叫んだ後、迷わず刀を篭手に仕舞い込む。
今の居合い斬り……七十%程度の出力で斬りつけるつもりが、一瞬で百%まで振りきりやがった。結果、空亡なんて最高クラスの妖怪を四分割しておきながら、更に空間断裂まで至ってしまった。
いや、実際問題これは参った。不具合が生じる事は予想していたが、こんな形でとは思いもよらなかった。
まさか……手加減一切出来ないだなんて。
ありとあらゆる伝説を一つに押し固め、すべての力を相乗させ、単純なパワーと切れ味なら
各特殊能力だけは問題なく発動できるのは救い……とは到底言えない。
複数の能力を効率よく使用、複合できるよう、ストック分の賢者の石も融合させて、そこら辺をある程度自動設定出来るようにしたが不味かった。形状変化等の単体で成り立つものはともかく、戦闘系では一切容赦無く相手を確実に仕留められる様に選出された御業をもって相手を討ち滅ぼす。
仮に必中能力を使ってこいつを投げれば、例え天の彼方、地の果て、海の底だろうが法則を捩じ伏せ因果を組み敷き摂理を支配し、対象へと突き刺さる。そして聖邪妖霊神魔の力とあらゆる武具に籠められた竜殺し、神殺し等の性質という名の毒を余すこと無く叩き込んで、粒子一つ残さず殲滅するだろう。当然、余波による周囲への被害も甚大なものになること請け合いだ。
……うん。改めて思い知った。やっぱりぶっつけ本番の突貫工事で丸々上手くいくほど、世の中甘くない。むしろこれだけ出来上がっただけでも御の字だ。細かい部分は今後少しづつ調整していくとして今のところは……頼むぜ、相棒達!!
『ああ、任せておけ。……しかし、これはまたとんでもない代物を作ったな。龍殺しの特性を内包し、何倍にも増幅させているというのに、俺達や神器への悪影響がまったく無いなど……
よし! じゃあ、その方向で頼む! ……ところでドライグ? 嬉しいニュースの直後で悪いんだけど、その中学二年生なセンスの名前は、もしかしなくても俺の賢者の石の名前だよな?
『そうだが……やはり知らなかったんだな』
やはりってなんだ! 製作者が名前知らないとかどういう了見だよ、もう慣れたけどさ! どうせ、そのセンスは神さんだろ!?
『それもそうなんだが……お前にもそのセンスは十分受け継がれていると思うぞ』
うるせぇ! ドラゴンの雄はどうせほとんど中二病だ! お前なんてその筆頭格だろ、周り完全無視して喧嘩断行した挙句に封印された赤龍帝よ!
『まぁ、確かにそうかもな。さて、馬鹿話はこれでお終いだ。そろそろ硬化も十分だろう。……実のところ、俺も滾って仕方がない。全力全開の赤龍拳帝が、久々に顕現するんだ。さあ、冥界に、魔王に、悪魔に、四凶に、デスザウラーに、全てにお前を焼き付けてやれ、相棒!!』
『此 消 滅 我 封』
『お、おおお……』
『私モ手ヲ貸ソウ。後ハオ前達デ、存分ニ暴レルトイイ』
ああ、お言葉に甘えさせてもらうよ。そいつの相手は任せたぜ。
さて……全身に意識を張り巡らせ、確かに全盛期と相違ない事を確認すると、ワームホールをくぐって師匠たちと戦う怪物どもを一望できる程度の距離へと跳躍し、全開の殺気を気当たりと共に、未だ激戦が続く戦場へ向けて発射する。
ゴォッッッッ!!!!
