ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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 アニメの六話……完全に某白騎士アルビオンじゃねえか!!

 反則的なまでにかっこよすぎて、早く二天龍の激突が見たいと思う今日この頃です。


Life.39 聖剣、砕きます!

 殺気が逸る木場に対し、その喧嘩を買ったゼノヴィア。

 

「グレモリー眷属の力、試してみるのも面白い。それに、先輩とやらの力も気になる」

 

 教会には一切知らせない私的な手合わせという形で、俺はイリナと、木場はゼノヴィアという組み合わせで対峙している。場所は旧校舎から少し離れた開けた場所。周囲に結界も張ってあるので、多少は派手な事をしてもいいんだとか。

 

「喧嘩、上手い具合に買ってくれてありがとう」

 

 場違いな気もするが、一応言っておこうと思って口に出すと、それに答えるように二人がローブを脱ぎ捨てる。その下は、ぴっちりとした戦闘スーツ! 身体のラインが出ていてエロかっこいいって感じだ!

 

「気にしなくていいよー。上にバレたら不味いのはお互い様だもんね!」

 

 腕のリボンを手にとって、日本刀の形に変形させるイリナは、好戦的な笑みを浮かべる。

 

「殺さない程度に、楽しませてもらおうか」

 

 布から聖剣を解放したゼノヴィアも、似たような表情だ。俺も神器を出そうとした瞬間、横から底冷えしそうな笑い声が聞こえる。普段の様子など微塵も失くして、木場は薄ら寒くなる笑顔を浮かべている。

 

「……笑っているのか?」

 

 ゼノヴィアの問いかけに、木場は狂喜と言った様子で返答する。

 

「ああ、倒したくて壊したくてたまらなかった物が、目の前に現れたんだ。ドラゴンの傍には力が集まると聞いてはいたけれど、ここまでとは思っていなかったよ。イッセー君がドラゴン型の神器使いだと分かった時は、もしかしたら程度の期待だったのに……どれだけ感謝してもしきれない」

 

 木場を中心に、大量の魔剣が作り出され、地面を埋め尽くす。

 

 ドラゴンの力に惹かれて、様々なものが集まる。それは俺も昔から聞かされ続けてきた事だ。現に今も昔も色々と集まりまくってるからなぁ……挙句の果てには偉大な赤い大馬鹿野郎にまで目をつけられたくらいだ。そこに関しては歴代どころか、古今東西のドラゴンでもぶっちぎりかも知れないといわれた位だし。

 

 けどな、感謝する前に落ち着け、木場。目標がエクスカリバーの破壊なら尚更だ。頭に血が上っただけで壊せるほど、あの聖剣は甘くは無い。

 

魔剣創造(ソード・バース)か……思い出したよ。聖剣計画の被験者で、処分を免れたものがいるという噂を」

 

 ゼノヴィアの声にも、木場は興味を示さない。ただただ殺気と共に魔剣を研ぎ澄ますだけだ。

 

「兵藤一誠くぅん!!」

 

 で、こっちもこっちで何やら別の意味で不味い。眼に星を輝かせるイリナは、熱に浮かされたように一人芝居がかった口調でのたまうばかり。

 

「再会したら、懐かしの幼馴染の男の子は悪魔になっていただなんて、なんて残酷な運命のイタズラ! かわいそうな兵藤一誠君! いえ、昔のよしみでイッセーくんと呼ばせてもらうわ! 聖剣の適性を見出されて、遥かイギリスまで渡り、晴れて主のお役に立てると思ったのに!! ああ、これも久しぶりに帰ってきた故郷で与えられる主の試練? だとすれば、これを乗り越えることで、私はまた一歩真の信仰に近づけるんだわ!! さあ、イッセーくん! 私がこのエクスカリバーで、貴方の罪を裁いてあげるわ、アーメン!!」

 

 突っ込みどころしか存在しないけど、とりあえずハイになりすぎだろ!

 

 そういえば、デュリオも言ってたっけ!

