ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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 大変お待たせいたしました。今回も私の東方観によるCPだらけです。
 感想を非ログインユーザーでもお書きいただけるようにしましたので、意見、感想を寄せていただけるとありがたいです。


Life.30 宴会、騒ぎます。

 ギュアアアアアアアア!

 

 バキバキバキッ!!

 

「ぬああああぁぁぁっ!!」

 

 夕暮れの中、追い風のように逃げ惑う俺の背中を押す咆哮。轟音と共になぎ倒され、踏み砕かれる樹木。

 咲夜さんに聞いたとおり、紅魔館から少し離れた森でアドベンチャー映画の様に俺を追い回すのは、もう恐竜といったほうがいいと思えるサイズと迫力の猛獣、ガララワニ。

 

 通常の個体の寿命の倍以上、三百年を生きたその肉は、円熟した最高の味わいで、その戦闘力も並みのガララワニを大きく凌ぐ。

 が、グルメ界にはガララワニでさえ足元にも及ばない化け物がうようよしているわけで、そこでサバイバルを演じた俺にとっては、弱体化した今でも凄まじい強敵というわけでもない。

 

 『一匹』だったらな。

 

「なんで五匹もいるんだああぁぁぁ!!」

 

 いや、決して咲夜さんは相手の数は言ってないけどさ! でも、三百年もののガララワニがこんなにいるっておかしくない!? さては時間を操って成長させた!?

 

 なんにしても依頼された以上、美食屋としての仕事は果たす! もう少しいけば……。

 

 森を抜けて、逃げ続けながらも目指していた場所。ガララワニを見つける前に訪れた開けた場所へ出た瞬間、俺は左へ方向転換し、後ろをガララワニが追いかけるのを確認すると、『目印』の石の手前で、大きく空中に跳んだ。

 

「ドラゴンショット!」

 

 掛け声と共に放たれた魔力弾が、目印の岩と共に地面を割り、そこから一気に周りの地面が砕けていく。俺を追ってきたガララワニ達も当然巻き込まれ、岩と共にその下にあった水溜りへ落下した。

 

 すかさず、雷龍帝の脚甲(ライディング・ギア)を出し、水溜りへ向けて電撃を放つ。

 

「ザケル!」

 

 ドガァァン!!

 

 電撃が水溜りへ直撃すると、水を伝わってガララワニが感電し、五匹全てが浮き上がった。

 

「ふぅ……上手くいった」

 

 罠まで誘い込んで一網打尽。セオリー通りの単純な作戦だったけど、ガララワニ相手なら何とかなったな。

 五匹もいるとは思わなかったから、穴に落としきれなかったらとか思ったけどな。大きめに作っといてよかった。さて、ノッキングして持っていくか。

 

 ドバァァン!

 

 ガララワニが浮かぶ池へ近づこうとすると、一匹のガララワニが派手な水しぶきと共に自分の体を打ち上げ、大口を開けて俺のほうへ突っ込んでくる。

 

 俺は右手で手刀を構え、ガララワニへ一閃すると、空中でガララワニが真っ二つに裂けた。

 

 ズバン!

 ドォォォン!!

 

 二つに分かれたガララワニが落下した後、水面に浮かぶ残りの四匹に動く様子がないことを確認すると、すぐにノッキングする。仕留めてしまったガララワニは、その後にしっかり食った。

 

 

 

 

 

 咲夜さんには宴会の料理の準備のために先に博麗神社に向かうから、ガララワニを捕獲したらそっちへ向かってくれと言われていた。

 四匹のガララワニを頭の上に抱えて、夕焼けも沈んだ博麗神社に降り立つと、サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの三人組の妖精、通称三月精が宴会の準備の為に奔走させられていた。

 

「お疲れさま」

 

 一言だけかけて、忙しなく動く彼女たちの間をすり抜ける。相変わらず元気だな。

 

 咲夜さんがいるであろう台所のある神社の裏手へ回ると、咲夜さんが珍しい人と一緒にいた。二人は向かい合って話していて、こっちを向いていたその人が先に俺に気づいて、それに引っ張られる形で咲夜さんが振り向き、二人が近づいてくる。

 

「ご苦労様。ちょうど貴方のことを話してたのよ?」

「久しぶりですね。一誠」

「聖、さん」

 

 命蓮寺の住職、大魔法使いの聖白蓮さん。昔は夏休みの間中、命蓮寺に世話になったこともある俺にとっては、色々な意味で頭が上がらない人でもある。幻想郷の俺の主な師匠は、この人と美鈴さん、紫さんの三人と……強いて言えば幽香さんかな。

 にしても、本当に珍しい二人組みだな。いったいどういうつながり?

