ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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Life.33 おっぱい、実ります!

 深夜の廃墟の中、俺は黒いコートをなびかせて走る男を追いかけている。角を曲がった直後、閉まるドアを見てそこへ駆け寄り、ドアを開けると同時に男の顔が目の前に迫る。

 

「うお!」

 

 驚いた俺の頭に手が置かれ、宙返りを決めて駆け出す男を再び追いかける。風体は怪しいだけのおっさんだってのに、結構動けるじゃねえか! ある程度走ったところで、男は屋外の階段へ繋がる扉を開けた。よし、追い込んだ!

 

 男が階段を前に立ち止まったところへ到着すると、ゆっくりと上の階段から部長が歩を進め、下の階段を木場が固めていた。

 

「ごきげんよう、はぐれ悪魔さん。貴方の討伐命令が下ったわ。主の下を逃げ、己の欲求を満たす為に暴れまわる不貞の輩。その罪、万死に値するわ。グレモリー公爵の名において、貴方を吹き飛ばしてあげる!」

「くぅ……」

 

 威風堂々と宣言する部長を前に、男はただ悔しげに唸る。

 はぐれ悪魔討伐の命令。それを受けた俺達は、こうしてそのはぐれ悪魔を捕まえる為に、ここにきたというわけだ。

 

「ッ!」

「無駄よ」

 

 男が無数の魔方陣を展開するが、部長の破滅の魔力によって、全て吹き飛ばされる。

 

 ドガッ!

 

「裕斗」

「はい、部長!」

 

 反動で、手すりに背をぶつけた男へ、剣を携えた木場が迫る。男は反射的に木場の脇をすり抜けようと走り出すが、木場がすれ違いざまに剣を一閃させる。肩を押さえてうずくまる男へ、木場が剣を突きつけると、男は観念したように呻く。さすがイケメン。

 

「あらあら、もう終わりましたの?」

「朱乃さん、小猫ちゃん」

 

 別ルートから男の逃げ道をふさいでいた二人が、俺が出てきた出口から現れる。小猫ちゃんの手には、変な虫が一匹握られていた。

 

「こちらも終わりましたわ」

「ご苦労様」

「弱かったです、これ」

 

 手厳しい言葉と共に、小猫ちゃんが手の中の虫を男の下へ放る。床に落ちた虫は、全身泡となって消えてしまった。

 

「これって、こいつの使い魔?」

 

 キメラじゃねえか。じゃあ、こいつ錬金術師か。

 

「この虫さん。なぜか私の胸を集中的に狙ってきましたわ」

「胸を?」

「……イッセー先輩みたいな虫です」

「悪かったね、虫のような存在で」

 

 ゴキブリ並みにしぶといとかよく言われるけどな。

 

「はああ~。み、皆さん」

「大丈夫か、アーシア」

 

 肩で息をしながら、アーシアがこくりと頷く。

 

「はい……お二人に、守って、いただけましたので……」

 

 凄い疲れようだなぁ。アーシアはホント運動が苦手だよな。

 

「さて、チェックメイトよ。はぐれ悪魔さん。それともリザインせずに向かってくる覚悟はあるかしら?」

「いや、降参しましょう。彼のグレモリー家の姫君が相手では、分が悪すぎる」

 

 部長の挑発的な言葉に対し、錬金術師は両手を上げて降参の意を示す。が、その顔は不適な笑みを浮かべ、部長の一部分――胸へと強い視線を送っている。

 

「ふっ。よいお乳をされている」

「てめぇ、部長になんて事を言ってやがる!」

「……イッセー先輩みたいな悪魔です」

「……悪かったね。俺みたいなスケベで」

 

 デレてくれとまでは言わないから、もう少し態度を柔らかくしてもらえませんか、小猫様。

 

「朱乃。彼を拘束後、魔方陣で冥界へ転送して頂戴」

「了解しましたわ。うふふふふ、もっと抵抗していただけたら、私も楽しめましたのに」

 

 手を上に掲げて光の紐を作りながら、朱乃さんが恍惚とした表情で扇情的かつ怖いことを言う。

 光の紐が男を拘束し、直後に魔方陣が展開される。

 

「ふふ……」

「冥界の裁きに身をゆだねなさい」

「ええ、やるべき事はやりましたからね」

「ん?」

 

 男の一言に部長が疑問の声を漏らすが、男は光と共に転送されていった。

 

「それで、部長。こちらに見せたいものが」

 

 そう言った朱乃さんについていき、隠されていた地下への階段を降りていく。たどり着いた場所は、フラスコや大きなケースが置かれた、いかにも怪しい部屋だった。

 

「研究室?」

「報告では、夜な夜なここで何かの実験を繰り返していたとか」

 

 部長と朱乃さんのやり取りをききつつ、俺は棚に置かれた資料へ手を伸ばす。

 予想通り、生物や植物、そして魔物に関するものばかりだ。やがて、男の書き残した研究レポートと思われる書類に行き着いた。

 

「イッセーくん、どうしたの?」

「どうやらあいつ、ここでキメラを作っていたらしい」

「あのぅ、キメラっていうのは?」

 

 最近のアーシアは質問が多いな。向上心があっていいけど。

 

