ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

46 / 96
 遂にオリジナル章、突入です。


特別講習のアルケミスト
Life.45 久々、仕事します。


 USCゆうかりんのドキドキワクワク拷問ショー! 君は生き残る事ができるかな?

 

 ……深く刻み込まれた新たなトラウマのあまり、変な電波を受信してしまった。とにかく修行の成果によって、俺の写輪眼は三つの勾玉を備えた。更にこの上に万華鏡写輪眼があるけれど、そっちの開眼方法は相当ヤバいらしい。

 神さんはその内何とかなる、と言っていたけれど、あの人がそう言うと、本当に何とかなってしまうからおっかない。

 

 だけど……目下一番の問題は、どうしもない程訳がわからないものだ。

 

 

 

 

 

「やあ、おはよう」

「おはようございます、ゼノヴィアさん」

「おはよう、ゼノヴィア」

「おはよ。すっかり日本の生活に慣れたみたいだな」

 

 いつもの三人での登校途中、近所のマンションから出てきたゼノヴィアと、挨拶を交わす。

 

「ああ、部長が用意してくれた住居も快適だしね」

「ここも悪魔の息がかかっているから、いろんな意味で安心なのよ」

 

 暮らしで困ったことがあっても気軽に尋ねてこれるしね、という部長のお言葉に、グレモリー家の権威の凄さをまた一つ思い知りました。いったいこの街のどこまでその力は及んでいるんだろうか。

 

「アーシア。宿題は済ませたかい?」

「はい。ゼノヴィアさんは?」

「私は日本語で分からないところがあってね。教えてくれないか?」

「はい! でも、漢字はまだちょっと……」

「私もだ。日本人とは、こんなに複雑極まる文字を覚えていくのだから、経済大国の片鱗が垣間見えるね」

 

 仲良く雑談するアーシアとゼノヴィアからは、最悪だった出会いなど想像もつかない。学校中でも仲のいい二人と思われているし、桐生と一緒にいることも多い。頑なな偏見を捨てれば、同じ教会出身として仲を深める切っ掛けもつかめたのだろう。

 

 男子の間でも、「静のアーシア」、「動のゼノヴィア」と外国の美少女二人組みと称されている。

 

「「アーメン……うっ!」」

 

 こんな風に祈りを捧げてダメージ受けることも多いけどね。……神は消えども、信仰は死なずってところか。

 

 

 

 

 

 

 ちゅうちゅう。

 

 放課後の、誰もいない部室。魔方陣の上で、部長が俺の指から龍の力を吸いだしてくれている。前回は朱乃さんだったから、今回は部長というわけだ。

 

 ちゅる。ちゅく。ちゅぴ。

 

 粘着音と共に指から甘い刺激が脳へと送られ、昇天しちまいそうだ。しかも……部長の衣装は、黒のネグリジェ! 見えそうで見えない透明さ加減が魂を揺さぶってきて、朱乃さんの濡れ襦袢にも負けず劣らずエロい!!

 

 ぬちゅッ。

 

 うは! 最後に指先を舐りつつ口を離すと、唇を舐めながら熱の篭った視線を向けてくる!

 

「イッセー。貴方はどこまでも私の予想を超えてくれるのね」

「へっ?」

 

 唾液に濡れた唇をなめつつ、部長がそっと呟いた。

 

「最初、貴方を蘇生させたときは、拾い物くらいの気持ちだったわ。駒を八つも消費する程の力を秘めた人間だなんてとてもレアだ、とね」

 

 は、はあ。まあ、大半赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の分ですけどね。

 

「それが、悪魔になって間もないというのにたった一人で四人もの堕天使を打ち倒した時は、本当に興奮させられたわ」

 

 それは……。

 

『でも死んじゃったじゃない、アハハ! その子死んでるのよ!? 『守る』とか『守らない』とかの話じゃない! あなたは『守れなかった』のよ!! あの時も、そして今も!』

 

 ……昨日の様に鮮明に思い出せちまう。いつまでも消えてくれないな、あいつの声は。

 

「それから少し後に、ライザーとのゲーム。貴方は新しい力と神器を活かしきり、必死で戦ったというのに……私は貴方を活かせなかった。いえ、活かそうともしていなかったんだわ。なのに貴方は左腕を犠牲にしてまで、約束を守ってくれた」

 

 そんな……俺は俺が出来る事をしたまでですよ。

 

