ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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 あれこれと詰め込んだ結果、今回は滅茶苦茶長いです。


Life.31 使い魔、ゲットします!

 いま、眼前には至福の桃源郷が広がっている。

 

 一年生の女子生徒が、無防備に着替えてあられもない姿を晒している。後輩の着替えを覗き見するという背徳感と罪悪感が、エロさをかきたてるスパイスになってくれる。

 発育のいい子はやっぱり凄いなぁ。あ、あの子いい足してる。脚線美ありがとうございます。口には出せないけど。

 

 どこにいるかって? 女子更衣室の、使用禁止とかかれたロッカーの中だよ。松田と元浜が「コンサートのSクラス席に匹敵するVIP席がある」とか言って誘ってきたので、ホイホイついてきたらこうなったわけだ。うん、SSでもいいくらいの絶景だ。

 

 ん? あれは小猫ちゃんだ。偶然にも小猫ちゃんのクラスにあたってしまったのか。

 

 ザワッ。

 

 元浜のロッカーから凄まじい覇気……ていうか邪気を感じる。流石は真性のロリコン。脳内メモリーフル活動だな。今夜のソロは激しいものになるだろう。

 

 大事な後輩のあられもない姿には、感じ入るものがあるな。一層の背徳感が、さらに俺の欲望に油を注ぐ。おかしいな、俺にロリコンの気は無いはずなのに、どうも小猫ちゃんのロリボディから目が離せない。

 

 やがて、続々と更衣室から出て行く女の子たち。ああ、残念ながら鑑賞会は終わりらしい。次の開演を待ち望む限りだ。

 

 ……ん? 小猫ちゃんが着替え終わっても残っている。はて、どうしたんだろ。このままじゃ脱出できないんだけど。

 

 最後の一人が出て行っても残り続ける小猫ちゃんが、ゆっくり動いて……。

 

 ドゴンッ!

 

 うお! 俺の入っているロッカーに、小猫ちゃんの拳が突き刺さった! かわしはしたけれど、バレているのは明らかだ。

 

 バチンッ!

 

 拳が引き抜かれると同時に、勢いよく扉が引き剥がされた。面と向き合う、制服姿の俺と体育服姿の小猫ちゃん。

 

「や、やあ」

 

 一応、笑顔で挨拶してみたけれど……。

 

「……最低です」

 

 ゴスッ、ドンッ、ドガッ!

 

「ぐふ、ぬあ、ぐお――ぎゃああああああっ!」

 

 馬乗りになった小猫ちゃんから繰り出される拳の嵐が、容赦なく俺にたたきつけられる。後日、青い顔をした松田と元浜は、生まれて初めて血祭りというものを目撃したと語った。

 

 

 

 

 

 その日の放課後、部室。

 

「大丈夫ですか?」

「ああ、ありがとう。アーシア」

 

 小猫ちゃんにボコボコにされた俺をアーシアが治療していてくれたけど、元々そこまでたいした傷も負っていないので、すぐに治療は完了した。

 

「……あれだけ殴られてたったそれしか傷を負わないだなんて、馬鹿げた頑丈さですね」

 

 少し離れたソファで、小猫ちゃんが不愉快そうに呟いた。着替えを覗かれた事もそうだけど、どうも自分の攻撃が俺にたいしたダメージを与えられていないことに憤っているらしい。しぶとくてゴメン。

 

「まったく、あなたはどうしてそう……」

「あらあら、女の子の着替えを覗くのも、ほどほどにしないとダメですよ」

 

 部長があきれながらため息をついて、朱乃さんは嗜めつつもニコニコの笑顔でお茶を淹れてくれる。

 

「いやあ、つい調子に乗ってしまいました」

 

 剣術を体得した勢いかな。どんなものであれ、新しい何かを得たときって、ハイテンションになるじゃん。

 

「僕の着替えならいくらでも見せてあげるよ」

 

 ホモホモしい事を言ってくるイケメン野郎、木場。こいつの前では天叢雲剣は出さないほうがいいだろう。こいつの聖剣への敵視はかなりの段階まで来ている。レプリカとはいえ、本物以上の力を持った聖剣なんてみせたら、ただ事じゃすまないのはわかりきってる。まあ、それはともかく……

 

「うるせぇぇぇ! 何が悲しくて学園一のモテ男の裸なんざ見なくちゃならねーんだ! こちとら発育不良の女子の着替えでも喜べるんだよ!」

「発育不良……」

 

 ギラリという音がつきそうなほど鋭い視線を小猫ちゃんから向けられた。たびたびごめんなさい。

 

「イッセーさん。女性の着替えを覗くなんて事をしたらダメですよ。……そ、そんなに女性の裸が見たいのでしたら、私が……」

「い、いやいや。アーシアが無理をすることなんてないって。いや、見たいけど、そうじゃないだろ!」

 

 モジモジしながら赤くなるアーシアを困惑気味にとめる。なんだか最近大胆だ。

 

「そうね。裸が見たいのならば、私に言えばいいのよ? いつでもお風呂でベッドの中でOKなのだから」

 

 平然と言ってのける部長様。思わず熱い涙が出てくるほどありがたい。

 

「…………」

 

 むにぃ。

 

 なぜか、無言でほっぺを膨らませたアーシアが、俺の頬をつかんできた。

 

「うふふ、ごめんなさい。それじゃあ、今日の議題だけど、二人もそろそろ使い魔を持つ頃ね」

「使い魔、ですか?」

「そう、使い魔。貴方とアーシアは、まだ持っていなかったわよね」

 

 使い魔。悪魔にとって、手足となる使役すべき存在。悪魔の仕事でも役に立つという。

 チラシ配りとかも、本来は使い魔の仕事らしい。新人の仕事として、深夜にチャリで爆走したなぁ……。

 

 ポン!

