通夜の様な重々しい空気を抱え、イッセー君を連れて研究所へ戻ると、明さんに加えて榊神さんが私達を出迎えてくれました。
イッセー君を再び医務室のベッドへ寝かせた後、最初に口を開いたのは、その神さんでした。
「そういえば、グレモリー眷属とはキチンと挨拶が済んでなかったっけな。改めて、俺は
畏まって名乗る神さんは、あの公園での掴みどころの無い雰囲気とはまた違った空気を纏っていました。
「私は
「うちはマダラ。元忍者の寿司職人で、チャクラ式忍術の師だ」
朗らかな笑顔を向けてくるのは星の飾りが特徴的な緑の帽子と、同じく緑のチャイナドレスに赤い髪が映える快活な美女。対して、黒い外套の様な服を着た黒髪の男性は、あくまで無表情かつ儀礼的な反応です。お二人が簡潔に挨拶をすると、キンブリーさんが帽子をとって恭しく礼を取ってきましたわ。
「氷美神お嬢様の
全員に視線を向けられた榊氷美神さんは、うっとしそうにため息をついてから名を告げました。
「……榊氷美神。またの名は、レイーヌ・ヴァレフォールだ」
「ヴァレフォール!? 七十二柱の元第六位、公爵じゃないの! 確か、断絶したと聞いていたけれど……」
驚くリアスを切れ長のつり目でひと睨みすると、彼女はまたため息をつきました。
「ある意味そうさ。俺は純血ではなく、人間を母に持ったハーフだからな。だから
「しかも生まれつき二つの神器を保有した稀有な例ですよ。物自体は
私は開いた口を咄嗟に手で覆いながら、失礼だと思いつつもマジマジと彼女を見つめてしまう。
……忌々しいけれど、神器の研究に関して三大勢力で最も秀でているのは堕天使……
見方によっては一から作る人工神器よりも簡単に思えますが、元来神器は強引に抜き取れば所有者が死に至る程密接に結びついている代物。それに手を加えるというのは想像を絶する所業であり、下手をすれば死に至る可能性も十二分に存在すると聞いています。
そんな危険な未知の行為を、目の前の少女はやり遂げたのですわ。
「こう見えてもお嬢様は生体と医学分野の錬金術に秀でています。それ以外でも生体工学、医術、薬学に置いては世界最高レベルの知識と技術をお持ちで、『
自慢気に謳うキンブリーさんに苛立たしげな視線を向けつつも、何の効果も無い彼女にまたため息をついた榊さんは、つまらなそうに鼻で笑いました。
「……ふん。知名度なら、イッセーの『
戦鋼……確かそれは、エクスカリバーの一件でバルパー・ガリレイが口走った名前ですわ。
明さんは、頭を掻きながらボヤくように言いました。
「イッセーにとって、研究は自分の好奇心と知識欲を満たす為のもので、名声だの利益だのにはほぼ興味が無いからね。倫理観を外れないのは救いだけど、アレも一種のマッドサイエンティストだよ」
椅子に座りながら、ライリさんが懐かしみつつ続けます。
「覚えは人一倍悪かったけどね。そのくせ最初かどっかでエロが絡むと爆発的に進むんだから、進歩は欲から生まれるにしても限度があると思ったよ。何より、神や私達にここまで付き合ってくる教え子なんて、想像も出来なかった。絶対どっかで投げ出すが、ある程度の所で満足するかと踏んでたのにさ」
マダラさんが、壁に寄りかかりながら皮肉げに笑いました。
「戦闘分野に絞っても、俺も含めて半数以上の師はイッセーを何度も殺しては蘇生させたというのにな。俺一人とっても、軽く百を超える程度には死なせているぞ」
……私は、また一つ大きな勘違いに気付かされましたわ。
フェニックス戦前の合宿や球技大会の練習でイッセー君が碌に辛そうな顔を見せていなかったのは、単に元々体力がついているだけだと思っていましたが……どうやら、イッセー君にとっての『修行』や『特訓』は、私達の考えているそれとは余りに大きすぎる溝があったようですね。
なんとも言えない空気の中、美鈴さんはイッセー君の髪をなでて、労るような、それでいて叱るような眼で、寝顔を眺めました。
「もう駄目、本気で死ぬとか言って、逃げ出すことはありましたが……一度も『辞めたい』とは口にした事もないんですよね。どこまでも真っ直ぐ過ぎる癖に……なんだって今更、あんな真似して、あんな事を抜かすんだか」
