ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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 今回は少しやりすぎたかもと思うくらいイッセー無双です。


Life.23 絶賛、決戦中です!

 経験でも数でも勝るライザーに、正攻法では勝てないと踏んで、重要拠点をあえて捨てて敵の戦力を削ぐ。

 流石は部長だ。相手が舐めてかかった部分もあるだろうけど、それでも十分な戦果を挙げられた。

 

 残りはライザーを含めて12人。こっちが敵を倒した分、今度は油断なく襲ってくるだろうけどな。

 

『朱乃がニ撃目を放てるようになるまで、時間を要するわ。朱乃の魔力が回復しだい、私たちも前に出るから、それまで各自、次の作戦に向けて動いて頂戴』

「はい!」

 

 部長とアーシアが出るまでに、俺たちがやるべきこと。それは木場と合流して、陸上競技場にいる敵を片付けること!

 

「それじゃあいこうか。小猫ちゃん」

「……触れないでください」

 

 肩に触れようとしたら、スッとかわされてしまい、蔑んだ声を浴びせられ、ジト目でにらまれる。

 ……警戒されている。もちろん、原因は分かっているさ。

 

「だ、大丈夫だよ。幾ら俺でも、味方に使うわけないだろう」

「それでも最低な技です」

 

 吐き捨てて、ズンズンと先へ行く小猫ちゃん。本格的に嫌われてしまった。

 やっぱり女の子にとって洋服破壊(ドレス・ブレイク)は大敵か。にしてもあそこまでとは……いや、元からあった嫌悪感がアレで堰を切ったと見るのが自然か。自業自得以外の何者でもない。

 

 ――でもいいさ! 女の子に嫌われるのも、変態扱いも慣れてるから! 実際変態だし!

 

 それはおいといて、小猫ちゃんを追いかけよ……!?

 

 ドォンッッ!!

 

 爆風と閃光が、眼前に広がる。土煙が薄くなっていき、えぐられた地面には、ぼろぼろの小猫ちゃんが横たわっていた。

 

「小猫ちゃん!!」

 

 急いで近づき、抱き起こすが、見る目に軽い傷でないのは明らか。俺の応急処置じゃ何の意味もない。魔力による治療が、俺にもできれば……

 

撃破(テイク)

 

 聞き覚えのある声のしたほうへ顔を上げると、ドレスのようなローブを着た女が翼を広げて宙に浮かんでいる。

 

「テメェ、ライザーの女王(クイーン)か!!」

 

 初戦の次で、いきなり最強の駒かよ! 

 

「ふふふ。獲物を狩るときは、何かをやり遂げた瞬間が一番やりやすい。こちらは多少の駒を『犠牲(サクリファイス)』にしても貴方たちの一人でも倒せれば、人数の少ない貴方たちには十分大打撃ですもの。幾らあがこうと、貴方たちにライザー様は倒せないわ」

 

 愉快そうに笑う女に殺意をたぎらせる俺の袖を、普段の剛力からは想像もできない弱々しい力で小猫ちゃんが引っ張った。

 

「小猫ちゃん!?」

「……イッセー先輩、すみません。……全然、皆の役に、部長のお役に、立てなくって……」

「そんなことはどうでもいい! 今はしゃべるな!」

「……すみま……っせん……」

 

 小猫ちゃんの全身が淡い光に包まれると、俺の腕の中から姿を消した。

 

『リアス様の「戦車(ルーク)」一名、リタイヤ』

 

 グレイフィアさんのアナウンスが、小猫ちゃんの敗退を告げる。事前に説明されたとおり、再起不能になったので、医療施設の整ったところへ転送されたんだろう。

 

「ふふふ、それじゃあボウヤ。貴方も爆発しなさい」

 

 俺に向かって放たれる爆発の光弾。

 

 脚甲で地面を踏みしめ、心の力をこめて呪文を唱える!!

 

「ラシルド!!」

 

 雷を纏った壁のような盾が地面からせり出し、光弾を雷のおまけつきで相手に弾き返した。

 

「なっ、く!!」

 

 すぐに光弾を撃って相殺させるが、その爆炎にまぎれてまで一気に飛び上がり、相手の背後をとった。

 

「ザケル!」

 

 直撃を食らった女王は吹っ飛ぶが、すぐに体勢を立て直して杖を構え、俺も反撃に備えて構えを取ったところで、朱乃さんが間に割って入った。

 

