ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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 今回、一部に非常に痛々しい描写が出ます。ご注意ください。


Life.41 『闇黒』、ヤバいです!!

 一夜が開け、痛む尻を席に押し付けて机に突っ伏す。昨日は色々と大変すぎた。三人揃ってお叱りを頂き、俺と匙に至っては尻たたき千回の罰まで科せられた。まあ、仕出かした事の大きさに比べれば寛大だけど。

 

 木場のことは使い魔に捜索させて連絡が来るまで待つように言われたけど、大丈夫だろうか。頭に血が上る云々もそうだが、もしあいつが『因子』のことに気がついてしまったら……時と場合によっては、一気に崩れかねない。

 

 せっかく気づいても、あの『因子』をどうこうすることも、木場に有効なアシストをしてやることも出来ない。相変わらずの自分の無能さが腹立たしい。

 

「最近難しい顔をしてばかりだな、イッセー」

 

 自己嫌悪に苛まされている最中、悪友の声に顔を上げると、松田と元浜のバカ二人の顔面がドアップで目に映りこんだ。

 

「いきなりのアップは止せよ。俺だって悩むことくらいある」

「あれか? リアス先輩と姫島先輩、どっちのおっぱいを揉むべきか悩んでるとか?」

「そんなもん毎日悩んでるよ。ちなみに……」

「「ちなみに!?」」

 

 アホ面寄せて叫ぶ二人に、俺が知る限りのお二人の胸の魅力を語ってやる。

 

「張りとタプタプ感は部長の勝ちだ。だが、柔らかさでは朱乃さんが上。形状と肉付きは部長の方が勝つが、朱乃さんは先端の輪のバランスが、大和撫子といった風情で実に素晴らしい」

「先端!」

「輪!」

「単純に揉むんなら、ボリュームの朱乃さんだが、部長もデカくてな……ん?」

 

 とうとうと俺なりの考察を述べていると、松田と元浜の姿がいつの間にか視界から消えていた。すこし視線を下に下げると、二人揃って膝をついて泣いていた。

 

「イッセー……お前いつか先輩たちの信者に殺されるぞ!」

「俺たちも含め、男女問わず学園中にたくさんいるんだからな!」

 

 親友たちからの嫉妬混じりとはいえ有難い忠告に、俺は毅然と言い放つ。

 

「松田、元浜。―――おっぱいは、命より重いぞ」

「「――深いな! 心に響くぞぉぉぉぉーーーーっ!!」」

 

 むぎゅぅ。

 

 突如、ほっぺを誰かにひねられた。はい、いつもながらにほっぺを膨らませたアーシアちゃんです。ただただ無言で引っ張ってきます。でも力は込めてこないその優しさが美しいよ。

 

「ちっくしょおおお! アーシアちゃんとまでそんなことを! オカルト研究部を蹂躙しやがってぇぇ!!」

「……知ってんだぞ、お前部活帰りにリアス先輩とアーシアちゃんと腕を組んで帰っているらしいな。お前だけ異世界に飛ばされて、最初のほうに出てくるスライムに溶かされてしまえばいいんだ」

 

 そんなのに一々負けてられるかよ。むしろ毎回隠しボス級と戦わされてたわ。

 

「それはそうとイッセー。例の会合はどうなってんだ?」

 

 気を取り直した松田の言葉に、そういえばと思い出す。

 

 アーシアと桐生、それに小猫ちゃんも加わっていて、半日ひたすら遊び倒す計画を立てていたんだった。一応、木場の奴も話はついたけど……このままだと。

 

「小猫ちゃんも来るってさ」

「うおおおおお! アーシアちゃんに続いて塔城小猫ちゃん! テンション上がるぜええええ!」

 

 叫びながら涙まで流して、どんだけ女子に餓えてんだよ、松田。

 

 スパン!

 

 狂喜乱舞する松田の頭を、桐生がハリセンで叩く。

 

「悪かったわね。私も行くことになって」

「ふっ、お前はアーシアちゃんのオプションさ。メガネ属性はこの俺で間に合っているのだ!」

「一緒にしないでよ、変態メガネ。属性が穢れるわ」

「なんだと! この女子のスリーサイズを数値化できる俺のメガネこそ、貴様と一緒にされたくないわ!」

「ふっ、その能力があんただけのものだとでも?」

 

 !?

 

 桐生のメガネがキラリと光り、悪寒を感じて股間を抑える。まさか、奴は!!

 

「ふふふ、私のメガネは、男子のアレを数値化できるのさ!」

 

 な、なんて恐ろしい能力を……精神的な威力ならば、元浜のを越えているやもしれん! 見れば他の二人も反射的にムスコを隠している!

