ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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Life.24 End game

「『プロモーション』。『女王』」

 

 敵本陣である新校舎に入った瞬間、プロモーションを果たすと、全身に力がみなぎる。

 

『Boost』

『Ride』

 

 ……あせる必要はない。歩きながら、俺は自分にそう言い聞かせる。

 

 ライザーの性格からして、例え部長を追い詰めたとしても、そのまま止めを刺すなんて事はないはずだ。少なくとも、俺の到着を待つだろう。俺を倒すことで、完全に部長の心を折る為に。

 

 だから、あせってたどり着くことはない。むしろ、勝つ為にも強化を限界まで引き上げることが必要だ。

 

『Boost』

『Ride』

 

 一歩一歩、階段を踏みしめるたびに心の中で決意を固めていく。

 

 絶対に、部長を勝たせてみせる!

 

 

 

 屋上の扉を開け放つと、部長とアーシアの姿を視認する。

 

 部長は肩で息をして、制服もボロボロ。だけど、まだ無事な様子だ。アーシアは、その後ろでたたずんでいる。

 

 肺いっぱいに空気を吸い込んで、叫ぶ。

 

「部長ォォォォォォォッ!! 兵藤一誠! ただいま参上しましたぁぁぁぁぁ!!」

「イッセー!」

「イッセーさん!」

 

 俺の到着に、二人が疲労を吹っ飛ばすほどの飛び切りの歓喜の表情を見せてくれた。

 

「ドラゴンの小僧か。レイヴェルのヤツ、見逃したのか」

 

 舌打ちするライザー。妹さんは反抗期みたいだな。

 ライザーの横に、ヤツの女王、ユーベルーナが降り立つ。

 

「ライザー様。私が兵士のボウヤと僧侶のお嬢さんをお相手しましょうか?」

「いらん。全員纏めて俺が相手をする。そのほうが、こいつらも納得するだろう」

 

 ……余裕だな。まあ、こっちとしては好都合だ。

 しかし、プライドにふれられた部長はわなわなと振るえ、手に消滅の魔力を纏う。

 

「ふざけないでライザー!」

 

 激高した部長は、怒声と共に魔力を放ち、それはライザーの頭部や腕を消し飛ばす。が、数瞬で消し飛んだ部分から炎が噴出し、元の身体を再生させる。

 

 不死身、か。まあ、思っていたとおりってところだな。

 

「リアス、投了(リザイン)しろ。これ以上はキミのお父上にもサーゼクス様にも格好がつかないだろう。キミはもう詰んでいる。こうなることは既に読んでいたことだ。チェックメイトだ」

「黙りなさい! 読んでいた? 詰んでいる? それがなんだっていうの。まだ『(キング)』である私は健在なのよ!」

 

 部長の啖呵に背中を押されるように、前に出ようとしたところで、アーシアの足元に紫色の魔法陣が現れる。

 

「キャッ!」

 

 短い悲鳴を上げて崩れ落ちるアーシア。その傍に駆け寄ると、ライザーが嘲笑するように言った。

 

「悪いな。あんまり長引いてもかわいそうなんで、『聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)』は封じさせてもらった。その魔法陣は、俺の女王を倒さない限り解けない」

 

 この野郎、生命線であるアーシアを、真っ先に封じるなんて!

 

 ……だが、こっちもそろそろ準備が終わる。俺は部長より前にでて、篭手に目をやる。

 

『Boost!』

 

 その音声で、ブーステッド・ギアの宝玉が激しく点滅する。これは、限界まで強化されたことを示すサインだ。これで……いける!!

 

 パン! バッ! バシューーッ!!

 

 両手を打ち鳴らし、手を屋上の床につけると、屋上全体が青白い発光を起こす。

 

「んっ?」

 

 不信におもうライザーだが、既に準備は完了した。さあ、いくぜ!

 

「ジケルド!」

 

 呪文を唱え、空中を蹴りぬくと、速度の遅い光球がゆっくりと宙を漂う。

 

「新しい呪文!」

「チッ、悪あがきを」

 

 今までのことからも、警戒する二人を尻目に、光球は突如弾け、そのまま消え去った。

 

「……なにも、おこらない?」

「ハッ! ここまで来てこけおどしとは、笑わせてくれる!?」

 

 ……どうやら気づいたようだ。ジケルドが、こけおどしでもなんでもないことに。

 

 ライザーの膝が急にガクガクと震えだし、徐々に全身が震える。そして地面に膝をつき、両手をついて這い蹲るが、その体勢でも抗うように全身を強張らせている。

 

「ライザー様!?」

「これは……」

 

