「いただきますわ」
「イッセー、せっかくお母様が作ってくれた朝食よ。いただきなさい」
「そんな下品な食べ方はダメよ。もっとゆっくり味わって食しなさい。お母さんの作ってくれる朝食ほど掛け替えの無いものはないのよ?」
気品を漂わせつつ食事の挨拶をして、優雅に食べ進めつつ、俺が白米とおかずをみそ汁でかきこめば柔らかく注意して口元をハンカチで拭いてくれる。
驚くなかれ、これが我が家の今朝の朝食の風景である。しかも、親子三人以外の人間を交えて食事をするのって結構久々だ。人間じゃないけど。今は俺もか。
「イ、 イッセー……そ、そのお嬢さんは、ど、どちらの方かな?」
恐る恐ると親父が聞くと、先輩が箸を止めて深々と頭を下げた。
「挨拶が遅れていたとは……。私とした事が失礼しました。これはグレモリー家の恥ですわ。改めてごあいさつさせていただきます。お父様、お母様、私はリアス・グレモリーと申します。兵藤一誠君と同じ学園に通っております。以後、お見知りおきを」
「そ、そうですか……。い、いや、これは参ったなぁ、ハハハ! 外国の方ですか? に、日本語が堪能ですね」
「はい、父の仕事の関係で日本にいるのも長いものですから」
おおっ。父さんが鼻の下を伸ばしながら陥落した。流石は俺の親父だ。
だが、隣の母さんは更に不満を募らせ、父さんの耳を引っ張りつつ先輩に話しかけた。
「リアス……さんで、よろしいかしら?」
「はい、お母様」
「イッセーとはどういう御関係なのかしら?」
一気に確信を突いて詰め寄る母さんに、先輩は相も変わらず魅力的な笑顔を振りまくだけだ。
「仲のいい先輩と後輩ですわ、お母様」
「嘘よ! だ、だ、だだだだだだだって! ベッドで!」
朝の状況を思い出して再び混乱し始めた母さんに、部長はあくまでも微笑み続ける。
「イッセーが夜、怖い夢を見ると言うので、添い寝してあげたんです」
「添い寝!? は、裸だったじゃない、二人とも!!」
「はい、最近の添い寝はそういうものですわ、お母様」
凄い嘘だ。すげぇよ、先輩。なんでそんな事を、満面の笑みを少しも崩さずに言えるんですか。
だが、これで母さんは更に混乱が加速するかと思われたが、突然黙り込む。
「そ、そうなの……。最近の添い寝はそういうものなの?」
お母さま!? そこで納得するの!?
そこで、俺は母さんの目がおかしい事に気が付く。何かに取りつかれたように虚ろだ。
先輩が、困惑する俺に耳打ちしてきた。
「……ごめんなさい。少しややこしくなりそうだったから、力を使ったわ」
力?
それって……
――悪魔よ。
悪魔の力……見れば、父さんも目が虚ろだ。
先輩はそのまま食事を再開してしまった。とりあえず、俺も自分の食事を片づける事にした。
朝の登校。つまり学校に向かっているわけで、当然学校に近づけば近づくほど同じ制服を着た人が増えていく。
同時に、俺に対する攻める様な、追求する様な視線も増えていく。
それもその筈。俺の隣には学園のアイドル、グレモリー先輩がいるわけだから。
俺も先輩の鞄をもって、従者のように彼女の隣を歩いている。
「どうしてあんな奴が……」
「リアスお姉さまがあのような下品な男と……」
方々から男女問わず悲鳴が上がっており、ショックで気絶した生徒もいたくらいだ。
そこまでか! 俺と先輩が一緒に歩いている事がそんなに駄目ですか! まあ、逆の立場なら多分俺も、疑問にはおもうだろうけどさあ。
校門を抜け、学校の玄関で先輩と別れたその時に、
「後で使いを出すわ。放課後にまた会いましょう」
微笑みながら、そう告げてきた。
使い? 文字通り使い魔ですか?
よく分からないが、俺はそのまま教室に向かう。扉を開けた途端、周りからは好奇と嫉妬と殺意が入り混じった視線が俺を襲った。
ま、まあ、リアス先輩と歩いていたらそうなるよな。
ゴッ!
背後から敵意を感じたので、思わず裏拳をかましてしまった。振り返ると、鼻を押さえる松田と、隣に元浜も居た。
「どういう事だ!」
涙と鼻血を流しながら松田が詰め寄る。そういきり立つな。何を言いたいのかはよく分かっているとも。
「昨日まで俺達はモテない同盟の同士だった筈だ!」
「イッセー、とりあえず理由を聞こうか。俺と別れてから何があった?」
二人とも、視線に嫉妬と殺意が満ち満ちていた。怖いぞお前ら。
何と言われても……おっさんをぶっ飛ばして、女二人に刺されて、先輩と裸で抱き合って寝た……としか言えないが、真実を告げるわけにもいかない。
とりあえず、俺は笑い、そして、力強く言ってやる!
