ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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Life.35 特訓、燃えます!

 皆さん、今までの人生で、起きぬけに驚いたことっていっぱいありますよね。

 

 俺も遅刻確定の時間に起きたとか、ベッドから転げ落ちたなんて日常的な事から、爆弾と直結した時計が目の前に置かれていた、銃弾を回避して目が覚めたなんて非日常的な事まで様々です。少し前は、もう何が起きても即対処できると踏んでいました。

 

 でも、これは流石に予想外です。

 

「うぅん……」

 

 艶かしい声と、目の前で揺れるおっぱい。裸の部長が俺の頭を抱えるように寝ておられる。幾ら回数を重ねても、このシチュエーションには興奮冷めやらない。

 

 数ヶ月前の自分に、お前は近い将来学校一の美少女と寝床を共にするなんていったらどんな顔をするだろうか。驚いたあとに妄想して、現実に戻ってため息をつくと思う。けど、今の俺にとってはこれが現実。

 

 朝から最高、心の底からそう思える! 一緒に住むようになってからほぼ間を置かずこうなって、今では俺の一日は部長のおっぱいから始まるといっても過言ではない。

 

 とりあえず、おっぱいを揉むべきか揉まざるべきか悩んでいる内に、部長の目がそっと開かれた。

 

「あら、起きていたの?」

「は、はい……で、起きてみたらこういう状況になっていたので、どうしたものかと……」

「毎日ゴメンなさいね。今までの抱き枕の中でも、イッセーの感触がダントツなもので、つい。全身が筋肉と言ってもいいくらいなのに、柔軟性もしっかりあって、本当に心地いいのよ」

 

 そ、それは実に光栄です! 地獄の特訓を生き抜いてきた甲斐がありました!

 

「どうしましょうか? ちょっとエッチな下僕とのコミュニケーション、なんてどう?」

 

 チュッ。

 

 ほ、ほっぺに柔らかな唇がぁぁぁ!!

 

「あの、部長。俺も男なんで……」

「襲いたくなっちゃう?」

 

 悪戯っぽく微笑みながら、部長が俺の上に乗っかる。う、うわぁぁぁぁ、朝っぱらからなんてエロいんだ。俺とは悪魔としての格が違う!

 

「いいわよ、あなたの喜ぶことならなんでもしてあげるわ」

 

 な、なんでも!? この日本語に、そんな漲る使い方があったのか!!

 

 コンコン。

 

「イッセーさーん。そろそろ早朝トレーニングの時間ですよー」

 

 桃色に染め上がりそうになった俺の頭にノックとアーシアの声が届く。

 そういえば今日はそうだった! 残念なような、よかったような……。

 

「あら、もうそんな時間だったのね」

「イッセーさーん? まだお休みですかー?」

「い、いや、起きてるよ! ちょ、ちょっと待ってて」

 

 最近アーシアは、何故か部長に対抗意識を抱いているからな。こんな場面見られたら、どうなるかは想像に難くない。

 

 だけど、部長はそんなのお構いなしのようで。

 

「アーシア、私もイッセーも準備しなければいけないから、もう少し待ってなさい」

 

 当たり前のように部長が返事を返し、勢い良くドアが開かれた。

 

 今日始めて顔を合わせるアーシアは、ベッドの上で座っている俺と裸の部長を綺麗な瞳に映したまま、体操着にブルマーの格好で絶句している。無駄だと思うが、努めてにこやかに朝の挨拶をしてみる。

 

「や、やあ。おはよう、アーシア」

「おはよう、アーシア」

 

 部長の挨拶を聞いた途端、涙ぐんだアーシアは体操服に手をかけ、俺に突撃してきた。

 

「私も裸になります! 仲間外れなんて嫌です!!」

「えええええ!?」

『五時ちょうどだよ! さあ、今日も一日、バリバリ励もう!』

 

 このタイミングで何に励むんだ、目覚まし時計の体操っ娘ぉぉぉぉ!!