 異変が起きているライザー本人と、その原因である俺以外の二人にも、ライザーの様子がおかしいことが分かったようだ。

 

「こ、小僧! 貴様、一体……何をしたぁ!!」

 

 四つんばいの姿勢を保ちながら、必死の形相を俺に向けるライザーに、俺は篭手の力を解放しながら語り始める。

 

『Burst!!』

「ジケルドは、相手の身体に磁力を纏わせる呪文だ。そしてさっき、この屋上の床のすぐ下を、全て鉄に練成した。今、ジケルドを受けて強力な電磁石も同然になったお前の身体は、この屋上の床に引っ張られている状態なのさ」

「なん……だと!?」

「その状態なら身動きが取れない……俺の必殺技も、かわせないって事だ!!」

 

 赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)から炎が巻き起こり、覇気と混ざりながらどんどん激しさを増していく。そこから生まれる熱によって、屋上の周囲のフェンスなどが徐々に融解しだした。

 

「こいつは俺の技の中でも最強なんだが……この技自体の反動が既にでかいから、普通の強化とかでコイツを使うとほぼ確実に倒れちまうんだ。だから、強化の反動を無視できるバーストでないと使えないのさ。なにより予備動作がでかいから、相手にかわされないよう工夫をする必要がある。今回みたいにな!」

「ぐぅぅ……ユーベルーナ!!」

「はっ!」

 

 命令を受けた女王が杖をかまえようとしたところを、部長が小さな魔力弾を放ってけん制する。

 

「ありがとうございます、部長! あぶないんで、アーシアをつれて少し下がっていてください!」

「ええ、分かったわ」

 

 炎を纏う篭手を身体のやや後ろに引いて、拳を握り締める。大きく拳を振りかぶり、空を打ち抜くように突きぬき、叫ぶ!

 

「覇皇! 焔滅!! 赤龍波ぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーッッ!!!」

 

 ギャオオオォォォォォォォォーーーッン!!

 

 咆哮を上げ、余波で屋上をふっ飛ばしながら、炎の龍が突き進む。その目標は、屋上に張り付いて動けないライザー・フェニックス。

 

「ライザー様!!」

 

 ユーベルーナがライザーをかばい、前に出て魔法陣を張るものの、俺の全てを搾り出した炎の前に、そんなものは木っ端の火ですらねえ!

 

「燃え尽きろぉぉぉぉぉぉぉーーーーッ!!」

 

 左手に更に覇気をこめ、間に入ったユーベルーナを吹き飛ばし、龍はライザーを包み込み、炎の牙を持って喰らう。

 

「う、うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーッ!!!」

 

 ドガァァァァァァァァァァァンッッ!!

 

 壮絶な叫び声をも焼き尽くすように、爆炎があがる。やがて煙が晴れると、そこには満身創痍としか言いようのない有様のライザーがたたずんでいた。そのすぐ後方、衣服が焼け焦げたユーベルーナは、光と共に転送された。

 

『ライザー様の「女王(クイーン)一名、リタイヤ』

 

 これで、アーシアの回復がまた使えるようになる。だけど……

 

「ジケルドが……切れたか……」

 

 やっぱり、覇皇焔滅赤龍波の反動はでかすぎる……。もう、マキシマムドライブ以外じゃ戦えそうにないか……。

 

「イッセーさん!」

 

 駆け寄ってきたアーシアの手で、治療を施される最中、原型をとどめていない屋上に、レイヴェル・フェニックスが降り立った。

 

「お兄様!」

 

 兄に駆け寄ると、懐からフェニックスの涙の小瓶を取り出し、それを口に注いだ。

 そして、やや遅れて炎が全身を包むと、ゆっくりとライザーが立ち上がった。

 

「小僧!! よくも俺に手傷を負わせてくれたな! まさかユーベルーナまで倒されるとは思っても見なかったが、ここまでだ!」

 

 怒りに呼応するかのように、背中の炎の翼が大きく広がり、再び熱気が高まる。

 くそ! 間にあの女王が入ってなければ、倒せたはずなのに!

 

 ……だけど、まだ手がないわけじゃない。むしろ、フェニックスの涙を使わせたことをよしとするべきだ。アーシアの力も戻った。まだ、戦える!

 

「何だ、その目は。アレだけの大技。何の反動もないとは思えない。幾ら『聖母の微笑み』でも、そう簡単に癒せるとは思えないがな」

「……ああ、そのとおりだよ。でもな、切り札がひとつだけだなんて、誰が言った?」

「何?」

「見せてやるよ。俺の、本当の全力を!!」

 

 雷龍帝の脚甲(ライディング・ギア)。コイツも、限界まで加速してる。それを解き放つ!