「お前ら、生乳を見た事はあるか?」
悪友二人はその一言に戦慄していた。よし、オールOK!!
時は飛んで、放課後。
「や、どうも」
俺の目の前にいるのは、学校一のイケメン、木場祐斗。クラスは違うが、爽やかスマイルで学園中の女子のハートを物にする、超モテモテ男だ。知らないわけがない。
こいつが教室に入ってくるなり、教室だけでなく廊下からまで黄色い声が浴びせられた。
「何の用だよ?」
ぶっきらぼうな態度をとる俺に、女子の視線が刺さる。
チクショウ! 全男子の敵め! イケメン死ね!
「リアス・グレモリー先輩の使いできた」
――っ。
その一言で、嫉妬とか敵愾心だとか、そんなものは吹き飛んだ。
そうか、お前が先輩の言っていた使いか。
「……OKOK。で、俺は何をすればいい?」
「僕に付いてきてほしい」
イヤー!
今度は一転、女子が悲鳴を上げる。
「そ、そんな。木場君と兵藤が一緒に歩くなんて!」
「汚れてしまうわ、木場君」
……変態として蛇蝎のごとく嫌われる俺と、学校一モテるイケメンが一緒になればそうなるのは仕方ない。
それは納得しよう。涙ながらだけどな!!
「木場君×兵藤の組み合わせだなんて許せない!」
「ううん、もしかして兵藤×木場君かも!」
でも、こんなわけのわからない声まで聞こえてしまうと、少し本気で愕然としたくなる。
教室から離れた辺りで少し涙がこぼれた俺に、木場はそっとハンカチを差し出してきた。
……うん、こいついい奴だ。イケメンは大嫌いだけど。
木場の後に続いて、やって来たのは裏手の旧校舎だった。
今は使われていない建物だが、その割には随分としっかりしていた。窓ガラスも一枚も割れていないし、目立つ破損個所もない。
「ここに部長が居るんだ」
部長? リアス先輩の事か?
とりあえず、今は深く追求せずにしておこう。それも含めてのよびだしだろうし。
中に入って木場に付いて進むが、廊下も教室も目だった汚れも埃もない。随分マメに掃除されているようだ。
辺りを見回しているうちに、目的の場所とやらに着いたらしい。木場が立ち止まった扉の前にかけられたプレートには、
『オカルト研究部』
と書いてある。これには驚かされる。まさか、リアス先輩がオカルト研究……。
「部長、連れてきました」
木場が声をかけると、入ってくるようにと返事が返ってきた。先輩の声だ。
戸を開けた木場の後に続いて中に入ると、異様な様相に出くわした。
室内の至る所。壁、床、天井まで面妖な文字が書かれている。これは……たしか、悪魔の文字だっけ?
そして、教室の中央には大半を占めるほど巨大な魔方陣が描かれている。転移に通信と、その他色々って所か? 少なくとも錬成陣とはまるで別物だな。
それ以外は、割と普通にデスクとソファーが幾つか置いてあるだけだ。
ソファーの一つに誰か座っている。小柄な女の子だ。
……てっ、あの子、一年生の塔城小猫ちゃんだ!
ロリ顔、小柄な体と小学生にしか見えない一年生のマスコット。一部男子と女子に可愛いと評判の、いつでも眠たそうな表情の、正に猫の様な少女だ。黙々と羊羹を食べ進めている。
俺に気づいたのか、視線が合い、手を止めた。
「こちら、兵藤一誠君」
木場が紹介してくれて、ぺこりと一礼してくれる塔城小猫ちゃん。
「あ、どうも」
俺が頭を下げたのを見ると、再び羊羹を食べ進める。
超が付くほど無表情とは聞いていたけど、その通りだなぁ……。
シャー。
奥から水の音が聞こえる。つられて奥の方を見てみると、カーテンが掛けられていて、そこに女性の肢体の影が浮かび上がっている。誰かがシャワーを浴びているらしい。
シャワー? ここってシャワーまでついてんのか!?
キュッ。
「部長、これを」
水を止める音の後、先輩以外の女性の声が聞こえる。もう一人いる?