 

『イッセーどん。俺以外の教会の関係者と戦うことになったら、マジ気をつけたほうがいいっスよ。基本頭固い上に一途なもんだから人の話も聞かずに盛り上がること多いし、TPOも期待しないほうがいいっス』

 

 まさにその通りだった。有難いご忠告をどうも!

 

 中々すばやい動きで斬りかかってくるイリナ。対する俺も、神器を出して倍加をスタート。上段から振り下ろされる聖剣の一太刀を、若干の余裕を持って回避する。

 

「ああ、故郷の土地で、昔のお友達を斬らねばならない……なんて過酷な運命!」

 

 まだ自分の世界で酔ってますよこの子。結構美少女だってのに、なんだかなぁ。とはいえ、聖剣使いなのは事実だ。油断は禁物。

 

「……赤龍帝の篭手か。アーシア・アルジェントの聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)に、君の魔剣創造(ソード・バース)。我々にとって異端視されている神器ばかりだ。悪魔になったのも必然と言えるか」

「僕の力は、同士達の恨みが生み出したものでもある。無念の内で殺されていった者達のね! この力で、持ち主ごと聖剣を叩き折る!!」

 

 感情を剥き出しにして猛攻を加える木場だが、明らかに熱くなりすぎだ。一方のゼノヴィアは遊んでいるかのような余裕すら見える。それじゃあ駄目なんだって、木場!

 

 こっちもこっちで、イリナの攻撃をひょいひょいかわし続ける。擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の本領を発揮される前に片付けたほうがいいんだろうが、相手は聖剣を除けばあくまで人間。手加減間違えて殺せば目も当てられない。

 

 となると、決着はおのずと限られる。手加減して攻撃するか、あの聖剣を壊すか……やっぱりここは第三の選択しか無い!!

 

「やってやる! いや、やらなきゃ収まりつかない! つーかやらなきゃ損だ!」

 

 紫藤イリナ。その成長した肢体を存分に拝ませてもらおうか!!

 

「……い、いやらしい顔ぉ」

 

 むふふ、幾らでも怯えるがいい。どうせ俺が何を考えているかは知り通せまい。

 

「……気をつけてください。イッセー先輩は、手に触れた女性の衣服を全て消し飛ばす力を持っています」

「ふ、服を!?」

 

 こ、小猫ちゃん!? どうして敵にそんなネタバレを! 俺の視線に気づいた小猫ちゃんが、意図を察して一言。

 

「女性の敵、最低です」

 

 痛烈なツッコミだね。どこまでも反論の余地は無い。

 

「なんて最低な技なのイッセーくん!? 悪魔に堕ちただけでは飽き足らず、心までもが邪悪に染まって! ああ、主よ。この罪深き変態をお許しにならないでください!!」

 

 また変なテンションでお祈りしているし! 余計なお世話だ!

 

「煩え!! 神が恐くて変態ができるか!!」

「……最低です」

 

 でしょうね! エロくてごめんなさい!

 

 どこか締まらないこっちと違って、向こうは始めからシリアス全開で斬りあっている。

 

 乱撃の末に一度離れた木場は、手に持っていた魔剣を手放し、別の二本の魔剣を取って二刀流で立ち向かう!

 

「燃え尽きろ! そして凍りつけ! 炎熱剣(フレア・ブランド)! 氷空剣(フリーズ・ミスト)!」

 

 炎と冷気、そして騎士のスピードであらゆる方向から斬りつける木場を、ゼノヴィアは最小の動きで対応し、魔剣を薙ぎ払う。

 

「甘い!」

 

 ギィィィィン!