 

 今日も一日、過激な日になりそうです。

 

 

 

 

 

「この世の全ての食材に感謝をこめて、いただきます」

 

 トレーニングを終えて、朝食の時間。俺の両脇は、部長とアーシアが座っている。ただ、アーシアは不機嫌な様子で納豆をかき混ぜている。

 

 単に部長と俺の行いに憤ってるのかもしれないけど、それだとあの時、自分まで脱ごうとした意味が分からない。乙女心は何時まで経っても究極のブラックボックスだ。

 

 部長はまるで気にした様子もなく、両親と談笑しながら箸を進めている。

 

「うん、うまい。外国人なのに、たいしたものだねぇ」

「日本の生活が長いもので」

 

 部長が炊いた味噌汁を絶賛する父さんに続いて、俺もお椀に口をつける。味噌の風味と、存在感を失っていない出汁の味わいが、互いを更に活かしあっている。涙が出そうなほど美味い。

 

「とっても美味しいですよ、部長」

「ふふ、ありがとう」

「むぅ~……ふん!」

 

 笑顔で応じる部長に対して、アーシアは膨れ顔で俺の腕をつねってくる。それでアーシアの気がはれるんなら、幾らでも受け入れるさ。拗ねるアーシアもまた可愛らしい。

 

 料理洗濯掃除。万事に置いて非凡な働きを見せる部長には、改めて尊敬の念を抱く。

 

 一方のアーシアも、部長に負けじと家事全般を母さんから習いつつ、勉強にも熱を上げている。下手すりゃ俺より成績いいかも知れない。

 

「アーシアちゃんに続いて、リアスさんまで下宿したいといわれたときは驚いたけど、二人にこうして色々お手伝いしてもらって助かるわ」

「当然のことですわ、お母様」

「お、お世話になってますし、当然のことです」

 

 母さんにお礼を言われて、悠然と受け止める部長に対し、アーシアは頬を赤らめて嬉しそうする。本当に、日常が楽しくって仕方ないって顔だな。

 

「あ、お母様。今日、部員たちをこの家に呼んでもよろしいでしょうか?」

「え? ええ、構わないけど……」

 

 ああ、そういえば旧校舎は年に一度の大掃除だっけ。それで、月に一度の定例会議を家でやる、と。一人暮らしらしい木場のマンションのほうが都合がいいと思うんだけど、空気を読んで黙っておこう。

 

「お家で部活なんて、楽しみです」

「そう言うわけで、申し訳ございません。お父様、お母様」

「いいのよ、リアスさん。私も嬉しいわ、イッセーに女の子の友達が増えて」

 

 母さんの言葉に、父さんもうんうんと頷く。

 

「そうだなぁ。父さんは松田くんと元浜くんも好きだが、健全なお付き合いができる仲間も大事だと思うぞ。部屋に集まってエッチな事ばかり語り合っているだけじゃ、青春は謳歌できん」

「松田くんと元浜くんもいい子なんだけど、目つきがいやらしいのよね」

 

 まったくフォローできない俺を恨め、松田、元浜。

 

 けど、気兼ねなく話せる男友達ってのも大事なんだぜ? オカ研のみんなといるのも、あの二人と一緒にいるのもどちらも俺にはかけがえのないものだ。

 

「そういうわけで、今日の会議はこの家で行うわ。よろしくね、イッセー」

「私、お茶いれます、部長さん」

 

 じゃあ、俺はクッキーでも焼いておくか。

 

 

 

 

 

「じゃあ、定例会議を始めましょう。今月の契約件数は……」

 

 放課後、俺の部屋で始まったオカルト研究部定例会議。まずは悪魔の仕事の基本である、契約についてだ。

 

「朱乃十一件、小猫十件、裕斗八件、そして、アーシア三件」

「凄いじゃないか、アーシアさん」

「あらあら、うふふ。やりましたわねぇ」

「新人さんにしては上出来です」

 

 口々に褒め称えられ、アーシアも満面の笑みを浮かべる。

 

「わぁ、ありがとうございます」

 

 おめでとう、アーシア。そして、残るは俺だけど。

 

「最後にイッセー……」

 

 一口、紅茶で口を潤してから、部長が告げた数字は……。

 

「ゼロ件」

「め、面目ありません」

「頑張って契約をとらないと、上級悪魔への道はますます遠くなるわよ?」

 

 そうですよね。幾ら強くなったって、実績がないと話にならない。

 

「わかっています。来月こそは、トップを目指します!」

「……せめて逆トップでないといいですね」

 

 相変わらず、ぐさっとくる一言を投げてくるね、小猫ちゃん。激励ととれなくもないけど……。

 

「おじゃましますよー」

 

 そう言って入ってきたのは、なんか大きな本を数冊持った母さん。

 

「いいもの持ってきたんだけど、見るかしら?」

 

 表紙には象のマーク……げっ!?