 

 恐れ慄く俺の肩に、桐生は不気味な笑みを浮かべながら叩いてきた。その顔には、一種の敬意のようなものが感じられる。

 

「凄いわね。グレモリー先輩やアーシアが大変だわ。ちゃんと手加減してあげなきゃ駄目よ?」

 

 うおおおおおお!! 生まれて初めて女子にセクハラ受けた! そして受けたくなかった!

 

「頑張ってね。アーシア」

「?」

 

 既に俺のほっぺから手を離したアーシアは、疑問符を頭の上に浮かべていた。うん、アーシアはそれでいいんだ。変なことを教えんな!

 

「まあ、いいわ。それで、木場君以外は来るってことでいいのよね?」

 

 ガラリと態度を変える桐生に、俺も頭を切り替える。

 

「いいや、木場も来るよ。小難しいことはどうにかするさ」

 

 そうだ、あいつが皆とワイワイ遊べるように、なんとかする。それが俺にできる、イケメン王子への恩返しだ。

 

 

 

 

 

 放課後、部室に集まって使い魔か木場からの連絡を待っていると、部長が指を弾き、移動用の魔方陣を起動させる。ジャンプした先、町外れの高台にいたのは、人間に変身した部長の使い魔に抱きかかえられる、全身傷だらけでボロボロのイリナだった。

 

「イリナ!」

 

 名前を呼んで駆け寄ると、イリナは苦しそうに呻く。重傷だけど、命に別状はない。アーシアが治癒を始めると、呼吸が落ち着いていく。何とか口がきける程度に回復したところで、残りの二人のことを問いただす。

 

「木場と、ゼノヴィアはどうしたんだ?」

 

 薄っすらと目を開けたイリナは、掠れた声で答えてくれた。

 

「二人は…逃げたわ。私だけ、逃げ遅れ……て」

「喋っては駄目です!」

 

 アーシアの言葉を聞いたイリナは口を噤み、そのまま寝入るように気を失った。直後、更に魔方陣が出現し、そこから三人の人影が現れた。会長と副会長、そして匙だ。

 

「ソーナ、来てくれたのね」

「連絡を受けて、来ないわけにはいかないでしょう。それはともかく、彼女はダメージが大きそうですね」

 

 近づくなり、即座にイリナの容態を見切る会長に、アーシアはそっと頷く。

 

「私の家であれば治療設備があります。椿姫、頼みますよ」

「はい」

 

 会長の指示を受けた副会長がイリナを受け取り、そのまま魔方陣で消える。俺は、匙へ視線を移し、謝罪を口にする。俺のせいであんな危険な場所に首を突っ込ませた上に、折檻まで受けさせちまったんだからな。

 

「悪かった、匙。今更だけど、色々とさ」

「そんなことより、これは一体なにがどうなってんだよ」

「……それは簡単だ。俺達をここに集めたかったんだろうさ」

 

 逃げ遅れたというイリナが、こんなところに一人で転がっている理由。囮以外にはほぼ考えられないだろう。それと少しは聖剣の気配とその腐った臭いを抑えやがれ、イカレ神父。

 

「かくれんぼなんてしてないで、出てこいよフリード」

「はいはいはい、呼ばれて飛び出て俺参上! ご機嫌うるわっしゅ~、クソ悪魔どもぉ~」

 

 出てくるなり、フリードの目はアーシアに向けられる。怯むアーシアとは対照的に、奴は実に楽しそうに身を躍らせる。

 

「おやおやこれは。クソ悪魔に寝返った、アーシアちゃ~ん。クソ悪魔ライフ、満喫しちゃってるぅ~んふぅ?」

「黙れ、それより用件を言ったらどうだ」

「あぁん、せっかちなんだから。そっちの赤毛のお嬢さんに、お話があるんだってよ」

「私に?」

「ああ。――うちのボスがさ!!」

 

 フリードが目を頭上にやった途端、周囲の風景が異様な光景に歪む。奴の視線を追っていくと、そこにいたのは凝った装飾のローブを身に纏った、男の堕天使。だが、その背中の翼の数は十枚。間違いない、あれが……聖書に名を連ねる堕天使のトップの一人。

 

「はじめましてかな、グレモリー家の娘。我が名はコカビエル」

「ごきげんよう。堕ちた天使の幹部さん。私はリアス・グレモリー」

「紅髪が麗しいものだな。忌々しい兄君を思い出して反吐が出そうだよ」

 

 挑発的なコカビエルの言動にも、部長は毅然と言い返す。

 

「幹部クラスが、私と何の目的で接触するのかしら?」

「なぁに、お前の根城である駒王学園を中心に、この町で暴れさせてもらおうと思ってな。そうすれば、サーゼクスは出てこざるを得ない。だろう?」

 

 なっ……唐突になんて事を言ってやがるんだ、こいつ!? 荒唐無稽にも程があるぞ!!