 

「ふふふ、不思議そうな顔をしてますね。実は私、最近お料理に凝り始めたんです。そこそこ出来るようにはなってきたと自負しているので、こうして咲夜さんのお手伝いがてら、ご教授願えたらと……」

「そういうわけだから、私と聖さんで他の料理の仕込みをしている間、イッセーはガララワニの解体をお願い」

「はい。あ、それと一匹は」

「わかってるわ、食べたんでしょう。じゃあ、よろしくね」

 

 二人が台所に戻っていくのを見送ってから上着を脱いで袖をまくり、ガララワニに向き合い、血を浴びないように気をつけながら手刀を入れていく。

 そうして十分ほどで解体を終わらせて、サニーが置いていってくれた手拭いで血まみれの手を拭い、台所へ目を向けると、丁度割烹着を着た聖さんがこっちへ歩いてきた。

 

「あらまぁ、咲夜さんのおっしゃったとおりもう終わったんですね。流石は一誠です」

 

 ニコニコと笑いながら、感心しつつ両手をポンと合わせる。相変わらず綺麗だけど可愛らしいよな。

 

「最初に私と咲夜さんが手がけた分のお料理はもうできてますので、次は一誠の番ですよ? 命蓮寺の皆も楽しみにしていましたから、がんばってくださいね?」

 

 ……はいはい。じゃあ、ご期待に沿えるよう頑張りますか!

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、夜の帳が幻想郷を包み、妖怪たちの宴が始まる。

 

「宴会へ間に合わせる為とはいえ、今日の小町は実に見事な働き振りでしたね。あれが毎日できれば、言うことはないんですが……」

「宴会早々、説教は勘弁してくださいよ。四季様。それよりほら、お酒注ぎますよ」

 

 部下の労を労いつつも説教をしようとする閻魔に、それを回避しようと酒を勧める三途の川の死神。

 ここは特に問題なし。

 

「えへへぇ~文しゃまだいしゅきぃ~」

「あやややや。椛、嬉しいけどこんな場所で顔を舐めないでください。というか酔うの早すぎますよって、太陽酒(サマーウィスキー)!?」

 

 その近くでは部下の白狼天狗に頬を舐めまわされつつ、その手に握られた大男でも酔っ払わせる酒を見た烏天狗が目をむく。口の中がザラッとするけど眼福です。

 

「だからな? 他人に迷惑を掛けない限りお前たちが喧嘩するのは勝手だが、多少……妹紅! ど、どこに手をいれ、いひゃっ! か、輝夜までなにを!? お前ら人の話を聞け!!」 

「あぁ~聞いてるよぉ~? 要は最近輝夜にばっか構ってたから、たまってんだろぉ~」

「私もその一因だし、手伝うわよ。礼はいらないわ」

 

 その少し手前のほうでは、くだけた席でも行き過ぎな行為に及ぼうとする蓬莱人二人に、半人半獣の女教師が必死で抵抗してた。ちなみに妹紅の傍に太陽酒の瓶が転がっている。多分輝夜が妹紅に飲ませたんだろう。砂糖と鼻血が……。

 

「おら、イッセー呑めぇ!! あたしの酒が呑めないのか!?」

 

 騒がしさからは少し離れた場所で飲んでいた俺の口に、怒鳴り声と共に瓢箪が突っ込まれ、鬼の酒が喉を焼きつつ五臓六腑に染み渡る。そのまま、萃香は肩を組んで、その辺に置いてあった酒を片っ端からガンガン飲ませてくる。

 

「おいおい止してくれよ。俺は俺のペースで呑んでるって」

「悪魔が何言ってんだ! どうせお前のこったから、ハーレムでも目指してんだろ?」

 

 はい、そのとおりですが何か?