「そして、この間のコカビエルの一件。貴方の錬金術師としての腕は、本当に凄まじいものだったわ。その上、新たな神器のために、今度は左目を犠牲にしてまで……」

 

 あれも……ほとんど衝動的な行動です。

 

「俺は……部長が思ってるみたいな凄い奴じゃないですよ。皆と違って才能も取り柄もないから、努力するしかなかっただけです」

「努力なら私達だってしているわ。けれど、貴方は私達の何倍も努力を重ねることが出来る。貴方は強いわ。自信をもちなさい」

 

 指導者に恵まれたっていうのは大きいですけどね。なんだかんだ言っても、神さんの育成能力の高さは凄まじいものがあるから。だけど……

 

「部長にそう言ってもらえるのは、素直に嬉しいです」

「そう。いい子ね」

 

 ちゅっ。

 

 おお、不意打ち気味にキスされた!

 

 最高おおおおおお!

 

「ふふ……今日のお勤めも終わったことだし、そろそろ帰りましょう」

 

 瞬時に着替えを終えた部長と共に、家路につく。そして、玄関を開けると……

 

「おかえりなさい!」

 

 出迎えてくれるアーシアのエプロン姿。それ自体はいい。非常にいいんだが……他の衣服を身に着けていないことが問題だ!

 

「遅くまでお疲れ様です。すぐにお夕飯の仕度をしますので……」

「あ、アーシア!! なんだその素晴らしい――いやいや、いやらしい格好は!?」

「えーっと……」

 

 考え込む間の僅かな動作でも、白い布がヒラヒラと舞い、大事な部分が見えそうになってしまう! せ、先日とはまったく別ベクトルの鼻血が噴出しそうだ。

 

「桐生さんに、疲れた殿方を癒すのなら、この格好が一番だと……」

 

 あのエロメガネェェェェェェェ!! 超ありがとうございます!!

 無垢な表情で白いエプロンの端を摘むアーシアの姿を見といて、礼以外の言葉が出てくるもんか! コンチクショオオオォォーーーーーーーーーッ!

 

「……なるほど! そういう手もあったわね! アーシア。貴方は魔性の女悪魔になれるわ。エッチな子ね」

「えええ! 私、エッチな悪魔になりたくないです!」

 

 楽しそうな部長と対照的に、アーシアは困惑状態でうろたえる。

 やべぇ。困惑と興奮で頭がどうにかなりそうだ。それでも、何とか一欠けらの冷静さを引っ張り出して、アーシアに詰め寄る。

 

「と、とにかく早く着替えないと。こんなの母さんに見られたら……」

「あ~ら。母さんこういうのは大賛成よ?」

 

 奥から顔を出した母さんの顔は、心底楽しそうだ! 母さんが手伝ったんですか? そうなんですね!?

 

「お母様! 私にも裸エプロン、お願いします!!」

 

 部長ぉぉぉ!? え、なにこれ? 俺の欲求不満から生まれた夢じゃないよね? この後幽香さんが出てきてまた木遁地獄とかないよね!?

 

「ええ、もちろん! さあ、奥にいらっしゃい」

「はい! ……アーシア。私から先手を取るだなんて、やるようになったじゃない」

「そ、そんな……」

 

 すれ違い様に耳打ちされたアーシアが赤面するが、俺はもう一杯一杯だった。主に血が。

 

「い、イッセーさん。ご迷惑でしたか?」

 

 俺の疲れた様子を察したのか、アーシアが心配そうに言ってくる。

 

「いやいや、似合ってる。うん、似合ってるよ。それだけは言いたい」

 

 アーシアは気恥ずかしそうだが、嬉しそうでもあった。

 

 ……そういえば、ゼノヴィアとイリナが乗り込んできてから言いたかったことがあったのに、全然言えてなかったよな。あの後はドタバタしてたからな。いい機会だし、言っておこうか。

 

「アーシア」

「は、はい」

「教会や天使が来ようが、堕天使が来ようが、俺が守ってあげるからな。アーシアが怖いと思うものは全部、俺が追い払ってやる」

 

 俺は一度、この子を守れなかった。あんな思いは二度としたくない。だから、今度こそ絶対に守り抜く。

 決意を固める俺に、アーシアが静かに抱きついてくる。うおおお、裸エプロン越しのおっぱいがやわらけえ……。

 

「……私、悪魔になったこと、後悔していません。信仰は忘れられませんけど、主への想いよりも大切なものができましたから」

「大切な、もの?」

「部長さん、部員の皆さん、学校のお友達、イッセーさんのお父様、お母様。そして……イッセーさん。みんなみんな、私の大切な方々です。ずっとずっと、一緒にいたい。――もう独りは嫌なんです」

 

 小さく震えながら、俺の胸でアーシアが思いの丈をこぼす。両親の愛を得られず、友人も作れず、救いを願った神すらも存在しないまま、一人ぼっちだったアーシア。そんな子を、もう一人になんかさせるもんか。

 

 抱きつくアーシアの腰に手を回すと、アーシアの温もりがより一層感じられ……え?