 

「そんな事をすれば、神と堕天使、悪魔の戦争が再び勃発するわよ!?」

 

 部長の当然の指摘に対し、コカビエルの答えは哄笑だった。

 

「エクスカリバーでも奪えばミカエルが仕掛けてくるかと思ったが、寄越したのは雑魚のエクソシストと聖剣使いが二人だ。つまらん。あまりにつまらん」

 

 イカレてやがる。ここに至るまでの情報、会話を思い起し、こいつの人物像に当てはまる単語が思わず口から出る。

 

「戦争狂が……」

「ははは! そうだ、そうだとも! 俺は三つ巴の戦争が終わってから、退屈で退屈で死にそうだった!! アザゼルもシェムハザも、次の戦争には消極的でな。それどころか、神器(セイクリッド・ギア)なんてガラクタを集めだし、訳の分からん研究に没頭する始末だ。お前の赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)クラスのものならば武器にもなろうが、俺は興味が無い。まあ、アザゼルは欲しがるだろう。あいつのコレクター趣味は異常だからな」

 

 コカビエルの視線と共に、奴から放たれる圧倒的な威圧感が俺に向けられ――

 

 ドグン!!

 

 !!!???

 

 コカビエルと眼を合わせた途端、俺の眼が酷く疼きだす。

 これは……まさか!?

 

「ギリギリで保たれた三大勢力の均衡を崩し、この手で再び戦争を起こす! 天使が駄目なら、今度は悪魔に仕掛けさせてもらおう。ルシファーの妹、レヴィアタンの妹。それらが通う学び舎ならば、さぞ魔力の波動が立ち込めていて、混沌が楽しめるだろう!!」

「ヒャハハハハハ!! このイカレ具合が最高でしょ? ウチのボス! 俺もついつい張り切っちゃうわけさ。こーんな素敵なご褒美までいただいちゃうっしさー!!」

 

 先日の様に弾けそうになる眼を何とか抑え、フリードが晒すコートの内側に目をやる。そこには、三本の聖剣と、一本のリボン――擬態の聖剣が結ばれていた。

 

「無論勿論全部使えちゃうハイパー状態なんざます! ククク、俺ってサイキョー!! あぁ、ちなみにこの擬態の聖剣も、ツインテールお姉さんから、ゲットさせていただきやしたんで」

 

 こ、この野郎……。

 

 湧き出る怒りが、苛立ちが、力の膨張を更に増長させる。一刻の猶予もない程に膨らむ眼を抱える中、コカビエルは俺たちに極めて好戦的な笑みを浮かべる。

 

「戦争をしよう! 魔王の妹!!」

 

 コカビエルが目の前に出した魔方陣から、無数の光の槍が発射される。前に出る部長が魔方陣を展開し、指示を出そうとした瞬間――限界が訪れた。

 

「皆! さ――」

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

Dragon(ドラゴン) Load(ロード)!』

 

 ゴアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!

 

 俺を中心に発生する重力の波。荒れ狂う闇の波動は上級悪魔も消し去る光の槍を捉え、跡形もなく飲み込んだ。光は力として俺の身体に注ぎ込まれ、糧となる。

 

 自分がどんな姿をしているかが、自然と察せられる。一撃を放った後にこの場を去るつもりだったであろうコカビエルもフリードも、身動ぎもせずに俺を見ている。強敵に背を向けると言う死に直結する行動をとりながら、なおも健在な部長の瞳を覗き込めば、そこには思ったとおりの姿の俺がいる。

 

 青い瞳となった左目から、漆黒の闇を炎のように揺らめかせている姿は、そこまで大きな変化でも無い筈なのに、我ながら異形の化け物になったかのような異質さが感じられる。

 

 瞳をコカビエルに向けると、奴は初めて、余裕を消して叫んだ。

 

「なんだ、その眼はぁぁぁーーーーーっっ!!」

 

 頭上に形成される、巨大な光の槍。さっきとは比べ物にならない威力のそれを睨み、眼に力を込める。すると、青く輝く俺の眼から深く暗い声が流れ出る。

 

『Load!』

 

