ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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 相変わらずのイッセー無双です。では、お楽しみを。


Life.56 久々、暴れます。

 医務室で眼を覚ました私達は、すぐにイッセーが寝ていたベッドに視線を移す。すると、イッセーはベッドから飛び起きるなり、身体の状態を確認するかのように柔軟を始めた。

 

 そして、周りの私達を見回すなり、バツが悪そうに一言。

 

「皆、すいま……いや、ありがとう」

 

 途中まで言いかけた謝罪を飲み込んで、礼を言ったイッセーに、神さんが近づいた。

 

「さて……それじゃあ時間もないみたいだから、手っ取り早く封印を解くぞ。力は、もう戻ってるな?」

「はい……バオウとガオウが、封印式から余分な力を抜き出してくれました。ていうか、今までずっとそれを試行錯誤してたらしくって……」

「そりゃあいい。紫と聖の分の鍵も俺が預かってるから……いくぞ」

 

 神さんが右手にオーラを集中させると、五本の指に青い炎の様な光が灯り、それをイッセーの腹に押し当てた。

 

「八卦封印、解!」

 

 ガシャアアアアン!

 

 鍵が開く様な音を立てて、イッセーの身体からオーラが溢れ出る。すかさず、マダラさんが右手に炎を灯らせ、同様にイッセーへと押し当てる。

 

「六道封印、解!」

 

 ガシャアアアアアン!

 

 再び神さんが、今度は左手を当てる。

 

「四象封印、解!」

 

 ガシャアアアアアアン!

 

 そして、美鈴さんが両手に炎を灯らせ、掌底の様に突き出した。

 

「二極封印、解!」

 

 ガシャアアアアアアアン!

 

 三度神さんが。右手の人差指に、今まで以上に濃密な炎を灯らせ……イッセーへと突き立て、つぶやいた。

 

「――零点封印、解」

 

 ガシャアアアアアアアアン!

 

 ブワッ。

 

 最後と思わしき封印が解かれた途端、イッセーの身体から極めて強烈なオーラが吹き上がるように立ち上った。

 

 決して拡散することなく直ぐにイッセーの中へ収められたそれは、見ただけで部長すら上回ると理解させられる程の力強さを感じさせられた。

 

 当のイッセーは真剣な面持ちで掌を見つめ、冷静に言った。

 

「……全盛期の三分の一、か。総合的に考えて、生身なら上級悪魔以上最上級悪魔以下ってところかな」

 

 その一言に、私達は誰一人なにも言えなかった。今更驚くのは勿論、異議を唱える余地もない。そんな周囲の空気を物ともせず、イッセーが神さんへ声を掛けた。

 

「それで、神さん。あの連中のことですけど……」

「ああ、その件でさっきからサーゼクス達に何度も連絡をとろうとしてるんだが……一向につながらない。恐らく、先手を打たれているな。早く冥界に行こう。あれからそう時間は経っていないが、そろそろ派手に動く筈だ」

 

 神さんがそう言った後、タイミングを見計らっていたらしいライリさんがイッセーを呼んだ。

 

「じゃあイッセー。オルト目覚めさせてよ。ああなったら、基本イッセー以外は起こせないんだから」

 

 そう言って、イッセーから少し離れたベッドで横たわるオルトを指さした。

 ……僅かに胸が上下しているんだが、まさか本当に呼吸しているのか? 肌の質感といい、顔の作りといい、イッセーのフォークを素手で弾いたりバリアを展開するところを見なければ人間だと信じてしまいそうだ。

 

「あ、そうか、悪い悪い。オルト、再起動(リブート)

 

 キュイン!