――俺は……所詮失敗でしかなかった。
失敗。それが何を指していったのか、私にはまるで理解できない。
私が知る彼は、一部分だけでも余りに凄まじすぎるのだから。
赤龍帝の魂と力を宿した
欠点といえば、少しエッチが過ぎる所かしら。でも、イッセー君のそう言った面は、私が今まで感じてきたそれとは大きく異なるものだわ。
彼は事あるごとに女子に人気のある美形の男子に嫉妬や羨望の眼差しを向けるけれど、そう言った男子も一皮むけばイッセー君とそう変わらない……いいえ、表向きはそういう下心を一切持っていないという風に振るまい覆い隠している分、イッセー君よりも余程汚らわしい。
外面を整え、劣情を上手く隠した男。そういった輩に、私もリアスも何人も言い寄られたわ。綺麗な部分を強調することに必死で、汚い部分は隠す、ごまかす、見ないふりで、清廉潔白を売りに近づこうとする。そしてその腹の底では、私達の綺麗な外側にしか興味が無い……。周りはお似合いだのなんだのと好き勝手を言いますけれど、内心は嫌悪で一杯でしたわ。
けれど、イッセー君は違う。彼はいつでも己の欠点や暗所、弱所と向き合っていて、そこを鍛え、受け入れ、向きあおうと必死であがいている。諦めずに、何度でも何度でも立ち向かって、自分を克服していく。人のいい部分も悪い部分も直視することが出来て、躊躇なく自分をさらけ出して向き合える。
それが……未だに、自分の忌まわしい部分を受け入れられない私には眩しくて……自分が嫌っている男と同じ様に、彼に綺麗で色っぽい自分を必死で見せつけているのですわ。
彼を殺しかけて散々侮辱にした挙句、大事な人を傷つけて、心に苦いものを抱え込ませた堕天使。
イッセー君が、そんな一面だけで掌を返すとは思っていない。現に、あれから彼の自分への態度に変わった様子は見られない。だけど、もしも万が一にも、怒り狂ったイッセー君に一度殺されたリアスの様に、彼から殺意と嫌悪……拒絶を向けられたら。
――――。
考えるだけで、目尻に涙が溜まってしまう。もう嫌われるのも、厭われるのも慣れたつもりだったのに……。いつの間にか、こんなにも彼の存在が大きくなってしまっていた。
なのに、こんな終わり方……絶対に認められないわ。
「全員、注目」
と、まるで引率の教師の様な口ぶりで、神さんがみんなの視線を自分に集めた。
「まず……イッセーについてだが、この馬鹿は精神面が原因による意図的な仮死状態だ。恐らくこのままだと切っても突いても眼は覚めない。それどころか、このまま自力で全身体機能を停止させて自殺しかねない」
生物の常識を無視した荒唐無稽な宣言に、ここまでイッセー君の出鱈目ぶりを見せつけられた私達は息を呑んだ。己の全てを意識下においている彼にとって、それくらいは朝飯前だろう。
「そこで、だ。今から幻術でこいつの精神世界に飛び込んで、強制的に叩き起こす。多大な危険が伴う可能性があるが、ついて来る奴はいるか」
その誘いに、全員がイッセー君のベッドへ近づく。神さんはふっと笑うと、素早く手を動かして、つぶやいた。
「夢幻・
そして、意識が闇に堕ちた。
『初めまして、俺、兵藤一誠! 君は?』
『……榊、氷美神』
『榊氷美神ちゃんかぁ。確か、同じ学校だよね。氷美神ちゃんってよんでいい?』
『……うん』
『ありがとう! じゃあ、俺のこともイッセーでいいよ。にしても、綺麗な髪だね!』
『うん、ありがとう……お母さんと同じ色なの、これ』
『へぇ~。ねえ、一緒に遊ぼうよ!』
『うん……お兄ちゃんが迎えにくるまでなら』
『――うぇぇぇ~~んっ!』
『ごめん、氷美神ちゃん!! いたいのいたいの、とんでけー!』
『うぅぅ、ひっく……』
『本当にごめん。俺が強く押しちゃったから……』
『……ううん。大丈夫。氷美神は強いもん』
『うん、そうだね。……お兄さん、遅いね』
『……うん。でも、もうそろそろ』
『――いい金づる、見ぃつけたっと』
『ひ、氷美神ちゃん……からっ、離れろ……トカゲのお化け……』
ドガッ!