「複数の生物の特徴を併せ持った怪物だよ。どうやらあの男は、魔物を専門にした錬金術師らしい。食獣植物とドラゴンを掛け合わせるとは、面白い発想だな」

「ちょっと、私にもみせてくれる?」

 

 言われたとおり資料の一部を手渡すと、部長は渋い顔になって資料を返してきた。

 

「イッセー……私にはそれが料理のレシピにしか見えないのだけれども」

「記録を暗号化して記すのは研究者じゃよくあることですよ。錬金術は台所で生まれたなんて説があるくらいですから、料理のレシピに見せかけるのも常套パターンです。しかしこれ、一定の感覚で符号化してるから、逆に分かりやすくなってるなぁ」

 

 ここまで簡単だと逆に勘繰っちまう。自分の研究を広める為にわざと簡易な暗号で記したり、そのまま記述するやつもいるにはいたし。

 

「……よくわかりますね」

「生体を専門にしてる錬金術師が身近にいたんでね。研究資料の暗号解読も、神さんに散々やらされたし。俺だって、伊達に錬金術師はやってないさ」

 

 そう言った途端、皆が大なり小なり驚きの色を滲ませ、部長は呆れたようにため息を吐く

 

「……また初耳ね。碌に聞いてこなかった私も悪いかもしれないけれど。ちなみにイッセーは、何の研究を行っているの?」

「今は少しブランク開いてますけど、主に金属関係です。神さんの持ってきたものの解析や解読から得た技術も多いから、俺の研究はほとんど神さんのおかげですけどね」

 

 とは言え、とんでもない危険物が持ち込まれる事も多いから、差し引きってところかな。

 

「ですが今まで見てきたなかで、イッセー君の錬金術はどうも私達が知っているそれとは大分違うみたいですけれど……」

「まあ、俺のは神さんに教わった術式ですからね。どっちかって言えば魔法の類なんですよ」

「そうなの。丁度いいわ、ここで少し説明してもらえるかしら」

 

 ……部長に言われちゃあしょうがないか。

 

 俺が練成した椅子に座った皆を前に、神さん曰く、門式錬金術の講義を始める。基本理論から始まり、等価交換の大原則等等。一通り説明を終えたところで、小猫ちゃんが手を上げた。

 

「はい、小猫ちゃん」

「……イッセー先輩は陣を書かずに練成してますけど、あれはどうしてるんですか」

 

 ああ、やっぱりそこを気にかけるのか。まあ、そうだよな。

 

「俺は自分自身が構築式だから。手を合わせて円を作るだけで、後は手を当てれば錬成ができるんだ。特別な錬成は陣を書いたりするけれど」

「……ちなみに、なんでそうなったんですか?」

 

 突っ込んでくるなぁ。普段の癖?

 

「真理をみたからさ」

「……かっこつけですか?」

 

 言われると思ったよ。でも事実そうなんだからしょうがないだろ?

 あの時、どこも『持っていかれなかった』のは、本当に運がよかったと言えない。その要因のせいで扉に引っ張り込まれたから、一概にそうとも言えないけど。

 

「ともかく、有意義な話だったわ。それでイッセー。結局あの錬金術師は何が目的だったの?」

「分かりません。これに書かれてるのは、そのキメラとその原料の生体情報と、生成方法だけです。他の資料も調べて見ますか?」

「いいえ、私達の仕事はもう終わったわ。重要そうな資料は冥界に転送して、後は破壊しましょう。イッセー、めぼしい資料を集めて頂戴」

「はい、部長」

 

 指示通り、重要と見られるものだけをかき集め、あとは綺麗さっぱり掃除する。しかし、このキメラで一体ナニをするつもりだったんだろう?

 

 

 

 

 

 翌日、教室で自分の席について窓の外を眺めながら、俺は昨日の出来事を反芻していた。そういえばあの錬金術師、やるべきことはやったとか言ってたな。それって、研究の完遂? でも、それだけなら主の下を逃げ出す必要があったのか? あとは……気持ちは非常に分かるけど。

 

「やたら胸に拘ってたなぁ」

「胸だとぉぉぉぉ!!」

「うわっ!!」

 

 元浜がメガネを光らせて、凄い勢いで迫ってきた。

 

「おい、イッセー!!」

 

 元浜の勢いに押されて仰け反った俺の胸倉を掴んで、今度は松田がなきながら詰め寄ってくる。

 

「な、なんだよいきなり」

「キサマ! 最近リアス先輩と一緒に登下校することが多くねえか!?」

「あまつさえ、腕を組んで帰っているという噂まで!! これまさに言語道断!」

「お、落ち着けって松田、元浜」

 

 言えるわけねえだろ……アーシアに加えて部長まで俺の家で暮らしてるだなんて!

 

 あまつさえ、帰ったらエプロン姿で料理の仕度をしながら振り向いて「おかえり。イッセー」と言ってもらったり、抱きつかれたり、膝枕してもらったりしてるなんて言えるかああぁぁぁぁぁぁ!!