 

 機械音を響かせて瞼を開けたオルトは、即座に立ち上がり、初対面と同じく、スカートの両端をつまみながら優雅に会釈した。

 

「おはようございます、皆様。……この上ない失態をおかしてしまい、まことに申し訳ございません」

 

 心の底から己の不明を恥じる声を、イッセーは右手を振ってフォローする。

 

「いいや、オルトへの絶対命令権を設定したのは、そもそも俺だ。恥じる事は何一つない」

「勿体無いお言葉」

「それで、オルト……ギルドラゴンを動かすぞ。操縦を頼む」

 

 ……ギルドラゴン? 聞いたことのない単語に口を出そうとするよりも早く、神さん、明、ライリの三人が肯定の意を述べ出した。

 

「あいつか……まあ、一万体のバイオゾイドに対抗するとなれば、それぐらいは必要か」

「しかも四罪が相手。最悪、四凶の復活もありうるレベルだからね」

「加えてクロウ・クルワッハだ。何が起きたって戦力が過剰って事はないでしょ」

「ああ、だから……あの二体も連れて行きます。それと……いざって時の為に、武器の封印を解く。明、ライリ、手伝ってくれ。それが終わったらギルドラゴンの中に転移するから、皆は先に行っててください」

「了解だ。なら、俺と氷美神とジェリーで搬入作業を終わらせておくから、オルトはグレモリー眷属をギルドラゴンまで案内しておいてくれ。行くぞ、ふたりとも」

「ああ」

「はい」

「俺は一旦グルメ研究所に戻って、すぐに動けそうな戦力を冥界に連れて行きます。備えは多いほうがいいでしょう」

「俺もそちらへ行こう」

「頼むぞ、サイラオーグ、マダラ」

「私も幻想郷に戻って、八雲紫や他の面々に話を通して、連れて行きます」

「お願いします、美鈴さん」

 

 トントン拍子で進んでいく話の流れに置いてけぼりにされる私達に、オルトが声を掛けた。

 

「それではみなさん、案内いたしますのでついてきて下さい」

 

 言われるがままに移動を開始するオルトについていき、少し歩いた所で、アーシアが口を開いた。

 

「あの……ギルドラゴンって、何なんですか?」

「超大型ゾイドです。異世界から飛来した機体をイッセー様が修復、改良したもので、損傷が最も軽微だったために一番最初に動いたゾイドでもあります」

「じゃあ、ゾイドって?」

「異世界から来た金属生命体です。動物や昆虫に酷似した姿を持ち、改造によって人間が搭乗可能な兵器にもなりえます。この世界にやってくるゾイドは、既に改造されたものが多いですね」

 

 そこで話を切って、丁度辿り着いたエレベーターに乗り込む。そして、エレベーターが開くと……。

 

「到着しました、これがギルドラゴンです」

 

 桁外れに広い格納庫の中、私達の前にさらされたのは……正に、ドラゴンだった。

 

 山の様な大きさに対し、白を基調として青、金が混じった色合いは芸術品とも思えるほど美しく、それでいてその迫力は間違いなく戦う者のそれであり、全身に装備された物々しい兵器に何の違和感もない。

 

 そして……金属で出来た巨大な身から溢れ出る生命力は、確かにこれが命ある者だということを私達に知らしめていた。

 

 オルトと私達がギルドラゴンの真横近くまで進むと、腹の辺りが開き、飛行機の様な階段を展開する。少し気圧される私達だが、構わず進むオルトについて乗り込むと、一気に気持ちは盛り上がった。

 

 真冬に分厚い布団に潜り込んだ感覚とでもいったものだろうか。未知の存在の中だというのに、不思議なほどの安心感が私達を包み込んでいた。

 

 そのままオルトについて少し歩くと、広いリビングのような空間に到着し、オルトが振り返って頭を下げた。

 

「今からギルドラゴンを起動させますので、こちらで少々お待ちください。きっと、お楽しみいただけるものかと思われます」

 

 そう言ったオルトが姿を消してすぐ、私はとりあえず、思った通りの事を口に出してみた。

 

「なんというか……やっぱり、イッセーは凄すぎるな」

 

 生まれついての適正者である私以上に上手く聖剣を扱い、レプリカとは言え二本の名だたる聖剣を融合させた時点で只者じゃないとは思っていたが、ここへ来てその考えは尚更固まった。

 

 あらゆる武術の達人で、世界的な錬金術士で、こんなドラゴンを扱える科学者で、各神話にパイプを持っていて、トドメに世界で三番目の実力者。

 

 ……よくよく考えなくても、あの時喧嘩を売って五体満足で済んだ私は猛烈に運がいいと実感するぞ。もしイッセーに今の力があれば、正直死んだほうがマシというくらい痛い目に遭っていたかもしれない。達人とはそういう人種だ。