『チッ! しつけえぞクソガキが。必要なのはテメェみてえなゴミじゃなくて、この小娘の死体だ。こういう魔力を持ったガキの身体はいい金になるんだよ』
『イッセー君! もう立っちゃだめぇ!!』
『そら、こういってんぞ。大人しく寝とけ、ガキ』
『うる、さい……』
『アアァ!? ホンットムカツくな! マジでぶっ殺すぞ、クソがぁぁ!!』
グシャ、グシャ、グシャ! ボキッ! ゴギッ!!
『――』
『ハァ……ハァ……ようやくくたばったか!』
『イッゼーぐん!! 死んじゃやだぁ~~~~~!!!』
『――――なかッ……ないで。俺は……ッ、死な…………ないから』
『!!? なっなっ、なんだこのガキ!? ほとんど骨が折れてんだぞ? 内蔵が潰れてんだぞ!? なんで生きてんだありえねえだろ!!』
『そんなの、どうでもいい……その子は、俺が、泣かせたんだ。だから……俺が、守るんだ……』
『
『セ、神器!? しかも、なんだこの力!?』
『
『ば、倍増した!? とりあえず、こいつから殺……』
『駄目ぇぇぇぇ!!』
『アガッ! あ、足が凍り!? こ、こんな……ガキの魔力量じゃねえぞ!!』
『
『――ハッ!?』
『
『うああぁぁぁぁぁぁ!!』
ドゴォォォッ!!!
『グボァァァァァ!!?? ……ぁあ、ありえねえ……こいつら、何なんだ?』
『俺の義理の妹と、その友達、みたいだな』
『……!? あ、あぁぁ』
『まだなんにもしてねえのに脅えるなよ。そうだな、差し当たって……お前が利用してきた一切の裏ルートと組織。全部白状するんなら――少しは軽い地獄へ行けるぞ』
『ああああああああああああああああああああああああああああああああ!?』
『氷美神ちゃーん。おはよー』
『お早う、イッセーくん』
『えっと……この間はごめん。俺が怪我させたばっかりに、あんな……』
『ううん。気にしないで。どのみちあいつは私を狙ってたんだもの』
『あ~っと……そこらへん、色々と聞きたいんならウチにこいって、お兄さん言ってたっけ。ついでに鍛えてくれるとか』
『うん。だけど気をつけてね、イッセー君。お兄ちゃんは、とにかくスパルタだから』
『スパ……?』
『えっと……厳しいって事』
『あ~……勇気を出す時間はくれるかな?』
『うん、きっと。だから、一緒に強くなろう?』
『神さん……俺は、もうこれで終わりなんですか?』
『ああ、お前のグルメ細胞は既に限界値だ。これ以上何を食っても、細胞が進化する事はない』
『……』
『浮かない顔だな。別に、鍛えれば普通に強くなるんだぜ。一つの道の終わりに行き当たっただけだ』
『わかってるんです。ただ……これからも食う食材の力を無駄にしか出来ないと思うと……俺に、美味いものを食う資格はあるんだろうかって……』
『アホか。第一、エネルギーになる時点で丸々無駄になるわけじゃないだろう。考え過ぎだよ』
『ですよね……けど俺は……』
『……なら、イッセー。一つ賭けに出てみるか』
『グルメ細胞が進化する方法はいくつかあるが、中でも危険性が高く極端なのは、
『で、賭けっていうのは……』
『言っただろう。これによる進化には際限がないんだ。元々自食作用は細胞が細胞を喰らう非常機能。それを暴走させたらどうなるか……ひたすら口に入れた食材のエネルギーを取り込み、新たに細胞を作り出しては喰らい続ける。死ぬまでその繰り返しだ。それを制御する方法はただひとつ。進化する自分の細胞に適合する食材を食うことだけだ』
『それが、なんで賭けになるんですか?』
『その食材が何なのかわからないんだよ。ただでさえ適合食材は個人差が激しい。その上、暴走したグルメ細胞が何を好むかなんて、誰にも理解不能だ。最初に口に入れたものが偶々そうかもしれないし、複数あるのか一つだけなのかも分からない』
『……賭けっていうか、ほぼ自殺行為ですね』
『ああ。参考に、今までこの方法を試した奴はざっと数百人はいたが……一人残らず死んだ。生き残れるかどうかは唯一つ、食運だ』
『正に、食材に選ばれないとってことですね』
『最終確認だ。本当に、やるんだな』
『――はい! これ以上皆に遅れを取らない為にも、食材に感謝を捧げるにふさわしい価値を得る為にも!』
『良し』
ズッ。
『――グゥッッ、ア、ァァァ!!!!』
『さあ、行け! 道中で食えるものは迷わず食っておけ。少しは足しになる!』
『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
ギャオオオオ!