 

「まあ、俺のお姉さまだからな」

 

 松田を振りほどいて、踏ん反りがえって余裕たっぷりに言ってやると、二人とも悔しそうに呻く。野郎の嫉妬が心地いいぜ。

 

「ちくしょう! 勝ち誇りやがってぇ!!」

「それで今、間近でみたリアス先輩の豊満な胸を反芻していたというわけか!」

「いや、誰も部長のおっぱいなんて……」

「おっぱい!? やはりキサマァァーーーッ!!」

「お前が言ったんだろ!」

 

 今日もしつこいなコイツら。疎遠になるよりかはマシだけど、最近この手の追及が半端ないんだよな。バレたらとんでもない騒ぎになるのは目に見えてるし、気をつけよう。

 

「おっぱいっていえば、イッセー。お前知ってるか」

「へ?」

 

 おっぱいで思い出す事ってなんだよ。またエロDVDか?

 

「最近女子がやたら早退や欠席してるらしいぜ」

「変な病気でも流行ってのか?」

「いや、診察結果はただの貧血らしい。問題はここからだ。その女子たちには共通点がある……みな巨乳の子ばかりなのだ!」

「きょ、巨乳の!?」

「うむ!! 駒王学園全女子のデータを持つ俺が言うんだから、間違いない!!」

「このままでは、学園の巨乳ギャル激減の危機!!」

 

 そのまま喚く二人を余所に、俺の思考は昨日の一件に思い至っていた。胸に拘る錬金術師と、そいつが研究していたキメラ。そして、巨乳の女子の貧血。偶然で片付けるには無理がある。休み時間にでも、部長に言ってみるか……。

 

 

 

 

 

「はぁい、あーん」

「あ、あー……ん」

 

 突き出された箸に掴まれるミートボールを口に含み、よく味わって飲み込む。

 

「美味い!!」

「うふふ、本当?」

「まったりとした旨み、それでいて適度な塩加減。マジ美味いっす!」

「そう。それはよかったわ。イッセーの料理には及ばないけれど、喜んでもらえて嬉しいわ」

 

 謙遜する横顔も、凛々しくて素敵です! やっぱり部長は、理想のお姉さまだ!

 

「あらあら、お昼からアツアツですわね」

 

 お茶を運びつつ朱乃さんが茶化してくるけど、部長は平然と受け答える。

 

「お家でお世話になってるんだから、お弁当を作るくらいは当然よ」

「あのぅ、私もお弁当を作ってきたのですが……」

 

 アーシアが可愛らしい包みのお弁当を持って、俺の横へやって来る。

 

「え、アーシアも、俺の分を?」

 

 控えめに、こくりと頷く。

 

「でも、部長さんのがあるなら……」

「いやいや、もちろんアーシアのも食べるよ!」

 

 そういってお弁当を受け取ると、アーシアの曇った表情が一気にパァッ、と明るくなった。うんうん、やっぱりアーシアは笑ったほうが可愛いな。

 

 蓋を開けると、卵焼き、から揚げ、タコさんウィンナーの看板ラインナップに加え、目にも鮮やかなプチトマトとブロッコリー。白米の上にはシャケまで乗せられていて、味覚的にも栄養的にも素晴らしい仕上がりだ。

 

 まずは卵を一口齧ってみる。うん、実に俺好みの味付けだ。

 

「美味い!」

「よかったです」

「てかこれ、母さんの味だ。教えてもらったの?」

「……はい」

 

 自分の分のお弁当を手に、ほんのり顔を赤くして呟くアーシアもまた可愛い。

 

「そうか、母さんに教えてもらったんだ」

「喜んでもらえてよかったです。練習したかいがありました」

「ふふ。アーシアもやるわね」

 

 部長が楽しそうに笑うと、アーシアは部長に強いまなざしを向ける。

 

「ぶ、部長さんには負けたくありませんので! ……負けそうですけど」

「貴方よりは後発だけれど、私も負けないわ」

「うぅぅ……」

 

 い、いつの間にか、二人の間に微笑ましながらも激しい火花が散ってる気がするんだけど!? 勝ち負けってなに!? 料理の腕!? ああ、もう。例の事を伝えるタイミングを完全に見失っちまった。

 

 困惑する室内に、突然光が差し込んだ。テーブルの上に、小さな魔方陣が現れ、そこから姿を現したのは……。

 

「グレイフィアさん!?」

 

 映像だけ、しかも魔方陣と同じくらいのサイズだけど、最強の女王の登場に全員が気を引き締める。そしてグレイフィアさんが口を開く……。

 

「お食事中失礼致します。お伝えしたい事がございますので、放課後にここにお集まりください。ではまた後で」

 

 それだけ言って、すぐに魔方陣は消えた。

 

 ……思わせぶりなことしないで、携帯で済ませてください!

 

 

 

 

 

 放課後、部室に再度集まった俺たちは、グレイフィアさんから昨日のはぐれ悪魔に関する報告を聞いていた。

 

「じゃあ、やはりイッセーの言ったとおり、あのはぐれ悪魔は魔物関連の錬金術師だったのね」

「はい。それで、その件で一つ問題が発覚いたしまして……」

「問題?」

「研究室で作りあげた、冥界の食獣植物とドラゴンのキメラをこの町に放ったというのです」

 

 やっぱりか……予測だけであんな正確で詳細なデータは得られないだろうから、実際に作った筈だと思ったんだけど、逃がしてたのか。

 だけど、研究者がその研究成果をあっさり解放するなんて、理由がないわけがない。キメラを廃棄されることを恐れて逃がしたのか、はたまた目的があって放ったのか。あいつの捕まったときの物言いから考えて、間違いなく後者だろう。やるべきことって事は、あいつのキメラは何かしらの目的を持って作り出された。