天空を震わせ、大地を揺るがす圧力が遠方に居る全員を直撃するなり、皆が皆一瞬にして大きく引き下がると、大半が大粒の汗をかきながら俺へ視線を集中させた。
フォ。
全身の細胞を揺り起こし、闘気、覇気と織り交ぜて、俺の存在と力を昇華させ――『神化』へ至る。
上着を脱ぎ捨て、上半身を外気に晒すと、圧縮しきれないほどに隆起する筋肉が俺の体躯を膨れ上がらせ、髪は鮮やかな赤へと変色しながら伸びていき、淡い、けれど力強い光を放つ。
本来であれば、神化は限界以上に高まった覇気による肉体強化の最終段階に起こる変異現象。しかし、限界を超え続け、グルメ細胞、チャクラ、覇気、闘気、その他あらゆるエネルギーを内包した俺の身体は、異質とも言える神化を成し遂げた。殴りたいものを殴る程度の能力――より正確には、あらゆる存在と接触できる力も、元を正せばこれが原因と言って相違ない。
……今更だけど、差し詰め『超神化』ってところか。
今度こそ、全ての準備が整った。
『
土台となる
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
開放される力によって周囲の地面に亀裂が奔り、血のように赤いオーラが元々の俺のオーラを侵食するように湧き上がるが、息を軽く吐いて丹田に力を籠め、俺のオーラへ混ぜ込み、掌握する。
負の感情の暴風雨の中、支配と暴走を狙ってつきまとう残留思念を抑えこみ、奥に眠るドライグの真の力を引っ張りだす。
鎧の各宝玉が七色の輝きを放つ中、ドライグが紡ぎ、歴代の赤龍帝の幾人もが唱え、破壊の権化と化した覇の呪文を口にする。
「我、目覚めるは――」
〈また始まるよ〉〈また始まってしまうね〉
漏れるのは、歴代赤龍帝の残留思念。俺の影響を及ぼせないことに対する怨嗟と、自分たちの念を平然と押しのける俺に対する悲哀の声だ。
「覇の理を神より奪いし二天龍なり――」
〈いつだって、そうなのね〉〈そうじゃな。いつだってそうなのだ〉
死してなお、赤龍帝の篭手に繋ぎ止められる者達。俺は彼らの声に耳を貸さず、煙を払うかのように対処し、無視してきた。……今回のように。
「無限を嗤い、夢幻を憂う――」
〈赤龍帝が行き着く先は〉〈赤龍帝が通った後は〉
いつかは向き合う時が来るのだろう。こんな力任せの押し通しではなく、彼らと本当に向き合う時が。今はまだ……彼らに語れるほどの物を、見つけていないから。
「我、赤き龍の覇王と成りて――」
〈いつだって、覇でした〉〈いつだって、破壊だった〉
だから待ってて欲しい。俺が……覇に換わる強さを得られるまで。
《何処までもお前は力を求めるのだなっ!》
鎧が鋭角的なフォルムへ変形していき、巨大な翼が広げられる。指が爪のように鋭くなり、頭には幾つもの角が生えてきた。既に重龍皇の鎧の原型はとどめておらず、色合いも含めてほとんど
小型のドラゴンといった姿に変貌する我が身を余所に、俺は多種多様な声色とともに、最後の一節を唱えた。
「「「「「「「「「「汝を紅蓮の煉獄に沈めよう――」」」」」」」」」」」
『
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
溢れ出る力が周囲を粉砕せしめる前に圧縮し、暗黒魔闘術の要領で身にまとう。途端、遂に我慢が弾けた饕餮が涎を雨のごとくまき散らしながら飛びかかってきた。
「もういいッ!! もういいんだろッ!? もういいんだよなァァァァlッ!!! 赤いのォォォッ喰わせろォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!」
ミサイル並の速度で迫る巨体に構えをとり、自分でも驚くほどスムーズに拳を突き出す。
「夕象……壱足」
ボッ!
殴りつけた空気は砲弾となり、饕餮の顔面にぶち当たると同時に牙をへし折り、物理法則に従ってその巨体を逆方向へ吹き飛ばし、最初の位置より少し後ろの地点へたたき落とした。
ズドォォォォォォォォン!