 

「ハーレムってことは、あれだ、酒池肉林ってことだろ! この程度の酒も呑み干せないで、なにが酒池肉林だ!!」

 

 わかるんだかわからないんだか微妙な理屈を、酒瓶と共に振りかざしてくる。うん、定例どおりの酔っ払いだ。そんな感じでガンガン酒を飲まされまくっていたら、これまたいつもどおり唐突にターゲットを変えて駆け寄っていった。

 

 他の面子も、はっちゃけ気味ではあるものの、心底楽しんでいるのがよくわかる。

 

 本当に……誰も彼も、変わりがなくて結構だよ。

 

「……ん?」

 

 不意に、視界になにかがはいった気がして、横を向いてみると、大分離れたほうで、聖さんが手招きしている。

 

 腰を上げて、酒を飲んでも呑まれていない足取りで近寄ると、今度は背を向けて歩き出した。ついてこいって事だよな。

 

 追ってたどり着いたのは、博麗神社の裏手の森の更に奥。

 

 ――――――

 

 一瞬、言葉を失った。

 

 そこは一見すると何の変哲もない、ただの森の中の開けた場所だ。昼間に来たって、綺麗な円形の並びで周りを囲む大木に目を引かれることはあっても、そう意識するレベルでもない。

 

 けれど今は夜。そして、今夜は満月。二つの要因で、この場は幻想郷に置いてもひときわ幻想的な光景になっている。

 

 月明かりを浴びる広場、その外にあたるはずの光を巨木が葉によって遮る事で綺麗な円で区切り、この場はまるでスポットライトを当てられているように輝いて見えた。

 正気を疑うほどに美しい場所で、石に腰掛け、天然でグラデーションのかかった金髪を惜しげもなく月光に晒す聖さん。慈愛に満ちた母のように、親愛に満ちた姉のように、俺を笑顔で招いていた。

 

 大量の酒を飲み干しても足取りに何の不安も感じなかったのに、今は気を張っていないと足元が覚束ない。何とか一回もこけずに、聖さんと対面する形で、向かいの岩に腰掛けた。

 

 聖さんは指先をツイッと動かし、魔法で俺たちの間に簡単な木の机を出して、その上に二本の一升瓶と二つの盃が、それぞれ一つずつ俺と聖さんの手元に置かれる。

 俺の盃へ酒が注がれた後、俺は手元に置かれた一升瓶を開けて、聖さんの盃へ注ぐ。匂いからして、俺のほうに置かれたのは酒じゃなくて水だ。

 盃の水面に写る水月はゆらゆらと揺らめいて、俺が水を置いた衝撃で、波紋と後に落ち着きを取り戻した。聖さんが盃を取るなり俺もそれに習い、二人同時に一息で飲み干した。盃を置いて顔をあらわにすると、聖さんは柔らかい笑みで俺を見つめる。

 

「素敵でしょう。この前の宴会のとき、偶然見つけたんです。誰かに教えたくてたまらなかったのに、つれてきたのは一誠が初めてなんですよ?」

「あはは。光栄ですね」

 

 与えられる言葉がとても暖かい。そうおもったら、自然と笑顔が浮かんできた。

 

「神から力が落ちたと聞いたときは、皆で随分心配したんですよ? それから一年程音沙汰もなく、今度は悪魔。まったく、もう写経も読経もさせられないじゃないですか」

「座禅と滝行は何とかこなせるとおもいますよ」

 

 多少の非難を含んだ声でさえ、棘ではなく羽毛で包むような寛容さが感じられる。

 

「ただ――元気そうで何よりです」

「はい」

 

 思いやりをもって向き合い、相手の想いを抱きしめる。

 

「……おかえりなさい」

「……ただいま」

 

 この人は俺にとって、母親みたいな姉の……初恋の人だ。だから、俺はこの人に頭が上がらない。

 そういえば、水盃は今生の別れを予想した場合に飲み交わすものだ。

 盃から聖さんへ視線をめぐらせると、それを察した聖さんが口を開く。

 

「私の水盃は、人間だった貴方との今生の別れ。そして、貴方の盃は、悪魔に生まれ変わってからの、新しい私との絆の誓い。……なんて、少し気取りすぎでしょうか?」

 

