オーラを凝縮し、戦闘態勢に移行する俺達の周囲に、師匠たちが続々と集まってくる。
急な展開に警戒の色を強めながら、最初に口を開いたのは聖さんだった。
「イッセー、マラコーダさん、一体どうしたんですか!? 何故、急にこんな……」
「いや……さっき、こいつと約束してたんですよ。味方する代わりに、後で願いを聞くってね」
「それがまあ、一対一の戦いなんだけど……よく気がついたね、イッセー」
お前……本気で言ってんのか、それ。
「最初にあった時から今に至るまで、あんな熱烈な
「なるほど……流石は私が見込んだ男だ。で、もう始めちゃっていいのかい?」
……うーん。
「どうだろうな……そもそもここって私有地? それとも国有? マラコーダは知らないか?」
さっきは非常時だったけど、場所が選べるんなら出来るだけ選んだほうがいいだろ。俺もコイツ相手に加減できる自信はないしする気もない。それは勿論マラコーダも同じだろう。
「いや、数百年前から冥界を離れてた私にわかるわけないじゃん」
だよな……。
周囲をざっと見回しても、全員首を横に振ってるし。いや、博識ではあっても、そんなに世間通って面子じゃないから、ある意味予想通りなんだけど……。
「ここは冥界政府所有の土地だ。サーゼクスが言うには、お前らが戦うには都市や街が近いんで、もっと遠くでやってくれだとよ」
あ、神さん。
いつも通りの突然の登場を果たした師匠は、指で俺達の向こう側を指し示しながら、何かの権利書らしき書類を取り出した。
「さっき治療ついでに、ここから丁度、向こうにニ千キロ行った所にある一面荒野の土地を、サーゼクスからお前名義で買い取った。ああ、金はさっき明に電話したら、研究所で管理してるお前の口座から支払うっつってた」
え、そんな簡単に俺の口座使われちゃったの!? いや、そっち系の財布や金銭管理は全部明に任せてたのは確かだけどさ!
「てか、土地を即諾で買うって、一体どんな規模ですか!? 俺にそんな財産ありましたっけ!?」
「何を馬鹿抜かしてんだ。あんな端金、お前の財産の何万分の一にもならねえぞ」
マジですか!? あ、でも確か、明が整理してた俺の財産の総額を纏めた資料……兆以上はあったっけ!?
「何にせよ、これであそこはお前の私有地だ。何をどうしようが誰にも文句を言われる筋合いはない。そこに結界を張っておけば問題はないだろう。別に次元の狭間に別空間を展開してもいいんだけど、この状況でマラコーダが姿を消すと、後々変なこと言われそうだし、目に見えるところで戦ったほうが手っ取り早いだろ。そっちは俺が付き合うから、皆は救命活動や配給の準備を頼む」
……俺としては、そっちの方をある程度手伝ってから戦闘に移りたいところなんだけど。
ゴォォォォッ!!!
チラ、とマラコーダの方を見ると、俺の内心を察したらしく、殺気に満ち満ちた笑顔を浮かべながら、オーラの圧力を強めた。
「何を他に気を取られてるのさ。この瞬間を、私は五年以上も待ち望んでたんだよ? 時間をかけてマレブランケの連中を完全に抑え込んだと思ったら、今度はあんな連中に絡まれてあの様だ……幾らイッセーの眷属になれたからって、もう治まりつかないんだよ」
だよな。俺の方もクロウ・クルワッハとの戦いがあんな風に終わって、少し不完全燃焼だし……ここでコイツを放置も出来ない……いや、言い訳は止めよう。
「まあ、正直……俺もお前と戦いたい。が、消耗した状態じゃあお互い満足出来ないだろう。神さん、癒水持ってますよね」
「ああ。ほらよ」
師匠に投げ渡された癒水を二人同時に一気飲みすると、オーラが全快し、力強さを大きく増した。
マラコーダの奴、完全にマレブランケ全員分の魔力を物にしたな……最早、紛れも無い魔王クラス。魔力量だけならサーゼクス様より少し上か。無論、それだけで全てが決まるとは言わないが、少なくともパワーやスピードなんかの基礎戦闘力なら俺以上なのは確定的。何より……コイツ自身の魔力特性は厄介なんてもんじゃない。おまけにグルメ細胞まで持っているときた。
以前は……グルメ細胞の暴走によってなんとか切り抜けられたが、今回はあの時と状況が違いすぎる。
以前のマラコーダからすれば、俺は偶々珍しい食材を抱えただけの単なる子供。しかし、今のアイツの瞳から一直線に発射されるのは、俺に対する純粋過ぎる殺意と戦意。その二つの土台となって燃え上がる愛情、期待、狂信。休むこと無く俺の全てを観察する、油断も慢心も生じる隙のない、ある意味完成された状態だ。
「じゃあ……行くか」
パチン!