 

 たったの一振りで、魔剣は粉々に砕け散った。なんつう威力だ。さすがは破壊の名前を持つだけのことはある。

 

「はああああ!」

 

 更に、ゼノヴィアが地面に剣を突き立てると、彼女と聖剣を中心とした広範囲の地面が爆音と共に吹き飛ばされ、クレーターとなっている。おまけに、あれでも大した力を込めてはいなかった。

 

「これが私の聖剣だ。破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)の名は伊達じゃない!」

「……七つに分かれて、なおこれだけの破壊力。全てを消滅させるのは修羅の道か」

 

 木場はその威力を見てもなお、ひたすら瞳に憎悪を漲らせている。

 

「もう、ゼノヴィアったらいきなり地面を壊すんだもの。お陰で土だらけだわ」

 

 今の衝撃で尻餅をついたイリナは、パンパンと尻についた土ぼこりを払うと、聖剣を構える。

 

「じゃあ、そろそろ決めちゃいましょうか!」

 

 ダッシュして一気に距離をつめるイリナを、篭手と脚甲で軽くいなす。この眼の力は想像以上だ。通常の俺よりも速いかもしれないイリナの動きもあっさりと見切れる。

 

 こっちこそ、そろそろ決めてやる! そのピッチリスーツを弾けとばしてくれるわ!

 

「ラウザルク!」

 

 強化された身体能力で、一気にイリナに詰め寄る!

 

「きゃっ!?」

 

 俺の邪念を感じたのか、ギリギリで回避行動をとるイリナ。だが、そんなものに意味は無い! 何度避けようと、どこまで逃げようと、絶対に俺の煩悩は君を逃がさない! しつこさこそ、変態には必要不可欠なものだ!!

 

「イヤン! もう! 駄目ぇぇーーーーっ!!」

 

 だが、イリナもまた必死に回避し続け、堂々巡りのように俺と彼女の攻防が続いていた!

 

「大して倍加も進んでいない筈ですのに、凄まじい機動力ですわ」

「……スケベ、恐るべし」

 

 朱乃さんと小猫ちゃんは俺のスケベパワーに驚きを隠せないようだ。例え誰にどう思われようと、俺は俺の生き様を貫き通す!

 

「な、なんなのよ、もう!」

 

 叫んで逃げるイリナの前に跳んで、そのまま両手を突き出して一気に飛び掛る! 呆然とした表情でこっちを見つめる彼女に勝利を確信するが、咄嗟に身を屈められてしまう。欲望任せの大ジャンプの結果、結界を抜けて、後方にいたアーシアと小猫ちゃんに手のひらが触れてしまった。

 

 更に着地のとき、雄の本能から思わず指を弾く。そうなれば当然、彼女たちに込められた俺の魔力が発揮される。

 

 ババッ!

 

 その音に反応して後方を振り向けば、二人の裸体が今まさに晒された瞬間。

 おおおおおおお!! 背後から見る裸体も、新鮮味があっていい! 脳内保存!

 

「ありがとうございます!」

 

 思わず口に出した言葉にハッとなったが、時既に遅し。手で平らな胸を隠した小猫ちゃんに、重みのあるボディーブローをもらい、そのままぶっ飛ばされて結界の中に戻る。着地しようとしたが、一瞬こっちを見た小猫ちゃんの眼の迫力に負けて、甘んじて地面に熱いキスをする。

 

「……ドスケベッ!」

 

 返す言葉もありませんです、はい。

 

 うつぶせになった俺の頭を、恐らくイリナが突っついてくる。

 

「あのね、これは天罰だと思うの。だからこんな卑猥な技は封印すること。いい?」

 

 封印……だと?

 

「いやだ……ッ! 魔力の才能を、全て注ぎこんだんだぞ……。女子の服を透明にする技と、真剣に悩んだんだぞ……。もっと……もっと、女の子の服を弾け飛ばすんだ」

 

 のろのろと立ち上がり、対峙する幼馴染へ拳を握って思いの丈をぶちまける!!

 

「そして、そして……そしていつか! 見ただけで服を壊す技に昇華するまで、俺は戦い続けるんだぁぁぁぁぁーーーーーーーッッ!!!」

「性欲だけでここまで戦えるだなんて、どうかしてるわ!」

「紫藤イリナ! エロこそ力! エロこそ正義なんだよぉぉぉぉ!」

 

 突っ込んでスライディング気味の下段蹴りをかますが、イリナは大きく後ろへ跳んで距離をとる。そして聖剣を正眼に構え、今までに無いほど真剣な表情を作る。

 

「……貴方を少し見縊っていたようね。スケベな行動はともかく、動き自体は紛れもなく本物の武術家だわ。多分、真剣勝負ならとっくに殺されてる」

 