 笑顔を見せる聖さんに釣られて、俺も笑顔をみせる。

 ……そうしたら、今日幻想郷へ来てから、ここに至るまでの出来事がふわっと浮かんできた。変わらない皆に対する嬉しさから、たまらず笑っちまう。

 

「あははははは!」

「わ、笑いましたね」

 

 頬を膨らませて拗ねる聖さん。可愛らしい仕草なんだけど、それでも笑えてしまう。嬉しすぎて、楽しすぎて、懐かしすぎて、自分で自分が制御できない。ひとしきり大笑いした後、聖さんが顔を真っ赤にして料理を並べる。

 

「もう、幾らなんでも笑いすぎですよ! ほら、それよりも私が作った料理を食べてみてください。貴方の感想が欲しいんです」

「はいはい。この世の全ての食材に感謝を込めて、いただきま……す?」

 

 ……俺のほうに箸が置かれていない。あるのは、聖さんの手元のひとつだけだ。

 え? まさかの素手で食え? 幽香さんならともかく、聖さんにそれをやられると俺泣きますよ?

 

 不安になっていると、聖さんは大根煮を箸でつまみ、俺の口元へ差し出して……。

 

「あ、あーん」

「!?」

 

 まさかの行動に驚愕しつつも、反射的に開いた口に出汁のしみこんだ大根が運ばれ、一口に頬張り、よく味わって飲み込む。

 

 ……うん、美味しい。でも、ていうか、それよりも!!

 

「なんであーん!? いや、嬉しいですけど!」

「いえ、あの……村紗が、こうすれば一誠は喜ぶと……」

 

 船長ぉぉぉぉぉ!!

 

 ありがとうございます!!!

 何か文句でも言ってやろうと思ったけど、感謝しか浮かばなかったよこの野郎!!

 

「そ、それじゃあ、次は……あーん」

 

 こんな調子で、次々と聖さんの箸で俺の口に料理が運ばれる。

 食卓の上が綺麗に片付いた頃には、聖さんは顔を真っ赤にしていた。

 

「……そろそろ、戻りましょうか?」

 

 まだほんのりと頬が赤らんでる聖さんに促されて、神社へ戻ると……。

 

「おーっ! いいぞ、もっとやれ神!」

 

 大勢に囲まれながら、神さんが優に五メートルはある酒樽を天高く放り投げ、そこへ向かって人差し指を弾くと、空中で巨大な酒樽が粉々になる。神さんが大きく息を吸い込むと、宙に投げ出された清酒が神さんの元へ吸い寄せられ、一滴残さず飲み干された。

 やんややんやと騒ぐ周囲に答えるがごとく、次々とどこからとも無く酒樽を取り出し、破壊と飲酒を繰り返す。

 

 ……いろんな意味で何をやってるんだろう、師匠。

 

「お、戻ったのか、イッセー」

 

 俺に気づいた神さんが近寄ってくる。アレだけ飲んだのに酒臭さが微塵もしないって……。

 

「久々の幻想郷はどうだ?」

「そりゃ、楽しかったですよ」

 

 素直に思ったままのことを口に出す。それを聞いた神さんは、これまた心底狙い通りといった感じで笑みを浮かべる。神さんのその表情には、碌な思い出が無いですけど……。

 

「そうかそうか。それはなにより。それじゃあ、これをやろう」

 

 そういって、神さんは刀袋を俺に手渡してくる。中身を取り出してみると、出てきたのは刀……なんだか神聖な雰囲気を感じるけど、別にダメージを受ける感じは無い。悪魔が持ってて大丈夫とはとても思えないけどなぁ。

 

「そいつは霧雨の剣。香霖堂で買った代物だ。お前にやる」

「こんな一品。よく霖之助さんが手放しましたね」

 

 気に入った品は次々と非売品にしてしまうあの霖之助さんが。

 

「俺だって、色々と貴重な品を手放したんだぜ? そいつはそれだけの価値がある一品だ。なんせ聖剣、神剣、魔剣と呼ばれる刀剣の中でも、トップクラスの一つ……天叢雲剣(あめのむらくも)なんだからな」

「あ、天叢雲剣!?」

 

 それって、スサノオが八岐大蛇を切ったときに出てきたって言う!