 

 ――師匠。特訓では一度も成功しなかったあの大技、決めてやります!

 

 そして……言ったとおり、全力でいく!

 

 制服の上着を脱ぎ捨てて、更にTシャツも脱ぎ、上半身を晒す。

 

 訝しがる周囲の視線も気に留めず、俺はブーステッド・ギアを起動させる。

 

Maximum(マキシマム) Drive(ドライブ)! DriveⅡ(ドライブツー)!!』

 

 二段階目までの開放を次げたところで、一旦間隔を置いて、宝玉から音声が流れた。

 

『――DriveⅢ(ドライブスリー)!!!』

「おおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」

 

 ……感じる。随分と久々にも思える、この感覚。莫大な力が俺の全身を駆け巡り、細胞一つ一つを起こしていくような、この凄まじい開放感。全身の筋肉が、音を立てて膨れ上がっていく。同時に、全身が活性化された影響で、髪が一気に腰まで伸びていく。

 

 別人とすら言える変身を果たした俺は、ライザーの顔を一瞥し、呟いた。

 

「―――俺の全霊の覇気をもって、お前を砕く」

Acceleration(アクセラレーション)!』

 

 ――加速が、始まった。

 

 ライザーに正面から急接近し、横っ腹を殴り飛ばす。とろけたフェンスを簡単に突き破って吹っ飛ぶライザーに、呪文で追撃する。

 

「ザケルガ!!」

 

 一直線に飛んでいった電撃が、ライザーの身体を直撃する。吹っ飛ぶライザーに追いつき、猛烈なラッシュで追撃を喰らわせる。

 

 そして、大きく上に殴り飛ばしてその上をとると、脚甲を展開させて噴出す雷を推力に、地面に突撃する。

 

「ライトニングフォール! ぶちぬけぇぇぇぇッ!!」

 

 ドゴォォォォォォォン!

 

 轟音と共に割れた地面に突き刺さるライザーの身体を蹴り上げ、そのまま殴り飛ばす。

 その後を追いかけて三連続で攻撃を当て、更に吹っ飛んだライザーの先に回り、上に蹴り上げる。空中でジグザグに動きながらライザーを跳ね上げ続け、とどめに蹴りを喰らわせる。これが……

 

「ライジングメテオォォーーーッ!!」

 

 吹っ飛んでいくライザー。そして、時間が元に戻る。

 

 地面に激突した瞬間、今までの攻撃で溜め込んだ覇気が一気に開放され、大爆発を起こした。

 

 ドォォォォォォォォォォォンッッ!!

 

 ……どうだ? アレだけの攻撃を叩き込んだんだ。幾らなんでも……

 

 が、煙の中から、炎の翼を羽ばたかせて出てきたライザーは、一直線に俺に殴りかかってくる。

 

「クソ、クソォッ! 下級悪魔如きが、よくもこの俺にぃーーっ!!」

 

 勢い任せの右ストレートをぎりぎりでよけ、カウンターで顎を粉砕するが、すぐに再生してしまう。

 

 どうなってんだ!? いくら不死鳥でも、アレだけの攻撃をくらって平気なわけがない! なのに、まるで全快したばかりみたいにピンピンしてやがる。明らかにおかしい!

 

「イッセー!!」

 

 声に反応して屋上を見れば、部長が心配そうな顔でこっちを見ている。

 

 ……そうだ。俺は負けられない。

 

 俺の大好きな、部長の為にも。

 

 ずっと傍にいたいと言ってくれた、アーシアの為にも。

 

 無念の想いを抱えて、先にやられた朱乃さん、小猫ちゃん、木場の為にも。

 

 あんな坊ちゃんには負けられないんだ!

 あいつが立ち上がってくる限り、なんどでもその身を砕くまで! ただそれだけだ!

 

「うおおおお!!」

 

 背中から炎の翼を噴出しながら突撃してくるライザーに向かい、構えをとり、圧縮した魔力と、覇気を纏う。覇気の足場を蹴り、全力で突撃し、拳を叩き込む!

 

「暗黒魔闘術奥義! 魔神烈光殺!!」

 

 俺の拳が腹部に突き刺さり、ライザーの身体が胴体から真っ二つに砕け散るが、すぐに炎で再生してしまう。

 

 何度でもぶっ殺してやるぜ、焼鳥野郎!!