「ありがとう、朱乃」
カーテンの奥で、先輩が着替えている。瞬間、朝の光景が頭の中にまざまざと蘇ってくる。
先輩、素晴らしいお身体でした。当分はソロ活動に困りません。
「……いやらしい顔」
塔城子猫ちゃんのいた方から、ぼそっと呟かれる声。
……うん、ごめんね、変態で。
カーテンが開き、先輩が出てきた。濡れた紅い髪がなんとも色っぽい。
俺を見て、先輩はほほ笑んでくれた。
「ごめんなさい。昨夜、イッセーのお家にお泊りして、シャワーをあびていなかったから、今汗を流していたの」
なるほど、それはいいのですが、シャワーが部室に付いている事にはノータッチでいいんですね?
と、先輩の後にもう一人、女性が出てきた……って、マジか!!
黒髪のポニーテール! 絶滅が危惧されているポニーテール! 神さんが保護に乗り出そうとしたポニーテール!! この学園最後のポニーテール保持者じゃないか!!
常に笑顔を湛え、和風漂う佇まいと、大和撫子を体現したかのようなわが校のアイドルの一人、姫島朱乃先輩!
リアス先輩と併せて、「二大お姉さま」と称されるお方!
男子女子問わず憧れの的!
そして何より、リアス先輩にも引けを取らない美貌と、ナイスバディ!! 黒い髪と相まって、壮絶とも言える色気が感じられる! こんな近くで見られるなんて、夢じゃないよな!?
「あらあら。初めまして、私、姫島朱乃と申します。どうぞ、以後、お見知りおきを」
ニコニコ笑顔で丁寧なあいさつをされてしまう。うっとりしてしまいそうな声色だ。
「こ、これはご丁寧に、どうも。兵藤一誠です。こ、こちらこそ、初めまして!」
緊張しながら挨拶を交わすと、「うん」と頷くリアス先輩。
「これで全員そろったわね。兵藤一誠君、いえ、イッセー」
「は、はい」
「私達、オカルト研究部は貴方を歓迎するわ」
「え、ああ、はい」
「悪魔としてね」
――っ。
なにか、色々と変わってしまいそう……というか、変わったらしいです、神さん。
「粗茶です」
「あっどうも」
ソファーに座る俺に、姫島先輩がお茶を出してくれた。手で掴むと、ほんのりとちょうどいい温度が掌に染みわたる。
ずずっと一飲み。程良い苦さと、柔らかい甘み。そして凝縮されたうまみが口に広がり、最後にそれらを纏める渋みが顔を出す。
「……うまいです」
「あらあら、ありがとうございます。お世辞でも嬉しいですわ」
「そんな、お世辞だなんて! このお茶にそんな失礼な事はできませんよ! 俺が淹れてもこうはなりません」
そもそも、味に関してお世辞を言えるほど器用じゃないって、俺!
「へぇ、本格的なお茶が淹れられるんですの?」
「まあ、一応。でも、まだまだ未熟で……」
コーヒーの方が得意なんだけど、お茶も一応基本的な事は出来る。
「それじゃあ、今度教えて差し上げましょうか? こだわりの茶葉も結構あるんですのよ?」
「本当ですか!? 是非、お願いします!」
姫島先輩とお近づきになれて、更に美味いお茶も淹れられるなんて、一石二鳥だ! ……なんて調子に乗っていたら。
「お茶の話はそれくらいにして、本題に入っていいかしら。朱乃、貴方もこちらに座ってちょうだい」
リアス先輩がそう言った。はい、すみませんでした。
「はい、部長」
姫島先輩がリアス先輩の隣に腰をおろすと、全員の視線が俺に注がれる。
な、なんなんですか。この緊張感。
「単刀直入に言うわ。私達は悪魔なの」
本当に単刀直入です。
「はい、で、俺も……なんですよね」
にわかには信じがたい、とは言わない。あの奥底から湧き上がってくる力。衝動といっても良いほどの激しさ。あれは、悪魔になって、体が強化された為なんだろう。
マキシマムドライブで引きだした力も、随分なものだったし……。
「あら、案外呑みこみがいいわね。それじゃあ、イッセーはこっち側の世界に関して、何処まで知っているのかしら?」
意外そうな声の後の、試す様な先輩の言い方。多分俺が困惑するか、半信半疑に成るだろうと踏んでいたので、いきなり納得顔に成った事で……だろう。
ここは素直に、俺が知っている範囲の事を言っておこう。
「俺を殺そうとした二人は堕天使。堕天使は邪な感情を持って地獄に落ちた存在で、悪魔は堕天使と冥界の覇権を争っている。