『ウガアアアアアアアアアアッ!!』
ズバァ!
ガブ!!
『……違う!!』
ブオオオオオ!
『お前は、どうだぁぁぁぁぁぁ!!!』
キュアアアア!
『もっと!! もっとだぁぁぁぁ!!』
ギギギギギ!
『ウオァアアアアアアアアアアアア!!!!』
『あっ……グッ……』
『俺……死ぬのか?』
『ははッ、才能がないのに、無理に粋がった挙句、野垂れ死にか』
『我ながら……ダサい最期だな……』
グゥゥゥゥ。
『……腹、減ったな』
『……』
『……』
『……』
『……?』
『いい、臭いだ』
『これは……』
『果物……』
ギャオオオオオオ!!
『凄え……見てるだけで、腹の虫が騒ぐ』
『……この世の、全ての食材に、感謝をこめて……いただきます』
『見事だね。私達の虚を突いて、他の三人を逃してみせるとは。それで、自分が逃げられないのも織り込み済みだったのかい?』
『……』
『無駄だぜ、マラコーダ。こんだけズタズタにしたんだ。幾らこのガキが頑丈だからって限度があらぁ』
『まだ息があるだけでも奇跡っスからねえ。しぶとすぎるのも考えもんだ』
『無意味に甚振るのも可愛そうだし、敢闘賞って事で、さっさと殺してあげない?』
『そうね……それがご褒美としては順当かもね』
『ギャハハハハハハ! あ~ばよ、クソガキちゃーん!』
ドゴォォォォォォォン!
『未来有る若者を、悠久の時を生きる我々が摘むか。弱肉強食とはいえ、切ないね』
『――?』
『ん? どうし……』
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!
『……なんだ、アレは』
『グルメ細胞の……悪魔?』
『いいや違う……アレは……』
ボッ。
『ギャハ』
ボッ。
ボッ。
『――』
ボッ。
ボッ。
ボッ。
ボッ。
ボッ。
ボッ。
『なんて、純粋な……食欲のエネルギー……』
ボッ。
『――――――』
『ば、化け物が!!! おい、マラコーダ、さっきから何ボケっと突っ立ってんだ! 殺されるぞ!?』
『だから?』
『……は?』
『これも弱肉強食だろう。今まで散々弱者を食い物にした私達が、より強い存在……しかも人間に文字通り喰われる。実に悪魔らしく、皮肉の効いた最期じゃないか。ハハハ、碌な死に方なんて出来ないと思っていたのに、これは案外悪くない』
『なにトチ狂ってんだ!? 幾らマレブランケの契約があるからって、あんな野郎相手に勝てるとは限らねえんだぞ!!』
『なら、今すぐ君が私を殺して、全員の魔力と魂を収めればいいじゃないか。別に抵抗はしないよ?』
『ふざけんな! 俺らの中で一番強いお前以外、アレに対抗できる奴がいるわけねえだろ!!』
『だから、しつこいねえ。……私は、アレに殺されたいんだよ』
『な――』
ボッ。
『……?』
『どうして、私を喰わない?』
『満腹かい?』
『!!!!!!!!!!』
『あ、アハ、ハ……アハハハハハハハハハハハハハ♥!!! 凄い! 凄いよ君! 確かイッセーって呼ばれてたねぇ』
『ようやく……ようやく見つけた……ルシファー、ベルゼブブ、アスモデウス、レヴィアタンでは駄目だった! サーゼクスでもアジュカでもファルビウムでもセラフォルーでも足りなかった! そんな私の全てを捧げ尽くす、真の王!!! 絶対の主!! そして、永久を歩む伴侶!』
『ああ……でも、今はまだ駄目か……。まったくあいつらはどうしてこの年甲斐もない愛を邪魔するかなあ。黙らせる事が出来るか、それとも私が黙らされるか……まあ、その時は今度こそ、殺してもらえるか♥』
