ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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Life.21 決戦、始まります!

 修行も終わり、決戦当日。

 俺は自宅の自分の部屋で、ベッドに腰掛けていた。

 

 時計を手に取ると、時間は午後十時半近く。決戦まで、後一時間半。

 

『相手がフェニックスだろうと関係ないわ。グレモリー眷属の力を、思い知らせてあげましょう』

 

 山を降りる直前、部長はああいっていた。俺も、全力を尽くす。

 

 部屋にはでかいビニール袋が何個か転がっている。中身は全て、大量のバナナの皮だ。実のほうははとっくに俺の血肉となっている。新必殺技は完成した。既に何でもこいな感じだ!

 

 戦闘服でも着ていこうかと思ったら、部長曰く、駒王学園の学生服が眷属のユニフォームだというので、学生服を着ている。神さんの戦闘服、一体いつから袖通してないっけ。

 

 コンコン。

 

 部屋に響く、ノックの音。続いて、控えめな声が聞こえてきた。

 

「イッセーさん。入ってもいいですか?」

「どうぞ」

 

 部屋に入ってきたアーシアは、シスターの格好だった。ロザリオもヴェールもないが、それ以外は俺とであった、あのときのままの格好だった。

 

「アーシア。その格好……」

「部長さんに訊いたら、『自分が一番いいと思える格好で来なさい』といわれましたので……」

「そっか。やっぱりアーシアは、その格好が一番しっくり来るよ」

 

 学校の制服よりも、よっぽど似合ってる。アーシアがその格好をするに至った苦悩と覚悟を思えば、当然だ。

 

「ありがとうございます。あ、あの……傍に行っても、いいですか?」

「ああ、いいけど……」

 

 アーシアは、俺の隣に座ると、腕を組んでしがみついてきた。掴んでいる腕から振動が伝わってきて、アーシアが震えていることがわかった。

 

「……これから怖い戦いがはじめるんですよね。そう思うと、震えが止まらないんです」

「アーシア……」

 

 戦いを前にして、不安がっているんだろう。無理もない。

 ましてや、アーシアにとっては初めての戦いだ。ただでさえ怖いだろうに、やさしいアーシアには負担だろう。

 

「でも、こうしてイッセーさんがそばにいると、怖くなくなります。……家を出るまで、こうしていてですか?」

「うん」

「……これからもずっと、イッセーさんの傍にいていいですか?」

「ああ、ずっと一緒だ」

「……よかったです」

 

 顔を赤らめるアーシアの震えは、既に止まっていた。

 この子も、何が何でも守りぬく。決意を改めて、俺は拳を握り締める。

 

『時間だ、準備はいいか! お、起きろといっ……』

 

 トン。

 

 設定していた時間で、アラームがなる時計を止める。

 今日は軍人子っと。ああ、修行のときにどういうからくりなのか聞いておけばよかったかも。

 

「行こう、アーシア」

 

 

 

 

 

 部室には、俺たちが最後の到着だった。

 

 木場は手甲と脛あて、小猫ちゃんはオープンフィンガーのグローブをつけて、戦闘準備完了といった感じだ。部長と朱乃さんはソファーに腰掛けて優雅に茶をたしなんでるし、流石の貫禄って感じか。俺とアーシアは、ソファーに隣り合って座っている。

 

 やがて魔法陣が輝き、グレイフィアさんが姿を現した。

 

「皆さん。準備はお済みでしょうか」

「ええ、いつでもいいわ」

 

 グレイフィアさんの確認に、部長が自信満々に返答し、全員が立ち上がった。

 

「開始時間になりましたら、ここの魔法陣から戦闘フィールドへ転送されます。場所は異空間に作られた戦闘用の使い捨てなので、どんな派手なことでもご存分にどうぞ」

 

 戦闘用のフィールドか。神さんが作ってた修行用のあれと同じだよな。それにしても、どんな派手なこと、か。それなら、暗黒魔闘術も平気だよな。ていうか、そういえば。

 

「部長」

「なにかしら」

「部長のもう一人の『僧侶(ビショップ)』って、どうしたんですか?」

 

 前はどこか別なところで動いているって言われたけど、こんな一大事に現れないなんてのは、流石に道理が合わない。

 が、俺がその話題を口にした途端、アーシア以外の皆が一様に口を閉ざしてしまった。なんていうか……もろ腫れ物に触った感じだ。

 

「残念だけど、もう一名の『僧侶』は、参加できないの。そのことについては、話すべきときがきたら話すわ」

 

 思った以上に、わけ有りらしい。この話題はここまでにしておこう。

 

 重たい空気を変えるように、グレイフィアさんが口を開く。

 

「今回の『レーティングゲーム』は、両家の皆様も他の場所から中継でご覧になられます。それと、魔王ルシファー様も今回の一戦を拝見されますので、お忘れなきように」

「……そう、お兄様が」

 