「朱乃さん!!」

「うふふ。彼女のお相手は私がいたしますわ。ねぇ、ユーベルーナさん。それとも『爆弾王妃(ボム・クイーン)』さんのほうがいいかしら?」

「その名はセンスがなくて好きではないの。『雷の巫女』さん。貴女とは戦ってみたかったわ」

「イッセーくん。小猫ちゃんの敵は私が全身全霊を持って成し遂げますから、あなたはあなたのやるべきことをしなさい」

 

 こっちを振り向きながら、初めて真顔をみせる朱乃さんは、金色のオーラを身に纏い、凄い迫力を醸し出した。俺は無言で頷くと、地面に降りて走りだした。

 

 直後、背後から、激しい爆音と雷鳴が響いた。

 

 

 

 

 

『ライザーさまの「兵士(ポーン)三名、リタイヤ』

 

 アナウンスを聞いて、また敵が倒れたことを知る。

 

 恐らく木場だろう。

 

 これで向こうは九人。こっちは五人。数の上ではまだ向こうが上だ。

 

 運動場へ向けて走る俺の腕を誰かが掴もうとしてきたが、とっさに腕を引いて逆に襟首を掴んだところで、それが木場だとわかった。

 

「なんだ、お前か」

「う、うん。ちょっ、もう放してくれないかな……」

 

 もっと普通に声かけろよ。危うくおとすところだったぞ。

 開放した木場について、俺たちは用具倉庫へと入った。ここからグラウンドの状況を一旦伺う気だ。

 

「すまん、木場。小猫ちゃんが……」

「アナウンスは聞いていたから、僕も知ってる。あんまり表に出す子じゃなかったけど、今回は一生懸命張り切ってたよ。無念だったろうね」

「……勝とうぜ」

「もちろんだよ」

 

 俺が差し出した拳に、木場が自分の拳を当てる。普段は癪に障るイケメンだが、戦闘になれば頼りになる味方だ。

 

「で、相手の兵士三人をやったのはお前だよな」

「まあね。本陣に仕掛けてきたんだけど、朱乃さんの結界のおかげで、大分楽ができたよ」 

『裕斗、イッセー。聞こえる?』

 

 なんてやり取りをしていると、部長からお声がかかった。

 

『これから私は、アーシアを連れて敵の本陣に奇襲をかけるから、できる限り敵をひきつけて、時間を稼いで頂戴。本来なら朱乃の回復を待って各個撃破するつもりだったけど、敵が直接女王(クイーン)をぶつけてきては止むを得ないわ』

「しかし、部長! 王が本陣を出るのは、リスクが大きすぎます!」

『敵もそう思うでしょう。そこが狙い目よ。いくらフェニックスの肉体が不死身でも、精神まではそうはいかない。この私が直接、ライザーの心をへし折ってやるわ!!』

 

 木場の進言をも跳ね返す力強い宣言と共に、通信が途絶える。部長の決意に満ちた言葉に、俺は腹を決めた。木場も同じ様子だ。

 

「緊張しているのかい?」

「へ、そういうお前はどうなんだよ? 手が震えてるぜ」

「……そうだね。レーティングゲームに参加するのは、今回が初めてだ。悪魔同士の本気の戦い。いずれは僕たちもそれに飛び込んでいく。油断もすきも見せられない。歓喜と共に恐怖も感じている。僕はこの手の震えを忘れたくない。この緊張も、張り詰めた空気も、全てを糧に成長する。お互いに強くなろう。イッセー君」

 

 ……こいつって、本当に戦いの天才だな。何もかも、自分の成長の足がかりにしちまいやがる。

 

「んじゃ、グレモリー眷属男子のコンビネーション、見せますか。一部の女子が興奮するような勢いでな」

「ハハハ! じゃあ、僕が攻めかな?」

「周りのイメージとしては、お前が受けだろ。さあ、馬鹿話はここら辺にして、もういくぜ」

 

 これ以上やってたら、会話でバラの花が咲いちまうぜ。

 

 俺たちは倉庫を一気に飛び出て、グラウンドの真ん中に立つと、大声で叫んだ。これで狙い撃ちされたら、そのときはそのときだ。即反撃するまでよ。

 

「やいやいやい! 焼き鳥眷属ども! 隠れてんのはわかってんだ! 正々堂々姿を見せやがれ!!」

「ふふふ……」

「「!」」

 

 俺の声に応えるように、誰かの笑い声がグラウンドに流れる。声の方向へ首を向けると、土煙の向こうに、甲冑を着込んだ女がたっている。

 

「私はライザー様に仕える『騎士(ナイト)』カーラマイン! 堂々と正面から出てくるなど、正気の沙汰ではないな。だが私は、お前らのような馬鹿が大好きだ!」

 

 抜いた剣から、炎が吹き上がる! 派手なことしやがるぜ!