悪魔は人間と契約して代価を貰い、力を蓄える。堕天使は人間を操って悪魔を滅ぼそうとする。そこに神の命で両者を滅ぼそうとする天使も含めて、ほぼ三すくみの闘いを大昔から繰り返している。こんなところですかね」
全部、神さんから聞いた話だ。いまでは俺も悪魔なのか……。
「そうよ。基本的な説明はいらないようね」
先輩は嬉しそうにうんうんと頷く。そして、キッと表情を固めた。
「――天野夕麻」
その一言で、俺は目を見開いた。
その名前は、今一番聞きたいけど、同じくらい聞きたくない単語だ。
「あの日、貴方は天野夕麻とデートしていたわね」
「……はい」
あれ以来、夕麻ちゃんは消えてしまった。人の記憶からも、記録からも。
俺の記憶以外の全てから、夕麻ちゃんが消える。まともな人間なら、自分の正気を一番最初に疑うだろう。
そういう意味では、危ない目にあってきた経験も、無駄ではなかったって事かな。
「彼女は存在していたわ。確かにね。まあ、念入りに自分と貴方の周囲にいた証拠を消したようだけれど」
先輩が指を打ちならすと、姫島先輩が懐から一枚の写真を取り出す。
そこに写っていたものは、予想通りと言ってしまえばそれまでだった。だが、俺は今、胸を思い切り殴られた様な衝撃を感じている。
「この子よね? 天野夕麻ちゃんって」
間違いない。俺の息の根を一度止めて以来、どこにも見当たらなかった彼女の姿だ。
そして、その背中には黒い翼がある。
「この子は……いえ、これは堕天使。昨夜貴方を襲った者たちと同質の存在よ」
リアス先輩は話を続ける。
「この堕天使はとある目的が合って貴方と接触した。そして、その目的を果たしたから貴方の周囲から自分の記憶と記録を消させたの」
その先は察しがつく。だけど言いたくはない。でも自分で言わなければ、更に傷口は広がるだろう。だから、言わなきゃいけない。
「……俺を、殺す為ですよね」
自分から口に出すのが、心底意外だったんだろう。先輩が目を丸くしている。それでさえも、滅茶苦茶可愛い表情だった。
これをみれただけでも結構癒されますよ! なんて、強がってみようと思ったけど言葉に詰まってしまう。
……相手の好意が嘘だった事を、全面的に認めることがこれほど辛いなんて。
気落ちした俺を気遣ってか、次の発言が出るまでには一分くらい間が空いた。正直、その心づかいがありがたかった。
「理由はわかる?」
大体の見当は付いてる。でも、言ってしまっていいんだろうか。
先輩たちを疑いたくは無いが、『危険だからやっぱり殺す』なんて話に成っても困る。どうかな、ドライグ?
『まあ、こいつらは信じても良いだろう。俺の見た限り、ここに来るまで敵意も悪意も殺気も感じられなかった。仮にそれが演技で襲ってきたとしても、逃げるくらいならばそう難しくは無いだろう』
そうか、それじゃあ……カミングアウトしちまうか。
「
これを自覚しているとは思っていなかったんだろう。姫島先輩や塔城小猫ちゃんに、木場も驚いた顔をしている。
でも、リアス先輩だけは比較的冷静に話を進めていく。
「彼女が貴方に近づいた理由は、それがあなたの身についているか調査する為だったの。きっと反応が曖昧だったんでしょうね。だから、時間をかけてじっくり調べた。そして、確定した。貴方が神器を身に宿す存在だと――」
神器。大半は人間界規模でしか効果の無いものだが、中には悪魔や堕天使、天使を脅かすほどの力を持った存在がある。俺の中にあるのは、その中でも特にヤバいものだ。
「イッセー。あなたの神器、見せてもらってもいいかしら」
ここまで来て、見せないなんて選択はできない。ソファーから立ちあがって、先輩達から二、三歩離れて、左腕を突き出す。
「ブーステッド・ギアァァッ!」
カッ!
俺の左腕が光を放ち、形を成して左腕を覆っていく。光が消えると、俺の左腕には赤い篭手が装着されていた。
かなり凝った装飾が施されていて、手の甲には立派な宝玉が付いている。そしてその中には、赤い龍、すなわちドライグを示す紋章が刻まれている。
「これが俺の神器、
篭手を見せつけるように左腕を前に晒すと、全員目が丸くなっていた。凛々しい部長でさえも、開いた口がふさがらず、ポカーンと口を開けっ放している。
ど、どうしたんだ? 何かやらかしたのか、俺?
『いきなり神器を見せつけるからだ。忘れたのか? これがどういう代物なのかを……」
――あっ!!
