払われた。

 全身からは圧倒的な赤いオーラ――覇気が吹き出し、体中の細胞が一斉に雄たけびを上げるように力が漲る。

 

「なっ……なんだと? こ、これはよもや、上級並みの力!? 馬鹿な。そんな、そんなことが!」

 

 突然の俺の豹変に焦ったんだろう。光の槍を投げつけてくるが、俺がそれを片手で軽く払うと、あっさりと砕け散った。

 

「!!」

 

 ここへきて、こいつは初めて俺を獲物ではなく敵として見てる。でも、もう遅え。

 

「いくぞ…」

 

 覇気を漲らせ、近づく俺に恐怖する堕天使は、翼を広げて逃げようとするが、そんな真似を許す気は無い。

 覇気が奴を絡みつくように包み込むと、奴の動きが一瞬止まる。だが、俺にはその一瞬で十分すぎる。

 

「おらぁっ!」

 

 ドゴォォン!

 

 奴に急接近し、突きを一発見舞うと共に堕天使をふっ飛ばし、そのまま追撃する!

 

「ふっ! せぇいっ!」

 

 ドゴ! ガ! ガゴォ! ドガァ!!

 

 殴り、蹴り、殴り飛ばし、蹴り飛ばす!!

 

「おおおおっ!!」

 

 ガアアァン!!

 

 そして、拳と共に放った特大の気弾と大きく空へ吹っ飛ばす!!

 

「おりゃあっ!」

 

 それを追って翔びあがり、脚にオーラを集中させる!!

 

「うおおっ!!」

 

 ドバアアアァン!!!

 

 堕天使に向けて一撃を叩き込み、叫ぶ!!

 

「機神! 龍撃拳!!」

「ぐああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 その言葉と共に堕天使は断末魔の叫びをあげて、爆発と共に消し飛んだ。

 

 

 

『大丈夫か、相棒』

「ああ……。久しぶりで加減が少し効かなかったけど、家まで帰るだけなら何とかなる。それより、少し派手にやりすぎたかな……」

 

 俺の攻撃で、公園は結構地形が変わってしまっている。これ、放っておいたら絶対ニュースに成るよな。

 

「しょうがねえ、錬金術で直すか……」

 

 情けないなぁ……せっかく神さんから教えてもらった力を、こんな風にしか有効に使えないなんて。

 

『べつに構わないだろう。やつから教わったとはいえ、相棒が自分の努力で掴んだ力だ。どんな風に使っても、役に立つのならば構うまい』

 

 そんなもんかな。じゃ、ちゃっちゃとやっちまいます…か?

 

 ゴボッ。

 

 口から血が流れ出た。つられて下を見ると、腹を槍が貫通している。その色は、さっき倒した堕天使とは違う色だ。

 

 後ろを振り向けば、そこにはゴスロリドレスを身に纏った少女と、ボディコン風のスーツを来た女性が立っていた。その背中には、当たり前というべきか、黒い翼がある。

 

 くそっ、勝った直後で油断していたとはいえ、仲間が来た事に気づかないなんて……あの三本の槍から最低、後二人はいるとは思っていたけど、何もこんな時に出てこなくても良いだろ!

 

「やれやれ。帰りが遅いと思って来てみれば……こんな所で一人減ってしまうとはな。たかがはぐれ一匹と侮ったか」

「ていうか~こいつ普通に弱いじゃん。ドーナシークってば、この程度の雑魚になにやられてんだか……」

 

 やばい……見た所、こいつらの実力はさっきの堕天使――ドーナシークとかいう男と、そう大差ないが、いきなり一発もらったのがキツイ。もう一度マキシマムドライブしても、覇気はともかく体力が…。

 

「ぐっ、あぁぁ……」

 

 痛い。マジで痛い!

この感覚…体の中を焼かれてる? 

 

「痛いだろう? 光はお前らにとって猛毒だからな。その身に受ければ大きなダメージになる。かなり光の力を込めたのだが、意外に頑丈だな。ならば、次は二人がかりでやるとしよう。これで流石に死ぬだろう」

「あはははっ! ばいば~い?」

 

 トドメを刺す気か! 流石にこれ以上はもたない。こうなったら、相討ち覚悟でー……

 

 そう思ったが、ふいに夢の続きを思い出していた。

 

 紅。

 

 鮮やかな紅が俺を……。

 

 ―――助けてくれるわけもないか。あれは夢だ。でも…

 

 もし正夢なら、助けてくれ! こんな所で死んでたまるか!!