 

 けど、あの資料の内容からして、幾らドラゴンのキメラとはいえ戦闘目的とは思えないんだよなぁ……。となると他の用途ってことになるけれど、皆目見当もつかない。

 

「通信は以上です。新しい情報が入り次第、またご連絡いたします」

「ええ、お願いね」

 

 グレイフィアさんの通信が途絶えた直後、木場と小猫ちゃんが部室に入ってきた。そういえば二人とも、今日は一度も見てなかったな。

 

「部長、帰還しました」

「……ただいまです」

「お疲れ様。その表情だと、何か収穫があったようね」

「ええ、見つけました。恐らく、この学園の女子を狙う者を」

「女子……」

 

 どうやら、俺の心配が当たったみたいだ。

 

 

 

 

 

 暗くなってから動き出した俺達オカ研メンバーは、学園の端も端の森の中を進んでいた。

 

「じゃあ、たくさんの女子が、急に体調を崩したり、っていうのは」

「事実よ。問題は、その女子たちに魔力の波動が残っていたということ。それで裕斗と小猫に、影で動いていてもらったの」

 

 部長から説明を受けながら、木場の案内する場所に着くと、そこは大木程の大きさの、バラの蕾のような植物があった。こいつが……。

 

「植物の魔物、ですか?」

「いいえ……」

 

 アーシアの言葉を部長が否定する。そして、蕾が蠢き、花弁が開くと、中から覗けたのは黄色い頭の――

 

「ドラゴン!」

「グレイフィア様がおっしゃっていたのは、これのようですわね」

 

 食獣植物とドラゴンのキメラ……おい、ドライグ、バオウ。どう思うよ、こいつ。

 

『ふざけた真似をしてくれる。こんな粗末なものがドラゴンだと? 同類と考えられるのも腹が立つ』

『是 墳』

 

 確かにな。錬金術師としてみても、外見はいい趣味とは言いがたい。無論機能美を優先するのは悪いことじゃないがもう少し造形美を追求してもいいだろうに。植物主体なのは、何か意味でもあるのか?

 

「手間が省けたわね。……ん? 誰か来るわ、隠れて!」

 

 木の陰に隠れて部長の目線の先を見ると、確かに人影が二つ近づいてくる。現れたのは寝巻き姿の少女二人。アレって……。

 

「うちのクラスの片瀬と村山じゃねえか」

 

 意志が感じられない目とは反して、しっかりとした足取りでキメラの元へ歩いていく。するとキメラの周りの蔦状の触手が蠢き、二人の胸へ吸い付く。触手は何かを吸い上げるように脈動し、二人が艶かしい吐息を漏らす。なんでよりにもよって胸なんだよ……気持ちは分かるけど。

 

『……相棒、あんなドラゴンの出来損ないと共感しないでくれ』

 

 悪い悪い。バオウもあんまり笑うな。ドライグが気に病むだろう。

 

『謝 我 楽』

 

 楽しむのは悪いことじゃないけどさ。いや、そもそも悪いのは俺なんだけど。

 

『いいや、構わないさ。今も昔もそれだからこそのお前だ。ただ、俺もバオウのように気楽になりたいもんだ……』

『悩 無』

 

 こいつら、最近急に仲良くなってる気がするな。バオウがドライグを励ます形で。天龍同士で通じ合うもんでもあるのかな。

 

「う、動いてますけど……」

「精気を吸い取っているようですわ」

 

 朱乃さんの言うとおり、あれは精気を吸い取っているんだろう。けど……

 

「おかしいな……」

「どうしたの、イッセー? 何か気になったの」

 

 口を吐いて出た俺の呟きに部長が反応する。

 

「いや。あのキメラ、何の目的で精気を吸い取ってるのかなって。はぐれ悪魔は、あれを作って放った時点で目的を達成している。つまり、あのキメラが女子から精気を奪っているのには、何かしらの目的がある。

 おとなしく捕まったことから、その目的にははぐれ悪魔自身の存在が必要ない。つまり、あのキメラは女子たちから精気を吸い取ることで何かを生み出す、もしくは自己進化しようとしているかのどちらだと思うんです」

「なるほどね。流石よ、イッセー」

 

 部長に頭を撫でられる。うわ、ラッキー! 錬金術師やっててよかった!

 

 ギュウ

 

 とか考えてると、アーシアが涙目でほっぺを摘んできた。

 

「あ、あの……助けなくていいんですか?」

「今までの事例からして、命までとることはないみたいだし……」

「ええ、もう少し様子を見ましょう」

 

 部長がそう言った直後、触手が片瀬と村山から離れ、二人はふらふらと去っていった。

 

「どうやら大丈夫そうだな。女生徒に術をかけて、夜な夜なここへ来るように仕組んでるんだな」

「そして精気を吸い取り、養分に変えているのですね」

 

 極力バレないように少しずつ吸い取ってた事といい、相手を自分からここへ来させるよう術をかけた事といい、知能は中々高いみたいだな。あのはぐれ悪魔、結構優秀じゃんか。

 

「なんにしても――私達にバレてしまったのが、運のツキね!」

 

 部長について、木の陰から全員で姿を現す。こっちを認識したキメラが、触手を一斉に振るって攻撃してくる!