 

「僕はリアス様に仕える『騎士(ナイト)』木場裕斗! 騎士同士の戦い、待ち望んでいたよ。個人的には、尋常ではない斬り合いを演じたいものだね」

「よくぞ言った。リアス・グレモリーの騎士よ!!」

 

 直後、二人は一直線に突っ込むと、真正面から切り結び、すぐに離れ、火花散る凄まじい剣戟を繰り広げる。……援護でもしちまうと、そのまま木場が俺に切りかかりそうな勢いだな。邪魔すんのは無粋だし、趣味じゃない。というわけで、俺は俺でやるか。

 

「ヒマそうだな」

「ああ。で、俺の相手はあんたがしてくれんのか?」

 

 振り返ると、顔の半分を仮面で隠した、って、あの時部室で戦ったもう一人じゃないか。

 

「まったく、カーラマインったら、頭の中まで剣剣剣で埋め尽くされてるんですから。駒を犠牲にするにも渋い顔してましたし。泥臭くてたまりませんわ。しかもせっかく可愛い子を見つけたと思ったら、そちらも剣馬鹿だなんて。まったく、ついてませんわ」

 

 もう一人、お嬢様風の服に身を包んだ金髪ツインテールの女の子が、ぶつくさ文句を言いながら現れた。たしか、『僧侶(ビショップ)』だったよな?

 

 ……ていうか、こいつの文句に耳を貸してたら、ドンドン敵が増えたぞ! ひぃふぅみぃ……六人! 向こうの騎士を入れて七人。で、コレにライザーとユーベルーナっていった女王で九人。つまり……俺の相手は残り全部かよ!? ついてないのはこっちだ!!

 

「それにしても、この方がリアス様が可愛がっている兵士? あの方、殿方の趣味が悪いのかしら?」

 

 いきなり失礼なこというな、こんちくしょう!

 

「可愛い顔して毒舌キャラか!」

『Boost』

『Ride』

 

 強化を両方同時にスタートさせる。騎士は完全に木場に任せて、俺はこっちの全員に専念するしかねえ。

 いざとなったら、マキシマムドライブも使う!

 

「あら、ごめんあそばせ? 私は戦いませんの。イザベラ?」

 

 ……は? なにかほざいたよ、この子。

 

「私はイザベラ。ライザー様にお仕えする『戦車(ルーク)』だ。いくぞ、グレモリーの兵士よ」

「いやいや、ちょっとまった。タイム。ストップ。フリーズ。なんで、あいつは普通に戦わないノリなんだよ? なにかの作戦か?」

「ああ、あの子はいいんだ。気にするな。僧侶として参戦はしていても、ほとんど観戦しているだけだ」

「いやいやいやいや! なんだよそれ! これ、おたくらにとっても大事なゲームだろ! なんでそんなことになってんの!?」

「あの子――いや、あの方はレイヴェル・フェニックス。眷属とはされているが、ライザー様の実の妹君だ」

 

 ……は? 妹? え? ええええええええ!!

 

 な、なんか俺が驚いてると、件の少女はにこやかに手を振ってくるんですけど!

 

 そ、そういえば、顔はともかく、雰囲気はどことな~く似てる気もしなくもないか?

 にしたって、何で妹を下僕に!?

 

「言いたい事はよくわかる。ライザーさま曰く……」

 

 

 

『ほら、妹萌えっていうの? あこがれたり、うらやましがるヤツ多いじゃん? まあ、俺は妹萌えじゃないけどさ。まあ形として眷属悪魔ってことで!』

 

 

 

「……だそうだ」

「あの鳥野郎、本物の馬鹿で変態だな!!」

 

 神さん、大笑い間違いなしだ! 妹をハーレムに入れたいってのは理解できるけどさ! 俺も所詮変態だし!!

 

「では、いくぞ! リアス・グレモリーの兵士よ!」

 

 イザベラが、タックル同然の勢いで飛び込んで、顔面狙いの拳を見舞う。

 

 さっきの雪蘭に比べれば荒いけど、スピードはこっちが上かもしれない! さすがは喧嘩屋ってか!?

 

「思ったよりやるな。正直見くびっていた。こちらもギアを上げよう!」

 

 そう宣言すると、実際に動きが早くなった! ボクシングのフリッカーみたいな攻撃まで仕掛けてくる。今は見切ってられるけど、強化が一定以上まであがらないと俺からは攻撃できない。呪文を撃とうにも、隙をつかれて他の連中の横槍を受けたら不味い。

 

 ドッ!