 コカビエルと槍を重厚な闇が包み、光が純粋な力と化して俺に流れ込む。それに気づいたのか、コカビエルはまだ殺傷力があるうちに、槍を投擲する。

 

「消えうせろぉぉぉ!!」

 

 俺以外の全員の目に映っていないであろう速さで目の前に迫る光の槍を尚も睨みつけ、槍と俺の間に一つの穴を出現させた。

 

「なっ!?」

 

 穴を通過した槍は、即座に作られた出口――コカビエルの背後の穴から奴の背中へ向かうが、自分に突き刺さる直前、コカビエルは羽を刃のように扱い、槍を粉砕した。

 

 憎憎しげな眼で俺を見つめる堕天使を正面から睨み返すと、再び音声が鳴り、奴の力が俺に注がれる。

 

『Load!』

「空間を操る能力……しかも吸収だと? 奴の半減の力に似ているが、触れる必要もなしか。恐ろしいものに目覚めたものだ。確かに面白いな、アザゼル!! 行くぞ、フリード!」

「はいはい、それじゃあお待ちかね! はい、チャラバ!!」

 

 再びフリードが移動用のアイテムを叩きつけ、一瞬で二人の姿が掻き消える。行き先は十中八九、駒王学園だろう。

 

 呆然と立ち尽くす皆に説明する間もなく、俺は左目を手で押さえて跪く。

 

「クッ……」

 

 ガオウの奴……好き勝手にやりやがる。決壊するかのように頭の中に刻み込まれる情報を整理するだけでも一苦労だってのに、何でもかんでも飲み込みやがって。

 

 こいつの能力。おまけに近い空間操作はともかく、吸収のほうはとても短時間で扱いきれるものじゃない。片目だけとはいえ、視界に映ったものに対して無差別に力を吸収してしまう。

 白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)のように半減ってわけじゃなく、対象のエネルギー総量に構わず一定量を吸収するって感じだ。強い奴にもそれなりに有効だが、弱い奴だと吸い殺しかねない。

 

 おまけに一度エネルギーを吸った相手は、能力の範囲外に移動するまで、視界から消えようがどんな結界を張ろうが関係なく力を吸収する。一度にどれだけの数から吸収できるかはわからないが、少なくとも百や二百じゃきかないのは確かだ。

 

 目覚めたばっかでこの性能かよ……。しかも、今この瞬間にもドンドン強くなっていっている。

 あと少しで眼を瞑るだけじゃ押さえ切れなくなりそうだ。いや、自分の意思でオンオフが利かないこの段階で、既にかなりヤバいのは分かりきっている。急いでコカビエルの所へいかなきゃならないってのに……。

 

「イッセー! 貴方、その眼は……」

 

 心配そうに駆け寄ってきた部長だが、手で押さえている隙間から漏れ出る闇を見て、大体の事情を察したらしい。

 

「重龍皇の神器……名前は『重龍皇の闇瞳(ヴォイド・ローディング)』だそうです。いつ覚醒してもおかしくは無かったけれど、まさかこんなタイミングで起きやがるとは。そんなことより、あいつ等は駒王学園に向かった筈です。急ぎましょう」

「そ、そんなことって、お前大丈夫なのかよ!?」

 

 詰め寄る匙に適当な返事を返そうとするが、周りの強い視線がそれを許してはくれない。

 

「……詳しい説明は後回しにするけれど、正直な話、大分不味い。この神器は滅茶苦茶過ぎる。下手すりゃすぐにでも禁手化(バランスブレイク)に至りかねない。今のところ、俺の左目の視界に入ったものは区別無く俺に力を吸収される」

 

 混戦になるであろう戦場、しかも遥か格上相手にそんな真似をしてたらあっという間に全滅するのは火を見るより明らかだ。

 

「それは不味いですね……兵藤君無しでコカビエルに挑むなど、自殺も同然です。かといって、私達もやるべきことがある。なんとか、神器を止めることだけでもできませんか?」

「……出来る限り、やってみます」

 

 その場で座禅を組み、意識を精神の奥に沈めていく。

 

 ――海に飛び込むような、空から落ちるような何とも言いがたい感覚を味わいながら、俺は目の前に現れた闇黒と向き合った。

 

「ガオウ。力をくれるのは有難いけど、今はもう少し自重してくれないか?」

『何故ダ? アノヨウナ堕天使、貴様ト私ガ全力ヲ出セバ相手ニナリエナイダロウ』

 

 ああ、そうかも知れない。けどな、それじゃ駄目なんだ。

 

「重龍皇の闇瞳は、今の俺じゃ操りきれない。皆を巻き込んじまう」

 