 

 手品のような音がして、部長の手元に可愛らしい蝙蝠っぽい使い魔が現れた。

 

「コレが私の使い魔。イッセーはあったことがあるわよね」

「え?」

 

 蝙蝠に? なんて考えていると、再び手品のような音と共に、蝙蝠が変身する。そこに現れたのは、ウェイトレスのような服装をした美少女。

 あ、この子、あのデートの日に駅前でチラシ配りしてた子だ。

 

 可愛かったから、思わずチラシ受け取っちまったんだよな。そういえば、使い魔を人間に変身させて配らせてる、とか前に言ってたっけ。

 要は、この子が俺と部長達を繋げてくれたみたいなものか……なんか感慨深いな。

 

『死んでくれないかな』

 

 ………………。

 

 記憶に残った引っかき傷から、心に鈍い痛みが生じる。ため息をついて、女の子が蝙蝠だった落胆と一緒にその痛みを吐き出すと、朱乃さんが指を床に向ける。

 

「私のはコレですわ」

 

 そう言って呼び出されたのは、手乗りサイズの小鬼。

 

「……シロです」

 

 小猫ちゃんは胸に白い子猫を抱いていた。うん、どっちもかわいいなぁ。

 

「僕のは――」

「ああ、お前のはいい」

「つれないね」

 

 苦笑しつつも、木場は小鳥を出現させて、肩に乗せていた。絵になってるじゃねえか、イケメン。

 

「悪魔にとって基本的なものよ。主の手伝いから情報伝達、追跡にも使えるわ。臨機応変に使えるから、二人も手に入れておかなきゃいけないわね」

 

 講釈しつつ、部長が俺の頬をなでてくれる。ああ、癒される……。

 

「あの、その使い魔さんは、どこで手に入れられるんでしょうか?」

 

 アーシアが問いかける。まさかその辺の動物を使い魔にするわけじゃないだろうしな。

 

「それはね……」

 

 コンコン。

 

「はぁい」

 

 ノックの音に、朱乃さんが返事を返すと、二人の女生徒が扉を開き、複数の生徒が入ってくる。あの先頭の人って……

 

「あの、どなたでしょう?」

「この学園の生徒会長、支取蒼那先輩だよ」

 

 知的なスレンダー美人だけど、キツそうな目つきと怖そうな雰囲気で、人気という点では部長や朱乃さんに一歩譲って三番目ぐらい。とはいえ、女子からはむしろ二人より人気なんだけどな。相当に美人さんだし。

 ていうか、生徒会メンバーが全員集合してるじゃん。それに、この感覚……。

 

「お揃いでどうしたの?」

「お互い下僕が増えたことだし、ご挨拶をと思ってね。それに、先日の件でも少し話したかったから」

 

 気安い感じで、二人が会話する。下僕って事は、やっぱりこの人も……。

 

「生徒会長の真実のお名前はソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の次期当主さまですわ」

 

 朱乃さんが、俺とアーシアに説明してくれる。俺たち以外の悪魔がこの学園にいたんだ。多少変な感じはしてたけど、グレイフィアさんとか強烈なのにばっかり関わってたから全然気づかなかったぜ。

 

「リアス先輩。もしかして、俺たちのこと兵藤に話してないんですか? まあ、同じ学校にいて気づかないほうもどうかって感じですけど」

 

 生徒会長の隣にいる、唯一の男子生徒がなんか俺をみてあざ笑う感じで言ってくる。そんな男子に、会長は静かに言った。

 

「サジ。基本的に私達は『表』の生活以外ではお互いに干渉しないことになっているのだから、兵藤君が知らなくても不思議ではないわ。何より、彼は悪魔になって、まだ日が浅いんですもの」

 

 サジって確か、最近生徒会の書記になった……

 

「二年C組、匙元士郎。兵士(ポーン)です」

兵士(ポーン)の兵藤一誠、それに、僧侶(ビショップ)のアーシア・アルジェントよ」

 

 部長と会長が、互いに新しく加わった俺たちを紹介しあう。

 

「おお、同じ『兵士(ポーン)』で、同学年か!!」

 

 なんか奇遇だなぁ。少し嬉しいかもしれない。

 だけど、匙は嬉しがる俺とは真逆にため息を吐いた。

 

「俺としては、変態三人組の一人であるお前と同じなんてのは、ひどくプライドが傷つくんだけどな!」

「なっ、なんだと!」

 

 ちくしょう。事実だけに否定できないじゃねえか!!

 

「お、やるか? 俺は悪魔になったばかりだが、駒四つ消費の兵士だぜ? 兵藤なんぞに負けるかよ」

 

 ――へぇ。

 

「サジ。お止……」

 

 ドゴォォン!!

 

 一足飛びで匙の懐に飛び込んで、顎に狙いを定めて思い切り上へ拳を振りぬいた。匙は天井に頭から突き刺さり、ピクリとも動こうとしない。周りの皆が、呆気に取られているのがよくわかる。

 

 …………アレ?