 

 ひゅっ

 

 風きり音が聞こえたかと思うと、俺の眼前で爆発が巻き起こる。

 堕天使の二人は、大きく後方に飛び退いていた。

 

「その子に触れないでちょうだい」

 

 俺の隣を女性が通り過ぎる。

 紅い髪。後姿からでも十分理解できた。

 夢で見たあの人。顔は夢では分からなかった。でもこの人だと理解できた。

 

「紅い髪……グレモリー家の者か」

「リアス・グレモリーよ。ごきげんよう、堕ちた天使さん達。この子にちょっかいを出すなら、容赦しないわ」

 

 リアス・グレモリー。間違いなくそう名乗った。俺の学校の先輩にして、アイドル。あの赤い髪の美人だ。

 

「へ~? そっちのそいつ、お宅の眷属なんだ。じゃあ、この町もアンタの縄張りってことね。ま、いいわ。今日の所は退いてあげる。でも、下僕は放し飼いにしない方がいいよ~? 私達みたいなのが散歩がてらに狩っちゃうかも知れないからさ」

「御忠告痛みいるわ。この町は私の管轄なの。私の邪魔をしたら、その時は容赦なくやらせてもらうわ」

「その台詞、そっくりそのままそちらへ返そう、グレモリー家の次期当主よ。我が名はカラワーナ。再びまみえる時を待とう」

「私はミッテルト。次会う時こそ、纏めてバラバラっすから、覚悟しといてよ?」

 

 二人の女が黒い翼をはためかせ、宙に浮く。一瞬だけ俺と先輩を睨むと、暗い夜空へと消えていった。

 何とかこの場は生き延びられたようだが、緊張を緩めた瞬間、出血による痛みと貧血が俺を襲う。ヤバイ、意識が持ちそうにないぞ……。

 

「あら、気絶してしまうの? 確かにこれは少しばかり危険な傷ね。仕方ないわ。あなた、自宅は――」

 

 先輩の問いに答える事も出来ず、俺の意識は暗闇に沈んでいった。

 

 

 

『オキナイト、コロシマス。オキナイト、バラバラヨ』

 

 目を覚ましてみれば、別段変り映えのしない朝、などと考えながらヤンデレボイスの目覚まし時計を止める。そして上体を起こそうとした所で、俺は自分が服を来ていない事に気が付いた。

 

 服どころか、下着まで身につけていない! 見事に素っ裸だ!

 

 ……待てよ、そう言えば俺はどうやって家に帰ってきた? 公園で意識を失って、そこから先の記憶がない。なにより、全裸な意味がまるでわからない。

 

「……うぅん」

 

 っ!

 

 何やら艶っぽい声が聞こえた。恐る恐る俺は視線を隣に移す。

 

「……すーすー」

 

 寝息を立てる紅髪の女の子が俺の隣で寝ている

 しかも、雪の様に白い肌を晒す、目にも眩しい裸だ。

 お肌がスベスベしてそうで目に悪いです。

 

 ………。

 どう見ても先輩だ。我が学園のアイドル。枕元に散らばる紅い髪が綺麗です。

 

 ………。

 ん? んん?

 落ち着け、俺。こういう時こそ冷静に、冷静に……。

 

 ………。

 

 

 

 ……………。

 

 

 

 …………………。

 

 

 

 なれるわけねぇだろぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

 なんで俺がリアス先輩とベッドインしてんだ!?

 

 何が起きた? 何かしたのか!? 一切覚えてないぞ! 

 

 俺は先輩とヤっちゃったんですか!? え? 初体験ってこんな感じで卒業なの!?

 

 混乱する俺に、更なる追い打ちがかかる。

 

「イッセー! 起きてきなさい! もう学校でしょ!」

「母さん、イッセーは部屋にいるのか?」

 

 父母の会話が一階から聞こえてくる。ついで、怒りに満ちた宣言と共に階段を上ってくる母さんの足音に、俺は全身の血の気が引くのを感じた。

 

「待ってくれ! 俺なら起きてる! 今起きるから!」

「もう! 今度という今度は許さないわ! 少し話しましょう!」

 

 駄目だ! 完璧キレてるよ、お母様! 