 

 私も教会の戦士として、あらゆる戦地に飛び込んだ身だ。才の無い者、無くとも足掻く者も幾らでも見てきた。そんな人々にとって、達人級(マスタークラス)の壁がどれ程厚いかもよく分かっている気でいた。それを、イッセーは努力と師で成し遂げたんだ。

 

 そんな自分を恐れるあまり失敗とまで言ってしまうイッセーの葛藤や抱える気持ちは、私には推し量ることも出来はしない。しかし、イッセーが改めて自分の力と向き合い、前へ進むのであれば、仲間として……女として、支えたいと思う。

 

 うん……やっぱりいくら考えても、イッセーしかいないな。いや、やはりこれは運命なんだろう。彼は亡き主の御心が導いてくださった天啓なのだ。

 

 人格、実力、そして性欲。彼ならば全てにおいて不満などありえない。いや……むしろ私のほうが選ばれるかどうかか。

 

 神さんが何気なく言っていたが、イッセーはやはり彼方此方でもかなりモテているようだ。それでいて本人はまったく気づいていないようだが……というか、わかった上で耐えているんだろうか? 部長やアーシアの誘惑にギリギリで乗らない姿を見ると、そうとしか思えない。たまにボヤく内容からして、どうも責任をとれる身になるまで、という腹積もりらしい。

 

 あのエロさに対して、妙な分別の付き方は何なんだろうか? それとも分別がつくから余計エロくなっているんだろうか? ますますイッセーは分からん。けど、焦る必要もないだろう。どのみちイッセーとは長い付き合いになる。おいおい理解していけばいい。

 

 ゴゥゥゥン!

 

 思考を断ち切らせたのは、大きな駆動音。ほとんど振動もなく重厚な音だけが響く中、外の様子がホログラムのように映しだされ、どこかにスピーカーがあるのか、オルトの声が告げてくる。

 

『お待たせいたしました。まもなく、発進いたします』

 

 直後、部屋の四方にホログラムが浮かび、外の様子が映しだされた。前方と思われる方を見れば、格納庫の扉が開かれ、巨大な円状の装置と、その後ろには赤い空が覗けている。

 

『搬入作業、完了。各部、異常なし。システム、オールグリーン。安全、確認。ワープゲート、オープン。ギルドラゴン、発進します!』

 

 ウィィィィィン!

 

 ゆっくりと映像が浮かび、次の瞬間――一気に外へ飛び出した。赤い空を鑑賞する暇も無く円状の装置を通過し……映像は摩訶不思議な色合いの空間へと変化していた。

 

 これは次元の狭間? あのワープゲートとやらで飛んだのか……というか、ちょっと待て。展開が早すぎてスルーしそうになったが、あの赤い空は何だ? 絶対夕焼けなんかじゃないだろう。そもそも、あの研究所はどこにあったんだ?

 

 目まぐるしい思考に我ながら頭を抱えそうになっていると、神さんが榊氷美神とキンブリーを伴ってリビングに入ってきた。

 

「お待たせ、諸君。とりあえず説明すると、直接の転移は色々な理由で冥界の混乱を招きかねないという点から、次元の狭間を経由しての次元移動を行っている。冥界の俺の私有地に着陸後、現地にて状況を把握する。で、今のうちに聞いておきたいことは?」

「じゃあ、私から。……あの研究所は、一体どこの世界に存在していたの?」

 

 促されて、最初に部長が口火を切った。

 

「ああ、やっぱりそこも説明してなかったんだな。あそこは……魔界だ」

 

 ――!?

 

 魔界、だって……?