 

 お、俺のアルバムじゃねえかぁぁぁぁ!! 途端、皆がこぞってアルバムを覗きだした。や、やめてくれぇぇ!

 

「……イッセー先輩の赤裸々な過去」

 

 そんな大層なもんじゃないから! お願い閉じて!

 

「これはイッセーが小学生の頃のよ」

「あらあら、全裸で……うふふ、可愛い」

 

 全裸でなんですか!? 朱乃さん、どちらを可愛いと!?

 

「これが幼稚園の時。この頃から女の子のお尻ばっかりみてて」

「……サイアクダ」

 

 我ながら声が死んでる。そういえば母さん、女友達が家にきたらアルバムをみせたいっていつか言ってたっけ。思わず夢が叶ったわけだ。……親孝行と割り切ることにしよう。

 

「小さいイッセー……幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー……」

 

 頬を赤らめた部長が、満足そうになにやら呟いておられる。

 

「部長さんの気持ち、私もなんとなくわかります!」

「そう、アーシア。あなたにも分かるのね。嬉しいわ」

 

 アーシアと二人で手を取り合って、なにやら別世界に旅立っている。木場も木場で笑いながらアルバムめくってるし……そんなに楽しいかよ。

 

「いいお母さんだね」

「どこかだよ」

 

 完膚なきまでにさらし者にされて、ぶっきらぼうな声を上げる俺に、木場はしみじみと言った。

 

「家族がいるって、いいよね」

 

 深い感情を込めた一言。それに触発されて、こいつの家庭について気になりだした。そういえば、木場の家族情報って、聞いたことがないな。他の皆も似た様なもんだけど、こいつのそれは余計に気になる。

 なんていうか……想像がつかない。別に何がどうしたってわけじゃないけど、こいつが家族とわいわいやってる場面がまるで思いつかないんだ。そう自覚してみると、一気にこいつが謎染みて見えてきた。

 

「なあ、木場。お前の家族って」

「――ねえ、イッセーくん。この写真って、何か思い出せるかい?」

 

 ページをめくった途端、表情を凍りつかせた木場は、とある写真を指差している。そこに映っていたのは、余所の家でゲームで遊ぶ俺と男の子。

 

「ああ、それか。昔仲が良かった友達でさ。よくそいつの家で一緒に遊んでたんだ。親の転勤とかで外国に行っちまって、それっきりだけどな。え~っと名前は確か……」

「それよりもさ。この剣に見覚えあるかい?」

 

 木場が睨むのは、当時の俺の後ろ。壁に立てかけられた白い鞘に収まった一本の剣。……これは。

 

「……こんな事も、あるんだね。こんな思いもかけないところで、目にするだなんて。これは――聖剣だ」

 

 聖剣。文字通り聖なる力を秘めた刀剣であり、悪魔にとっては恐れるべき武器だ。だけど、そんな神聖な存在を呼ぶには不釣合いなほどに、声には負の感情を込められていた。

 

「……いや、なんでもない。ありがとう、イッセーくん」

 

 そう言って、木場は明らかに作った笑顔で俺にアルバムを渡してくる。それに対して俺は、曖昧な返事を返しながらアルバムを受け取ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 その夜、この前の食禅で、たいまつくしが一本だけ消えていた事から、神さんから修行をすると言われたので、部活を休むよう部長に断りを入れた途端、足元に黒い穴が開いたと思ったら、そこからでてきた腕に足首を掴まれて引きずり込まれた。

 

 浮遊感すら味わう間もなく着地した先は、荒野のような情景がどこまでも広がる空間。そこで当然のように、師匠が仁王立ちしている。

 

「夏にも入ったことだし、今回はホラー風味にしてみたんだがどうだった?」

 

 感想を求められたので、率直な意見を叫ぶ。

 

「肝を冷やす間もありませんでした!」

 

 むしろ、傍から見てた皆のほうが怖かったんじゃないだろうか。

 