 

 

 

 

 

 終盤、ライザーと赤龍帝君の一騎打ちに、私を含めた観衆の誰もが目を奪われている最中、神は険しい顔をして画面をみつめている。私はそんな友人を見かねてお声をかける。

 

「どうかしたのかい? 弟子が奮闘しているというのに、やけに表情が硬いが」

「……おかしい」

 

 低い声色で呟かれた一言は、あまりにも想定外な言葉だった。

 

「おかしいとは、なにが?」

「イッセーのラッシュをアレだけ食らって、おまけにライジングメテオまでぶちかまされたってのに、ライザーに消耗した様子が一切ない。あんな温室育ちの坊ちゃんに、そこまでの精神力があるわけがない」

 

 ばっさりと切り捨てる言い方はきついが、確かにそれは肯定せざるを得ない。ライザーは家の特色と与えられた才能を持って戦う、良くも悪くも上級悪魔らしい男だ。泥をすすってでも勝利にかじりつこうとする彼に、精神的な面で上回るとはとても思えない。

 

 だが、現実にライザーはああして打ち合っている。その表情には、怯えと焦りの色も見えるが。

 

「……」

 

 無言で席を立つと、激戦に目を奪われる一人の壮齢の男性へと近づき、肩に手を置いた。

 

「少しいいかな? フェニックス公」

 

 営業スマイルの見本のような笑みで、冷静な声で話しかけるものの、その目はまったくと言っていいほど笑ってはいなかった。

 

 

 

 

 

「暗黒魔闘術奥義、魔殺一刀両断撃!!」

 

 ドォォォン!!

 

「グゥオアアアッ!!」

 

 アッパーのように放った一撃で縦に裂かれたライザーは、炎を吹き出して再生していく。もう何回も繰り返しみた光景だ。

 

 渾身の一撃を何度も叩き込み続け、その余波でフィールドはかなりひどい損壊を負っていたが、その成果はいま、目に見える形で現れた。ライザーの再生速度は確実に落ちている。ここまでくれば、あと一息だ。

 

 ……とはいえ、俺の消費も相当ひどい。しかも、限界が近い。

 

 マキシマムドライブの制限時間は二時間。段階を上げるごとに半分になっていき、ドライブⅢでは三十分しか持たない。

 

 既に残りは一分もない。勝負をかけるか。

 左腕の筋肉に力を込め、全筋力を搾り出す。

 

「五……十……十五ッ……二十蓮!」

「このクソガキがぁぁぁぁッ!」

 

 激高したライザーはまっすぐ突っ込んでくる。その動きに合わせ、正面から俺の拳をぶつけた!

 

「覇皇連衝拳!!」

 

 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドンッッ!!

 

 鳩尾を渾身の一撃が捉え、ほぼ同時に打ち込まれた衝撃が連続でヤツの体を貫き、吹っ飛ばす。

 

「オグゥッ……!!」

 

 内部に浸透したダメージは、不死身のフェニックスも流石に応えるみたいだ。

 

 おおきく隙を晒すライザーに脚をむけ、狙いを定める。

 

 ……これで倒せなきゃ、マジで打つ手がなくなる。

 最後の勝負だ!!

 

「バオウ・ザケルガァァァァァァァァーーーーーーッッ!!!!」

 

 脚甲から、朱乃さんの雷すら遥かに凌ぐエネルギーを持った雷が放出される。金色に輝く雷は龍をかたどり、校舎に匹敵する程巨大になった龍が、咆哮を上げながら標的へ向かう。

 

『バオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!』

 

 仮にも俺もドラゴンだからこそ、こんな風に感じるのか。

 

 存在自体の格が違う。そう思い知らされるような圧迫感。

 撃っている側の俺ですらなんだから、襲われている側のライザーの恐怖はそれ以上だろう。不死鳥だろうがなんだろうが、バオウにとっては等しく『獲物』でしかない。

 

「うおああああああああッ!!!」

 

 ガガァァァァァァァァァァァァァンッッッ!!  

 

 

 

「はあ……はあ……はあ……ッ」

 

 ライザーを喰らい、炸裂したバオウ・ザケルガ。

 

 あれは、バオウをスケールダウンさせて一時的に実体化させるような術だ。俺の力量不足のせいでまだ極僅かにしか引き出せないが、それでも最上級悪魔並みの破壊力はある。

 

 今度こそ……例え倒せなくても、もう部長に勝てるほどの力は残っていないはず。アーシアもいるし、まけることはない筈だ。

 

 これで、勝った……!?

 

 グラ

 

 足元が覚束なくなり、ありえないほどの空腹と眠気が襲ってくる。

 

 ……限界時間を越えたか。久しぶりにやっちまったけど、相変わらず急にくるから困る。

 

 このまま意識を手放してしまおうかと考えたそのとき、突如正面から衝撃が襲った。

 

 ドサァ!