 

 天界、冥界、オリュンポス、アースガルズ、須弥山。人間界以外の異世界は数多く存在しているが、その中でも際立って謎が多いのが……魔界だ。なんでも情報が多すぎて、逆に得体が知れなくなっているとか。

 

 私が耳にした噂では、そこは普通の人間では死に至りかねない程危険な瘴気に満ちた世界であり、その瘴気には魔法を始めとした異能の力を高める効果があるという。

 

 またそのせいか、魔界の住人、いわゆる魔界人は上級の天使、悪魔に匹敵するものも大勢いて、それでいて穏やかな気質の者が多いと聞く。

 

 しかも、魔界は他の異界の中でも飛び抜けて広い世界であり、創造神でさえ全貌を把握しきれていないとか。

 

 そんな魔界に……ついさっきまでいたのか。

 

「あの研究所がある辺りは、魔界の創造神からイッセーが直々に賜った土地なんだ。まあ、最初は貸し出してた物を免許皆伝の試験の為の対決で勝った記念としてもらったから、ある意味戦利品だな」

 

 もうこれ以上驚く事はないだろうと高をくくっていたんだが、まったく全然そんな事はなかった。

 

 魔界の創造神、イッセーが賜った土地、そして、戦利品。

 

 ……本当に、一体イッセーは何なんだ!? 言いたいことが多すぎてもうよくわからない!!

 

 ただ、これだけは言えるぞ! イッセー、お前は自分を侮り過ぎてる! ハーレム王とかすぐにでもなれるだろう!?

 

 年齢か!? 未成年だから我慢しているのか、お前は!!

 

 ……うん、多分主な理由はそうなんだろうな。私も少しわかってきたぞ。

 

 耐える理由が一欠片でも有るのなら、意地でも耐えぬく。なければ無理やり創りだして耐えぬく。それが、兵藤一誠なんだ。

 

 その後、到着するまでの間、幾度と無く驚きが室内を駆け巡り……私の腹は一層固まった。

 

 

 

 

 

 時計を取り出す私を一瞥もしないクロウ・クルワッハに注意を払いつつ、視線を落とすと、既にこの緊迫状態となってから一時間強が経過していた。

 

 この場にいるのは、私を含めた四大魔王とクロウ・クルワッハのみ。幾度と無く隙を伺って外へ緊急を伝えようとしたが、その度に一瞬牙を剥くクロウ・クルワッハの殺気に気圧され、同時に爆弾のスイッチに脅され、未だ我々は閉じ込められたままだった。

 

 仮に爆弾の件がブラフだったとしても、我々四人がかりでこの邪龍に勝てる保証はない。私とアジュカが全力を出せば話は変わるかもしれないが、とてもではないがこの場でそれを行うことは出来ない。

 

 周りへの被害は勿論、最悪同士討ちになる可能性もある。私の全力とはそういうものだ。

 

 そんなこちらの内心など知る由もなく、クロウ・クルワッハは呟いた。

 

「さて……そろそろか」

 

 そう言って、ポケットから取り出した端末を操作すると、宙に丸いホログラム映像が映しだされた。これは……外の、冥界の様子? いったい、何を……。

 

 疑問を抱える私をあざ笑うかの如く……『地獄』が始まった。

 

 

 

 

 

 準備を終わらせてギルドラゴン内部に転移した俺達は、すぐにブリッジを目指して駈け出した。ちょうど脚を踏み入れた直後、ブリッジの中央モニターが次元の狭間から抜け出た事を映し出し、高高度からの冥界の様子が目に入る。

 

 そこにあったのは……あまりに凄惨な地獄絵図だった。

 

 一万の大群が数百機ごとに分かれたバイオゾイドは空地の双方から手当たり次第に破壊活動を行い、迎撃する悪魔の軍勢が放ついかなる魔力、魔法もその装甲に傷ひとつつけられず、ひたすらに暴れ続ける。

 

 更にバイオゾイドに纏わりつくかのごとく、四人の妖怪――四罪があちらこちらへ飛び回り、次々と惨劇を生んでいく。

 

 暴風で多くの敵を切り裂き、吹き飛ばしながら飄々とした笑みを浮かべる驩兜。

 洪水、暴雨などの水の暴力で痛めつけられる人々の苦悶の表情を楽しそうに鑑賞する共工。

 巨体から繰り出す豪腕と荒れ狂う岩石によってあらゆるものを圧し潰しながら、獰猛な笑顔を満面に貼り付けた鯀。

 周囲を邪悪な炎で満たし、物言わず焼け落ちる家屋や自然、うめき声を上げながら燃え尽きる悪魔を尻目に、心底嬉しそうに笑い声を上げる三苗。

 