 

「攻撃開始よ!」

「はい、部長」

 

 破滅の魔力を撃ち出す部長に対し、朱乃さんも魔力で巫女服に着替え、雷を見舞う。巫女服に着替える、魔法少女アニメのような一瞬のセミヌードが相変わらず眩しい!

 

「……ぶっとばします」

 

 妙にやる気に満ち溢れた小猫ちゃんが、キメラへ向けて拳を振り上げて走る。

 

「学園の平和を乱すものは、倒さないとね!」

 

 イケメンナイトも張り切って、触手を切り落としている。

 

「よっしゃ、行くぜぇ!」

『Boost!』

『Ride!』

 

 神器を出し、右手を振るってナイフを飛ばす。それに対してキメラは触手を集中させて防ぎ、俺に触手の鞭を振るってきた。その場を飛びのきながら、改めてこのキメラの評価を上げておく。

 

 しかも……小猫ちゃんが力ずくで引きちぎっても、木場が猛烈なスピードで切り裂いても、部長の破滅の魔力で吹っ飛ばされても、次から次へと触手が再生を続けている。しぶといどころの騒ぎじゃない事態に、木場が大声で叫ぶ。

 

「これじゃキリがない!」

「再生力が攻撃を上回っているのよ。本来以上の能力を引き出されている。人間界の空気と土、そしてこの学園の生徒の精気が、よほど合っていたのね」

 

 もしくは合うように調整を繰り返した、か。あのはぐれ悪魔、本当に大した技術だ。でも、戦ってみて一つ分かった。

 このキメラは、自己進化の為に養分を求めてたわけじゃない。そういう奴にはもっとギラついた、強くなるという本能の叫びがある。となると……何かの生成か? 植物だけに、希少な実でもつけんのかよ。

 

「イッセー! 貴方の炎で、このキメラを燃やせないの?」

 

 部長の問いに渋い顔になる。できないことはないけど……。

 

「少し難しいですね……この生命力だと、半端な火力じゃトドメになりませんし、かといって強くしすぎると、周りの森もまとめて一掃しちまう。それでもいいスか?」

「それは少し……何とか調節できないの?」

 

 できたらこんな事は言ってないですよ。昔から俺はこういう限定のついた状況に弱いんだよな……。その為に拳法と剣術を習ったんだけど、それでもこんな事が待ってるなんて、人生ってのは難しい。いや、悪魔だけどさ。

 

「中級呪文でこいつを焼き尽くせるまで強化を溜めて、一撃で済ませるのが一番ですね」

「そうね。じゃあ、その方向でみんな耐えて……」

「きゃあああ!」

 

 アーシアの悲鳴!? 後ろを見れば、地中からのびた触手がアーシアを縛っている! 今すぐ助けに……

 

「きゃあ! ちょ、何なのよ、コレ!!」

 

 何!? アーシアのほうに気を取られていたら、いつの間にか部長と朱乃さん、小猫ちゃんまで捕まっちまってる!

 

「あらあら、エッチな触手ですわ」

「……またこの展開」

 

 しかもこんな状況で宝玉が点滅しやがった! 強化が溜まるのがワンテンポ遅かった!

 

「これじゃあ、うかつに攻撃できない!」

 

 木場の言うとおり、下手に炎でも出せば全員丸焼きだ。こうなったら雷龍帝の迅雷(ライディング・ギア・アクセル)しか……毎度毎度頼ってるし、これからもそうだろうが、頼むぜバオウ、ドライグ!

 

『無 我 力 汝』

 

 相変わらず分かりづらい話し方だけど、言いたい事は伝わってる。

 

『俺達の力はお前の力だ。存分に誇れ、振るえ! 天龍の力を!!』

「おっしゃあ! やるぜ……ぇっ?」

 

 気合を入れて加速をはじめようとした俺の目に飛び込んできたのは……

 

「あらあら、困りましたわねぇ」

「……ヌルヌルで気持ち悪いです」

「はうぅぅ、ヌルヌルが服を……」

「このヌルヌルというか、ヌメヌメというか……服を溶かすようだわ!」

 

 うおおおおおおおお!! じょ、女性陣の衣服が溶けていくぅぅぅ!! しかもよく見れば、これまた扇情的なポーズで拘束されていて、そういうゲームのそういうシーンにしか見えない! 素敵過ぎる!!

 

「部長の魔力で、弾くことはできないんですか!?」

 

 木場の野郎は冷静に状況を見ているようだ。落ち着きすぎだろ、アイツ本当に女に興味がないのか! 学園で指折りの美少女たちの痴態に反応しないなんて、それでも男か!

 

「駄目! 滅びの魔力がうまく発動できない」

「こちらも雷撃が作り出せませんわね」

 

 なるほど、あの粘液には服を溶かすだけでなく魔力を拡散させる作用もあるのか。案外徹底してやがる。

 

「小猫。あなたの力でも引き剥がせないの!?」

「……ぬるぬるが滑って」

 

 しかも物理的な力まで封じる、か。拘束としては中々の出来だ。

 

「くぅっ、このままでは!」

 

 近場のはずの木場の声はろくに聞こえず、俺の耳は粘液まみれの触手でこすれ、艶美な声を上げる女性陣のほうへのみ向けられている。そ、そうだ、木場の言うとおり、このままだと……

 

「みんな、全裸になっちまう!!」

『あ、相棒! 気を落ち着かせろ! この心の奮え様、このままでは禁手化(バランスブレイク)に至ってしまうぞ!』

 

 それの何が悪いんだドライグ! むしろ望むところじゃないか!