 

 

 

 

 

「うん。本当にイッセー君の料理はおいしいな。それにしてもライザー氏の時といい、イッセー君は案外血の気が多いんだね」

 

 カップケーキを齧りながら、紅茶を片手に夕日を浴びる。男の俺ですら悔しいがかっこいいと思う状態のイケメンが、笑顔で俺に言ってくる。

 

「いや、だってさ。挑発しておいて警戒すらしないなんて想像つかないだろ!?」

 

 喧嘩は啖呵を切った瞬間に始まっていると思え。

 

 師匠から常々聞かされてきた言葉だ。

 

 天井から引き抜かれた匙は、アーシアに治療を施されて、今はもうピンピンしてる。で、俺はといえば、天井を直した後に自作のお菓子を振舞わされているわけだ。キッチンから続々とお菓子を運びつつも、弁解を続けている。

 

「あんなこと言ったんなら、先制攻撃の一つもかまされると思うのが普通じゃん。ていうか、自分から喧嘩売ったくせに一発程度でのびるなよ」

「て……てめぇ!」

「サジ。お止めなさい。兵藤君の言う事ももっともです。そもそも彼は兵士の駒を八つ消費しています。フェニックス家のライザーを倒した彼に、今の貴方では勝ち目がありません」

「こいつが!? 俺はてっきり、木場か姫島先輩がリアス先輩を助けたものだと……」

 

 匙は俺を目元を引きつらせながら見てくる。珍獣扱いかコラ。軽く睨むと、すぐに視線を外した。こいつ、本当に駒四つ消費か?

 

「ごめんなさいね。兵藤君。アルジェントさん。うちの眷属は貴方よりも実績がないので、失礼な部分も多いのです。よろしければ同じ新人悪魔同士、仲良くしてあげてください」

 

 薄く微笑み、氷の微笑とでもいうかのような表情で会長がそう言ってきた。元々こういう笑い方しかできないのかな。

 

「よろしくお願いします」

 

 アーシアの声に顔を向けると、アーシアが匙の手をとって挨拶している。屈託無く両手で手を握るアーシアに、匙はにへらと笑ってアーシアの手をさすり始めた。

 

「こっちこそよろしく! アーシアさんなら大歓迎だよ!」

 

 この野郎! 変態だのなんだの言っておきながら、中身は俺と大差ねえじゃねえか!!

 

 俺はアーシアと匙の間に割り込み、匙の手を取って握りつぶす勢いで握手してやった。

 

「ハハハ! 匙君、俺のこともよろしくね! つーかアーシアに手を出したらマジで殺すからね、匙君!!」

 

 我ながら凶悪な笑顔をして、殺気満々で言っている自覚がある。だけど、匙は負けじと手に精一杯の握力を込めてきた。痛くもかゆくも無いが、その根性だけは認めてやってもいい。

 

「うんうん、よろしくね兵藤君! 金髪美少女を独り占め気取りだなんて、流石エロエロな鬼畜くんだね! やー、天罰でもおきないもんかな! 下校途中、落雷にでも当たって死んでしまえ!」

 

 悪魔が天罰期待してんじゃねえ! 大体落雷程度で死ぬんなら、とっくの昔にくたばってるわ! 隕石直撃でも生き残った生命力を舐めんじゃねえぞ!

 

 ああ、こいつマジで粉々にしたい。いや、欠片も残さず滅殺してぇ。つーかアーシアに手を出したらマジでそうするぞ。

 

「大変ね」

「そちらも」

 

 ソファで向かい合いながら、部長と会長がなにやら頷きあってる。だけど、今はそれよりこいつだ。

 

「俺はお前と違って、もう会長に使い魔を持つことを許されてんだ! お前はまだチラシ配りが精々だろ!」

 

 やかましいので、アイアンクローで黙らせる。ミシミシと音がするけど、気にせず力を強める。

 

「うるせえドサンピン! 俺だって使い魔をこれからとりにいくんだよ!」

「あら、そちらも?」

「ええ、今日のうちに行こうかと思っていたのだけれど……」

「だったらちょうどいいわ。ご一緒にいかが?」

「そうね。それもいいかもしれないわ」

 

「「ええええぇーーーーーっ!!」」

 

 俺と匙が同時に叫ぶ。が、匙の煩さに思わず鷲掴む手に更に力を加えてしまい……

 

 メキメキ……ゴキャッ!

 

「あ」

 

 再び瀕死になった匙の対応に皆があわてた。脆過ぎるだろ、こいつ……。

 

 

 

 

 

 転移魔方陣を通ってついたのは、冥界の赤い満月の光に照らされた、うっそうとした森だった。……あれ、なんか既視感が。

 

「ここは、悪魔が使役する使い魔が生息している森ですわ。私たちも、皆ここで使い魔を手に入れたんですのよ?」

 

 朱乃さんの解説に対して、匙がため息をつくように感想を述べる。

 

「使い魔の生息する森かぁ、確かに何が出ても不思議じゃない感じがするな」

「ゲットだぜぃっ!」

「きゃっ!」

「うわっ!」

「誰だ!」

 

 突然の大声に、アーシアが俺の背中に隠れ、匙が仰け反る。声のした大樹の上に顔を向けてみると、野球帽を逆向きに被り、ラフな格好をした老け顔の青年が立っていた。

 

「俺の名はザトゥージ! マダラタウン出身の使い魔マスターだぜぃ!」

「使い魔……」

「マスター……?」

「んん~、今宵もいい満月。使い魔ゲットに最高だぜぃ! 俺にかかればどんな使い魔も即日、ゲットだぜぃ!!」

 

 やたらゲットを強調するなぁ、この自称マスターは。

 

「彼は使い魔のプロフェッショナルなんですのよ?」

「へぇ」

「さぁあ! どんな使い魔がご所望なんだぜぃ? 強いの? 速いの? それとも毒持ちとか?」

「いきなり、ハードル高いですって。ちなみに、お勧めとかってありますか?」

 

 匙の質問に、木から飛び降りたザトゥージがリュックからカタログらしきものをとりだした。そこに描かれていたのは、ラスボスでも通用しそうな迫力ある獣。

 

「俺のオススメは、こいつだぜぃ! 龍王の一角『天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)』ティアマット! 伝説のドラゴンだぜぃ! 龍王唯一のメスでもある! いまだかつてこいつをゲットできた悪魔はいないが、それも当然だぜぃ! なんたって、魔王より強いってはなしだからな!」