 悪意に満ち満ちた妖怪と、悪意の塊と化した兵器が織り成す、惨劇の場。

 

 紛れもない……地獄絵図だ。

 

 そしてその要因の一つに……紛れも無く、俺がいる。

 

 全ての原因が俺だとは、流石に傲慢だろう。それでも……俺には確かに、責任がある。

 

 AM合金、賢者の石、GTロボ。奴らの凶行を手助けしたのは、俺の後先考えない努力の結果だ。

 

 ……ただ死んだだけでも冥界の滅びを決定づけてしまいかねない俺には、許しを請う資格もない。

 

 だから……生きて償おう。悪鬼羅刹と謳われようと、生きて全てを背負っていこう。

 

 傲慢と罵られても、独り善がりと指されても、それが俺の選択だ。俺は俺でしかない。ゆえに、俺にできることしか出来ない。

 

 そして……この地獄絵図を覇壊(はかい)するのが、今俺にできる償いだ。

 

「まもなく、一時着陸します」

 

 オルトの言葉を受けて、俺は明とライリを横目に歩き出し、館内放送のボタンを押すと、マイクへ向かって口を開く。

 

「今から、俺と明とライリで、バイオゾイドと四罪を叩いてきます。オルトはギルドラゴンで他の戦地の援護へ。神さんは、部長とオカ研の皆と、氷美神、ジェリーさんと一緒に、冥界の軍勢へ俺たちが敵でないと伝えてください」

『イッセー、待って頂戴!』

 

 ブリッジに、部長の澄んだ声が響く。おそらく、艦内通信の使い方を神さんが教えたんだろう。

 

 部長の言いたいことは、分かる。そしてそれに対する俺の答えも、もう決まっている。

 

「皆も行くってんなら……率直に言って、足手まといです。相手は魔力も魔法もほぼ通じない兵器だ。それがなければ戦車を壊せる程度の戦闘力もない皆じゃ歯がたたない。ゼノヴィアと木場と小猫ちゃんは多少マシかもしれないけど……それでも役者不足は変わりない。それよりも、部長は俺達の事を冥界に伝えてください。神さん達なら、護衛としては安心ですから」

『ッ……わかったわ』

 

 非常事態という事もあって、食い下がることなく引き下がった部長へ、俺は最後に、思ったままを伝えた。

 

「――部長。帰ったら、おっぱい吸わせてください」

 

 ブォン。

 

 ドガッ。

 

 部長の返事を聞く間もなく、俺は明とライリに殴られ投げられつつ、一緒にギルドラゴンの外、神さんの土地にある巨大着陸場へと放り出された。

 

 止めの背負投に受け身をとって着地しつつ、とりあえず文句を言ってみる。

 

「いやいや、ちょっと和ませようとしただけでなんでここまで!? 戦う前に潰す気か!?」

 

 ライリが鼻を鳴らしながら口を尖らせる。

 

「よく言うよ、完全にマジだったくせに。いつものノリに戻った途端にこれだもん、この馬鹿は」

「第一、一つ残らず受け身、受け流しでダメージ無しだったのに、何が潰すだい。絶好調ならさっさと暴れてきなよ。それに……疼いてるんだろ。私達も行くから、遠慮なくやりな」

 

 そう言って二人が姿を消すと、続くように皆が降りてくる。その間に、俺は内部のガオウへと語りかけた。

 

「なあ、ガオウ。お前さ……最初っから、俺が自信を切り離してるって、気づいてたのか?」

『アノ時、言ッタ筈だ。ドライグヤバオウヨリ、アル意味深ク繋ガッテイル私ダカラコソ、オ前ノ闇ガワカルトナ』

「その、深くつながってるっていうのは……」

『オ前ノ、底知レナイ貪欲サ。ソレハ重スギル存在ユエニスベテヲ飲ミ干スワタシト、極メテ相性ガ良カッタ。ソシテ思ッタトオリ、オ前ハ闇スラ飲ミ込ンダ。今コソ、思ウガママニ、全テヲ飲ミ干セ』

 

 まったく……こいつ程素直に生きるのは、俺でも難しそうだ。

 バオウとガオウが目指す極み……あの時、こいつらと……不完全ながらも、無限と夢幻に対抗できた、覇竜の先。それに魅せられたから、こいつらは俺に憑いてきた。自分もそこへ至る為に。

 

 んでもって、なった後は知ったことじゃないだもんな。改めて思うと、俺って結構こいつらの分も責任押し付けられてないか?