 

 こ、このスベスベな手触りは……あ。

 

 裸エプロン=後ろはすっぽんぽん。

 

 もっと早く気づけ俺ぇぇぇぇぇ!

 

 い、いかん! 手が、手が勝手にお尻の方へ……止せ! 確かにアーシアなら、お尻を撫で回しても許してくれそうだが、そんな破廉恥な真似を守るべき対象に――

 

「イッセー! 私も着てきたわよ!」

 

 そこへ、部長がピンクのエプロンを見せつけ、豊かなバスト様をぷるんぷるんと弾ませて戻ってきた。

 

 ブハァ!!

 

 限界を超えた欲望が、血と共に鼻から噴出した。

 

 そうこうする間に、部長とアーシアが揃って裸エプロンが見せ付けてくれながら、お料理開始。俺はこれ以上の出血を避ける意味でも、雑誌を読みながら待ちの姿勢です。

 

「うふふ、若い頃をおもいだすわぁ」

 

 皿などを用意する母さんは、とても暖かな眼差しを向けていた。

 

 お母さん? まさかとは思うけれど、俺って裸エプロンが切っ掛けで生まれてたりしないよね?

 

 その後、帰ってきた父さんが同じく鼻血を噴いたりした後、全員揃っての食事が始まる。

 

「父さん、幸せだ。一日の疲れが吹っ飛んだよ。ああ、若い頃を思い出すなぁ」

 

 そう言って意味ありげな視線をかわす両親を見て、やっぱり親子なんだと痛感した。

 

 

 

 

 

 電気を消した部屋。部長とアーシアと一緒に寝ている最中、もやもやとした気分がどうしても晴れない。

 

 今日みたいに、部長やアーシアと楽しく過ごしても。

 朱乃さんに可愛がられても、小猫ちゃんにしばかれても。

 松田、元浜とエロで盛り上がっても、木場と二人で遊んでも、桐生にからかわれても。

 

 幻術から目を覚ました時から、常に心のどこかが空白を訴えている。なんというか……自分自身が酷く歪に感じるんだ。

 

 何かが致命的に抜け落ちている。キーアイテムを取り忘れたにも拘らず、進んでしまっているRPGの様に。

 

 これが、度々神さんに指摘されてきた俺の問題なんだろうか。

 食没を習得できない原因であり……氷美神の怒りをかった理由。

 

『このッ……卑怯者が!!」

 

 あれがあってから、もう二年も会ってないんだな。氷美神とも、ジェリーさんとも。

 氷美神の奴、相変わらずアイスばっか食ってんのかな。

 ジェリーさんは相変わらず白のスーツかな。

 

 ……そういえば、二人の研究資料が盗まれたって話だったっけ。確か……グルメ細胞関連が根こそぎやられたとか。資料自体はデータ管理してるから平気だけど、肝心の窃盗犯は未だに見つかっていないらしい。

 

 痕跡らしい痕跡は、例の強化されたバロバイソンと象熊。あれが氷美神達の研究からもたらされた結果だというのは分かったらしいんだけど、その後の手がかりはまるでつかめていない。

 

 それと、バルパーの賢者の石の事も神さんに告げたが、それも目立った成果は上がっていないようだ。

 

 神さんが名付けたあれの通称は『赤い魂(レッドソウル)』。正体そのまんまなネーミングだけど、だからこそ笑えない。解釈、研究内容、目指すものなどの違いによって、錬金術の主な到達点である賢者の石は研究者の数だけあると言ってもいい。そして数ある『賢者の石』の中でも、あれは特に性質が悪い。

 

 錬成陣を必要とせず、容易に莫大な錬成を成しえる汎用性に加え、倫理を問わなければ比較的簡単に作れてしまう、という生産性を持つ。

 口ぶりからして、バルパーはあれを裏ルートか何かで手に入れたようだが、つまりは誰かがレッドソウルを裏で流しているということでもある。

 