 なるほど。流石聖剣の持ち主に選ばれることはある。あんな状況で観察眼を光らせるとは、大したものだ。

 

「でも、手加減はあまり上手くないようね。そして君はこの場で私を殺すわけにはいかない。その点、私はそういうのは得意な方よ。聖剣は悪魔や堕天使の力や存在を消失させるけど、殺さない程度に斬るから安心してね!」

 

 ちっとも安心できない声を上げながら、イリナが剣を振りかぶる。オーバーアクションなところを見ると、恐らくは避けさせる為の陽動だ。それだけに、ありったけの聖なるオーラが込められていて、しかも篭手とは反対の方を狙っている。普通なら避けるしかない、見事な判断だけどな……甘いんだよ!

 

 全力の横一閃に対し、あえてそのまま突っ込む。驚きながらも剣をとめられないイリナの表情が、数瞬後、更に驚愕に染まる。恐らく、部長や皆も同じような顔をしていることだろう。

 

「う、うそ……」

 

 普通の悪魔ならかすったどころか触れただけでも致命傷になるであろう聖剣を、下級悪魔の俺が右手の指二本の白刃取りで止めている。その現実に意識がついてきていないイリナは、刃を後方へ引くとあっさりとこちらへよろけてくる。

 そこへ腹部に軽い蹴りを加えると、聖剣を手放したイリナは後ろへ跳んで威力を殺した。何かを言おうと口を開きかけるが、それよりも早く、俺の指が合図を打ち鳴らす!

 

洋服崩壊(ドレス・ブレイク)!」

 

 バッ!

 

 戦闘に耐えうる為にそれ相応の強度はあったであろうスーツも、俺の煩悩の結晶の前にははらはらと宙を舞うだけだった。そして、俺の眼前に晒されるは、懐かしき幼馴染の裸体! 脳内保存脳内保存!

 

「きゃあああああっ!」

 

 イリナは自らの身体を抱いて、半べそでうずくまる。一方こっちは、奪った聖剣を一回転させて柄を取って、峰を肩に当てながら決め台詞を吐く。

 

「ふっ、またいい女を脱がしてしまった……」

「……ただの変態。本当に女性の敵です」

 

 手厳しい小猫ちゃんのお言葉も、勝利の美酒を味わう俺には柔らかく聞こえる。悦に浸る俺に、イリナは顔を赤くしながら叫ぶ。

 

「ありえない! 悪魔の貴方が、聖剣に触れてどうして無事でいられるの!? 篭手でもなんでもない素手であれだけの力を受け止められるなんて、ただ事じゃないわ!」

 

 困惑と疑問をまとめて吐き出すイリナへ、回答を呈してやる。

 

「この間、師匠に剣術の修行させられてね。妖刀、霊刀の力を引き出し自在に操る剣術、朧流。言ったとおり、本来は妖刀を扱う事を目的としたものだけど、聖剣や魔剣だって結局根は同じ。後はひたすら特訓をつめば、はいこの通りってわけだ」

 

 そう言って、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を伸ばしたり縮めたり、聖なるオーラをだしたり消したりしてやる。

 

「う、うそ……私より、全然扱えてるだなんて……」

「職人ってのは、素材や武具へ語りかけて仕事を成すんだ。その経験があったからこそ、剣と会話を交わすことだってできる。ちなみに、こいつはイリナに結構不満を持ってるぞ。曰く、イリナは信仰にかまけすぎて自分をないがしろにしてる、だってさ」

「う、嘘よ! わ、私の聖剣が……そんなの嘘よぉぉぉぉっ!!」

 

 大泣きするイリナに、女性陣が俺にチクッとする視線を投げかけてくるけれど、俺は剣の思いを代弁しただけです。あそこまでものの見事に聖なるオーラを消せたのは、全面的にこいつの協力があったのが大きい。普段からもう少し大切に扱っていれば、こんなことにはならなかっただろうに。

 

「いいか。剣に限らず、武器で戦う者にとって、それは自分の命を預ける相棒なんだ。だから日頃から、感謝と敬意を込めて手入れをしたり――」

「はぁぁぁぁぁあああああああッ!!」

 

 俺の説教に割って入った気合の声に振り向くと、木場が再び魔剣を作り出そうとしている。だが、木場が手元に出したのは身の丈を超えるほどの、巨大な魔剣!