 

 まあ…いいか。凝り性は俺もいい勝負だ。思い切り付き合ってやるさ。

 

 けど、これだけは言っておこう。

 

「違うぞ、ガオウ。俺は、全てなんて飲み込まない。ただ、求めるものだけを飲み込むんだ。その決定権は俺にある。そこを間違えるなよ」

『良シ』

『是 我 喜』

『俺も、お前の問題が片付いたのは嬉しく思う。さあ、相棒。お前の努力を汚した連中に、目にモノをみせてやろうぜ。――赤龍帝であり、雷龍帝であり、重龍皇であるお前を敵に回した意味を、魂にまで刻み込んでやれ』

「ああ、いくぜ、相棒たち。俺の……兵藤一誠の力を、思い知らせてやる」

 

 背後から、部長たちの視線を感じる、それを軽く手で振って答えると、俺はゆっくりと前に歩き出し、神器を出す。ガオウの力でワームホールを作り出し、それを通って、一番近いバイオゾイドの傍へと躍り出た。既にこの付近に敵以外いないことは、視覚、嗅覚、聴覚で確認済みだ。

 

 突然出てきた俺に対し、何よりも早く反応したのが、バイオゾイドだった。

 

 数百に倍する赤い視線が俺を射抜き、餌に群がる飢えた野獣のごとく空中から、地上から群がってくる。

 

 俺を最優先攻撃するようプログラミングってか? とことん喧嘩売ってきやがる。

 

 さて、とりあえず……まずは『左眼』から試すか。

 

 印を組まず、ただ術の名を思い浮かべ、発動の意思を出す。それだけで、俺の忍術は発動する。例え血継限界だろうと、俺に合う術であれば発動できる。

 

 それが、この『日留来(ヒルコ)』だ!

 

「木遁……樹界降誕!!」

 

 ズドドドドドドドドドドドドドドドド!

 

 前に向けて、両手を突き出すと、地面から次々と大木が生えていく。チャクラを元に生み出された木々は俺の意図するままに、バイオゾイドを突き刺し、砕き、圧し潰し、破壊していく。

 

 しかし、空の連中はいくらか回避している。地上が粗方片付いたあたりで、俺は飛び上がり、次の忍術を発動する。心の力で引き出したドライグの炎を火種にした火遁は、ひと味ちがうぜ!

 

「火遁・豪火滅却!!」

 

 ゴゴゴゴゴォ!!

 

 赤い火の玉が一面空を埋め尽くす程大量に噴出され、命中したバイオゾイドは落ちるまでの間に燃え尽きる。

 

 ほとんどのバイオゾイドが全滅したあたりで、俺に気づいた2つのバイオゾイドの群れが移動を開始した。

 

 その内の一つの方向へ走り、眼前に迫るバイオゾイドの群れの前で、地面に拳とともにチャクラを叩き込んだ。

 

「熔遁・灼海流炎の術!!」

 

 ドバァァァァァァン!! 

 

 俺の目の前の地面が砕け、そこから先が溶岩の海と化す。が、強度の高いAM合金製の連中は中々溶けないのはもちろん、空中にいる連中にこれだけでは無意味に等しい。だから、もう一手。

 

 波たつ溶岩の表面に立つと、合掌とともに自然エネルギーを取り込み、仙人化する。思った通り、この状態なら仙術も日留来で発動できる!

 

「仙法・無機龍生!!」

 

 グォォォオォォォォォォォ!!

 

 雄叫びを上げて溶岩が蠢き、水柱のごとく無数に打ち上がると、龍の頭を形作り、それらは俺の意思を受けてバイオゾイドに襲いかかり、堅固な装甲を熱と力で噛み砕いていく。構わず俺に襲いかかろうとする飛行型のバイオゾイドも、同様に粉砕されていく。

 

 さて……あと一郡。こっちは……素手でぶっ壊すか!