 ……どうも嫌な予感がする。こういう時の勘が圧倒的的中率を誇る事を思い出しつつ、眠りに落ちていく。

 

 

 

 

 

 翌日の放課後、悪魔稼業を始めるのかと思いきや、部長からこう告げられた。

 

「早速だけれど、今日は通常の仕事は休みよ。大口の契約が入ったの。相手は、月の民よ」

「……月の民?」

「聞いたことがあるような、ないような……」

 

 首を捻るアーシアとゼノヴィアを余所に、俺は思わぬ単語に噴出しそうになった。

 

「確か、日本の神の中でも特に身分の高い、月読の縁者ですよね?」

「何かを理由に、月へ移り住んだと聞きますけれど……」

 

 木場と朱乃さんが不思議そうな表情をしているが、とりあえず黙っておこう。今は何も言えることはない。

 

「……それにしても、どうしてですか?」

 

 小猫ちゃんの疑問に、部長も首をかしげた。

 

「そうよね……言っては何だけれど、私達は日本の神々とは縁が薄いわ。増してやその頂点である三貴子の月読、更にその縁者だなんて……しかも月の文明は地上のそれとは比較にならないほど高いと聞くし、そんな彼らが私達に何を願うのかしら?」

 

 ……多分、あれだろうな。時期的にそろそろとは思ったけれど。

 

「何れにしても、こちらへ出向いてくるといっていたわ。そろそろ……」

 

 コンコン。

 

 部屋に響いたノックの音に、皆が一瞬、身体を強張らせる。すぐに木場が扉へ寄って開くと、やっぱりと言うべきか、見知った女性が立っていた。

 

「失礼致します」

 

 品のいい声色で社交辞令を述べつつ中に入ってくる、薄紫色のポニーテールの女性。

 半袖で襟の広い白シャツの上に着た、右肩側だけ肩紐のある赤いサロペットスカート。前面中央についたボタンは膝上くらいから空けられていて、スリットのようになった部分から覗ける生足が眩しい。

 

「始めまして。私は綿月依姫(わたつきのよりひめ)と申します。此度は月読様の代理として、この場に参りました」

「ご丁寧にありがとうございます。私はリアス・グレモリー。それで、今回の契約内容はどういったものでしょうか」

「……率直に申し上げますと、正確にはグレモリー眷属に対しての依頼ではないのです」

「え?」

 

 妙な口ぶりに部長が聞き返す前に、依姫は俺へ話しかけてきた。

 

「久しぶりですね。太もも辺りに感じた視線からも変わっていないようで結構です」

「……はい。それで、やっぱりあれですよね」

「勿論、今年の御神刀をお願いに上がりました。頼みますよ、イッセー」

 

 目を丸くした皆の視線が、俺に集中する。突如急加速した話の流れをなんとか掴もうと、部長が口を開いた。

 

「あの……お二人は御知り合いで?」

「ええ、彼とはとても熱く燃え上がりました」

 

 お約束の天然きたぁぁぁぁぁ!! 誤解されること言わないで! 燃え上がったのは建物と兵器でしょ!

 

「何を慌てているんですか? あれだけ私とお姉さまを滅茶苦茶にしておいて、忘れたとは言わせませんよ」

 

 主に戦闘的な意味でね! これ以上爆弾投げないでくれぇぇぇぇ! 部長とアーシアと朱乃さんが凄い眼でこっちを見てるから!! 

 

「……イッセー。詳しく聞かせてもらえるかしら?」

 

 恐ろしい眼力で迫る部長の迫力に、思わず写輪眼が出てしまう俺だった。

 

 

 

 

 

「要するに、昔イッセーくんが月の都に攻め込んだってことかい?」

 

 どうにかこうにか場を収めた矢先、木場が俺の話を総合して聞き返してきた。

 

「師匠に付き合わされたんだよ。二年前、ある日突然用意しろとか言って、準備を整えたら即出撃だ。そこまで至って、ようやく目的聞かされて愕然としたよ。本人曰く……」

『命の営みを穢れと嫌い、月へ逃げ出したのはどうでもいい。ただ、元は自分たちの故郷だった星で生き足掻く者たちを、綺麗な月から見下し、弄び、下賤とあざ笑う連中の傲慢さが気に入らない』

「……だとさ」

「……それで殴りこみを?」

 

 小猫ちゃんが訊いてくるので、頭を掻きながら答える。

 

「あ~……まあ、俺の準備が整ったのもあったんだろうな」

 