 

 よりにもよって何してんだあの馬鹿! 頭に血が上りすぎだ!!

 

「その聖剣の破壊力と、僕の魔剣の破壊力、どちらが上か勝負だ!」

「止せ! 剣を変えろ、木場ぁぁ!!」

 

 俺の声も空しく、木場は大剣を振りかざしてゼノヴィアへ正面から突っ込んでいく。対するゼノヴィアは、落胆をため息として吐き出した。

 

「彼の言うとおりだよ。残念だ」

 

 ガギィィィィン!!

 

 激しい金属音と共に木場の魔剣が一振りで粉々にされるが、ゼノヴィアの聖剣には当然のごとく傷一つなかった。

 

 呆然とする木場に、ゼノヴィアは剣の勢いもそのままに、斧のような形状の鍔で木場の鳩尾を叩く。俺のいる場所まで及ぶほどの衝撃波の後、木場は口から血が混じった吐瀉物を吐き出して崩れ落ちた。

 

「君の武器は、多彩な魔剣とその俊足だ。あんな巨大な剣を持つには力不足だし、自慢の動きを封じることになる。そんなことすら分からないとはな……」

 

 いつものあいつなら、もっと効果的に攻めただろう。けれど、憎しみに燃え上がるあいつには、ただ聖剣を壊すことしか頭に無かった。それがこの結果に繋がったんだ。自分から離れて俺のほうへ歩いてくるゼノヴィアに、木場は必死で手を伸ばす。

 

「ま、待て……」

「次はもう少し冷静になって立ち向かってくるといい、『先輩』」

 

 木場は憎憎しげな視線を向けながら、握った拳を振るわせる。

 

 当のゼノヴィアは、正眼の構えで俺と対峙する。それに対し、俺は一応の確認をとった。

 

「次は俺とやるのか?」

「勿論。お互い相方が破れて1勝1敗。なら、勝ち残ったほうで決着をつけるべきだと思うが?」

 

 まあ、そうなるよな。

 

「それじゃあいくが……くれぐれも死なないようにな」

 

 聖剣を伸ばしながら先端を僅かに重くして、更に全体を薄くする。鞭の様な形になった刀身を、見た目そのままに振るい、しなる刃がゼノヴィアを襲う。

 

「!?」

 

 隠す為に扱うイリナも間違ってはいないが、擬態の聖剣の真価は自在な形状変化。それを上手く扱えば、こういうことも簡単にできる。

 刀身から無数の刃を生やして自分の意思で操ることもできるが、そっちは本数が増える分一つ一つの強度が下がる上に、そっちに気を取られて自分の動きがおざなりになりやすい。こういう物理的なほうが、俺の性にあってる。

 

 ゼノヴィアも刃を断ち切ろうと全力で剣を振るうが、こっちの手元の操作で蛇のようにうねる刀身を捉えることはできず、ただ自分の身体に刃が触れるのを防ぐのが精一杯になっている。

 

「片や信仰一筋のインスタント聖剣使い。もう片方は、天然モノでも頭の中まで天然で筋肉と来た。聖剣を振るうどころか、聖剣に振り回されてやがるじゃねえか。その分じゃ、もう一本も扱いきれてないんだろ?」

 

 俺の言葉に、ゼノヴィアは目を見開いて驚愕している。それでも動きをとめていない辺りは流石脳筋だな。

 

「な、何故その事を……お前は一体!?」

「ただのスケベ悪魔、それだけだ!」

 

 攻撃を防いだ僅かな隙に、聖剣を強烈な一撃で打ち据えると、ゼノヴィアが顔をしかめる。もう一撃いれれば、間違いなく聖剣を弾け飛ばせると確信した俺は……聖剣を元の日本刀に戻し、イリナの元へと放り投げた。