 

 正面から突撃し、まず先頭の一匹の頭をねじり貫手で貫通し、そのまま内部から頭を粉砕する。すると、バイオゾイドはそのまま倒れて動かなくなった。

 

 予想通り、赤い魂でかなり無理やり動かしてる関係上、電子系統が集中してる頭部が破壊されるとそのまま動かなくなるか。

 

 これなら生身で十分ってところか。

 

 しかし、流石にチャクラを消耗しすぎたな。……少し、寝るか。

 

 右眼……亜波洲(アハシマ)は回復の力。本来は一時間安静に寝て体力も精神力も何もかも回復するものだが、五分だけでもチャクラや魔力を回復するだけなら充分だ。

 

 じゃあ……お休みっと。

 

 

 

 

 

 イッセーと分かれてから、実家を通じて冥界政府に連絡をとったところ、やはり状況は芳しくなかったわ。

 

 四大魔王はなぜか会議室から出てこず、出撃した最上級悪魔の方々も魔力に対する抵抗力と膨大な数に手間取っているとの事。

 

 しかし、私が伝え、突如その通りに参戦した四つの助っ人は、あまりに絶大すぎる戦果を上げているとのこと。

 

 日青明と、ライリ・アスカムライン。ほぼ素手でバイオゾイドと呼ばれる怪物を圧倒する彼女たちに加え、金属製のドラゴンを操って空中から暴れまわるオルト、そして極めつけは……私の眷属として冥界でもわずかに話題になっていた、イッセー。

 

 初めて目の当たりにする彼の全力は……圧巻。

 

 巨大な樹木を生やし、炎で空を埋め尽くし、溶岩に命を与えて龍とかす。

 

 その有り様は差し詰め、自然の暴威といった所。

 

 しかし、絶好調で暴れまわっていたはずの彼は、突如目を閉じて動きを止めてしまった。

 

 神さんから貸してもらった水晶球に全員で顔を近づけてどうしたのかと考えていると、ひょいと覗いた神さんが、軽く一言。

 

「あ、寝てやがる」

 

 と、言った。

 

 ……寝る?

 

 誰が?

 

 まさか……現在進行形で敵に囲まれている、イッセーじゃないでしょう?

 

 私の困惑をよそに、水晶球の映像が動きを見せた。バイオゾイドが大挙して襲いかかる中、イッセーは五人ほど分身して再び暴れ始めた……眼を、つむったままで。

 

 …………まさか。

 

 そんな、そんなわけないわよね。

 

 そうよ、いくらイッセーが、さんざん常識を超えてきたからって……

 

 いくら、いくらなんでもよ!

 

 そんな私の心境を知ってか知らずか、アーシアが純朴につぶやいた。

 

「もしかして……寝たまま戦ってるんですか?」

 

 ――

 

「ああ、あいつ意識がなくてもそのまま戦い続けられるから。本来あの瞳術は味方のサポートの元で使う筈なんだが……あいつに限っては一人でもなんの問題もない。あの状態だと術や魔力の類は一切使えないが、イッセーの体力はもう無尽蔵の一言だからな。チャクラが回復したら自然と眼をさますだろうさ。心配はいらない」

 

 ――ああ、私ってば、どこまでも馬鹿だったわ。

 

 わかってたはずじゃない。イッセーは私の想像を絶する存在なんだって。仙術や世界第三位の力に比べれば、全然マシなはずよ。

 

 けど、改めて思うわ。

 

 私は、とんでもない人を眷属にして、怒らせて、殺されて……好きになったのね。

 

 付いていかなきゃいけない。だけど、思ってしまうの。

 

 付いていけるかしら、私。

 

 そんな私に、少し先のイッセーはきっとこう言うでしょうね。

 

『付いてこさせます』




 最近夏風邪してしまったせいで、どうも7月中といったヴァーリ戦がだいぶ遅れそうです。いや、元々無茶気味だったのも事実なんですが……締まらなくてすいません。今後ともご覧いただけたら幸いです。
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