「これ、使い魔ってレベルじゃないだろ! ラスボス級じゃねえか! しかも誰もゲットしてないって、あんたオススメの意味分かってんのか!」

 

 匙が一々最もな突っ込みを加えるが、部長と会長は乗り気に見える。

 

「サジ、まさに兵藤君を見返すチャンスでは?」

「か、会長! 無茶ですよ! 普通に死にます!」

 

 眼鏡を持ち上げながらかけられる会長の発破がけだけど、流石に匙も図だけで力の差を悟ったらしい。そして、朗らかに我らが部長も無茶を言う。

 

「いいわね、伝説のドラゴン同士なら、意気投合できそうだわ。イッセー。私の可愛い下僕なら、それくらいはやってのけるのもアリね」

 

 可愛い下僕を殺す気ですか!?

 

「無理っすよ、部長! 図鑑の時点で既に敵意いっぱいじゃないですか!」

「気のせいさ、イッセーくん。うん、いけるいける」

「うるせぇ木場ァァァァッ!! 今の俺の状態で再戦とか、確実に殺されるわ! 大体意気投合も何も、ドライグ――赤龍帝はティアマットに毛嫌いされてたからむしろ逆効果だったっつーの!」

「……え?」

 

 誰かの呟いた疑問の声で、一瞬周りが一気にシンと静まり返る。

 

「イッセー君。今、なんて……」

「ああ!? ドライグはティアマットに毛嫌いされてたっつってんだよ! そもそも世界各地を転々としてるアイツをどうやって捉えるってんだ!」

「……そうじゃなくて、その前です」

「え? 図鑑の時点で敵意いっぱいって事? ていうかアイツ、こんな何気ない図でさえも敵意に満ちてんじゃねえか」

「その、もう少し後ですわ」

「……再戦したら、確実に殺される?」

 

 いや、事実を口にしただけなんですけど。

 

『えええええええーーーーーっ!!?』

 

 全員が、一人残らず叫び声を上げる。なんなんだよ、一体。

 

「イッセー! 貴方、ティアマットと戦ったことがあるの!?」

「はい。……ああそうか。なんか見覚えがあると思ったら、俺ここに来たことあったんだ。森の奥地で、神さんが誘い出しだティアマットと戦ったんだよなぁ」

 

 一応勝つには勝ったけれど、間にかなりの悶着があった。まあ、それは別にいいだろう。

 

「そういうわけなんで、アイツとは少なくとも前くらいに強くなるまで会いたくないんで、他にもっと捕まえやすいのはいないっすかね」

「あ、ああ……そうか、ならこれだ! ヒュドラ!」

 

 たくさんの首がついた巨大な蛇のイラストを見せられる。髑髏のマークに、端にしゃれこうべまで転がってやがる。

 

「こいつはスゴイぞぉ! どんな悪魔も耐えられないくらい、コイツの毒は猛毒だ! しかも不死身! 主人も毒殺する最悪の魔物だぜぃ! どうだ、有効的だろう?」

「殴っていいすか、会長。俺、こいつを殴っていいですか」

「落ち着きなさい、サジ。頑張りどころを間違えてはダメよ」

「ヒュドラなんてレアで素晴らしいじゃないの。確か、この森の奥に……」

「いや、いませんよ。俺がほとんど喰っちまいましたから」

『はっ?』

 

 またしても、周りが凍りつく。今度は何だよ。

 会長が、恐る恐るといった感じで質問してくる。

 

「喰った? ひょ、兵藤君、それは食べたってこと?」

「他に何があるんですか。ティアマットと戦う前の準備運動に、奥地で異常発生してたヒドラの群れと戦ったんですよ。その時に戦ったのは全部仕留めて喰ったし、仮に生き残りがいたとしても、当時暴れまくった俺がいる時点で警戒して近寄ってこないと思いますよ」

 

 野生の獣はその辺敏感だからな。

 

「はっ! お、思い出したぜぃ! 使い魔博士のオーギトゥ博士が、使い魔の森にとんでもない異変が起きたと言っていた時のことを! あれがお前さんかぃ!」

「そんなことより、他にオススメっているんですか? できればちゃんとした方向で」

「う、う~ん。流石に難しいぜぃ。何かこれがいいってのはあるかぃ?」

「えっと、そうっすね~。可愛い使い魔とかいますか? 女の子系とか」

「俺も~、そんなんがいるんならそっちのほうが」

 

 匙のヤツも乗ってきやがった。やっぱりこいつこの手のノリに関しては俺と同類だな。

 

「チッチッチ! これだから素人はダメなんだぜぃ! 使い魔ってのは有用で強いのをゲットしてナンボだぜぃ。更に個体ごとの能力を把握して、自分の特性を補うような……」

「あのぅ、私も可愛い使い魔が欲しいです」

「おおぅ! わかったよぉ!!」

 

 ウザい自論語り始めたと思ったら、アーシアのお願い一発で満面の笑みで頷きやがった。

 

「な、なんだこいつ!」

 

 匙は憤ってるけど、俺は何も言わない。ムカつくけどこれからお世話になる相手なんだ。

 

「ザケル」

 

 ドガァン!

 

 だから限界まで弱くした電撃で勘弁する。

 

 

 

 

 

「この泉には精霊が集まるんだぜぃ。そして、ここには水の精霊『ウンディーネ』が住み着いているんだぜぃ」

 

 電撃から早々に立ち直ったザトゥージにつれられて、やってきたのは澄み渡る綺麗な湖だった。

 

 ウンディーネかぁ。確か、清い心と美しい容姿をした乙女だっけ。癒し系とでも言っておこうか。

 

 俺のハーレムの第一歩としては最適だな! むふふ……ま、まずは膝枕だ。次に耳かきをしてもらって、更に神秘溢れてやまないお、お、おっぱいでスキンシップを!!