 

 腕ばかりで攻撃してくると思ったら、予想通り蹴りが来た。後ろに跳んで威力を殺すと共に少し距離をとる。

 

『Boost』

『Ride』

 

 これで五回目。宝珠が点滅してるってことは、こいつぐらいならもういけるってことか。じゃあ、他の連中込みだと?

 ……宝珠の点滅が消えた。全員を一気に片付けるには厳しいってことか。

 

 どの程度まで強化すれば相手を倒せるかは、宝珠が点滅して教えてくれる。

 とはいえ、あまり強化を重ねすぎると今度は負担がでかいからな……。脚甲との同時使用でだとどうなるかがわからないか。

 

「あの日の軽い手合わせでも、キミの格闘技術は伺えたが、これほどとはな。私の攻撃が一発としてまともに当たらない」

「あたってやれるかよ。俺はこの後、本番が待ってんだ。前座に使ってやれる体力なんて、たかがしれてんだよ」

「……挑発には乗らないよ。私とキミの技術差では、怒ったところで無駄に体力を使うだけだ。だからこそ冷静に、確実に当てにいく」

「……戦車イザベラ。あんたは思ったよりも手ごわい、そして戦いがいのある相手らしい。侮辱を詫びる。同時に誓おう。我が修羅の拳にて、お前を砕く!!」

 

 俺が宣言したときだった。

 

 ブゥン!

 

 風を切る音に視線を移すと、木場の剣の刀身が相手の攻撃に砕かれていた。

 

光喰剣(ホーリー・イレイザー)が!」

「残念だが、貴様の剣は私には通用しない!」

 

 炎の剣を振りかざす相手に、一旦距離をとった木場は、刀身を失ったままの柄を構え、不適に笑った。

 

「なら、これはどうかな? ――凍えよ!」

 

 木場がそう言うと、氷が積み重なるように凍結していき、それが砕けると、氷の刀身が現れた。

 

炎凍剣(フレイム・デリート)。この剣の前では、いかなる炎も消え去る」

「バ、バカな! グレモリー眷属は、二人もが神器を二つ有するというのか!?」

 

 炎の剣を横なぎにに振るうカーラマインだが、炎の剣は木場の氷の剣と打ち合った瞬間、凍りつき、粉々に砕け散った。

 が、彼女は剣を早々に捨てると、腰の短剣を抜いて、天へと振りかざして木場へ斬りかかる。

 

「我ら誇り高きフェニックス眷族は、炎と風と命を司る! 受けよ、炎の旋風を! 貴様の負けだ!!」

 

 短剣が触れた瞬間、氷の剣が溶けて砕けた! おまけにこっちのほうにまで熱風が来る! あいつ、熱波で俺たちを蒸し焼きにするつもりか!? 味方もいること忘れてんのか!

 

「――止まれ」

 

 木場が再び呟くと、今度は先の刃が円状になっている剣を作り出す。円の中心にブラックホールのような渦があり、それが熱風を吸い込んでいく。

 

風凪剣(リブレッション・カーム)。一度の戦闘で二本も魔剣を使ったのは久しぶりだよ」

「貴様! 一体、いくつ神器を持っている!?」

「別に、僕はイッセー君のように複数の神器を持ってはいない。ただ創ったのさ」

「創る……だと?」

「そう。『魔剣創造(ソード・バース)』。任意で魔剣を創りだす。それが僕の神器さ!」

 

 木場が地面に手を着くと、カーラマインの足元に大量の剣が生え、相手は飛んでかわす。まるで錬金術だ。

 

 にしても、俺が複数の神器をもっているってのは誤解に近い。どっちかって言えば、俺も『創った』といえるんだけど……。

 

「戦闘中に、余所見をするな!」

 

 苛立った声と共に殴りかかってきたイザベラの攻撃をかわして、再び距離をとって、篭手に目を向ける。そろそろいいか。

 

『Boost』

 

 これで十五段階目。もういくか!

 

『Explosion!』

 

 さあて、反撃だ!

 

「力が上がった!? くっ!」

 

 相手はあせって仕掛けてくるが、もう遅い。ここは、新必殺技で決める!

 

 全身に覇気と共に、圧縮した魔力を纏う。そしてそれを、右の拳に集中!

 

「なっ、なんだその力は!」

 

 驚いてるうちに、カウンター気味に左手で胸元に軽くタッチ!

 

「!? 舐めているのか! その程度で……」

「弾けろ! 洋服破壊(ドレス・ブレイク)!」

 

 俺の合図で弾け飛ぶ衣服。そして、彼女の健康的に引き締まった裸体が現れた! 脳内の紳士フォルダに保存!