 

 地面に仰向けに倒れながら、首を動かして前を見てみると、そこにはあのライザーが立っていた。服の一部は焼け焦げ、確実にダメージは負ってはいる様子だが……

 

 ありえねぇ!! 覇皇連衝拳を喰らった直後に、バオウ・ザケルガを喰らったんだぞ!? あの程度のダメージで済むとは、到底思えない! こいつ、一体何を……

 

「本当に……不愉快な小僧だ! だが、認めてやる……まともに戦えば俺は負けていた」

 

 ……何だと? 俺はライザーの言い分に、妙な違和感を覚えた。しかし、襲いかかる疲労が、負担が。俺に思考を許さない。

 

「イッセー!!」

 

 ――部長が、赤い髪を揺らしながら飛んでくる。アーシアも一緒だ。二人とも、泣きそうな顔でこっちを見ている。

 

「リアス、お前の自慢の兵士は既に限界を超えている。お前も幾ら回復したところで、体力や魔力はすぐには戻らない。その僧侶には攻撃の手がない。今度こそ、正真正銘のチェックメイトだ」

「ふざけないで! 誰が……」

 

 ライザーが、俺を見る。

 

「これ以上、こいつに頼るのか? これ以上戦わせれば、間違いなく死ぬぞ」

「!!」

「そもそも、普通ならとっくに治療施設に転送されてなきゃおかしいくらいだ。なのにここにいるということは、術式はこいつを再起可能と判断しているってことだ。流石の俺も、こいつの精神力には感服させられる」

 

 ……うるせぇ。

 

「イッセーさん!?」

「イッセー!?」

「――な!?」

 

 振り向いたライザーは、ひどく驚いてる。すぐ傍に来ていた、レイヴェルも同じ表情だ。

 

 俺が立ってるのが、そんなにおかしいか?

 

 部長とアーシアは涙を流している。

 

 ――大丈夫。絶対に、勝ってみせるから。

 

「な、何故動ける!? あれだけの力を発揮して、もう立つ力すら残っているはずが……!」

 

 顔を上げ、ライザーの顔をにらむと、やつは押し黙った。

 

「俺の、限界は……俺が……決める」

 

 そうだ。こんな極限状態なんかで倒れてられるか。

 

 自分で言ったじゃねえか。あの焼き鳥を殴り倒すって。

 

 拳が砕けたら、蹴り倒せ。

 

 脚が折れたら、噛み倒せ。

 

 顎が裂けたら、睨み倒せ。

 

 眼が潰れたら、呪い倒せ!

 

Maximum(マキシマム) Drive(ドライブ)!』

 

 ……力が出てきた。これで戦える。

 

「駄目……駄目よ、イッセー! 止まりなさい、命令よ!」

「――約束、しました」

「!!」

 

 俺は、部長に笑っていて欲しいんです。

 そのためにも……勝たなくちゃいけない。

 

「死んでも……ライザーを倒すって」

「イッセー」

 

 だから……俺が……

 

「イッセー……」

 

 例え……この身が砕けても!

 

「イッセー……ッ!」

 

 絶対に、勝ってみせます……!!

 

「イッセー……ッッ!!」

 

 ――必ず勝ちます。部長。だから、笑ってください。

 

「うおあああああああッッ!!」

 

 叫びながら、ライザーに殴りかかるが、俺の拳は安々とよけられ、逆に炎を纏った相手の拳が顔に当たるが、気にしてられない。

 

 只管に体を動かす。腕を動かす。脚を動かす。

 

 痛みも、飢餓も眠気も吹っ飛ばして。

 

 闘志に、戦意に、本能に全てをゆだねて。

 

 ……足がもつれて、倒れこむ。何してんだよ、戦うんだ。

 

「があああぁぁぁぁーーーーーッ!!」

 

 視界が赤い――別にかまわない。

 

 咳き込んだら、血を吐いた――それがどうした。

 

 拳がぐしゃぐしゃになってる――ぶつければ同じだ。

 

 ライザーが、でかい炎を出している――纏めてぶっ飛ばせばいい。

 

 ――勝ちます、俺。だから……部長は笑ってください。

 

「ウォオオオオオオオオッ!!」

「イッセェェェェェェーーーーーーーーーーッッッ!!!」

 

 ……俺とライザーの間に、部長が割ってはいる。部長に当たる寸前。拳を止めると、部長が俺に抱きついてきた。

 

「もう、いい……もういいの……だから、お願い。もうやめて……」

 

 部長が、涙を流しながら抱きついてくる。涙があたった部分が、ひどく熱く感じる。

 

「……私の負けよ。投了(リザイン)します」

 

 ――敗北宣言。

 

 その記憶を最後に、俺の意識は閉ざされた。

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