「やられっぱなしも性に合わん……今度はこちらから行くぞ!!」
『Jet!』
損傷した鎧を瞬時に再生させたクロウ・クルワッハが窮奇以上の速度で距離を詰めてくると、俺は右手を軽く動かして全方位にワームホールを展開させ、そこから平均数キロの巨大隕石をざっと数万呼び出し、光の速さで撃ちだした。
「ハハハハハ!! 今度は隕石か! だが、まだ温い!! こんな小技で俺は殺せんぞぉっ!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
雄叫びとともにオーラが爆散させ、隕石が次々に微塵と砕かれる。その隙に、俺は新たな占星術を繰り出す。
「
およそ二億光年の距離を隔てた、一京の星々からなる大銀河系を操作し、星々の並びを操作する事によって巨大というにも大きすぎる特大の十字を形成する。すなわち……グランドクロスだ。
「
銀河の大十字によって発生した膨大なエネルギーをクロウ・クルワッハへと注ぎ込み、ヤツの肉体を内部から沸騰させる。
「ッッッグオオオオオヲヲヲオオオオォォォォオオオオオオオオオヲヲヲヲオオオオオ!?!?!?」
絶叫を上げながらも心身は原型を留め、滾るオーラから闘争心は如何程も衰えていないのが伺える。
大したもんだぜ。ハーデスと帝釈天のクソジジイ共でさえ、グランドクロスと手加減した超新星爆発で瀕死になったのに、まったく加減無しの全力の占星術を三連続でぶちかまされて生きてるとは。
残る『鍵』はあと二発……さあ、どうなる!!
「
詠唱を開始すると、左腕が銃砲へと変形する。
「
右手で左手を抑えながら狙いを定めると、銃口に溜められるエネルギーが白い輝きを放つ。
こいつに耐えるのに必要なのは、存在そのものの強度! お前はどうだ、クロウ・クルワッハ!!
ドォォォォォン!!
光の弾丸がクロウ・クルワッハに命中すると、奴を中心に巨大な魔方陣が形成され、動きを封じるとともに十個の中性子星を召喚する。
十の星が超光速でクロウ・クルワッハの周囲を回転すると、中心に立つ奴に異変が生じる。
バシュン!
「ッ!? こ、これは……!!」
突如、鎧ごと右腕が消失するが、傷口からは血が流れる様子すらもなく、痛みも無い。それはある意味当然で、正確には傷口すら『存在しない』のだから。
バシュン! バシュン! バババシュン!
次々と身体に穴が空いていくヤツへ、死刑宣告に等しい事実を告げた。
「十の中性子星が超光速で回転する事によって、中心であるお前に時間の逆行を起こす。……結果、存在する以前へお前を押し戻し、その存在を虚無へと消し去る。――時を遡り、無へ帰れッ!!!」
「……ゥッ……ゥォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
『
身体の大半が消失する中、クロウ・クルワッハの力が一瞬だけ跳ね上がると同時に爆散されたオーラによって、魔方陣と中性子星がかき消される。
「ハァッ、ハッァ、ハァッ…………」
パチ、パチ、パチ、パチ。
グルメ細胞の活性化によって身体を再生させるクロウ・クルワッハに、必死で呼吸を整えようとする奴の荒い息遣いに混じって、俺は賞賛と驚愕の拍手を送った。
「素晴らしい。ここまで来たのは、シヴァに続いてお前で二人目だ。ブラフマーとヴィシュヌでさえ、今の一撃で戦闘不能にまで追い込まれたってのに……これが最後の一発だ。凌いでみせろよ? 暗黒竜!!!」
大宇宙を抱え込まんばかりの勢いで両手を広げ、最後の詠唱を開始する。
「
今から起こすのは、俺の占星術の中で最も規模が大きく、超新星爆発やグランドクロスでさえ及びもつかない最強の力。
俗にいうグレート・アトラクター。銀河吸収面の大激突とも、天の川銀河を引き寄せる超重力源とも言われているが、この世で一握りの存在がその正体を知る現象。
それは……宇宙を、そしてそこに浮かぶ銀河系を、更にはそこに属する星系の星々、果ては俺達を含めた個々の存在すら区別なく、平等に流転させる全宇宙の渦。天元、太極、根源、と呼ばれる、この世界の真の中心足る現象。
「
そしてこれは……相手の存在する宙域を、一時的にその流れから固定する術。結果、相手は万物を流転させる力に一瞬だけ逆らう事になり、その反発は想像を絶する衝突エネルギーとなって対象に襲いかかる。
『
ドギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!