 

「な、なんだこれは!」

 

 反射的に自分の大事な部分を隠すイザベラに、圧縮した魔力と覇気を纏った拳を叩き込む!

 

「暗黒魔闘術奥義! 地獄破斬撃!!」

 

 ドゴォッ!!

 

 突き刺さる拳。圧倒的な破壊力がイザベラの身体を破壊し、空へ跳ね上げる。そして……

 

「――爆ぜろ!」

 

 ドォォォォォン!

 

 覇気による爆発を食らい、ボロボロになって転送されるイザベラ。

 

『ライザー様の「戦車(ルーク)一名、リタイヤ』

 

 グレイフィアさんのアナウンスが聞こえると同時に、強化をリセットする。

 

 強化していたのが短い間で、かつ使ったのが奥義で一番弱い地獄破斬撃だったから、まだ消耗は少ない。強化も全然いけるし、最悪、マキシマムドライブが使えれば十分だ。

 

「イザベラの攻撃を容易くかわしきる体術に加え、あの異質な魔力。二つの神器だけでなく、あんな隠し玉まで……おまけに、あ、あんなひどい技まで…………いや、女にとっては恐ろしいというべきか」

「僕も、初めてみたんだけど……できれば普通の技だけで戦ってほしかったかな。うちのイッセー君がスケベでごめんなさい」

 

 戦慄するカーラマインに、木場が頭を下げる。

 

「……って、味方が謝ったら身も蓋もないだろ!」

 

 スケベは認めるがな!

 あいつら、俺の文句を無視して互いに対峙しなおしやがった。

 

「しかし、数奇なものだ。魔剣使いとは。私は特殊な剣の持ち主と戦う宿命なのかもな」

「へぇ、僕以外の魔剣使いと戦ったことがあるのかい?」

「いや、魔剣ではない。――聖剣だ」

「―――」

 

 カーラマインが、聖剣、と口に出した瞬間、木場の纏う空気が変わり、殺気が強まった。

 なんだあいつ、キレた時の部長並みだぞ! どうしたんだ。

 

「その聖剣使いについて訊かせてもらおうか」

「ほう、あの剣士は貴様に縁があるのか? だが、剣士同士、ここは剣にて語ろう!」

「……そうかい。口が利ければ、瀕死でもかまわないか」

 

 二人の間の殺気がドンドン強くなっていく! ていうか、木場の殺気が異常すぎる!

 なんなんだ、あいつ聖剣と教会になんの恨みがあるんだ!? 尋常じゃねえぞ!!

 

「そこの兵士さん? あれ、なんだか分かりますか?」

 

 木場の変化に戸惑う俺に、ライザーの妹が声をかけてきた。振り向いて、彼女が指差す先を見てみると……新校舎の屋上に、部長とアーシアがいる! 対峙しているのはライザーだ! くそ! 思ってたけど、やっぱり作戦は読まれていた。伊達に経験積んでねぇってか!

 

「『紅髪(べにがみ)滅殺姫(ルイン・プリンセス)』に『聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)』、『雷の巫女』、『魔剣創造(ソード・バース)』。そして『赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)』。大層な名前ばかりですけれど、あなた方の相手は『不死鳥(フェニックス)』。不死なのですわよ!」

 

 レイヴェルが叫び、指を打ち鳴らすと同時に、カーラマインを除いた残りの敵が俺を囲んだ。

 

「貴方たちがゲームに勝つだなんて、お笑いね。不死身ということが、どれほど貴方たちにとって絶望的かおわかりになるかしら? 元々このゲームで、リアス様に勝ち目なんてないのですわ!」

 

 自信満々に宣言するレイヴェル。

 ……俺は、下をうつむく。

 

「クッ」

「あら? ふふ、あまりの状況に、泣きそうですの? でも恥じることはないですわ。それが当然ですもの。オホホホ!」

「……ブフッ!」

「……え?」

 

 だ、駄目だ……俯いても、笑いが噛み殺しきれない!

 

「――ハハハハハ! アーッハハハハハハハハ! ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 フィールド全域にいきわたりそうなほどの声量で、只管笑い続ける。周囲が俺に視線を送っているのがわかる。

 部長とアーシア。ライザーも戦いを中断している。

 朱乃さんとユーベルーナも同じだろう。

 カーラマインと、あれほどの殺気を放っていた木場ですら、手を止めて俺を見ている。

 レイヴェルも、他の眷属も。果てはこの試合を見ている全員が、俺に目を向けているのが感じられる。それがまた、いっそう俺に笑いを起こさせる。

 