 そんな俺の言葉に嘆息するガオウの反応は、十分に予想できたものだった。言い返す内容も、纏めてふっ飛ばせとか、足手まといは置いていけとか、その程度だとしか考えられない。そんな俺の予想に対し、ガオウの返答はそれらを遥かに逸脱していた。

 

『――言イ訳ヲ探スノモ、ソロソロ止メタラドウダ?』

「……はっ?」

『バオウヤドライグヨリモ、アル意味深ク繋ガッテイル私ダカラコソワカル。オマエノ本当ノ闇ガナ』

「……なに言ってやがる(ヤメロ)

 

 一瞬、理解が遅れた。

 

『欲スル侭ニ戦エ。奪エ、殺セ、飲ミ干セ』

訳が分からねえんだよ(チガウチガウチガウ)

 

 自分が、そしてガオウが何を伝えようとしているのか、まるで分からない。

 

『ソレコソガ、極ヘト至ル道。ソシテ、オマエノ真理ヘノ道デモアル』

だから何言ってるのかわからねえって(ダマレダマレダマレダマレダマレ)!」

 

 心が散り散りになっている中でも、俺はたった一つの意識でそれら全てを感じ取っていた。モザイク絵のように滅茶苦茶なそれが何を意味するか、理解できない、理解したくない。

 

『眼ヲソラスナ。ダカラコソノ瞳ダ。ソノ眼ハ闇ガヨクミエル』

何が言いてぇんだ(ウルサイウルサイ)!!」

『言イタイ事? 簡単ダ』

 

 重龍皇の闇瞳。その真価と意味。それを自覚した瞬間、次の台詞が何よりも深く俺の心を抉る。

 

『オマエハ―――強イ』

――――――――――――――(ダマレェェェェェェェェェェエ)ッッ!!!」

 

 

 

 

 

「――黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえッッ!!!」

 

 湧き上がる衝動に任せて、右手の指を左目の隙間に突っ込み、視神経を切断して左目を抉り出す。

 

 グジュゥゥ!!

 

「キャアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 誰かの叫び声をBGMに強烈な痛みと得もしえぬ不快感が俺を襲うが、それ以上に思考がクリアになっていくのがよくわかる。そして半ば衝動的に、未だ闇を放つ眼球を赤龍帝の篭手の宝玉に叩き込んだ。

 泥を塗りたくられたかのようにグチャグチャになっていた頭の中が纏まっていき、自分が自分であると認められる。……ああ、俺は俺だ!

 

「……あれ?」

 

 立ち上がって周りを見てみると、何故か皆固まっている。唯一部長だけは小刻みに震えながら口元を手で覆って立ち竦んでいた。

 ……あー。

 

「大声出してすいません」

「眼だよ!!」

 

 匙が鋭いツッコミを入れながら、女性陣を遮る様に若干下をむきつつ俺の目の前に立つ。

 

「何がどうしてこうなったとか今はいいから、取り合えず片目何とかしろよ。グロい、つーか恐い!」

 

 篭手の掌の部分を鏡のように変化させて自分の顔を写してみると……ぽっかりと空いた左目の眼窩から、血が涙のように垂れている。我ながら完全に怨霊の類だな。

 

 血を拭ってから、適当に練成した眼帯を身に着けて、ドライグに声をかける。

 

「ドライグ。勢い任せだったけど、どうだ?」

『大丈夫だ。ガオウも急ぎすぎたと言って、今はおとなしく協力してくれている。次はもう少し扱いやすくなるはずだ。コカビエルとの戦いには間に合わせるつもりだが、その間は赤龍帝の篭手が使えなくなるやもしれん』

 

 そうか……少し厳しいが、何とかするしかない。自分のケツは自分で拭くさ。

 

『待 我 創』

 

 え……バオウが創るって?

 

『確かに、集団戦なら篭手の方が向いている。相棒がいいというのなら、俺もそれでいいぞ』

 

 わかった。じゃあ、頼むぜ。

 

『是』

 

 さて……どう言ったらいいものか。皆、思いっきりドン引いてるしな。下手なことはいえない。

 

 ……ていうか、正直神器に潜った自分が何をしていたのか怪しい。具体的には、ガオウに話しかけてからの件が非常にあやふやだ。文句言ってたことしか記憶にない。どうして、あんな風に叫んだりしたんだろう。

 

 まあ、とりあえずそれは置いといて、まずはなんとか皆を宥めるのが先決か。

 

 

 

 

 

『今ハコレデイイ。ドノミチ闇カラハ逃ゲラレナイ』

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