 

 何が起きたか、全員が不思議そうな顔をしている中で、最も早く自分を取り戻したのはゼノヴィアだった。ただでさえキツい目つきを鋭くして、柄を強く握り締めて俺を睨む。

 

「……何のつもりだ。今のは完全に決められた筈だ」

「もう十分だからさ。これは単なる腕試しだし、勝ちが決まったんならそこで止めたほうがいいだろう」

 

 だが、ゼノヴィアは決して剣を下ろそうとはしない。むしろ聖剣の力を更に引き出して、俺ににじり寄って来る。

 

「剣を拾え。さもなくばそのまま斬りかかるぞ」

「……まったく、脳筋はこれだから」

 

 両手の骨をバキバキと鳴らし、軽い前屈体勢で向こうの動きに備える。部長たちが間に割って入ろうとするが、俺が視線で押し留める。

 任せてください、こういう頭に血が上った奴を止めるのは、昔から得意なんです。

 

 イリナもイリナで、ゼノヴィアを制止しようと声を張り上げる。

 

「ゼノヴィア、やめなさい! もう勝負はついたじゃない! 私達ではイッセー君に勝てないわ!!」

「まだ負けてはいない! あそこまで言われて退いては、聖剣使いの名折れだ!」

 

 パン!

 

 手を合わせて聖剣を見つめつつ、最後の忠告をしておく。

 

「言っておくけど……向かってくるんなら、その聖剣をぶっ壊すぞ」

 

 だが、それでもゼノヴィアは不敵な笑いを浮かべて見せた。

 

「面白い……やれるものならやってみろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ダッシュから飛び上がり、大上段に剣を構えて振るうゼノヴィア。間違いなく全力であろう一撃を紙一重で見切り、剣の腹に右手を当てる。手と剣から巻き起こる錬成反応の光が周囲を照らし、そして……

 

 バギャァァァァンッ!

 

 粉々の破片となって、周囲に散らばる破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)。柄だけとなった聖剣を握ったまま呆然となるゼノヴィアの首筋に、刃の破片を突きつけてやる。

 

「これで、文句なしに俺の勝ちだ。いいな?」

 

 柄を取り落とし、膝と手を地面につけて愕然とするゼノヴィアの肩を叩いて、一言言ってやる。

 

「何、ぼーっとしてんだ。とっとと聖剣を直すぞ」

「……は?」

 

 その間の抜けた声は、誰だったのか。

 

 

 

 

 

「うん、確かに全部あるな」

 

 周囲を見回して剣の破片が全て集まったことを確認し、構築式を書き始める俺をゼノヴィアが怪訝な眼で見る。

 

「本当に出来るのか。聖剣を直す悪魔だなんて聞いたことがないぞ」

「悪魔じゃない、これは錬金術師としてやるんだ」

 

 部長には少し申し訳ないけれど、これも一種の職業病みたいなもので、自分で壊したものはつい直したくなるんだ。

 

「自分で壊して直すとは、奇天烈な趣味だ」

 

 不機嫌そうに吐き捨てるゼノヴィアに、少し言い返してやる。

 

「そっちこそ、自慢の聖剣を壊すと言われてやってみろとは変わった趣味だな。お前なりの聖剣への接し方か?」

 

 キッと睨みつけてくるゼノヴィアだが、イリナに押さえつけられて喉まででかかった文句を飲み込んだ。流石に自分から吹っかけた喧嘩だということを思い出したらしい。

 

「じゃあ、やるか」

 

 パン!