「ちょっ、なんですの? こんなところで壊れ……」

「アハハハハ、ハーッ、ハーッ……おいおい待てって。フフ、別に俺は正常だよ。でもよ、そりゃ笑うだろ。そんなお目出度い話を聞かされりゃ」

「お、おめでたい?」

 

 不可解そうに首をかしげるレイヴェルを真正面から見つめて、言い放つ。

 

「不死身ってだけで勝てるわけがねぇだろ?」

「なっ!!」

 

 あまりのショックに絶句するレイヴェルを尻目に、さらに話を続ける。

 

「フェニックスの不死身は、精神に依存する能力だ。それに、本当の意味で不死身ってわけじゃない。なら話は簡単だ。――死ぬまで殺せばいい。それだけで勝てるんだ。これほど簡単な話はないだろ」

「じ、自分がどれほど滅茶苦茶なことを言っているのか、貴方理解できて!? 神クラスの一撃か、精神を折るほど倒し続けなければ……」

「それだけだろ? 神並みの力が出せなければ、回数の話になるだけだ。キリは必ずある。――本物の無限を見た俺から言わせれば、限りのある再生程度でなにを威張ってるって話だよ」

 

 ばかげてる。俺が今まで戦った相手の中で、何度でも再生する敵なんて数え切れないほどいた。

 そいつらとフェニックスは、俺にとって何一つ変わらない。ただ俺自身の強さが変わっただけだ。一々怯える理由はない。

 

 倒れるまで倒せば、それで勝てる。こんな単純な話なのに、どうして勝ち目がないっていえるんだよ? 百引く一でも、繰り返せば終わりはくる。

 

『Boost』

『Ride』

 

「……危険、ですわね。神器だとか、技だとか。そんなものはお構いなしに、貴方は危険すぎます。カーラマイン!」

 

 声をかけられて、はっとなったカーラマインは、木場を見据えて構えた。木場も、魔剣を構える。

 

「その騎士は貴方に任せます。これ以上フェニックスの看板に泥を塗らないように」

 

 その迫力に、カーラマインが渋々といった形で頷いた。

 へぇ、流石は上級悪魔。結構な胆力だ。

 

「シーリス」

「御意」

 

 一歩前に出てきた、ワイルドな出で立ちの剣を背負ったお姉さん。

 

「彼女はお兄様のもう一人の騎士。カーラマインと違って、騎士道云々にはこだわりません。相手は必ず倒す。それだけですわ」

 

 シーリスは、背中から大剣を抜き取った。今更ビビるほどじゃない。

 

「ニィ、リィ」

「にゃ」

「にゃにゃ」

「彼女たちは兵士。獣人の女戦士。体術はたいしたものですわ」

 

 スッ。

 

 獣娘二人が動くが、まあ速いは速いが、カーラマインやイザベラと比べてぶっちぎりっていうほどでもない。軽く身を翻すと、数瞬前に俺の顔と腹があった場所を彼女たちの攻撃が通過する。

 息つく暇もない間隔で攻撃が繰り出されるが、速度だけの軽い攻撃なんて少しも恐怖を感じない。凄みがあったぶん、イザベラのほうがまだましだ!

 

「ニィ、リィ! 下手に距離を離すと、電撃を撃たれますわ! とにかく攻撃し続けて! それとわかってるとおもうけど、手に触れては駄目! 衣服を消し飛ばされますわよ!」

「最低にゃ!」

「下半身でものを考えるなんて」

「「愚劣にゃ!!」」

 

 二人揃ってハモってきやがる! じゃあお前らの主はどうなんだよ!

 

「下半身でものを考えて何が悪い!!」

 

 とか言ってたら、シーリスが飛び上がって大剣を俺に振り下ろしてくる。

 ギリギリでよけつつ、カウンターで蹴りを打つ。大剣が地面に届く直前、膝に腹の柔らかい感触が当たる。

 

 吹っ飛ばされたシーリスを獣娘の片割れが受け止めて、もう一方は相も変わらず当たらない攻撃を繰り返す。もう一人も再び攻撃に参加するが、焦りがきたのか攻撃が荒くなる。そろそろ片付けるか!

 

ドォォォォォォォォンッ!

 

 が、フィールド全体を揺るがすような突然の振動と爆発音に、反射的に距離をとって、音の元を探すと、屋上で部長とライザーが紅い消滅の魔力と、炎をぶつけ合っていた!

 

 制服がところどころ破けている部長に対し、ライザーのほうは服すら無事だ。表情も余裕そのもの。部長は若干息が上がっているように思える。

 

 こんな連中にいつまでも付き合ってられない! すぐにでも部長に加勢に行かなきゃ!

 

 強化は既に八段階。加速も同じく八。マキシマムドライブはまだ温存しておきたい!