 部長のお兄さんか。魔王様にも見られてるとなれば、こりゃ無様は晒せないな。

 部長と家名が違うのは、前大戦で死んだ四つの魔王家、ルシファー、ベルゼブブ、レヴィアタン、アスモデウスの名を継いだからだそうだ。現在の四大魔王は、先代魔王の名前を受け継いだ、最上級悪魔だという。

 

「正直、神と天使、堕天使、悪魔の三大勢力で、最も力が劣っているのは悪魔なの。その危うい状況を、お兄様が先代魔王に劣らぬ働きでどうにか保っているの」

 

 部長の言葉に、改めて純血にこだわる名家も多い悪魔が、人間からの転生悪魔を増やす事情がよく分かった。

 

「サーゼクス・ルシファー。『紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)』。それが私の兄であり、最強の魔王」

 

 ルシファー、か。それで部長が家を継がないといけないわけだ。

 

 ……その存在感は、部長が背負う『グレモリー』の名前の重さにも、確実に影響を与えているだろう。やっぱり、部長は凄い。

 

「ああ、それとイッセーさま」

「へ?」

 

 突然グレイフィアさんに名指しで呼ばれて、ほうけた顔を向けると、グレイフィアさんは珍しく面白そうな顔で俺に言ってきた。

 

「今回の戦いは、貴方の師匠、(さかき)(じん)さまも見ていらっしゃるとご承知おきください」

「じ、神さんが!?」

 

 何で名家同士の内密なはずの争いに首突っ込めてんのとか、野暮なことは言わない。そんなもん、俺の修行をつけてくれた時点でわかりきっている。問題は、何の目的で俺の戦いを見ているのかだ。

 

 常識的に考えれば、修行の仕上がりの確認とかなんだろうけど、あの人に常識は通用しない。戦々恐々としている俺を、グレイフィアさんは容赦なく言葉のナイフで滅多刺しにする。

 

「それと伝言があります。『半端な戦いしたら地獄の特訓フルコース行きだから、精々面白く、気張って戦え』……とのことです」

 

 おいおいおいおい! これから大事な戦いに赴く弟子に対する台詞ですかそれ!! 普通に激励の言葉とかでいいじゃん!

 

「では、そろそろ時間ですので、皆さま、魔方陣のほうへ」

 

 おおお……。早々に移動する皆を追いかけて、頭を抱えながら魔方陣へ入る俺。畜生……常識はずれも時と場合を選んでくださいよ。

 

 そんな思いに駆られる俺を余所に、魔方陣は強く発光し、見たこともない文様に変わった。そして、いざ決戦の舞台へ……。

 

 

 

 

 

 ……着いたのか? そう思って周りを見渡すけど、どう見てもさっきまでいたオカルト研究部の部室にしか見えなかった。

 

『皆様、このたび、グレモリー家、フェニックス家の「レーティングゲーム」の審判役を仰せつかった、グレモリー家の使用人。グレイフィアでございます』

 

 校内放送で、グレイフィアさんの声が聞こえる。

 

『わが主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、今回のご両家の戦いを見守らせていただきます。今回のバトルフィールドは、リアス様とライザー様のご意見を参考にし、リアス様が通う人間界の学び舎「駒王学園」のレプリカを異空間にご用意いたしました』

 

 窓を開けてみると、さっきまで真っ暗だった外が随分明るくなっている。空を見上げてみると、オーロラがかかっているような、幻想的な光景が広がっていた。

 

 なるほど、次元の狭間に作られたレプリカってわけだ。原理はともかく、神さんの『空間模型(モデル・ルーム)』と同じ感じってわけだ。

 

『両陣営、転移された先が本陣でございます。リアス様の本陣が旧校舎、オカルト研究部部室。ライザー様が新校舎、学長室。よって「兵士(ポーン)」のプロモーションは、互いの校舎に侵入を果たすことで、可能となります』

 

 兵士の俺の最大の役目は、新校舎に何が何でももぐりこむこと。そして、プロモーションを果たす! 

 とはいえ、それは相手も同じこと。おまけに向こうは八人。チェスは普通、兵士同士で最初に潰しあうのが定石だけど、流石に八対一はきついよな。

 

 なんて悩んでいる俺に、小猫ちゃんがピンクの飴玉みたいなものを差し出してきた。手にとって確かめてみると、これは……魔力の塊?

 

「戦場では、これでやり取りするのよ」

 

 通信機みたいなものか……。

 

 皆に習って、それを耳に突っ込むと、溶け込むみたいに消えた。これでいいのか?