「――――――」
炸裂する衝撃音とともに、クロウ・クルワッハの鎧が粉々に粉砕された。再び力を倍加させて炸裂させたようだが、大宇宙の流れの前には微かな抵抗でしか無い。
だが、その微かな抵抗は確かな影響を及ぼし、ヤツの身体を左腕から頭にかけた僅かな部分を存在せしめた。
パキン。
小さな音が空間そのものに起こる振動を通して耳に届くと、クロウ・クルワッハの肉体が猛烈な勢いで再生する。
それを見届けた後、ワームホールに俺とヤツを揃って飲み込ませ、再び次元の狭間に展開させた荒野を踏みしめる。
「事前に、フェニックスの涙と癒水を奥歯に仕込んでいたとは……流石に用意周到だな」
「お前に挑む準備としては、明らかに足りんよ。しかも今ので種切れだ。後は自力で何とかするしか無い」
「しっかしまあ、よくぞ耐えてくれたよ、期待以上だ。流石はラスボスだけはある」
「……どちらかと言えば、お前の方こそラスボス染みていると思うのは、俺だけでは無いはずだがな」
やかましい。何にせよ……これで、お膳立ては済んだわけだ。
周囲に影響を及ぼさない程度に収められたオーラを見て、クロウ・クルワッハは身構えるとともに言った。
「どうやらお前も、手品はネタ切れのようだな。……山場は超えたわけだ。後は、肉弾戦にて押し通る!!」
ドゴォォォォォ!!
動こうとしたクロウ・クルワッハのマスクへと、右の正拳突きを叩き込む。身体の捻りを利用して、左飛び回し蹴りをこめかみに叩き込み、兜を粉々にしながら吹き飛ばした。
空中で体勢を整えて片膝を突いたヤツは、ようやく気がついたのだろう。
俺のオーラは減少したわけではなく、ただ身に纏えるまでに圧縮されただけだという事実に。
「占星術は威力も規模も大きすぎてな……発動は勿論、制御にも結構なエネルギーを喰う。だからこそ、変形するだけでも、周囲の空間を破壊しかねない程の絶大なエネルギーが発生してしまう
我ながら、相手からしてみたら本当に最悪どころじゃないよな。必死で必殺技の連発凌ぎ切ったと思ったら、実は全部準備運動でした、だもんな。
だけど、当のクロウ・クルワッハは……心底嬉しそうに、無邪気な満面の笑みを浮かべている。
「そうか……そうか。超新星すら超える今の拳が、グランドクロスでさえ及ばない今の蹴りが、赤龍拳帝の真の力か……。フハハハ……アーッハハハハハハハハ!!! そうだ、それでこそだ!! 正直、苦手としていた筈の術での攻撃を始めた時は、楽しみながらも少し落胆したものだが……真の切り札はやはり拳かッ!! 兵藤一誠……改めて自認させてもらったぞ! お前は、俺にとって最高の
……この状況でそう言ってくるとは、やっぱりこいつはイカれてる。
それを歓迎する俺も、また同類だ。
「俺も同じ想いだぜ、クロウ・クルワッハ。今度はお前の番だ……帝皇の力、存分に味わってくれ」
兜の再生が終わったクロウ・クルワッハは、あらん限りのオーラを振り絞り、ゆっくりと立ち上がった。
「では……ご相伴に与ろう!!」
ドドドドドドドドドッッッッッッ!!!!!!
限界まで高められた戦意が弾け、超々光速の拳打蹴撃の嵐が始まった。
一撃一撃がさっきまで俺が繰り出していた天文現象に相当する破壊力を叩き出し、直撃すればトールやハーデスでさえ何発も耐えられないのは明白だ。
だというのに、殆どの攻撃が命中しているにも関わらず、クロウ・クルワッハはひたすら鎧と肉体を再生させることで攻撃に専念している。
対する俺は、静の気を持っていなし、払い、時には受ける事でカウンターを取って、堅実にダメージを与えている。
そんな俺を前に、クロウ・クルワッハはむしろ感心する様に言った。
「ハハハハハ! それほどの防御力と再生力を得ながら、なお防御や回避を怠らないか! しかも、ただ力任せに殴るだけでも十分だというのに、急所や弱所を狙う事を忘れないとは……宇宙を好きにできる力を持ちながら、何たる臆病と慎重さ!! しかし、だからこそお前は強く、怖い! 武においてはシヴァ以上とは、よく言ったものだ!