 

 でも、確実に全員を仕留めるにはもう少し欲しい! もっと速さが!

 

 万が一にも、しくじるわけにはいかない。あんな野郎に部長は渡せない。

 

 別に、俺が部長と結ばれたいとか、そんなことじゃない。

 

 ただあの人は、俺の大好きな、憧れたリアス先輩は、紅い髪を揺らして威風堂々としていなきゃいけないんだ。

 

 それに……

 

 不死身如きに負けてる程度で、あの連中を扱えっかよ!!

 

 ―――是 良

 

 !?

 

 ―――力 与

 

 ……バオウ!!

 

 ―――強 破

 

 どういうつもりだ!

 

 ―――極 至

 

 やっぱり、まだお前らは諦めてないのか。

 

 ……上等だ。俺も悪魔になって、寿命も延びたことだし、とことん付き合ってやるさ!

 

「そういうことなら、俺も遠慮はしねえ。徹底的に使い倒して、使いこなしてやるぜ!」

 

 ―――是 好

 

「俺に力を寄越せ!! ライディング・ギアッ!!」

Dragon(ドラゴン) Ride(ライド)!!』

 

 金色の雷が、あたりに迸る。

 

 駄目だ! その程度じゃないだろう!? 

 

「もっとだ! 雷よりも強く、速く!! 俺の闘志に応えて見せろ! 『無限』!!!」

Dragon(ドラゴン) Ride(ライド) Second(セカンド) Liberation(リベレーション)!!!』

 

 昔、聞き覚えのある。

 ブーステッド・ギアが姿を変えたときと酷似した音声が、赤い宝玉から発せられ、絶大な雷を放出しながら脚甲が姿を変えていく。足の甲にももう一つ宝玉が現れ、そこから俺の頭に情報が流し込まれてくる。

 

 ……なるほど。そりゃあおもしれえ!

 

 自分が獰猛な笑みを浮かべていることを自覚しつつも、脚甲の新たな力を解放しようとする!

 

「! いけませんわ! 全員、今すぐあの男を……」

 

 神器が進化する瞬間の雷に気をとられていたレイヴェルと敵の眷属が動こうとするが……

 

「遅ぇ!!」

 

 俺を捕らえるには無限大に―――速さが足りない!!

 

Acceleration(アクセラレーション)!!』

Explosion(エクスプロージョン)!!』

 

 宝玉から音が流れた瞬間――全てが止まった。

 

 いや、正確にはゆっくりとだが動いている。だが、俺にとって絶好の機会に変わりはない!!

 

 まずは獣娘二人に、跳び回し蹴りを浴びせる。次に、シーリスが構える剣ごと彼女を蹴り抜き、更にカーラマインに接近がてら和装の、恐らく僧侶に走りざまに踵で蹴りを食らわせる。

 

 もう時間がない。飛び込むようにカーラマインの背中に両手を合わせて殴りつけて、着地したところで

 

Start(スタート)

 

――全てが正常に戻った。

 

 フェニックス眷属はレイヴェルを除き、全員が吹っ飛んで、一箇所に集まった。

 

「う……ぐっ」

「なん……だ。あの速さは」

「全然……」

「見えなかった……」

「あれは……一体……」

 

 全員、いつやられたかも理解できないようだ。

 

 今のは本来の加速を超えた、ライディング・ギアの超加速――名づけて、『雷龍帝の迅雷(ライディング・ギア・アクセル)』ってところか。さっきみたいに、本来の倍速を超えた超絶速度で動くことができる。まあ、その分燃費が悪くて、一段階につき現実で0.1秒にしかならない上に、負担もそこそこでかいけど。

 

 とはいえ、コレであの技の条件が揃った。というわけで!

 

「いくぜ、洋服破壊(ドレス・ブレイク)!!」

 

 バババババッ!!

 

 俺の叫びに呼応して、さっきの攻撃で刻んだ魔法陣の力が炸裂。彼女たちの服を弾き飛ばした!

 

「「「「「きゃあああああ!!」」」」」

 

 うおおおおおおおお!! スゲェ!! 脳内フォルダが焼け付きそうなくらいにヒートアップ!!!

 

 全てを保存、完了!

 

 それじゃ、止めだ!

 

 俺は大きく空中に跳び上がると、上昇しながら木場に向かって叫んだ。

 

「木場ーーーッ! でかいのいくぞ! 離れて雷を吸収する剣を創れ!」

 

 すぐさま、木場はグラウンドの中心から距離をとって、刀身に電気が走る剣を生み出し、地面に突き立てた。唯一無傷のレイヴェルも、炎の翼で離れる。

 

 頂点にたっし、一旦身をかがめると、ライディング・ギアの一部が変形し、そこから金色の雷が放出され、その勢いはブースターとなって俺の落下を早める!!