 こんな状況、親には絶対見せらんない! 錬金術で、ドアを加工……いや、鍵を閉めれば! 

 

「うーん……朝?」

 

 ッッ!!

 

 間が悪すぎる! こんな時に先輩が起きちゃったよ! 

 あまりの驚きに、俺はやろうとしていたドアへの細工を忘れていた。結果、勢いよく開かれる部屋のドア。同時に先輩が上半身を起こす。

 

 俺と母さんの視線が合う。母さんはやはり怒り心頭の御様子だったが…

 

「おはようございます」

 

 ニッコリと笑顔の先輩が俺の母さんに挨拶する。

 母さんの視線が俺から先輩に移ると、母さんの表情が凍った。そして、目だけ一度俺へ向けられる。

 

 俺は、その視線をずらしてしまった。

 

 「……ハヤク、シタク、シナサイネ」

 

 目覚まし時計並みの機械的な声と共に、母さんはゆっくりと扉を閉める

 一拍置いて、どたどたと激しく階段を下りる音が響いた。

 

「お、お、お、お、おおおおお! お父さんっ!」

「どうした母さん? 血相変えて。イッセーがまた朝から一人でエッチな事をしていたのか?」

「セセセセセセセセ、セッ○スゥゥゥゥ! イッセーがぁぁ、が、外国のぉぉ!!」

 

 母さんの声が二階まで聞こえてくる。

 おおよそあの状況で見られて拙いもの全部見られた! しかも最悪の形で! どう言い訳すればいいんだよ!?

 

「随分と朝から元気なお家ね」

 

 誰のせいですか。

 ともかく、色々と尋ねようと先輩の方へ目を向けるが、先輩はベッドを抜け出すと、俺の机の上にあった自分の制服に手を掛ける。

 

 生まれて初めて、母親とあいつ以外で見る生まれたままの女性の姿。細い腰、スラリとした足。太腿、形のいい尻。

 

 そして、なかなかにゆかたな……いや、豊かなおっぱいが。

 

 凄い。色々な意味で凄い。無駄のない、完璧な美しさ。

 

 俺が今まで(エロ本やエロビデオの中で)見てきたどんな女性の裸よりも、先輩の体は美しかった。

 

 しかし、幾らなんでもこれ以上の直視は失礼だと思った。いや、正確には俺の理性が軋みだしたので、緊急避難的に俺は声をだした。

 

「せ、先輩!」

「何?」

「おっぱい……とか、見えてます!」

 

 顔をそむけながら言う。直視したいが、ここは耐えるべきだ。

 

「見たいならみてもいいわ」

 

 堂々と着替えながら、微笑みを浮かべて先輩は言う。

 

 ……!?

 

 い、いまの衝撃、危うく屈してしまう所だった。なんて甘美な事を言うんだこの人!

 

「お腹、平気?」

 

 そう訊いてくる先輩に、俺は腹をさすりながら答える。当然顔はそむけたまま。

 

「はい。二度も助けてもらって、ありがとうございます」

「へぇ。この間の事、覚えていたのね」

 

 正確に言うなら、覚えていた奴に教えてもらった、ですけどね。間違いない。ドライグが言っていた紅い髪の女は、十中八九リアス先輩だ。

 

「昨日も、結構危なかったのよ。致命傷だったけど、貴方の体は頑丈だったから、私の力でも一晩かけて治療できたの。裸で抱き合って、弱っていた貴方に魔力を分け与えたわけだけど。私とあなたが同じ眷属だからできる事よ」

 

 ……裸で抱き合った。やっぱりそういう事ですか。

 

「大丈夫よ、わたしはまだ処女だから」

 

 そんな宣言されても、俺はどうしたらいいんですか。

 

「そんな不思議そうな顔をしないの。貴方が思っているよりも、この世界は不思議が多いのよ?」

 

 下着姿の先輩が、俺に急接近する。思わず顔を赤らめると、先輩は心底面白そうに笑った。

 

「私はリアス・グレモリー。悪魔よ」

 

 ……悪魔。まあ、考えていた範囲内ではある。

 

「そして、貴方のご主人様。よろしくね。兵藤一誠くん。イッセーって呼んでもいいかしら?」

 

 とりあえず、一言だけ言わせて下さい。

 

 

 ……おっぱい、最高ぉぉぉ!!!

 




 よろしくお願いします。
 
 
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