そ、そうか。そりゃそうだ! なんたって、コレは……
神や魔王をも滅ぼす力を持った、特別強力な神器。
「赤龍帝の篭手……十三種の
リアス先輩が囁くようにして洩らす。神器所有者と知っていても、まさか神滅具の持ち主とは思ってなかったんだろう。
「す、すみません!! 前置きくらい言っておくべきでした!」
俺が猛烈な勢いで頭を下げると、先輩は恥ずかしそうに口を押さえながら頬を赤くする。うわ、可愛い!
「い、いえ。見せてほしいと言ったのはこちらだもの。それにしても、まさか神滅具だなんて……。その神器を危険視されて貴方は殺されたのね」
俺は間違いなく死んで、先輩に蘇生された。これはいい。しかし、一体何故?
幾ら俺が神滅具の持ち主といっても、あの時点ではリアス先輩とは何の接点も無いに等しい。
そんな俺の死をどうやって先輩が知って、蘇生なんてしたんだ?
「疑問に思ってるみたいね。どうやって、私が貴方の元へ行ったのか……それはね、瀕死の中、あなたが私を呼んだからよ。この紙から私を召喚したの」
リアス先輩が取り出した一枚のチラシ。
あれは、あの日のデートの待ち合わせ中に、チラシ配りから貰ったものだ。
『あなたの願いを叶えます!』
そんな謳い文句と、魔法陣が描かれたチラシ。この教室の魔方陣と同じだ。
「これは、私達が配っているチラシなのよ。魔方陣は、最近は魔方陣を書いてまで悪魔を呼びだす人はいないから、こうしてチラシとして悪魔を召喚しそうな人間に配っているのよ。簡易な魔方陣ね。
あの日、たまたま私達が使役している使い魔が人間に化けて繁華街でチラシを配っていたの。それをイッセーが手にして、死に間際に私を呼んだの。普段なら、眷属の朱乃達が呼ばれるんだけれど、私を呼ぶなんて、相当願いが強かったのね」
光の槍に貫かれて、死にかけた時。
掌に就いた血を、紅い色を見て、俺は紅を思い浮かべた。
リアス・グレモリーという紅い髪の女の子を、強く欲したんだ。
じゃあ、やっぱり――俺の夢の最後に出てきた少女は、リアス先輩だったんだ。
「召喚された私はあなたをみて、すぐに神器所有者で、堕天使に害されたのだと察したわ。問題はここから。イッセーは死ぬ寸前だった。堕天使の光の槍に貫かれれば、悪魔じゃなくても人間なら即死。イッセーもそんな感じだったわ。そこで私は、あなたの命を救う事を選んだ」
はい、それはありがとうございます。でも、何よりも気になっているのはそこじゃないんです。
一番問題なのは――俺を救った方法。
「悪魔としてね――。イッセー、あなたは私、リアス・グレモリーの眷属として生まれ変わったわ。私の下僕の悪魔として、ね」
バッ!
先輩が言葉を締めくくったとたん、俺以外の人間の背中から翼が生える。
堕天使と同じ黒だが、あっちは鳥の様で、こちらは蝙蝠の様な翼だ。
バッ。
俺の背中からも、同じ翼が生えた。
最初に自分で言ったとはいえ、やっぱり自分の眼で確認すると違うなぁ……。
「改めて紹介するわね。祐斗」
名前を呼ばれて、木場が俺に向けてほほ笑む。
「僕は木場祐斗。兵藤一誠君と同じ二年生ってことは分かっているよね。えーと、僕も悪魔です。よろしく」
「……一年生。……塔城小猫です。よろしくおねがいします。悪魔です」
小さく頭を下げる塔城小猫ちゃん。
「三年生、姫島朱乃ですわ。いちおう、研究部の副部長も兼任しております。今後もよろしくお願いします。これでも悪魔ですわ。うふふ」
礼儀正しく姫島先輩は深く頭を下げる。
最後はもちろん、リアス先輩。紅い髪を揺らしながら、堂々と言う。
「そして、私は彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。よろしくね、イッセー」
随分、とんでもない事になってしまった。
……。
機嫌がよさそうなので、俺からも質問してみるか。
「あの……俺からも一つ、聞いても良いですか」
「ええ、どうぞ」
快諾していただけたので、どうしても、これだけは聞きたいとおもっていた疑問を吐き出す。
「……なんで、オカルト研究部なんですか」
悪魔のオカルト研究。しっくりくるような、来ない様な。なぜこんな部のチョイスをしたのかが、非常に気に成っていた。
それに対して、リアス先輩は不敵に笑って答えてくれた。
「フフ、そんな事。それは……私の趣味よ」
予想通りでした!!