「そうかそうか。今度は演出も凝って、BGMとSEも追加してみよう。気の弱い奴なら数秒で発狂するレベルに仕上げてやるか」

「SAN値直葬、駄目絶対!!」

 

 ここでしっかりツッコミをいれておかないと、この人はマジでやりかねない。究極の凝り性だからな……で、極めたことを俺にも習得させるんだから、どこまでもチート染みてるといっていい。

 

「それで、今日は何をするんですか?」

「今回も剣術だよ。ただし、前回とはかなり毛色の異なるものだがな」

 

 そんな事を言いながら、鞘に収まった一本の刀を取り出して投げ渡してくる。それを両手で受け取った瞬間、体中が怖気立ち、危うく反射的にへし折ろうとしてしまいそうになった。刀身を少しだけ抜いてみてみると、刃は独りでに鈍い輝きを放っている。間違いない、これは妖刀だ。

 

「これ村正じゃないですか。それも相当性質の悪い」

「ああ、そうだ。銘は無いが、少なくともそこいらの聖剣魔剣とは比較にならん代物だ。前の持ち主なんて、それの所為で妖怪になりかけたくらいだしな」

 

 またなんとも物騒なものを持ってきますね。

 

「そういった妖刀や、霊刀の力を引き出し自在に操る剣術、朧流。これを体得すれば、聖剣や魔剣も自由に扱えるようになるはずだ。神聖な武器だからって、鍛治仕事の度に厳重な取り扱いなんてしてらんねえだろ?」

 

 それは確かに。悪魔になったから、グングニルとかは触れるか怪しいもんな。そろそろ手入れの依頼が来る時期だし。

 

「じゃあ、始めるか」

 

 ドドドドド!!

 

 師匠が地を蹴ると、どこからともなく無数の剣が降ってきた。地面に突き刺さったそれらは、聖魔や力に違いはあれど、全てが特別なオーラを纏っている。

 

「ここにある聖剣魔剣妖刀霊刀を全て扱えるようになれ。無論、実戦でな。それが終われば朧流はお前に宿る」

 

 いつもどおりの宣言と共に、師匠が無数の剣の中でも、特筆に価するほど絶大な聖なる力を放っている聖剣を抜いた。

 

「師匠、その聖剣は?」

「なんだ、これが気になるのか。俺が作ったエクスカリバーのレプリカだよ。当然、本物に勝るとも劣らない力を持っているがな」

 

 そんなものを下級悪魔の俺に振るう気ですか!? 掠っただけでも消し飛びそうなんですけど!

 

「安心しろ。太陽で座禅を組めたお前の生命力なら、聖剣にも神剣にも負けやしねえ。頑張って生きろよ」

 

 ゴオオオオオォォォォォォォ!!

 

 師匠が振りかぶると、エクスカリバーから立ち上る聖なる光が天へと伸びる柱となる。本能的な恐怖を意地と根性で押さえ込み、右手で妖刀、左手に聖剣を引き抜き構える。

 

 殺意をくすぐり意識を殺戮へ沈めようとする妖刀と、存在自体を否定するように聖なる気を発する聖剣。両方の柄を強く握り締め、鍛治の際に槌や素材。料理の時の食材や包丁と同じ感覚で、心から訴えかける。

 

 ……すぐにわかってくれたか。どうやらこいつらは物分りがいい部類らしい。同じ事を繰り返していれば、どんなに素質が無くてもいつかはできる。

 神さんの教え通り、俺はひたすら馬鹿らしく、馬鹿になって我武者羅に努力するだけだ。今までも、そしてこれからも!

 

「おりゃあああぁぁぁ!!」

Maximum(マキシマム) Drive(ドライブ)!』

 

 ドバァァァァァ!!

 

 目の前の光の津波を切り開き、正面から神さんへと斬りかかるが、持ち上げ様の切り上げで両手の剣が弾かれ、逆再生のように聖剣が振り下ろされる。即座に近くの聖剣を抜いて、何とか斬撃を受け流して距離をとる。

 

 背後の魔剣を取り、ふたたび構えを取りながら突っ込む。この修行の主旨が特殊な剣を扱えるようになるためなら!