 

『ふざけるなぁぁ!! 三年前の禁手化も相当ひどかったが、それでもティアマットとの死闘の中だっただろ! それがこんな事で至るなんて事があってたまるか!』

『両 静 我 至』

 

 おお、なるほど! 赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)じゃなくて、雷龍帝の脚甲(ライディング・ギア)が至れば八方丸く収まるな! 脚甲のほうへ意識を集中させようとするが、ドライグの悲鳴にも似た叫びがそれを阻む。

 

『やめろおおおお! それでも天龍か!! 大体、女が裸になるだけで禁手化する馬鹿がどこにいる!?』

 

 ここにいるぞ! 大体前の禁手化だって、結局はシーグのおっぱいで……。

 

「イッセー! 見てないで、貴方も戦いなさい!」

 

 はっ! ぶ、部長からお叱りを受けてしまった! もっとこの光景を目に焼き付けておきたいが、仕方がない。やるか!

 

「それじゃあ今度こそ、いく、ぜ!?」

 

 雷龍帝の迅雷を発動させる直前、アーシアと小猫ちゃんが触手から解放されて落下する。二人を抱きかかえて着地するが、なんでまた突然……。しかも部長と朱乃さんは捕らえたままだ。

 

 !!!

 

「ああん!!」

「む、胸だけを、執拗に攻めてきますわぁ……恐らく……ここから精気を、吸い取って……ぁあ!!」

 

 こ、これは……。

 

「い、いやらしい動きね……ぁ、いや!」

「なんて素晴らし…いや、いやら…いやいや、なんて恐ろしい攻撃なんだぁぁ!! 女性のおっぱいに張り付いて、精気を吸い出すだなんて!」

 

 ほんの少し、ほんの少しだけど、うらやましいなんて考えちまう!!

 

「でも、どうして胸を……」

 

 木場……お前はどうしてこんな光景にも冷静でいられるんだ。少し凄いと思えちまうわ。

 

「分かりきったことを言うな! 俺だって部長と朱乃さんの胸に張り付いて精気を吸いたいわ!!」

 

 力説する俺に、胸を隠しながらアーシアがツッコミを入れてくる。

 

「怪物に共感しないでください!」

「共感ではない! 俺は今、猛烈に嫉妬しているのだ! おのれキメラぁぁぁぁ!!」

 

 ゴオオオォォ!!

 

 俺の心に反応して、ドライグの炎も猛ってるぜ!!

 

『……もう泣きたい』

『既 泣』

 

 悪い、ドライグ。俺にも譲れない一線ってもんがあるんだ!

 

「嫉妬も駄目ですぅ!」

「はっ! そういえば、体調不良を訴えていたのは、胸の大きな女性とばかりだったけど……」

 

 ガギィン! と俺の頭で歯車がかみ合うような音が響く。

 

「やはり、俺の推測どおりこいつの獲物は巨乳限定だったんだ!!」

「か、感心していないで何とか……あん!」

 

 再び部長の艶かしい声が響き、俺の心が揺さぶられる。そんな中、部長の前に小さな魔方陣が現れる。そこから出てきた小さな映像は、混乱するこの場に冷水のように割って入った。

 

『上級悪魔の淑女たる者が、そのような卑猥な声を漏らしてはいけません』

「グ、グレイフィア! そんなことより、何か新し、情報ぅ……いやあ!」

 

 部長の痴態に目もくれず、グレイフィアさんが淡々と伝える。

 

『はい。例のキメラは、胸の大きな女性から精気を吸う習性が……』

「わかってるわよ! 今まさにそうされてる、とこ……ぁはあん!」

 

 一瞬、グレイフィアさんも十分に大きいですけど、という言葉が浮かんだが、口に出さずに飲み込んだ。映像越しでも俺ごときなら吹き飛ばされそうだ。

 

 更に激しく嬌声を上げる部長を意に介さず、グレイフィアさんがキメラのほうを見る。凄い、同性とはいえあそこまで部長の声を無視できるなんて、俺には想像もつかない心の強さだ!

 

『更にもう一つ、特殊な能力を付与されているようでして。このキメラが実らせた実を口にすると、どんな小さな胸の女性でも、たちまち豊かなサイズになるそうです』

 

 ……はっ?

 

「はいいいいい!?」

 

 なんだその仕様!? その為に巨乳の女の子の精気を吸い取ってたのか!? 巨乳の素は巨乳ってか!? あ、よくみれば実が育ってて、しかも乳の形してる!

 

『はぐれ悪魔曰く……』

 

 

 

『世の女性が巨乳になれば、女性の心は豊かになり、男性も夢を持って羽ばたける! 貧乳は罪であり、残酷だッ!! 世界を巨乳に!! 乳・ェアーーーンド・ピーーース!!』

 

 

 

『……と』

「あらあら!」

 

 ―――

 

「乳、アンド、ピース。な、なんて……なんて素敵な夢なんだ! こんな壮大な野望実現があっただなんて!! おっぱいのサイズに悩む女性の為に生み出された、究極の生物! それに、あの悪魔は部長のおっぱいをガン見し、従える虫も朱乃さんのおっぱいを! 胸にそこまでの執着があったからこその行動理念! 主を裏切ってまでの夢の実現! 感服するぜ!!」

 

 おおお! 心が奮える! そろそろマジで至れるんじゃないのか!?