『そうか……まあ、グルメ細胞の進化の行き着く先としては順当だな。で、お前はどうしたい』
『……アレに乗っ取られた時、薄っすらとだけ意識があったんです。だから……俺の心がもっと強ければ……アレをねじ伏せることが、出来るかもしれない』
『……まさか、あの空間に入りたい、と?』
『はい』
『……アレがどれ程ヤバイのか、理解しているのか? アレは確かに中でいくら過ごしても、腹も減らなければ眠りもしない、そして現実で一切時間が流れない場所だが、あそこにあるのは白とか黒とかじゃない。一面が『無』そのものだ。そして、一度中に入れば、一万年の時が過ぎるまで絶対に出られない。俺でさえ、内部に干渉することはできないんだ。心が壊れた時点で、無に飲み込まれ、魂さえも消滅するんだぞ』
『じゃあ……一人でうまく出来る型稽古のやり方、教えてください』
『……本当に、やるんだな』
『はい』
『なら、これだけは言っておく……無事に出てこいよ』
『はい、師匠』
ドサ。
『イッセー!』
『……脈拍、心拍ともに正常。呼吸も安定している。つまり……』
『寝てるだけ、か』
『……まったく、大した馬鹿だよ』
『
ズバァァァァン!
『ごはっ!!』
『ハァ……ハァ……』
『……最早、動けんか! このわしを、殺さずに仕留めるとは……まったく、才能がない分際でよくやりよったわいのう!』
『はい! やりました、
『カカカ! 勝った上で素直に師匠呼ばわりか! どうせなら皮肉の一つも効かせんか。この馬鹿弟子め』
『すいません。そんな器用じゃないんです』
『カカ! なら今後はそこら辺も仕込むとするかいのう。……そら、受け取れ』
『わっ、なんですか、これ?』
『日本の形式に合わせてみようと思ってのう。我が流派における、指南免状じゃわいのう』
『指南、免状……? それって、つまり!?』
『同時に免許皆伝じゃ。……このわれが、弟子に負ける日がこようとはのう。カカカカカカ! 本当に、武とは面白いもんじゃ!』
『……俺が、免許皆伝……』
『……負けた』
『そりゃあ、そうだ。相手が
『……え? 指南免状?』
『でも、俺は負けたんですよ?』
『――』
『――』
『……馬鹿な』
『俺が……』
『俺が、武においては師匠を超えている?』
『貴方を……超えて?』
『なら、俺は……』
『俺は……』
『バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』
『ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』
『我目覚めるは――』
『
『無限の欲望と見果てぬ夢を携え
『我、業深き龍の
『汝を赤き
『
『なんだこれは』
『こんなはずは無い』
『何かの間違いに決まってる』
『どうして……』
『全てがこんなにも脆く思える?』
『世界がこんな狭く感じる?』
『俺より強い存在が、たった三つしかない?』
『俺より弱い存在が、無数に溢れている?』
『こんな……違うだろ……』
『だって、俺は……』
『俺は……』
『俺は――何だ?』
目が覚めると、そこは私達は揃って暗い場所に立っていた。
そして……。
ゴゥ!!
バチ!!
ズァ!!
赤い炎、金色の雷、黒い重みが、私達を出迎えた
三つの力を持った三体の龍。
その内の一体。
赤き龍が、口を開いた。
『相棒を……頼む』
頷く暇すら無く、私達を浮遊感が襲っていた。
三期も決定しましたし、出来れば7月中にはヴァーリとの対決まで終わらせられるよう頑張ります。今後ともよろしくお楽しみ下さい。