 

「ひたすら体力の続く限り、剣と会話を繰り返して戦うだけだぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

「お前は誰のお陰で強くなれた?」

 

 修行が終わった直後、大の字に寝ている俺の顔に水をぶっ掛けながら神さんがそう聞いてきた。跳ね起きて、手渡されたタオルで顔を拭きながら答える。

 

「そりゃあ、神さんのお陰ですよ」

 

 俺の成長も多芸さも、全ては神さんあっての事だ。

 

 神さんだけじゃない。共に切磋琢磨した氷美神、ジェリーさん。食卓を囲んだサイラオーグさん、デュリオ、刃狗(スラッシュドッグ)。師事してくれた紫さん、美鈴さん、幽香さん、聖さん、ソードさん、イオスさん。数え切れないほどの人達のお陰で、俺は今こうしてここにいる。一人でも欠けていれば、当の昔に死んでいただろう。

 

「ハァッ。なあ、イッセー。氷美神が出ていった時のこと、覚えてるか」

 

 これ見よがしに盛大なため息をつくと、神さんが聞いてくる。

 

「な、なんですか。突然」

「いいから答えろ」

「……忘れられるわけないじゃないですか」

 

 思い出せば、あの時のあいつの顔は鮮明に頭に浮かんでくる。怒りと悲しみがないまぜになった表情で、心の底から叫んだあの言葉も。

 

『このッ……卑怯者が!!』

 

 あいつが『それ』を一番嫌うってのは分かってた。それでも、俺はああいう風にしか出来なかった。その結果があの言葉だ。どうしようもないし、どうにも出来なかった。

 

「それじゃあ、もう一つ。どうしてお前が未だ完全に食義、そして食没を極められないのかわかるか」

 

 食に対する礼儀と作法。森羅万象への感謝と敬意を心の中心に置く事を基本とするものであり、奥義である食没は身体の許容を超えて食材の栄養を溜め込むことが出来る。

 けれど俺の食没は、短時間しか栄養を溜め込むことが出来ない。何故か分かるかと言われても、簡単に分かれば苦労はしませんよ。素質とか才能って言ったらぶっ飛ばされたし。

 

「わかりませんけど、それとこれとが関係あるんですか?」

「大有りだよ。結局、どっちも根本的な原因は同じだ。この間のたいまつくしだってそうさ。まあ、それはその内何とかなる。今はとにかくなりふり構わず強くなることを考えとけ」

 

 平常運転ってことですね。わかりました。

 

「それはそれとして、もうすぐ駒王学園の球技大会だっけか」

「え? そうですけど……」

 

 ……神さんの急な話題の転換は、嫌な予感しかしない。果たして、それは的中した。気がつけば神さんの手にはバット、そして背後には多種多様な大量のボールが!

 

「じゃあ、隙の無いように様々な球技を極めてみるか。サッカーとバスケは前にやったから、まずは野球だな」

 

 

 

 

 

 カキィン!

 

 空へ響く快音。グングンとあがっていく白球は、俺が作ったビンゴ型の的に命中した。よし、これで全ビンゴ達成。

 

「凄いわ、イッセー……一体どんな特訓を?」

「物理的に地獄を見た、とだけ言っておきます」

 

 あの荒野で繰り広げられた凄惨な特訓の内容は、誰にも話さないと強く心に決めた。SAN値直葬、ダメ絶対。

 

「野球なら、イッセーは四番でピッチャーに決まりね」

 

 投球もとことん仕込まれましたからね。どんな変化球でも投げられますし、最早球速やボールの回転数さえ自由自在ですよ。

 

 駒王学園の球技大会は派手だからな。クラス対抗戦に男女別競技、そして部活対抗戦まである。種目内容は当日まで分からないから、旧校舎の裏手の開けた場所で、めぼしい球技の練習をやっているわけだ。今日は野球。

 

 あらゆる球技を仕込まれた俺にとっては技術的には必要ないけど、メンタル面では必須といえる。神さんの特訓でズタズタにされた心が、女性陣の体操着姿で癒されるぜ……。

 

「次はノックよ! グローブをはめたら、全員グラウンドにばらけなさい!」

 

 気合が入ってるなぁ。元気にハキハキと動いて、闘志に燃えてるって感じだ。負けず嫌いの部長らしい。

 

「部長はこの手のイベントが大好きですからね。まあ、余程ヘマをしなければ私達がまけることなんて無いと思いますけれど」

 

 朱乃さんの言葉にうんうんと頷く俺。根本的な肉体的性能が違うんだもんな。加減しても苦戦することは無いと思うんだけど、ルールや特性を覚えておかないとってことで、部長は練習を促している。

 

「頭で分かっていても、身体で覚えないとダメよ」

 

 俺の場合、身体で覚えさせられてから頭で理解させられましたけどね。

 

「ほら、アーシア! 行くわよ」

 

 カーン!