 スサノオの持ってた剣を折ってしまうほどの、神剣中の神剣!

 

「お、俺が持ってていいんですか!? ていうかなんで大丈夫なんですか! そもそも、天叢雲剣って、折れたとかなんとか言ってませんでしたっけ?」

 

 神さん自身が、特殊な剣に関する話で言っていたことだ。後、エクスカリバーも砕けたとか何とかで、特に強いといわれている聖剣の中で、無事なのはデュランダルだけなんだとか。

 

「いいんだよ、買った俺がお前にやるんだから。手に入れた時点でちゃんとお前に合わせた調整はしてある。そして、そいつはレプリカだ。とはいっても、本物以上の性能であることは間違いないぞ。なんせ本物を折ったのはそのレプリカだからな」

 

 ……順々に俺の質問に答えたと思ったら、とんでもない話が飛び出した。レプリカ? 本物を折った? 

 

「まあ、順を追って説明するとだ。昔、鍛治に凝ってたことがあってな。それで、天叢雲剣の実物を伝手で借り受けて、それをモデルに緋緋色金(ヒヒイロカネ)を使って作ったのがそのレプリカだ。

 当時は俺もヤンチャでな。本物と自分の偽物。どっちが上かを確かめてみたいと思って、スサノオに持たせて、俺が偽物を持って立ち会ったら……そいつが勝ったというわけだ。

 しばらくは俺が持ってたんだけど、誰かに譲ったんだ。それがめぐりめぐってこうして幻想郷に来ていたんだから感慨深いもんだ」

 

 ………………。

 

「借り物に何してるんですか!?」

『そこ!!?』

 

 周りで聞いていたみんなが、一斉に俺に突っ込む。

 いや、別に伝手とか、スサノオがどうとかはいいですよ。俺も会ったことあるし。でも、借りたものはちゃんと返さないとダメでしょ。

 

「スサノオが持ってたときに折ったから、何とかごまかせたけどな。俺が直そうとも言ったけど、断られた。改造する気満々なのを察せられたらしい」

「反省の色ゼロじゃないですか!?」

「正面から戦って偽物に負けた惨めな本物を強くしてやろうといったんだ。あそこで俺にいじらせておけば、最強の聖剣に仕立て上げてやったものを……」

 

 ひどいなこの人。何がひどいって、歴史を積み上げてきた本物に対するリスペクトはともかく敬意が微塵も無い。まあ、だからこそあっさりとそれを上回るものが作れるのかも知れないけど……。

 

「今でも修復しようと努力しているらしいがそれはまあいい。それよりもイッセー。せっかくちゃんとした剣が手に入ったんだ。剣の修行を始めてみるか」

「剣の修行、ですか。ちなみに、何の流派ですか?」

「飛天御剣流。大勢を相手にすることを前提にした、神速の殺人剣だ。そして、相手はこの方です」

 

 神さんが左手で空を掴むと、壁紙をはがすようにベリッと風景が破れて、そこから天使の翼を生やした金髪の美形が現れた。

 

 ……この雰囲気、暗黒魔闘術を習ったあの人と同じ空気を感じる。

 

「もしかして、ソードさんの世界の人ですか?」

「ええ、そうですよ。私はイオス。天使達を統べる役職で、一応は神に次ぐ地位にいます。貴方が、ソードが話していた別世界の悪魔ですね。なるほど、彼の言うとおり面白そうな人だ」

 

 物腰は柔らかいけど、感じる力は半端ない。この人、ソードさんと同等の強さだ。

 

「ていうか、前回に比べて随分あっさり呼べましたね」

「前の魔方陣はあくまで呼び水だからな。一度つながりを開けば、二度目以降は簡単さ。それじゃあ、がんばれ」

 

 そういった師匠が、イオスさんが出てきた場所とは別の穴をあける。

 

 ……いきなりつれてこられたけど、幻想郷(ここ)は何の変わりもなくて結構な限りだ。皆のほうを向いて、できる限りの笑顔を浮かべて、挨拶をする。

 

「楽しかったです!! また今度!!」

「「「「「ええ、また今度!!」」」」」

「あ、一誠。少し……」

 

 穴に入る神さんとイオスさんについていこうとすると、聖さんに呼び止められた。

 

 チュッ……。

 

 瑞々しく、柔らかい感触が、頬を伝わって脳へと届いた。

 

 ……チュッ? ナズーリンの鳴き声じゃないよね。聖さんがなんか真っ赤になってるんですけど。え? もしかして……

 

 頬にキスされたああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーッ!!!