 

「部長! 使い魔だから、俺の好きにしていいんですよね!?」

「ええ、好きになさい。貴方の使い魔なのだから」

「ふふん、情けないな兵藤。女に相手にされない男はこれだから哀れだ」

 

 気持ちがはやる俺を、そんなにモテる部類でも無い筈の匙が上から目線気味に笑うが、今回は許してやる。だってこいつも気持ちがはやってるみたいで、貧乏ゆすりしてるんだもん。俺と同様、期待を隠しきれない様子だ。争奪戦になったらぶっ飛ばすけどな。

 

「あっ、泉が!」

 

 木場の指摘するとおり、泉が輝きだした。

 

「お! ウンディーネが姿を現すぞ!」

「「おお!!」」

 

 俺と匙は同時に期待の声をあげ、泉の上を凝視すると、美しい金髪が泉から浮かび上がってきた! うおおお! 俺を幻想的な世界へいざなってくれっ!!

 

 泉から全身を現し、金髪を揺らして振り向いた――巨躯の存在。

 

 大砲のようにぶっとい上腕、電柱並みに太い足、鉄板仕込のような分厚い胸板、全身には歴戦の戦士のような傷跡が見られる。

 

「「ああ?」」

 

 俺は何度も目をこすり、目の前の光景を何度も見返す。匙も同じ事をやっているが、どうやら俺と同じものしか見えないらしい。

 

 …………。

 

『フンガァァァァーーーーーッ!』

「「なんじゃありゃあああああああああっ!?」」

「あれが、ウンディーネだぜぃ!」

「ざけんな! どうみても水浴びに来た格闘家じゃねえか!? あの棘つきの腕輪とか、一体なんなんだ! なんだフンガーって!!」

「あれは人間を破壊するために鍛え上げられた肉体だろ! 隙すらみあたらない。猛者だ、猛者!」

「運がいいぞ、少年たち! ウンディーネも縄張り争いが絶えない。腕っ節が強くないと、泉を手に入れることもできないくらい実力主義の世界、それが精霊の世界だ。強そうなウンディーネだ。アレは中々レア度が高い。ゲットをオススメしよう! 打撃力に秀でた水の精霊も悪くない!」

 

 騒ぎ立てる俺たち二人を余所に、ザトゥージが専門家っぽい批評を下す。

 打撃力に秀でた精霊ってなんだよ!? 百歩譲って、せめて近接戦に秀でた精霊くらいにしてくれよ!!

 

「悪いわ! 癒し系っていうか殺し系じゃねえか!」

「打撃力の高い精霊なんかいらないんだよぉ!」

「でも、かなりの実力を持ってるし、アレは女性型だぜぃ?」

「「……最も、知りたくない事実でした」」

 

 匙は四つんばいになり、俺は天を仰いで、それぞれ顔を覆って号泣する。

 うおおおおおおおおおおおお! あれが娘っこですかぁぁぁぁぁぁぁ!? こんな残酷な事実があっていいのか!

 

「イッセー、常に世界は変動しているわ」

「サジ、世界には自分の思い通りにならないことが多くあり、これもその一つです」

 

 俺たちの肩に手をおいてうんうんと頷きながら慰めの言葉をくれる部長と会長だけど、こんな変動いらねぇッスと!

 

「でも、清い瞳をしています。きっと心の清らかな女の子に違いありません」

 

 うん、アーシア。ニッコリとした微笑が今日も可愛いね。でも、お願いだからあれを女の子と形容しないでくれないかな。涙が止まらないから。

 

「あ、もう一体現れましたわ」

 

 朱乃さんの言葉に顔を前に向けるが、そこには先ほど見た存在と同等の鋼の肉体しか認められなかった。

 

「うぅ、うおおおおおおおおお……!!」

「イ、イッセーくん、そんな嗚咽を漏らすことないんじゃないの?」

「木場ぁぁぁぁ。俺はファンタジーに夢を見てきた。だって、悪魔の部長は超キレイじゃないか。夢を持ってしまうじゃないか。どうして俺は古代ローマの拳闘士の入場シーンのようなものを見なければいけないんだッ!」

 

 今まであってきた妖精は可愛かったし、神様も妖怪も美女美少女ぞろいだったのに、どうして精霊だけが……

 

「俺も……生徒会の皆を見てきたから、きっとって思ってたんだ……なのに、なんで総合格闘技の登場シーンまがいなものをみせつけられてんだ。嫌いだっ! ファンタジーなんて嫌いだーーッ!!」

 

 わっと号泣する俺たちの背中を、木場がさすってくれる。

 

「大丈夫。イッセーくんたちの夢がかなうファンタジーもあるよ、きっと」

 

 本当に、たまにイイ奴だとおもえるんだよな、こいつ。

 

「おっ、見ろ!」

 

 ザトゥージが指差す先を見れば、いかつい姿のウンディーネがにらみ合っていた。激しい敵意が周囲を支配し、闘気が空間を歪ませる。そして――

 

 ゴッ、ドガッ、ガゴッ!

 

 先制攻撃は、最初のウンディーネ。仮にウンディーネAだ。もう一人はウンディーネB。ウンディーネAの太い腕がウンディーネBの腹部に突き刺さり、もう一方の腕で顎にアッパーを叩き込み、華麗なコンボを決める。

 が、ウンディーネBも負けじとローキックを爆音を鳴らしながらウンディーネAのふとももに打ち付け、愚直なまでにまっすぐに放った拳がウンディーネAの顔面に食い込んだ。

 そのまま乱打戦に移行し、穴という穴から血を噴出す両者。神聖な雰囲気をかもし出す泉は、拳で語る二人の乙女の血を受け止める闘技場と化した。

 

 ……え? なんで闘ってるの、この娘たち?