俺の攻撃は碌に当たらず、当たっても大したダメージにならん。しかしこちらは一方的に殴られるなど……理不尽な奴だよ、お前は!! ラスボスどころではないぞ、この化け物め!!!」
「ウルセェ! サイラオーグさんみたいな事言ってんじゃねえよ!!」
フォークへレッグフォークを重ねる形で胸部へと叩き込み、クロウ・クルワッハを一気に吹き飛ばす。
「トリシューラ・フォーク!!!」
ズドォォォォォッッッッッッ!!!!!!
胸に大穴を空けて吹き飛ぶクロウ・クルワッハへ狙いを定め、空気を叩いた摩擦熱によって生じた炎を連続で一点へ集中させ、形成された火の鳥と共に突撃し、鳩尾へ拳を叩き込む。
「
ドォォン!
すかさず両手を組んだ正拳突きで現れた虎型の圧縮空気を正拳突きと共に叩き込み、炸裂させる。
「
ドォォォン!!
更に左腕へ力を籠めて、真覇連衝拳の要領で夕象の空気砲を一発へと纏め、至近距離から打ち放った。
「
ドォォォォン!!!
「――積!」
宙高く吹っ飛んだ奴へ狙いを定め、屈んだ姿勢でチャクラを限界まで高め、龍のオーラを身に纏う。
「流!!」
ドッ!!!!!
余りの速度とチャクラの圧力に周囲の空間を歪めながら、超渾身の飛び蹴りを腹部へと叩き込んだ。
「
そこから更に、蹴り足の反動を利用して足を離し、宙を踏みしめる事で吹き飛ぼうとする相手より速く、必殺の拳を叩き込む!!
「――
ドォォォォォォォォォォォォォォォンッッッッッ!!!!!!!
殴り飛ばしたクロウ・クルワッハが地面に激突し、一呼吸を置こうとした……その時だった。
目の前に現れたクロウ・クルワッハは左の篭手を展開させ、青みがかった黒い炎を滾らせた拳を俺の顔面に叩き込むと同時に炸裂させた。
『
「
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォンッッッッッッ!!!!!!!
黒い爆炎と拳の衝撃が合わさって、凄まじい破壊力を生み出す。
炎が晴れたところで、俺は奴に問いただした。
「……最初から、必殺技直後の隙を伺ってたのか?」
「お前は慎重で勘がいい。しかし、同時に思い切りがいい。俺を殺せると判断したら、躊躇なく必殺技を叩き込むと思っていたよ。狙い目はそこしかなかった。もう一つの癒水とフェニックスの涙を使って、こっちの必殺技を打ち込むしかないとな。即死する可能性の方が大きかったが、なんとか賭けには勝ったぞ」
種切れってのはやっぱりブラフか。信じたつもりは無かったけど、確実に殺す事に意識を割きすぎたな。
「しかしまあ、なんとも涙ぐましい限りだ。天龍の域にまで届きながら、そこまで策を講じるとはな」
「勝利のためなら、プライドなんぞ犬にも喰わせよう。俺とて、貴様と俺の戦力に著しい差があることは認めている。認めているが……これ程とはな」
バキィィィィンッ。
クロウ・クルワッハの奥義は確かに、俺に届いた。兜は砕け、口の端から微かな流血がこぼれ落ちる。
その血を舐め取りながら、兜を再生させ、オーラを一気に増した。
「……やはり理不尽だな」
「そいつは悪かったな。詫びと言っては何だが……俺の奥義をもう二つ見せてやる」
動と静。相反する二つの気を同時に発動させる気の運用の禁忌。そのバランスを極限状態で保つことによって、十分間のみ自分の実力を跳ね上げる。絶え間ない修行の果てに身につけた、気における窮極奥義。
「これが、
クロウ・クルワッハの頭部を掴み、膝蹴り――カウ・ロイを放つ。
更に身体を旋回させながら突きと蹴りを放つ
首へめがけてチャクラを漲らせた二の腕を叩きつけるラリアット。
突き上げと蹴りを同時に行う
足で組み付きながら頭突きを放つカベサーダ。
気当たりによる反射で動かした相手へカウンターの一撃を放つ還り撃ち。
気の炸裂や分身等によって視認不能な突きを無数に叩きこむ無影無限突き。
拳を密着させた状態から拳を打ちぬく打突寸破。
相手の全身の
九の技を次々と繰りだすとともに限界を超えて気を練り上げ圧縮し、開放することで最強最速の一撃を繰り出す。
これぞ、オレの武における最大奥義の一つ!