轟く地響きをかき分け、師匠たちへ音弾を飛ばす。
「皆は結界の強化をお願いします……もう、多分止まれないんで」
鎌首をもたげる凶暴と獰猛のマグマを抑えきれず、兜の下で我ながら凶悪な笑顔を浮かべていると自覚する。そんな俺の様子を悟ったみんなが一斉に姿を消した直後、俺と四凶達を囲う形でドーム状の結界が貼られた。
どうやら覇龍の状態なら、赤龍帝の篭手も禁手同然の能力で扱えるみたいだ。師匠たちが総力を上げた代物だ。多少派手にやっても問題はないだろう。
こっちの熱が上がるに比例して、向こうもどんどん殺気とオーラを濃くしている。軽く顔が潰れた筈の饕餮も既に顔面が再生し、再び涎を垂らし始めている。
『噂には聞いていたが、実際に目にすると信じがたいものを感じる。君の絶大な精神力ならば、歴代赤龍帝の怨念を押さえつけられるのは分かる。しかし、どうして覇龍によって命を削られていない? 一体どういう理屈なんだ?』
デスザウラーの詰問に、俺は軽く笑いながら返答する。
「なに、反吐が出るほど簡単な話さ。そもそも、なんで覇龍が生命力を大きく消費するのか……それは、ドラゴンの絶大な力を発揮する器として、人間の体は脆すぎるからだ。それを無理やり持たせるなんざ、寿命や命くらい削れて当然だ。他の力で代用しようにも、魔力で言えば魔王クラスの量と質が必要になる。だから……俺は馬鹿らしく、馬鹿みたいに単純な解決策を選んだ。
――器が脆くて耐えられないんなら、耐えられるくらい強くなればいいってな」
『……まさか!? いや、幾らなんでも……非常識などというレベルでは!!』
そりゃそうだ。元々、覇龍は人間には過ぎた力。それを扱いたければ、人外の力を用いるのが普通だ。なのに俺が選んだ方法は、津波を受け止められるほど半紙を分厚く積み重ねるようなもので、常識的すぎて逆に狂ってる類のもの。
でも、何事も基礎が大事で、地道が一番だろ? 様々な要素が積み重なった結果とはいえ、これは俺が築いた力。此れが俺の、覇龍への答えだ。
「今の、つまり全盛期の俺の肉体強度は……同じく全盛期だった頃の、二天龍を超えていたんだ。覇龍がドライグの真の力だろうと、普通に耐えられる以上、生命力が削られる理由なんか何処にもねえんだよ」
多少体力の消耗こそ増えるが、大したレベルじゃない。覇龍を保った状態で、一ヶ月以上は暴れられる自信がある。
「……
ヴワァッッ!!
俺から吹き出た赤いチャクラが両肘から腕が生えた四本腕の巨大な骸骨の上半身を象り、更にチャクラを練り上げると、骸骨に筋繊維が張り付き、皮膚を被って長髪の男神の格好をとる。マダラさんの忠告通り、全身の細胞が疼くように痛むが、今さらこの程度で悲鳴を上げるような神経は残ってない。
「そして……リアス・グレモリーの
チャクラを引き上げ続けると、男神が布をかぶった修験者の姿へ変化し、一気に巨大化する。合わせて額へ移動した俺は、チャクラの像を巨大化させ、四凶やデスザウラーに匹敵するほどの巨体を形成し、そこでチャクラを安定させ、形を定める。
変形する布が顔に被さると、現れたのは鼻高天狗にも似た容貌の鎧武者。完成した
「――此れここに!
ッ。
台詞が終わった途端、窮奇が全速で距離を詰めてきた。振り下ろされる爪をそっと左手で横へ流し、追う右手で掌底を柔らかい腹部に押し当て、すれ違う形で前に出る。
ザン!
爪の一撃が地を裂きながらも結界に止められた直後、背後の窮奇が七色の輝きを放ちながら苦しみだす。原因たる俺は、その奥義の名を呟いた。
「……彩光蓮華掌」
ドヴァァァァン!!!
体内に叩きこまれた覇気と魔力が炸裂し、莫大な破壊力とともに生じた虹の洪水が周囲を照らす中、超常的な直感によって俺の位置を特定した饕餮が限界まで肥大化させた右腕で放ってきたパンチを化勁の要領で全身を回転させながら捌き、懐に飛び込んだところで右のショートアッパーを鳩尾に叩き込んで一旦浮かせ、左のアッパーを飛び上がりながら同じ箇所に叩きこむ。
「真覇っ! 翔龍拳!!」
ロケット並のスピードで打ち上げた饕餮の両足を四本腕で捕まえ、首を肩口で支えるようにして拘束する。
デスザウラー達と手を組んでいた件と電磁波や嗅覚の情報で薄々推測はしていたが、今の饕餮とさっきの窮奇の手応えで確信した。やはり、こいつらもグルメ細胞を取り込んでいる。
元々、四凶は揃いも揃って上級神以上の戦闘力と不死鳥並みの再生力、そして龍王級のしぶとさを併せ持った化け物だ。そしてそれらに宿るのは、自他全ての不幸と破滅を何よりの楽しみとし、自らの危機でさえ喜悦に飲み込むぶっ壊れた精神と魂……。
俺と闘戦勝仏が組んでなお、完全に滅ぼすことがかなわず、封印しか出来なかった最悪の存在。だが、今の俺なら話は別だ。例えグルメ細胞があろうと関係はない。
覇龍……そしてその先。全てを尽くして、今度こそこいつらを覇壊する!!