 

「縄張り争いだ。しかし、どちらも歴戦の猛者みたいだぜぃ」

「縄張り争いって……精霊魔法とか、使わないんですか?」

「所詮、腕力が物を言う」

 

 小猫ちゃんが無情にも宣言する。更に涙が激しく滴り落ちる。

 

「部長、俺帰ってもいいスか? そろそろ泣きますよ?」

 

 既に泣いているけどね! なんなんだこの幻想破壊精霊。ゲットしても肉弾戦しかできねえよ。追跡ったってこの巨体じゃあ役に立つわけねえよ。電柱に隠れらんねえじゃんか

 

「な、名前はウンディーネのディーネちゃんでいいでしょうか?」

 

 目の前の果し合いをハラハラしつつ見つめながら、アーシアが呟く。

 え? 何気にアーシアちゃん、ゲットするき? ていうかどっちがディーネちゃん? A? B?

 

「アーシア、あのディーネちゃんはどう考えても俺たちの手に余る。アーシアがあんな筋骨隆々としたのを使い魔にしたら、近づくだけで妊娠しちゃうぞ?」

「イッセーさんの子供なら私、産みます!」

「うん。何を言っているんだ、君は。そうじゃないだろう! ……え!? マジで俺の子供を産んでくれるの!? いや、そうじゃない! あのディーネちゃんはあきらめなさい! アーシアじゃ扱いきれん!」

「で、でも、ディーネちゃんはきっと孤独に生きてきたに決まってます……。私にはわかるんです」

 

 腕っ節が強くなければ生きていけず、他の同属と闘わなければならない水の精霊の何かがアーシアと通じ合ったらしい。アーシアの肩に手をおいて、可能な限りの笑顔で諭す。

 

「そうだったとしても、あの子は一人で生きていける。ほら、どうみても強敵を打破できるだけの肉体作りに成功しているからさ。てか、勝手に名前なんか付けちゃいけません!」

「おい、少年! ディーネちゃんが!」

 

 だからどっちだかわかんねえっての!

 

 ドバァァァン!!

 

 ……あ? 背負い投げでウンディーネの一体が泉の水面にたたきつけられ、喰らったほうが泉にぷかぷかと浮いている。

 

 そして、立っているもう一体が、こっちを向いた。体つきからして、最初に泉にいたほうだろう。とりあえず、仮称としてディーネちゃんと呼ぶか。

 

 ディーネちゃんがこっちへ全力疾走してくる。俺たちを敵だと思ったんだろうか?

 

 嘆息しつつ上着とシャツを脱いで、上半身を露出する。呼気を整え、覇気を全身から解放する。

 

「うおおおおおおおおッ!!」

 

 途端、質量を増す俺の体。全身が二回りほど大きくなった肉体で、ディーネちゃんを迎え撃つ。

 

 ドゴォッ!

 

 鳩尾に叩き込まれる拳を余裕で耐え、反対に俺の拳を叩き込む。

 

「三連! 覇皇連衝拳!!」

 

 ズドドドォォォン!

 

 炸裂する衝撃に、ディーネちゃんの巨体が吹っ飛び、泉に叩き込まれる。

 

 周囲が呆気に取られる中、元に戻って服を着た俺は浮かび上がるウンディーネたちを見据えて言い放った。

 

「俺より弱い肉体派なんぞに用は無い!」

 

 結局、ウンディーネは諦めて他の場所へ移動することになった。道中、会長が部長に「リアス、すごい子を眷属にしたわね」と呟いていた。評価が難しいです。

 

 

 

 

 

「ん? あれは……」

 

 ぞろぞろと移動していた最中。木の枝の先に止まる存在を見つけた。メンバーの中で、俺が一番に気づいたらしく、俺が上を見上げていることに気がついた皆が、同じ方向へ顔を向ける。

 

 蒼い輝きを放つ鱗で身を覆った、オオワシくらいの大きさの、ドラゴンらしき生き物。

 

「蒼い雷撃を放つ龍、蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)か……かなり上位のドラゴンだな」

 

 二天龍や五大龍王には比べるべくも無いけどな。それでも、十分に強力といっていいドラゴンだ。

 

「そういえば、オーギトゥ博士が、この森にドラゴンが飛来しているといっていたぜぃ。他にもなんだか妙な生き物が森を荒らしまわってるといっていたが……それはともかく、あの大きさは子供だな。ゲットするなら今だぜぃ。成熟したらゲットは無理だからな」

「蒼雷龍。私も生でははじめて見るわ。キレイ……ブルーダイヤモンドのように蒼くかがやいてるわ……」

 

 部長も目を輝かせているし、他の皆も羨望の目で蒼雷龍を見ている。でもなぁ……俺としては、電撃は既に雷龍帝の脚甲(ライディング・ギア)があるし、いくら珍しくてもそこまで食指は動かない。アーシアに譲るか……。

 

 ――と考えたその時。

 

「キャッ!」

 

 アーシアの悲鳴に顔を向けると、何かゲル状の粘ついた物体がアーシアに降りかかっていた。

 

「こ、これは!」

 

 部長にも! ていうか、女子全員に降りかかってる!? ていうか、これなんか動いてるぞ!

 おおおおおお! なんかエロイ!