 

 うおおおおおおおおっ!! ヤバイ! テンションあがる!

 

「そ、その……一応、肉体強化の魔法もかけておきましたので……がんばってください」

 

 ぬがあああああああ!!

 

「ありがとうございます!! それじゃあ、また今度!!」

「ええ。……また今度」

 

 聖さんの笑顔に背中を押され、穴へと飛び込み、一気に駆け抜ける。

 

 たどり着いた先は荒野がひたすら広がる色気の無い場所だったけど、そんなもんより、今の俺は最高に高ぶっている。

 

 神器を発現させ、初めて持つのにやたらと手に馴染む天叢雲剣を構え、イオスを睨む。

 

「な? こういうやつなんだ。面白いだろ」

「ふふふ。ええ、どことなくソードに似ていますね。奮起する理由は大違いですが」

 

 さっきのやり取りを見ていたらしい二人は笑ってるけど、そんなことより今はこの熱が冷めないうちに自分を高めたい。

 

「飛天御剣流は剣、身のこなし、相手の先を読む、の三つの速さを最大限に生かし、最小限の動きで複数の相手を葬る剣術だ。技の習得以前に、まずは只管この三つを鍛えろ。大丈夫。いつもどおり死にそうになったら治してやるから」

「はい!!」

「いい返事ですね。では、私も付き合いましょう」

 

 イオスが剣を抜いた。……なんだあれ。長剣からは常軌を逸した聖と魔の波動が放たれているが、それをイオスは簡単に従えて、更に強大な神聖な気を感じる。正直、ただ立っているだけで消し飛びそうな感じだ。でも……初恋の人に応援されたんだ! ここで奮起しなきゃ漢が廃るだろ!!

 

「いくぜ!! イオォォォォスッ!!」

「来なさい!! イッセェェェェーーーーッッ!!」

 

 ドオオオオオオォォォン!!

 

 

 

 

 

 ……朝方、こっそりと玄関を潜る。

 

 戦闘開始から只管斬り合い、ある程度の領域に至ったところで神さんも刀を持って混じり、より深化した地獄を生き延び、俺は今ここにいる。

 

 紫さんに呼び出された後に落とされ、レミリアとフランと咲夜さんに出会い、ガララワニを狩って、宴会に参加して、聖さんと盃をかわして、師匠にボコられて終わった、久々の幻想郷。

 

 ……ゴフッ。回想してたら、口の中が甘ったるくなった。まったく皆甘過ぎるだろ。全カップルに会わなくてよかった。そしたら俺、血糖不足で死ぬぞ。

 

 なんにしても、久々の幻想郷は楽しかった。感想はコレに尽きる。シャワーを浴びてから部屋に戻ると……なぜか部長が、俺のベッドで寝ていた。いつもどおりの裸。

 

 ぐっ……地獄のあとに天国とは心臓に悪い。鉄壁の精神の防壁を張り、布団にもぐりこむと……ぶ、部長が抱きついて、お胸様がああぁぁぁぁぁぁ!

 

 興奮のあまり暴走しそうになる自分を諌めつつ、俺は特訓の疲労の助けもあって眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

「ただいまです。妹様」

「お帰りーーっ!! あのね、美鈴。昨日はイッセーが来てたんだよ!」

「ああ、そうなんですか。それはタイミングの悪い」

「美鈴、昨日はどこに行ってたの?」

「うーん……そう、ですね。しいて言うなら、親のところ、ですかね」

「親? 美鈴、親がいるの?」

「無理に言うなら、ですよ。あの人と私は、親子なんてわかりやすい関係じゃありませんから」

「ふーん……」

「それはさておき、何をして遊びますか。妹様」

「それじゃあねー。弾幕ごっこ!」

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