 禁手化できるようになってすぐだもんな。同時期に完成したあいつを動かせと言われたのは流石に驚いたけど。

 

「まあ、実際、考えなしに突っ込んだだけだったけどね」

 

 ソファーに着いた依姫は渋い茶を啜った後、重いため息と共に俺と神さんの所業を吐き出した。

 

「……裏の月の空間に侵入直後、全火力を一斉掃射。あの時点で死者が出てもおかしくはありませんでした。月の総力を結集して、ようやく防げたぐらいですから……」

 

 みんながギョッとするなか、依姫が続ける。

 

「その後、榊神が月読様の要請で高天原からやって来た神々と交戦。そして、イッセーは私とお姉さまと戦いました」

「で、紆余曲折あって何とか死傷者無しで終わったんですけれど、終戦と今後の友好の証として、年に一度俺が御神刀を月読に捧げる事になったんです」

 

 当事者である依姫と俺を除いて、皆唖然としている。その様子に、依姫は少し怪訝な顔を俺に向けてきた。

 

「イッセー。貴方、まったく話していなかったんですか?」

「あー、うん」

 

 だって聞かれなかったし。

 月に喧嘩吹っかけただなんて、自分からするような話でもないだろう?

 しかし、依姫は盛大なため息を吐いて、頭を抑えている。

 

「まあいいでしょう。とにかく、そういう次第です。月の方も彼には色々と対価を支払っているのですが、イッセーが悪魔の眷属になったという聞き及びましたので、一応の確認と了解を頂きに来た、というわけです」

「……つまり、今後もイッセーとの約束が果たされることを保障して欲しい、ということですね?」

 

 部長が困惑を抱えつつも、話を進める。同情するような視線を向けつつ、依姫が肯定する。

 

「はい。無論、『契約』のために相応の対価は用意してありますが、出来ればこちらの事情も察していただけると幸いです」

 

 言外に、悪魔としての『契約』と、俺との『約束』は別で考えて欲しいと言いたいわけだ。確かに、俺が悪魔になる前からの決まりだって事を考えれば筋は通る。

 

 ついでに言えば、部長としては冥界と交流の薄い日本の神、それも三貴子という大物の勢力に、下手に強気に出るわけにはいかないときてる。魔王ルシファーの妹という肩書きを持つ部長と月読が万が一に揉めた場合、事が大きくなりかねない……なんて、流石に穿ちすぎか。

 

 そこまで意地の悪い事を月読や依姫が考えているとは思えない。永琳さんじゃあるまいし。

 

「……わかりました。イッセーが私の眷属になる前の約束事に、私が干渉するのは差し出がましいというものですから」

 

 肯定する部長の表情は、何故か浮かない様子だ。心なしか、ショックを受けている様にも思える。

 

「そこまでは言う気はありませんが、ご理解くださった事は感謝致します。……イッセー、御神刀は何時頃出来上がりますか?」

 

 依姫も依姫で、申し訳なさそうにそう告げた後、こっちに鋭い目つきを向けてきた。

 

「そうだな……明日から研究所に行って、月曜には確実に仕上がる」

「では、月曜日にまた。本日はありがとうございました」

 

 バタン。

 

 依姫が去った後、誰が何を言うでもなくその場は解散となった。家に帰ってからも部長はずっと落ち込んだままで、その日は部屋にも来なかった。

 

 

 

 

 

 

 久しぶりに、私は自分の部屋のベッドで寝ている。思えばこの家に来て、ほとんどの夜をイッセーと一緒に過ごしていたのだと実感しているわ。……一人のベッドが、こんなにも冷たく感じるのは初めて。

 

 すぐにでもイッセーを抱きしめに行きたいが、今の私の心情がそれを許さない。

 

「私は……何一つわかっていなかったのね」

 

 イッセーがライザーに向かっていった時、私が出来たのは、想像だにしなかったイッセーの全力に驚くだけで、その後も必死で戦い抜こうとする彼に対して、泣いて縋る事しか出来なかった。

 

 象熊の時も、ただ震えていた。手を出すなと言われていたのに勝手に動いた結果は、足手纏い以外のなんでもなかった。

 

 コカビエルの時だって、ケルベロスを倒す以上の役には立てなかった。

 

 何より……私はイッセーの事を何一つ、知ろうとさえしてこなかった。

 

 圧倒的な武術、覇気と呼ばれる闘気にも似たエネルギー、魔法以上の錬金術。気になる事は幾らでもあったというのに、気にするだけで終わっていた。

 