 

「スライムか! うあ!」

 

 剣を振ろうとした木場が、目にスライムが張り付いて尻餅をつく。

 身に覚えのない生物に危機感を抱き、神器を出現させる俺だが、次の瞬間、そんなもんは消し飛んだ。

 

「ふ、服が!」

 

 み、皆の服が融けていくぅぅぅぅぅぅ!! 部長のおっぱいが! 朱乃さんのお尻が! アーシアのふとももが! 小猫ちゃんの腰が! 会長の柔肌が! 素晴らしい光景が、目の前に広がっているうぅぅぅぅぅぅ!!

 

 ブンッ。

 

 大事な部分を隠しながら小猫ちゃんが殴りかかってくるが、反射的にかわしちまった。

 

「……みないでください」

 

 そんなことを言われてみないようじゃ、男が廃る! 脳内保存脳内保存!

 

「ひょ、兵藤……手前、見てんじゃねえ……」

 

 サジは俯いて鼻を抑えながら俺に言う。そんな台詞は滴り落ちてる赤いものをとめてから言うんだな。

 

「くそぉ!」

 

 木場は顔に張り付いたスライム相手に格闘してる。呼吸できてるみたいだし、問題ないな。がんばれイケメン。

 

 更に、木の幹から触手がとびだし、女性陣に絡んでいく。スライムに目を覆われているが、多分その前にみたであろう証拠を鼻から垂れながらザトゥージが説明する。

 

「このスライムは、女性の服だけを融かす特性を持っている。それでそっちの触手は、女性の分泌液を摂取する。特に目立った害はないが、こいつらはコンビで獲物を襲うんだ」

 

 ……なん、だと? 女性の服だけを融かすスライム? 女の分泌液を主食とする触手?

 

「珍しくは無いが、森の探索中には迷惑な連中だな。火の魔力で一気に蒸発させるのが一番――」

「部長! 俺、こいつらを使い魔にします!! これぞまさに、俺の求めていた存在です!」

 

 森中に響き渡るんじゃないかと思えるほどの大声で宣言する俺を、部長は火でスライムと触手を焼きながら嘆息する。あああ、俺のスライムと触手が!! でも、少し美味そうだな、こいつら。あの焦げ目がいい感じな気がする。

 

「あのね、イッセー。使い魔は悪魔にとって重要なものなのよ? ちゃんと考えなさい」

「わかりました」

 

 目を瞑って、考え込む。

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

「やっぱり使い魔にします!」

「早いわ、イッセー。考え込んでから三秒しか経ってないわよ」

 

 うわ! 皆がスライムと触手を殲滅しだした! やめてくれええぇぇぇぇぇぇ! 俺の使い魔があああぁぁぁぁ!

 

 残っているのは、既にアーシアを襲うもののみ。俺は反射的にアーシアごと連中を抱きしめ、盾になる!

 

「どきなさい、イッセー。こういう生き物は焼くに限るの」

「いやです! こいつらは俺と出会う為に生を受けたに違いない! こいつらはもう、俺の仲間なんですよぉぉぉ!!」

「イッセーさん……私に抱きついてくれるだなんて……」

 

 すまん、アーシア。耐えてくれ。俺はこいつらを守らなきゃいけないんだ。

 

「うぅぅ、スラ太郎、触手丸! 俺が絶対に守ってやるからなぁぁぁ!!」

「もう、名前までつけてるんだ……」

「すげぇ情熱だ……俺、お前のエロさを見縊ってたよ、兵藤」

「森の厄介者をここまで欲しがる悪魔は初めてだぜぃ。世界って奴は広いんだぜぃ」

 

 男性陣がなんだか色々言っているけれど、そんなことは関係ない。俺はこいつらのエロさに漢をみたんだ!

 

「リアス……貴方は本当にすごい子を眷族にしたのね」

「ふだんはいい子なのよ……ただ、欲望に物凄く正直だから……」

 

 可愛そうな目でみられてもいい! 俺はこいつらで、更なる高みに上るんだ!!

 

 バリバリバリバリバリバリッ!!

 

 うおあ! なんか体に軽い衝撃が走る。これは、電撃!? ていうか、ああ!! 俺は大丈夫だけど……

 

「スラ太郎ぉぉぉぉぉ!! 触手丸ぅぅぅぅぅ!!」

 

 黒焦げになった二体を抱きしめ、慟哭する。当の蒼雷龍は、部長になでられて顔を赤くしていた。

 

 そういえば、蒼雷龍の電撃は敵にしかダメージをあたえないんだっけ。じゃあ、アーシアは敵じゃないと認識されたわけか。そういや、ドラゴンのオスは他種族のメスが大好きでオスが嫌いだったよな。

 

「……スラ太郎と、触手丸は、俺の無二の仲間になるはずだったんだ。あいつらと一緒に、ハーレムでいろいろあれこれと……それをおまえは、あいつらごと黒焦げに……」

 

 どさくさにまぎれて、スラ太郎と触手丸を口に入れる。俺の血肉となれ、我が友よ。あ、やっぱり焦げ目があんがい美味しい。

 

「ガー」

 

 一方、ドラゴンは大あくびをかいていた。

 

 ……ブチ!!

 

「こ、の……電気トカゲがあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあッッ!!!」

『Maximum Drive! DriveⅡ!! DriveⅢ!!!』

 

 ドォォォォォォォン!!!

 

 解放された力の奔流が全員を吹き飛ばし、膨張した筋肉が制服を破り、篭手と脚甲からは炎と電撃が迸り無差別に周囲を破壊する。

 

「す、すごいですわ! 今までに感じたことの無い魔力の波動! イッセーくん、まだ眠っている力があったのですね。こんな事で覚醒するだなんて……」

「凄まじいオーラだわ! イッセー、どうしてその力を他に使わないの!」

「いやらしい欲望と純粋な性欲。それらを裏切られた激しい怒りがイッセーくんを突き動かしたのか!」

「……どスケベがただキレただけ」

 

 木につかまりながら、皆が口々に感想を言っている。小猫ちゃん、君が一番正解だ!