 

『ゲームの制限時間は、人間界の夜明けまで。それでは、ゲームスタートです』

 

 コーン、コーン。

 

 鐘の音のような音と共に、戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 部長がデスクに、チェスのボードのように縦横に数字と英語が書かれた学校の地図を広げると、全員が集まって地図を眺める。

 

「敵本陣は新校舎。校庭を突っ切るのが、一番早いのだけれど」

「新校舎から丸見え」

 

 小猫ちゃんの指摘通り、そのまま校庭を突っ切るのは危険だ。

 プロモーションもせずにそんなことをすれば、どんな目にあうかは想像に難くない。

 

「じゃあ、新校舎に入るには、裏の競技用の運動場からですか?」

「そうね。でも、敵もそれは想定済みでしょうね。恐らく、運動場に近い部室棟辺りに、機動力のある『騎士』と『戦車』、それに『兵士』を数名配置するかしら」

「定石、鉄板ですね」

 

 朱乃さんが呟き、直後に木場が進言する。

 

「部長。新旧校舎と隣接する体育館を、先に占拠しませんか? こちらの陣地である旧校舎寄りですし、なにより相手への牽制になります」

「チェスで言うセンター。先にとったほうが有利ですわね」

 

 木場の意見を補足するように朱乃さんが言い、部長が頷く。

 

「決まりね。屋内だから、機動力の『騎士』よりも、破壊力のある『戦車』のほうが、特性を活かせるわ」

「……戦うって、難しいんですね」

「まあな。けど、俺たちは部長を信じて戦うだけさ」

「……そうですよね」

 

 回復役で、後方支援が主のアーシアはまだしも、俺はとりあえず、迷惑だけは掛けないようにしないと。

 

「まずは防衛ラインの確保よ。裕斗、小猫。森にトラップを仕掛けてきて頂戴。予備の地図も持っていって、それに印をつけるように。後でコピーして、全員に配るわ」

「「はい」」

 

 二人はそういって、予備の地図を持って出て行った。

 

「朱乃は、トラップの設置が完了したら、森の周辺と上空に霧と幻術をかけておいて」

「はい」

 

 返事をすると、朱乃さんも出て行った。

 

 残るは俺と、アーシアのみ。

 

「部長、俺たちは?」

「回復サポート要員のアーシアは、私とここで待機。貴方が倒れたら、元も子もないもの」

「は、はい!」

 

 部長はデスクからソファーに移動しながら、諭すように言う。

 それはそのとおりだ。アーシアはそれでいいだろう。で、俺は? 兵士の役目って言ったら、斥候でしょうか?

 

「イッセーは……」

「はい!!」

 

 それとも、トラップ設置でも手伝ってきますか? 絶対に気づかれない落とし穴で、穴の底に練成したニトロをたっぷり入れた、敵を跡形残さず消し飛ばす必殺の罠を……

 

「ここに横になりなさい」

 

 …………はい?

 

 部長はソファーに腰かけ、自分の太ももをとんとんとたたきながらそうおっしゃられた。

 白いおみ足が眩しいです。

 

 そ、それはもしや、伝説の膝枕では!?

 

「早くなさい」

 

 軽くパニックに陥る俺にいらだったようで、不機嫌な声を上げる部長。

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 部長の隣にすわって、横向きに寝そべりながら、太ももに頭を下ろす。

 

 ―――柔らかな感触。まるで、包み込まれるような……

 

「うっうっ」

 

 思わず涙が出てしまった。大切なゲームの最中になにやってんだろ俺。こんな幸せでいいのか。

 

「もう、何を泣いているの」

「うぅ、部長に膝枕してもらえるなんて、感動で涙が止まりません。生まれてきてよかった……生きててよかった!!」

「本当に大袈裟な子ね。膝枕ぐらい、またしてあげるわ」

 

 まじですか!? うおおお、すまん、松田、元浜。俺、幸せすぎだわ。お前らもがんばれ!

 

「むぅ~~」

 

 ……あれ? なんかアーシアが涙目で見てきてる。しかもほっぺを膨らませてふぐになってるじゃないか、かわいい! え? まさか怒ってるの? なんで? アーシアも部長に膝枕してほしいの?

 

「……イッセー。貴方にかけた封印を、少しだけ解くわ」

「え?」

 

 そういって、部長が俺の頭に手を置いた。

 

 ドグン!

 

 身体の奥から、力が湧き上がってくるのを感じる。その力は全身に広がり、溶け込んでいった。

 

「覚えてる? 貴方を転生させるときに、『兵士(ポーン)』の駒を八つ使ったことを」

「は、はい」

「そのとき、イッセーではその力にまだ耐え切れそうになかったから、『兵士』の力に何段階かに分けて封印をかけておいたの。それを今、少しだけ解放したわ。貴方が今感じてるであろうその力は、本来貴方が持っていたものよ」

 

 な、なるほど。それでブーステッド・ギアと兵士の力に耐えられる身体が必要だったってことですか。

 道理で俺だけやたら基礎練習がきつかったわけだ。 

 

「ああ……部長さんが、そんな深いお考えをお持ちだったなんて……主よ、ついやきもちをやいてしまったわたしを、どうかお許し……あぅ!」

 

 って、アーシアがまたお祈りでダメージ受けてるし。だから駄目だって。

 

「いいこと、イッセー。相手が女の子でも倒すの。手加減しちゃ駄目。相手は手加減なんてしてくれないんだから」

「……わかりました。俺、必ず部長を勝たせて見せます!」

 

 部長は、とてもうれしそうに笑った。

 

「ええ、期待してるわ。私のイッセー」

 

 絶対、あんな焼き鳥なんかに部長は渡しません!

 死んでも勝ってみせます!

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