 今回だってそう。他人に告げられたイッセーの過去に驚かされるだけで、そこで終わってしまった。これでは――私は兵藤一誠の主を名乗れない。

 

 ……そういえば、イッセーは先ほどこう言っていたわね。

 

『明日から研究所に行って……』

 

 月曜は祝日。つまり、明日の土曜日からは三連休。その間に、仕事を済ませるつもりなんでしょう。

 

 思い立ったが吉日。目標を決めた後は、即座にその為の筋道を立てる。彼の性格からして、何も言わずに研究所とやらに行く真似はしない筈。渋られたとしても、何が何でも付いて行く。

 

 私が本当の意味で、イッセーの主となる為に。

 

 

 

 

 

『朝七時ですよ! ほら、何を寝ぼけているんですか? まずは廊下を雑巾がけ! その後、皆で朝餉をいただきましょう。今日のお味噌汁は……私の手作りですよ?』

 

 澄んだ聖さんの声で起き上がると、既にアーシアの姿は無かった。多分、朝食の用意に行ったんだろう。……部長の事は気にかかるけど、今日から月曜までは三連休。研究所へ行くにはちょうどいい。朝食の後にでも、皆に暫く出ると伝えておこう。

 

 コンコン。

 

「イッセー、ご飯が出来たわよ」

 

 ノックと共に聞こえてきたのは、珍しく部長の声だ。何があったのかは知らないが、昨日とは打って変わって弾んでいるように聞こえる。

 

「はい、すぐに行きます」

 

 そう言って着替えてから下へ降りて、ほかほかと湯気を立てる朝食を前に、両手を打つ。

 

「この世の全ての食材に感謝を込めて……いただきます」

 

 食べ進めている間も、部長は楽しそうにしている。……朱乃さんと遊びにいく約束でもあるのかな?

 

 食後、まずは部長に話しておこうと思ったが、当人は携帯でメールをうっている真っ最中。終わるまで待ってから話しかける。

 

「部長、少しいいですか?」

「ええ、なにかしら? ……なんて、多分、昨日の依頼の事よね?」

 

 そりゃお見通しですよね。

 

「はい。それで、月曜まで家を空けるんですが……」

「分かったわ。けれど、もう少し待っていてちょうだい。皆、もうこっちに向かっているそうだから」

 

 ピンポーン。

 

 疑問を口にする前に、玄関から呼び鈴の音がなり、アーシアが応対にでた。

 

 戻って来たアーシアの後ろに立っていたのは、朱乃さん、木場、小猫ちゃん、ゼノヴィアと、いつもどおりの顔ぶれ。当然、皆私服だ。……つい最近加わったばかりのゼノヴィアはともかく、オカ研メンバーが制服以外で集まるって、もしかして初めてじゃないか?

 

「皆来たわね。それじゃあ、行きましょうか」

 

 ん? 皆で遊びにでも行くんですか?

 

 なんて考えていると、部長が俺に向きなおって……

 

「イッセー。私達を、貴方の研究所に連れて行って頂戴」

「……はいぃぃぃぃぃぃ!?」

 

 

 

 

 

 なんて驚いてはみたものの、冷静に考えてみれば断る理由なんて無かったりする。知られて不味い研究なんかしてるわけじゃあるまいし、色々と説明も出来る。最近、説明不足で皆を驚かせてばっかりだったからな……。

 

 そんなわけで、案内したのは俺の部屋。怪訝な顔をする皆を尻目に、軽くジャンプして天井に張り付くと、傍目からは分からない様になっているスイッチを強く押し込む。すると、天井の一部がガタンと落ちるように開き、板がスライドして階段になった。

 

「それじゃあ着いてきて下さい」

 

 そう言って上り始める俺の後ろから、皆が恐る恐る上ってくる。上った先にあったのは、巨大なポッド型の転送装置。その中に全員が入ってから、すぐ傍のコンソールを操作し、俺も入る。

 

 ブゥン!

 

 ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン、ゴゥゥゥン!!

 

 内部をエネルギーが迸り、転送先と空間が繋げられる。ポッド外が真っ白に染まり、今いる場所とポッド内の繋がりが断ち切られた。

 

 数秒後、徐々にエネルギーが収まり、ポッドの外が見えてくる。扉が開くと、俺は真っ先に外へ出て、皆に宣言する。

 

「ようこそ、俺の研究所へ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。