 

「なんという……最上級悪魔にも届こうかというほどの力。とてつもない圧力だわ」

「俺、あんな奴に喧嘩売って生きてたんだ……」

 

 生徒会の面々も何か言っているが、俺の怒りはもう誰にも止められない!

 

「ガー!!」

 

 バチィ!!

 

「チンケだな……たかが蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)ごときの電撃なんざ、雷龍帝(ヴェロシティ・ドラゴン)の金色の雷に比べれば、静電気にすら値しねえ……」

 

 それに、こいつは子供だ。大人でさえ今の俺に電撃が通じるかは怪しいのに、成熟していないこいつの攻撃で俺がどうにかなるわけが無い。

 

無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)……無限と夢幻を除いて最強と謳われた二天龍の片割れ、赤き龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)の力!! その身に喰らって消え果てろおおおおおおお!!」

 

 ライザーっぽい決め台詞をはいた後、拳にすべての力を集中させ、まっすぐ突っ込む。恐れで動けなくなっているドラゴンに、全力の一撃をくらわせ――ようとした直前、アーシアが間に入り、俺は拳を振りかぶった姿勢で、両手を広げたアーシアの前に止まる。

 

「あ、アーシア!?」

「いじめちゃダメです!」

 

 アーシアはドラゴンを抱きしめ、戒めるように言った。

 

「だ、だけど……」

「ダメです!!」

 

 ぐおおお……こうなったら手がだせないじゃねえか……。成す統べなく、マキシマムドライブを解除する。炎も雷も消えた。

 

「蒼雷龍は心の清いものに心を開くとも聞く。完全にその子に気を許しているようだぜぃ」

 

 木の陰からザトゥージが説明してくれる。そりゃあ、アーシアの心はキレイだろうさ。それでアーシアに懐いたのか。

 

「イッセーの負けね」

 

 ぞろぞろと出てきた皆を代表して、部長が俺の肩をたたく。

 

「あ、あの、このドラゴンくんを使い魔にしてもいいですか?」

「イッセーしだいかしらね。イッセー、どうなの?」

 

 皆の視線が俺に突き刺さる。……はあ、これじゃあ完全に俺が悪者じゃないか。まあ、あんな子ドラゴンに全力の殺意を向けたのはやりすぎたかな。

 

「はい、アーシアに任せます」

 

 

 

 

 

「……ア、アーシア・アルジェントの名において命ず! 汝、我が使い魔として、契約に応じよ!」

 

 森の入り口に戻ってきた俺たち。今、目の前でアーシアが展開する緑色の魔方陣の中央に蒼雷龍をおいて、使い魔の契約儀式を執り行っている。

 

 朱乃さんのサポートがあるとはいえ、アーシアは初心者とは思えないほど立派に契約を進めている。本当に、俺とは比べ物にならないほど優秀な子だ。

 

 普通、蒼雷龍は悪魔に降らない。上位のドラゴンである蒼雷龍と契約できたのは、アーシアが特別清い心の持ち主だからだろう。ちなみに匙は森で見つけた蜥蜴みたいな奴を使い魔にしてた。無難に済ませたって感じだな。まあ、蒼雷龍と比べるのも酷か。

 なんて考えてるうちに、魔方陣が消えていく。契約が完了したみたいだ。蒼雷龍はアーシアの元へ飛んでいって、じゃれだした。

 

「うふふ、くすぐったいです、ラッセーくん」

「ラッセー?」

「はい。雷撃を使うのと、イッセーさんの名前からもらったんですけど、ご迷惑でしょうか?」

「いや、全然。よろしくな、ラッセー」

 

 が、ラッセーは俺を見て口を開くと、再び電撃を放ってきた。

 

 バチ! ビリビリビリビリッ!

 

「……おい。百歩譲って電撃はいいとしても、効かないってことくらい学習しろよ」

「うふふ、男の子が嫌いという辺り、イッセーくんに似てますわね」

 

 同属嫌悪ってことですか、朱乃さん。

 

「ヤンチャね、ラッセーは」

「ヤンチャすぎますって……。ああ、やっぱり俺、スラ太郎に触手丸がよかった……」

「スケベ死すべし」

 

 小猫ちゃんの一々最もなツッコミが入る。反論の余地は無い。ちなみにラッセーは未だに電撃を放っている。

 

「……つーか、せっかく直した制服がヤバいからそろそろやめろ! 俺はともかく服はまるっきり無事じゃないんだぞ!」

 

 俺が怒鳴るとラッセーは電撃を吐くのを止めて、ぜえぜえと息をつく。この野郎、そんなに疲れるまで電撃を吐くか。どんだけ男嫌いだこの野郎。ていうか俺が嫌いなのか。

 

 マキシマムドライブの所為で破れたのを直した制服がまたボロボロに……ため息をついて、両手を打ち合わせて錬成する。

 

 バシュウ!

 

 直ったけど、流石に布地が薄くなってきたな。帰ったら布を足して錬成しなおさないと。ていうか神さんに頼んで、制服を戦闘服くらい丈夫に改造してもらおうかな。

 

「兵藤君は魔力の扱いが不得手と聞いていたのですけれど、意外とそうでもないんですね」

「う~ん。どうかしら。あれは見た感じ、どちらかと言えば魔法に近いといったようだけれど……」

 

 部長たちがなにやら呟いているが、とりあえず俺はもう帰りたい……。

 スラ太郎、触手丸……お前らのエロさと味は一生忘れない。

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