「
ドンッッッッッッ!!!!!!!
クロウ・クルワッハの鳩尾に命中した突きは、鎧ごと奴の身体を吹き飛ばし、地面へと叩き落とした。
追従するように下に降りて、巻き上がる砂埃を軽く腕を振って吹き飛ばすと、胸から下がまるごと消し飛んだクロウ・クルワッハが、鎧を解除して楽しそうに笑っていた。
「ハハハ……完敗だ。ここまでの準備を整え、あれほどの事をしでかしてまで戦ったというのに、まるで勝負にならんとは……ハハハハハハ!! だが、楽しかった。これほど血沸き肉踊る殺し合いが出来ただけ、満足だ。さあ、勝者の権利だ。煮るなり焼くなり好きにしろ」
「ああ……そうだな」
右手にブラックホールを生成しながら、物悲しさすら覚えながら詠唱を始める。
「
……こいつは、紛れも無い悪党だ。俺と戦うためだけに大勢を傷つけることを良しとして、俺と明とライリの研究成果を盗み出し、更には四大魔王様すら傷つけたのだろう。俺個人としても、立場的にも、許す事は出来ない筈だ。
その、筈なんだ。
なのにどうして……こんな寂寥感が襲ってくるんだろうな。
「馬鹿野郎が……俺が昔の力を取り戻すまで待てば……何の遠慮も柵もなく戦えたってのに……」
「フッ……俺がそれまで我慢できるとでも? それでは、邪龍に生まれた意味が無い」
「邪龍に拘る必要が何処にあるんだよ。お前は、お前だ」
「そうだな、拘る必要はないかもしれん……だが逆に、拘らない必要もない。それこそ、俺の自由だろう?」
……ああ、そのとおりだな。
「あばよ……俺の
続きを唱えるために、口を動かした。
ズン。
……はずだった。
「か、ハッ……!!??」
しかし、俺の口からこぼれたのは血が混じった驚愕の声であり、腹に奔った激痛に視線を下げれば、小さな手が血で汚れながら俺の腹から突き出ていた。
馬鹿な!? 今の俺の背後をこうもあっさり取るだなんて……そんな……まさか……。
ズボッ。
小さな凶器が引きぬかれた直後、再生した後も激痛を訴える腹を抑えながら、悠々と俺の目の前、クロウ・クルワッハの隣に歩いてみせた少女を、俺は睨みつけた。
「どうして……お前がクロウ・クルワッハを助ける? 何が目的なんだ……」
見た目は露出の大きいゴスロリ服の美少女。しかし、そこから放たれる計り知れない力は、俺の中にいる存在とある意味同種だった。違いが在るとすれば……この少女のほうが完成度が高いといったところだろうか。
「ドライグに勝つため、この者、神器を作り替えるのに、我の力を借りた。しかし、結果はこれ。ゆえに、興味が湧いた。我、この者の話、聞きたい。連れ帰る」
はいそうですか……なんて言うか阿呆が!!