 

『近 少』

 

 あと少しか!! ならば問題ない! 乳に対する愛ならば、俺も決して負けていないからなぁ!!

 

 バゴォ!

 

 ……ハッ! う、後ろから強烈な怒気を感じる。こ、これは紛れもなく……オカ研で最もAよりな彼女。

 

「……貧乳は罪、貧乳は残酷」

「こ、小猫、ちゃん」

 

 日ごろからおっぱいを好み、今まさに巨乳を声高々に称えた俺の声も、彼女にとっては怒りに注がれる更なる燃料に他ならないだろう。現に、小猫ちゃんが次に起こす行動は直観で理解できる。

 

「……ぶっつぶす!」

 

 キメラへ向けて振るわれる大木。彼女のまん前にいた俺は、そのままだと当然巻き添えを食らうので、同じように前方にいたアーシアを連れて即座に逃げる。少し舌打ちが聞こえた気もするけど、その方向を向くのも怖すぎる!

 

「あうぅ……どうせ私は部長さんや朱乃さんみたいなおっぱいはありません……」

 

 抱きかかえるアーシアも、卑屈にぼやきながら暗い表情だ。大丈夫、俺はアーシアのおっぱいも大好きだ!

 

 ドゴォォン!

 

 

 小猫ちゃんがキメラへ木を投げつけ、グロッキー状態になったキメラの隙をついて、木場が飛び上がろうとする。

 

「部長たちは僕が!」

「待つんだイケメェェン!!」

 

 キメラの前に立ち、俺は部長へ向けて精一杯の声を張り上げる。

 

「部長! このキメラを、俺に任せてください!! こいつは、全男性の夢を実現できる最高のキメラだと思うんです!」

「な、何言ってるの!? もう! こんなときにイッセーのエッチなスイッチが入るだなんて!」

「あらあら、困りましたわねぇ」

 

 パシン!

 

 キメラの触手が俺をはたくが、痛くもかゆくない。巨乳に対する愛が、俺を強くする!

 

「こいつがいれば、貧乳の女性たちの悩みが解決するんです! そして、はぐれ悪魔が言うように、そのおっぱいを見て、男性も立ち上がれる、ってお前、人が必死でかばってんだぞ!!」

 

 会話中もお構いなしに俺をペシペシと叩くキメラ。ちくしょう、俺は味方だぞ!

 

「……どいてください。そのキメラは私の敵です!」

 

 激しい怒りを湛えた小猫ちゃんが、木を抱えながら俺の背を睨んでいるのがよくわかる! 下手すれば俺も一緒に滅多打ちだ。それでも、ここは退けない!

 

「見るんだ小猫ちゃん! あの実を食べれば、小猫ちゃんもたちまち巨乳に……」

 

 ザシュ!

 

「へ?」

 

 気づけば、木場が実ごと触手を切り裂いて、二人を解放している!

 

「テメェ、木場ぁぁぁぁぁ!! なんてことしてやがるんだぁぁぁ!」

 

 地に足をつけた部長が、思いっきりため息を吐く。

 

「まったく、イッセーにも困ったものね」

「ぶ、部長! これは世の女性たちのためで! それに、俺なら間違いなくこのキメラを改良できます! 精気なんか吸収せずとも巨乳の実をつけて、かつもっと平和的な樹木に……」

 

 神さんにいえば、必ずや研究に協力してくれるはずだ! グルメ細胞との適合に成功さえすれば……

 

「いいから聞きなさい! イッセー、あのキメラを倒したら……私と朱乃の胸を一晩中好きにしていいわ!!」

「あらあら」

「なぁっ……!!」

 

 俺の目の前にあるのは、服もブラジャーも溶かされ、むき出しになった部長と朱乃さんの乳。それを……

 

 好きにしていいわ……そんな日本語があったのか!?

 

 ど、どうする!? あのキメラを上手く改良できれば、世の女性が皆巨乳に! 考えただけで人生バラ色……だが、よく考えろ俺! 例え幾多の女性が巨乳になろうと、それは恐らくただ観賞するだけ! そう、横目でそれとなく、だ。だが、だがしかし!!

 

「はい、目の前のおっぱいには敵いません」

 

 やっぱり、ここは……

 

「届かぬおっぱいよりも、届くおっぱい! 今から俺はお前を倒すぜ、キメラぁぁ!!」

 

 全身を赤い覇気が覆い、俺の乳への思いのごとく燃え上がる!

 

「イッセーさん……」

 

 かつてないほど冷たい呼び方のアーシアにも、今は目をふさぎ、耳をふさごう!

 

「イッセー、私に力を貸して頂戴!」

「はい! 任せてください!」

Ignition(イグニション)!』

 

 キメラは触手から白い溶解液を放つが、解放された速度の前にそんなものが通じるかよ!

 

「部長、受け取ってください!」

Transfer(トランスファー)!』

 

 篭手から放たれた力が、部長に注がれる。これぞ、赤龍帝の贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!! 倍化された力を受け取った部長は、今までにないほど圧倒的な魔力を放っていた。これが、部長の破滅の力……!