 

 電撃を纏いながら、流星のごとく落下しながらも、叫ぶ!!

 

「ライトニングフォーール!!」

 

 地面に激突すると同時に。周囲を衝撃波と電撃の奔流が襲い、グラウンドが滅茶苦茶に破壊される。

 

『Reset』

「……バカな」

「これが、ドラゴンの力だというのか……?」

 

 苦悶の声を上げながら、ライザーの眷属たちは姿を消した。

 

『ライザー様の「兵士(ポーン)」二名、「騎士(ナイト)」二名、「僧侶(ビショップ)」一名、リタイヤ』

「よっしゃ!」

 

 今ので一気に大量撃破だ! 向こうはライザー、ユーベルーナ、レイヴェルの三人! こっちは朱乃さんと木場と部長! そしてアーシアと俺の五人!

 あとはライザーを倒せば勝利! 十分勝算もある!

 

「イッセーくん。驚いたよ。ここまでの力が……でも、服を脱がせてから攻撃するって、いろんな意味で酷いね」

「やかましい!」

 

 俺が、そう怒鳴ったときだった。

 

 ドォォォォォン!

 

 爆音と共に、落下してくる一人の影。紅白の巫女服に身を包んだそれは、間違いなく、俺たちの中でも最強の女王だった。

 

『リアス様の「女王(クイーン)」一名、リタイヤ』

 

 そんな……朱乃さんがやられた!? あの女王、見たところ実力的には朱乃さんより下だと思ったのに! なにか隠し玉でもあったのか!?

 

 ドォォォォォン!

 

 再び、爆発音が鳴り響く。今度は俺からそう離れていない。そっちを向けば、木場がうめき声を上げながら消えていった。

 

『リアス様の「騎士(ナイト)」一名、リタイヤ』

 

 立て続けに流れるアナウンスに打ちのめされながらも、気配を感じて上を向けば、ユーベルーナが、小猫ちゃんを撃ったときと同じように宙に浮いていた。

 

 朱乃さんと戦っていたはずなのに、相手はダメージを負っている様に見えない。あの朱乃さんと戦って、そんな状態ですむはずがない! とはいえ、神器の気配も感じない。あいつは何をしたんだ。

 

 レイヴェルが、炎の翼をはためかせながら女王に近づく。

 

「ユーベルーナ。遅かったですわね」

「あの女王。噂どおりの強さでした。やはりコレを使うことになりました」

「勝ちは勝ちですものね。やっぱり貴方が一番頼りになりますわ」

 

 ユーベルーナは、懐から空になった小さい瓶をとりだした。あれは……まさか!!

 

「フェニックスの涙か!!」

「あら、知ってますの。そう、フェニックス家にしか造れないこの涙は、いかなる傷も癒しますの。卑怯とはおっしゃいませんよね? そちらにも『聖母の微笑み』を持つ者がいらっしゃるんですから」

 

 ふざけた事抜かすな……持ち運べる全快アイテムと、一人しかいない女の子じゃ、利便性の差は明らかだろう! なんでこっちにそれがない!

 

「それに、ゲームでの使用も二つまでなら許可されていますわ。この涙は高値で取引されていますから、フェニックス家の財政はとても潤っていますわ。涙に不死身。レーティングゲームが始まってから、フェニックス家はいいこと尽くめですのよ! オホホホ!」

 

 ……ああそうかい。なら、俺も回復するとしますか。

 

 懐から、ずっと持っていたものを取り出して、包みを開く。中には、綺麗な三角形のおにぎりが数個並んで入っている。ゲームの前に家で作って来たものだ。

 

「? なに? お食事ですの? 随分悠長ですのね。諦めましたか?」

「んなわけないだろ。腹が減っては戦はできぬ。食事は命の源だ」

 

 地面に腰を下ろし、膝の上におにぎりをのせて、両手を合わせる。

 

 パンッ!

 

「この世の全ての食材に感謝をこめて……いただきます」

 

 おにぎりにかぶりつき、おかかの風味をかみ締め、ツナのうまみを飲み干し、シャケの味に舌鼓を打ち、塩味に感動する。

 

「……ご馳走様でした」

 

 これで、少しは体力が回復したか。立ち上がって、新校舎へ歩いていく。

 

『Boost』

 

 ……牙を研ぎながら、な。




 次回、更にイッセーが壊れます。ぶっちゃけ必殺技連発します。ご期待くだされば幸いです。
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