 

 聖剣の構成元素、特性を理解し、青白い輝きの中で、破片が分解されていき、そして聖剣が再構築される。

 

 光が止んだとき、円の中心には一本の聖剣が突き立てられていた。拾い上げて出来栄えを確かめ、問題が無いのを確認してゼノヴィアへ手渡す。ゼノヴィアは受け取った聖剣で何度か素振りをした後、剣を布で包んで背中に背負った。

 

「教会の錬金術の粋を集めて作られた聖剣を、こうも簡単に直すとはな。認めたくはないが、大した腕前だ。礼を言っておく」

「戦闘中、あれだけ見てたんだ。そりゃあ覚えもするさ」

 

 そこまで聞いてゼノヴィアが歩き出し、背を向けたまま部長へと声をかける。

 

「では、先の件、よろしく頼むよ」

「その前に、一つよろしいかしら。聖剣を奪ったと言う堕天使は、判明しているのかしら?」

 

 一拍おいて、ゼノヴィアがその名を口にする。

 

「直接実行したのは、神の子を見張る者(グリゴリ)の幹部、コカビエルだ」

「幹部クラスに二人で? 死ぬつもりなの?」

 

 間髪いれず、二人は強い意志を込めて言った。

 

「聖剣を堕天使に利用されるくらいなら、この身と引き換えにしてでも消滅させる」

「覚悟の上よ。既に事前調査でこの町に入った神父が一人殺されているしね」

 

 アーシアに患部を癒してもらった木場が、俯きがちに口を開く。

 

「……やったのは、はぐれ神父のフリード・セルゼンだ」

 

 ふ、フリード!? あのイカレ野郎、まだこの町にいたのか!! ていうか、何でお前がそれを知ってるんだよ。

 

 俺の送る視線に気づいた木場が、一瞬俺のほうを見て、すぐに視線を外す。その眼の奥には、聖剣を圧倒し、操り、あまつさえ壊した上に直した俺に対する複雑な気持ちが覗けた。

 

「偶然その現場に居合わせてしまってね。確かに奴は、エクスカリバーを持っていた」

 

 あいつがエクスカリバーを!? あんなのが聖剣への適性を持っていたってのか!?

 

 それともまさか……神の子を見張る者(グリゴリ)、聖剣計画、そしてエクスカリバー。情報の断片が一本線で繋がり始め、碌でもない予想が浮かんできてしまう。想像に過ぎないと言うことを差し引いても、とてもじゃないがこの場では口に出せない。

 

 ゼノヴィアは一人、得心が行ったという表情で頷いていた。その反応は、やっぱりそういうことなんだろうか?

 

「はぐれ神父か……なるほど。情報提供は感謝するが、これ以上この件には関わるな」

 

 再び釘を刺されて唇を噛み締める木場を余所に、踵を返してこの場を去ろうとしたゼノヴィアは、ふと振り向いて、俺へと視線を巡らせる。

 

「兵藤一誠。一つだけ言っておこう。『白龍皇(バニシング・ドラゴン)』は既に目覚めているぞ」

 

 ――。

 

 なん……だと?

 

「いずれ出会うだろうさ。これは聖剣の代価と思って欲しい。悪魔との貸し借りは怖いからな」

 

 それだけ言って、今度こそ立ち去っていくゼノヴィア。

 

「もう、待ってよゼノヴィア。それじゃあ、イッセーくん。裁いて欲しくなったらいつでも言ってね。アーメン」

 

 アーシアや小猫ちゃん同様、朱乃さんに服を直してもらったイリナが、十字架に口付けをしてその後を追いかけていく。

 

 

 

 

 

 そうして迎えた夜。部活動の準備の最中、突如として木場が席を立ち、部屋を出て行こうとするのを部長が激しい剣幕で止める。

 

「待ちなさい! 裕斗! 私の元を離れるなんて許さないわ。貴方はグレモリー眷属の騎士(ナイト)なのよ? はぐれになってもらっては困るわ。留まりなさい!」

 

 部長の察した通り、木場は間違いなく聖剣を追うつもりだ。その為に、何がどうなろうとも、こいつは歩みを止められない。

 

「部長――すみません。……僕は、同士達のお陰であそこから逃げ出せた。だからこそ、彼らの恨みを聖剣に込めないといけないんだ……」

 

 謝罪を述べつつも、後半は自分に言い聞かせるようにして、木場は部室を出て行った。

 

「裕斗……どうして……」

 

 部長は悲しそうな顔をして、ただ扉を見つめている。

 

 そんな顔を、俺は見てはいられない。こうなったら……やれるだけの事をやってみるしかない!

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