「火事場のクソ力ぁぁぁ!!」
体全体が赤い輝きを放つ最中、頭を過るのは、この火事場のクソ力と多くのフィニッシュホールドを授けてくれた、マスクの超人。馬鹿でスケベな辺りは俺にそっくりだけど、あの人は才能に満ち溢れた。だけどその背中は、激戦や特訓の傷だらけで……あの背中を追いかけて、俺はこのクソ力をものにした。
彼がそうしたように……俺も今、この刀と技で、平和を乱す者を撃破する!
火事場のクソ力が行き渡った須佐能乎が赤く輝くと、一気に降下速度が増し、その加重によって、饕餮の身体が肩口に引っかかる顔の上半分と掴まれた足を基点に、ヨットの帆のように反り返る。Gに逆らえず下向きに投げ出される両腕を両足で挟み込み、更に加速して地面に壮絶な尻もちを突いた。
「マッスル・
ズガァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!
衝突によって生じたエネルギーはそのまま饕餮の不死身の巨体を痛めつけ、首、背骨、腰骨、両大腿骨、肋骨、内蔵の計七カ所を破壊しつくし、再生が困難なほどのダメージを叩き込んだ。
ドゴォォン!
技から開放された饕餮はダムにも等しい夥しい量の血を吐き出し、微かに震えるだけとなった。
すかさず地獄の炎すら焼き尽くす檮杌の紫炎、様々な属性で織り込まれ、一つ一つが極大な威力を有した渾沌の妖力波の一斉掃射が襲い掛かってくる。
恐らくは、オーディンの爺さんだろうと重傷は免れない連続攻撃。だが、俺を殺すには……圧倒的に足りやしない!!
須佐能乎の腕に太刀を出現させ、そこへ龍一文字の力を注ぎ込みながら、刀を抜くと同時に突っ込んだ!
「飛天御剣流――
剣術の基本たる上下左右、斜め四方に突きを加えた九の太刀筋が同時に乱撃となって繰り出され、無数の力を切り裂き、切り払いながら突き抜け、返す刀で最も近くに居た渾沌を横に斬り捨て、上下に叩き斬る。
直観から納刀すると、再び動き出した窮奇がざっと数十体の分身とともに爪牙を剥きだして飛びかかってきた。それに対して、視覚、聴覚、嗅覚、直覚を限界まで高め、本物に対して左足で踏み込み、最速の抜刀を繰り出した。
「
光を超えた神速の太刀が、急上昇しようと身体を上に跳ね上げた窮奇を捉え……胴から下半身を切り落とした。
こいつ! 抜刀術が横薙ぎになりやすい事を見越して……斬られようがお構いなしってか! これの威力と能力なら再生力が無力化される事くらい理解できないわけがないだろうに……!!
上半身だけとなった窮奇が翼を羽ばたかせて俺に肉薄しようとするその時、最初の一閃で弾かれた空気が窮奇の動きを止め、真空状態となったその場所に周囲の物体が空気とともに引き寄せられ、必然、窮奇もそこへと移動してしまう。
抜刀の勢いのままに一回転し、更に一歩を踏み込んで――刀を袈裟懸けに振り下ろす。
ズバァァァァァァッッ!!
ほぼ首だけを切り落とされる格好となった窮奇から意識を外し、背後に迫る饕餮に、全力の拳を叩き込んだ。特に威力に長けた必殺技を二連続で叩きこまれても立ち上がるコイツには、これぐらいがちょうどいい!!
「無限っ、真覇連衝拳!!!!!」
ドッオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!!
連打を分散させず、一撃ですべての衝撃を早く強く打つ! 当然その威力は機神連衝拳とは比べ物にならねえ!
再び多量の血液を吐き出し、今度こそ饕餮のオーラが収まった直後、背面側の二本の腕を翼に変化させて飛び上がると、俺が居た場所に何かの塊がぶちまけられ、硬い岩石の荒野の地面を黒く腐食させた。
正面から大口を開けて紫炎を口内に滾らせる檮杌の顎を須佐能乎のレッグナイフで切り裂きながら下方へ目を向けると、そこには信じがたいものが存在していた。
上下に分かれた渾沌の身体が、固体や液体どころかゲル状ともゼリー状ともつかない二つの紫色の塊となって瘴気を吐き出しながら蠕動し、触れた大地を毒の沼と化しながらその体積を一気に増した。
二つの塊がぶつかり、一つになると、それはすぐに元の渾沌の容姿を取り戻し、こちらへ膨大な砲撃を加えてきた。
くそ! あの時飛ばして来たのは、俺に斬りつけられた部分を分離させた破片か!? どういう回復方法だ、チクショウが!!