 

「確かに、一部の女性の悩みは解放されるでしょうね。けれど、その為に犠牲者を出すわけにはいかないわ」

 

 部長の言に、小猫ちゃんが頷いている。

 

「消えなさい!!」

 

 ドォン!!

 

 巨大な腕のように形成された破滅の魔力が、キメラに直撃する。紅い光の柱と共に、キメラは跡形もなく消し飛んだ。

 

「終わったわね……」

 

 そして、女性陣が魔力で衣服を修復する。まだそこまではできないアーシアも、朱乃さんの手で直してもらっている。

 

「じゃあ、撤収しましょうか」

「待ってください! 部長、朱乃さん! 約束どおり、二人の素晴らしきお乳を一晩!!」

 

 ぬふふふ! 気がはやって手がとまらねえ! 部長か、朱乃さんか、どっちのお乳が甘いのかな!!

 

「あいて」

 

 妄想逸る中、部長から頭に軽く拳を当てられる。そのまま背を向けて歩き出した部長は、振り向いて……

 

「だぁーめ。オイタをしたからお預けよ。うふ」

「そ、そんな馬鹿な!?」

 

 舌を少し出してうふって、可愛すぎますよ! 思わず許しちゃうじゃないですか!

 

「……あんな怪物をかばうなんて」

 

 背後から聞こえる、この冷たい声は……

 

「こ、小猫ちゃん」

「……最低です」

 

 ぐあっと俺を持ち上げた小猫ちゃんは、よろけつつも俺をキメラが吹っ飛んだ跡の穴に放り込む! そしてそこへ部長と朱乃さんが魔力で土を動かし、俺の首だけをだして土に埋めた!

 

「な、なんでぇ!?」

 

 叫ぶ俺の頬を、部長がそっとなで上げる。

 

「そこで一晩反省よ。さあ、みんな帰りましょう」

「あ、アーシアァ! 助けてぇ!」

 

 実際この程度楽に出られるけど、ああ言われたら自分じゃとても出て行けないって!

 

「イッセーさんには、ちょっとだけ反省が必要だと部長さんが……」

「……いいから帰りましょう。アーシア先輩」

 

 うおおお! 小猫ちゃんの冷たさが過去最高だ! 冷たい怒りが背中から感じられる!

 

「あはは、ゴメンねイッセーくん。お先に」

「てめえ! 爽やかに見捨てる気かぁ!」

 

 俺が聖剣持ってんの知ってやがるんじゃねえだろうな!?

 

「うふふふ。おっぱいはもう少しお預けですわね。イッセーくん」

 

 ぬああああ! め、目の前でおっぱいを揺らして、朱乃さんがそのまま帰っていく! ドSだあああ!

 

「部長ーー! ごめんなさーい! もうしませーーん!」

「凄え情けねえ格好だけど、自覚あるかお前」

 

 と、突然の師匠登場! 何しに来たんですか!?

 

「さっきからずっといた。はぐれ悪魔の作り出したキメラ、と聞いて氷美神の研究資料を盗んだ奴じゃないかと思ったんだが、あの様子じゃ違うみたいだな。それにしてもあのキメラとそれを作ったはぐれ悪魔、中々いい趣味してやがる。冥界と話しつけて、グルメ界の研究員としてスカウトするか」

 

 じ、神さんの中で着々と何かが進んでおられる!?

 

「そんなことより助けてください!!」

「知らん。とはいえ、師弟の間柄だ。一つこの時間を有効に利用しよう」

 

 そう言って神さんが懐から取り出したのは……たいまつくし? それも、食禅の為に改良された奴? それを次々に地面に植えながら、神さんが説明を始める。

 

「このたいまつくし百本。夜明けに俺が再び来るまでこれを一本残らず燃やし続けろ。一つでも消えてたら修行だぞ」

「ちょ!? こんな状況でですか!?」

 

 おっぱいを逃して傷心の俺に対して!

 

「だから修行になるんだろう。感謝の心を持ち続けていることを見せてみろ。それじゃあ、またあとで」

 

 言いたいだけ言って、たいまつくしに火を灯して行っちまった。くおおおお! もうこうなったらやるしかないんだよな! 長年の意識で切り替えは早くなってるんだ。諦めつくとも言うけどな!

 

 部長、朱乃さん、小猫ちゃん、アーシア、木場、父さん、母さん、神さん、氷美神、ジェリーさん。そして、俺の血肉となってくれた、多くの食材に……感謝します。

 

 

 

 

 

「久しぶりに様子を見に来てみれば、何をやってるんだ」

「一応食禅でしょう? ほら、たいまつくしが燃えてますからね」

「だからといって、何故に埋められている。俺が来るまでに何があった、ジェリー」

「帰ってから説明しましょう。今言うと、間違いなくイッセーを蹴り飛ばしに出て行きますからね」

「なるほど、相も変わらず、か。あの馬鹿はどうしてああスケベなんだ」

「それが兵藤一誠なんですよ。ここ最近の状況も、私が神さんから聞いておきました。それも一緒にお話しますよ、氷美神。それとも、もう我慢が効かなくなりましたか?」

「馬鹿を言うな。最低でも、あいつがもう一度禁手化を果たすまでは絶対に戦わない。それまでに、俺ももっと強くなる。今度こそ……あいつと『勝負』をする」

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