 

 部長の打った打球がアーシアの方向へ飛んでいくが、アーシアは……

 

「はぅ! あぅあぅあぅ……あっ!」

 

 困惑しながら可愛らしい声を上げて、ボールを股下から後方へ逃してしまった。見事なトンネルだ。元々運動神経は良くないからな、アーシア。会ったときも何も無いところで転んでたし。

 

「アーシア! 取れなかったボールはちゃんと取って来るのよ!」

「は、はい!」

「次、裕斗! 行くわよ!」

 

 カーン。

 

 今度は木場のほうへ、軽いフライが飛んでいく。あいつならアレくらい楽勝だろう。イケメンで、運動神経抜群で、勉強もできて、料理も上手いし、性格もバッチリ。モテないなんてありえないような性能だもんな。うん、頭の中で並べ立ててたら改めてムカツいてきた。いつかぶっ飛ばす。

 

 コン。

 

 ……え?

 

 俯いていた木場の頭に、ボールがぶつかる。そこそこ離れた距離で正確に木場の所へ落とすだなんて、さすが部長。そして硬球が頭にぶつかっても痛くも痒くも無いだなんて、さすがイケメン……じゃねえ!

 

「木場! シャキッとしろ!」

 

 思わず出した大声に反応してこっちを見る木場だが、表情は少し冴えない。ていうか何があったのか気づいてねえぞ。

 

「……あ、すみません。ボーッとしてました」

 

 ボールを拾って、作業的なフォームで部長へ返球する木場。部長もボールを受け取りながら、ため息をついた。

 

「裕斗、どうしたの? 最近ボケっとしてて、貴方らしくないわよ」

「すみません」

 

 俺の家で聖剣の写真を見てから、木場の様子はずっとおかしい。遠い目でずっとボーッとしていたり、上の空だったりだ。何でもこいつのクラスでも話題になっているそうで、物思いにふける王子と女子たちは心配しつつ興奮しているらしい。

 

 イケメン死ね! ……って、普通なら思うんだけど、いつもニコニコしてたこいつがこんなんだとなんか調子狂うんだよな。

 フェニックス戦の時のカーラマインの聖剣を知っているという発言にも食いついたほど、こいつの聖剣への執着は尋常じゃない。気にはなるけれど……それはそれだ。今は練習第一。

 

「ふむ……」

 

 あっ、部長がまた野球のマニュアル本読んでる。読書家だよな。家でも散々本読んでるし。

 

「あらあら、ところでイッセーくん、ご存知?」

「なんでしょうか?」

 

 朱乃さんはいつもどおりの笑顔で訊いてくる。

 

「最近、部長ったら恋愛のマニュアル本を読んでいるんですよ」

「れ、恋愛!? まさか、それって……」

 

 す、好きな人ができたって事ですかぁぁぁ!! ぶ、部長が誰か、お似合いの男と寄り添って……うわぁぁぁ! 想像したくねぇぇぇぇぇ! 燃えてしまえ!!

 

「うふふ。大丈夫ですよ。少なくともイッセーくんの知らないところで部長に恋人ができるなんてことはありえませんから」

 

 頭を抱え、無様にうろたえる俺に朱乃さんが苦笑する。し、信じていいんでしょうか?

 

「部長に彼氏なんてできたら、俺死んじまう……」

「きっと、部長も逆の立場なら相当なショックでしょうね。なにせ初めてなんですもの。大変ですね、イッセーくんも」

 

 そう言って離れていく朱乃さん。何が言いたかったのか良くわからないけれど、部長が誰かを好きなったって話でないならそれでいいッス!

 

 本当に、いきなり付き合うだなんて……

 

『付き合ってくれませんか?』

 

 ……そうだ。無いほうがいい。

 

「さーて、再開よ!」




 朧村正の朧流。プレイしたときからずっと考えていて、ようやく実現しました。
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