「
左手を添えて呪文を完成させ、右手でそれを投げつけようとした俺に、少女は大玉サイズの弾を瞬時に掌に作ると、ゴミ箱にテッシュを投げる様に軽く放ってきた。
ボッ。
咄嗟に危機感を覚えた俺が射線から身体をどかすと、玉に触れた右腕がブラックホールごと呆気無く消し飛んだ。
……再生に意識をやった事は否定しない。が、気は張り巡らせていたはずだ。
なのに、どうして少女は気がつけば俺の目の前に移動しているのか。
理由は簡単。その少女が、俺のあらゆる感覚で捉えきれないほど速いから。
今の俺は、例外級に強い。一時間の制限がなければ、シヴァすら倒せたかも知れないあの時よりも、バオウとガオウを取り込んでいる分、更に強くなっているはずだ。
しかし、目の前の少女はそれを遥かに凌駕する。
数では決して推し量れない真の『無限』の前には、那由多も不可思議も無量大数も等しく塵でしかないという残酷な現実が、実体験として証明された。
認識出来ながらも反応できない俺の目の前で少女は右手を振り上げ、何の感慨も感じさせない、抑揚のない声で告げた。
「ドライグ、宿主の人間、また会おう」
「――――――オーフィスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッ!!!」
パンッ。
蚊を叩くような無造作かつ適当な一撃を持って、俺は甚大なダメージと共に自分が展開した空間から弾き出され、次元の狭間へ吹き飛ばされる。
バラバラになりそうな身体を叱咤し、一瞬で体勢を整えて元の空間へ戻ろうとした時には、既にその痕跡すら無かった。
あいつの力なら、一瞬でクロウ・クルワッハを連れ出し、世界をぶち壊すなんて簡単に決まっている。
痕跡も何も残っていない現状で追跡は不可能だし、第一出会ったところで、あの無限の前には手も足も出ない。
……なあ、ドライグ。俺は……何を間違えた?
『いいや、お前は出来るだけの事をやったさ。四凶とデスザウラー、クロウ・クルワッハを冥界から叩き出し、当分は活動出来ないだけのダメージを与えてやれた。結果としては勝利と言って差し支えない。
……ああ、そうだよな。でも俺は――負けたんだ。無限の前に、俺を超える力の前に、呆気無く吹き飛んで……勝負にさえならなかった。
悔やむ余地すら無い。ただ……改めて、腹を据えただけだ。
無限と夢幻も――俺にとっては、超えるべき壁。
そうだとも……俺の目標の一つは、真の意味で最も強い存在になる事。
徹頭徹尾最強無敵、誰が相手でも絶対勝利。
大切な者を全て守るために……何が何でも全てを止められる力がいるんだ。
本当に……どうして世界ってやつはただエロく、平和で居られないんだろうな。
『さあな。様々な力を惹きつける渦であるお前がそう思う事は、ある意味おこがましいのかもしれん。しかし……どこまでいっても、女と平和を求められるお前が、俺は頼もしくも誇らしい。それだけは忘れないでくれ。相棒』
『是 我 同 極』
『色ヲ求メルノガオ前ノ強サナラ貫クガイイ。私ハドコマデモ、ソンナ貴様ノ進化ニツイテイクダケダ』
そうか……ありがとうな、相棒達。
ワームホールを開き、次元の狭間から冥界の、グレートレッドの目の前にゆっくりと降り立つ。
赤金の窮覇龍を解除し、
「今回もありがとうな。また力を借りる時が来るかもしれないけど、そん時はまた美味い醤油を用意しておくから」
グレートレッドは足元の俺をチラッと一瞥すると、頭上に次元の穴を空け、あっという間に姿を消した。
それなりに付き合い長くなるけど、あいつも大概わけのわからない奴だよなぁ……。強いドラゴンってのはどうして皆ああなのかな?
『お前がそれを言えた義理か?』
……いや、そうかもだけどさ。
などと話していたら、背後に羽ばたきの音を立てながら、黒いコートの女が弾んだ声をかけてきた。
「ねえ、グレートレッドを帰したってことはさ、全部終わった?」
「まあな……四凶もデスザウラーもクロウ・クルワッハも叩き潰した。完全に消滅こそできなかったが、あれじゃ早々復活は出来ない筈だ」
「じゃあさぁ……ようやく、私の願いを叶えてもらえるんだね?」
後ろを振り向きながら、全身に魔力を漲らせるマラコーダへ、俺は素顔を晒しながら言った。
「勿論。存分に……喧嘩しようか、マラコーダ」
「うん♪ イッセー……力の限り
「クロウ・クルワッハ、あの者、強かった?」
「果てしなく……何れ、お前の次元にすら届くかもしれんぞ、オーフィス」
「そう……では、やはり、正解だった」
「?」
「種は植えた。時が来れば、芽が出る筈。あの者の無限と夢幻、必ず静寂を取り戻す」