心の中で悪態をつきながら、雨霰と掃射される砲撃を避け続けるが、砲撃に気を取られた隙に再び口を開けた檮杌が宙を駆け、須佐能乎の右腕が翼ごと噛み砕かれた。
バランスが崩れ、動きが硬直した瞬間を見逃さず、渾沌は身の丈の三倍以上という超巨大妖力弾を放った。まともに命中した毒と呪いと妖力の塊はチャクラの巨人を難なく打ち砕き、瘴気とともに爆散させた。
フゥっと瘴気の混じったため息をつく渾沌の目の前に着地しながら、口元に両手で輪っかを作り、練り上げた仙術チャクラの水を吹き出した。
「仙法・水遁
ドバァァァァン!!!
大量の水が鮫の歯を備えた巨大な
仙術チャクラで練り上げられたこの水の龍は、相手のチャクラを吸い上げ巨大化する。チャクラを持たない相手でも、気を吸い取る事によってその動きを封じる事が出来る。
当のデカ犬は食いつかれながらも面白いものを見るような顔を向けてきたが、なんてことはない。ただ須佐能乎を身代わりにして脱出しただけだ。初歩の変わり身の術だろうと、徹底して鍛えればどんな強者にだって通用するもんさ。
口から吐き出し終えた龍の尻尾に指を突き入れ、渾沌に巻き付く龍を全て油に錬成する。
超特別製の……燃料油にな!!
「火遁・豪火滅失!!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーッッ!!!
赤龍帝の炎を火種とする大火炎が着火し、龍は一瞬の内に炎へ変じて渾沌を覆い尽くした。
毒も瘴気も焼き尽くす業火に包まれ、山のような体躯が崩れ落ち、地に伏せてなお……渾沌は楽しそうに笑みを浮かべながら、尻尾をくわえて離さない。
ある意味、四凶で最も異質な怪物に戦慄を覚えながらも、後ろを振り向き、限界以上に粒子をチャージしたデスザウラーと、絶大な妖力を滾らせる檮杌へ向き直る。
口を開き発射体制を整える二体に対し、俺は空中高く飛び上がり、ざっと高度千メートルで停止する。
瞬時に狙いを定める二体が、全エネルギーを圧縮させ……開放した。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!
大陸一つ消し飛ばせそうなエネルギーの荷電粒子砲と、直径五百メートルは下らない紫炎の火球。
下方から迫る二つの脅威に、俺は息を大きく吸いながら……全力の炎を叩き込んだ。
「シン・ウェルワン・ドライグ・イグルガッッッ!!!!!!」
ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーンッッッッッッ!!!!!!!!!!!!
地に向けて放たれる炎が模したのは、赤き竜の帝王。かつて三大勢力に屠られた、全盛期以上の大きさを誇る、赤い龍の姿だった。
翼を広げたドライグは正面から二体の攻撃にぶち当たり、難なく押し返しながら地表へと迫り……二体へ着弾し、壮絶な爆炎で地を満たした。
ドッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!
凄絶な爆発音が轟き、五体全ての姿が光と炎に掻き消える。衝撃波によって巻き上がる砂埃と、爆発による煙が視界を奪う中、高度を下げながら目を凝らすと、再生の限界を迎えて倒れ伏す四凶と、装甲と流体金属の
筋肉が焼け落ち、内部の機械部品がむき出しになったデスザウラーが確認できた。
だが、なおも油断はできない。まだ、一番肝心な
バリィィィィィィィィィィィィィィィン!!!
ッ! 師匠たちの結界が破られた!?
……来たか。
「……来たぞ、赤龍拳帝」
俺の胸の内に返答するような台詞を吐いて、そいつは現れた。
金と黒の篭手を見せつけるように左腕を突き出すと、篭手に嵌めこまれた緑の宝玉がまばゆく輝き出す。
「こいつも待ちきれんとさ。さぁ……龍と龍の殺し合い、そして俺とお前の戦いを……心ゆくまで楽しもう」
空気を揺るがすクロウ・クルワッハのオーラに呼応して力が高ぶる俺は、喜びと歓喜に打ち震えていた。
これで本当に……全力で戦える。