神さんが指を打ち鳴らすと、俺とマラコーダと神さんの三人は一瞬で荒野に転移し、神さんが姿を消すと同時に、俺達を中心としてざっと半径千kmに赤い結界が張られた。
マラコーダは色っぽくコートを脱ぎ捨て、ノースリーブのボディスーツと黒い長ズボンを晒すと、緩々と尻尾を伸ばしながら、十二枚の羽を展開する。暗黒魔闘術を見様見真似で会得したらしく、纏う魔力は極限まで圧縮されている。
俺は足元の地面を蹴って砂埃を立てながら、首の骨をゴキゴキと鳴らす。
「――さあ、イッセー。これが最終確認だ。今一度、私に君を焼き付けてくれ。あんまり詰まらなかったら……殺しちゃうかも知れないよ?」
「……上等だぜ、原初の悪魔。エロに生きる高校二年生なめんじゃねえぞ」
不死鳥並みの再生力を持った、魔王級の
天地上下の構えを取って、改めて俺とあいつのオーラを見比べてみると……総力を挙げて、ざっと二段階程度の差か。
なら……俺の勝ち目は一つしか無い。
「ラウザルク」
呪文と龍一文字の能力強化を合わせて身体能力を底上げ。更に超神化、仙人モード、炎水静動轟一を発動して……一気に仕掛けた。
『Jet!』
ビュッ。
ブースターの発動音と共に聞こえたのは、鞭として振るわれるマラコーダの尾が空間を切り裂く音。
最大数キロメートルの射程を超精密かつ強烈に打ち据えるこの『
そして、マラコーダの持つ『反抗』の魔力は、俺の『殴りたいものを殴る程度の能力』に酷似した特性を持つ。いや、順番通りならむしろ俺がマラコーダに似てるんだけど……。
物質だけでなく、気や破滅の魔力や消滅の力にすら接触できる『反抗』の魔力。それは攻防どちらにも恐ろしい威力を発揮するということは、我が身で散々実感してきた。
光速の速さで迫る鞭は、圧縮された『反抗』の魔力を纏い、分身の様な無数の像を結びながら襲い掛かる。
一発でもまともに受ければ、再生にも相応な時間が掛かる。だから、意地でも当たるわけにはいかない。ブースターを吹かせたまま手を動かし、時に覇気の足場を蹴るように活用しながら、全ての尾を捌き、いなし、かわしながら駆け抜ける。
微かに掠った肩の装甲がふ菓子みたいに砕かれるが、その程度を気に留める余裕は無い。
もう一箇所、右腰の装甲を失いながらも至近距離まで接近し、十体の気当たり分身と共に一気呵成に攻め立てる。
振り回す距離が短い至近距離なら、鞭の威力と速度は当然落ちる。ただし当然マラコーダ自身との距離も近いから、翼や素手の攻撃も加わることになるが、それでも鞭よりは戦いやすい。
戦いは動の膠着状態に陥るが、実際問題このままってわけじゃない。経験と技術、更にあらゆる手段での能力強化で無理に迫ったところで、俺とマラコーダでは地力の開きが大き過ぎる。時間を掛けすぎれば当然自爆、距離を離されればあっという間にジリ貧だ。準備が整うまではこの状態を維持しつつ、吸収を図るしか無い!
『LordLordLordLordLordLordLordLordLordLordLordLordLordLord!』
黒い光がマラコーダから俺に注がれるが、マラコーダはまったく余裕の表情。一点集中で吸収してんのにこれかよ!?
「……イッセー。君はやっぱり超のつく努力型だ。一度始めれば極めるまで止まらないけれど、逆に始めなければ早々上手くはいかない。現に、時間がなくて慣らしも出来なかったその重龍皇の鎧は、大分ぎこちない」
マラコーダは攻撃しながら、微笑みを浮かべて話しかけてくる! 聞いてる余裕はあんまり無いけど、俺みたいな不器用なのはこういう分析と講釈は聞いといて損は無いんだよなぁ、悲しい事に!!
「さっきから吸収ばかりで全然硬化を進めないのがいい例だ。吸収と硬化……倍加と譲渡の様に、二つの能力はあくまで連結であって連動じゃあない」
「お前、四罪相手の説明どっかで聞いてやがったな!」
「それは勿論♪」
可愛くウィンクしてんじゃあねえよ! あいにくこちとら聞いてるのと戦ってるのでまさに一杯一杯だ!!
「で、吸収した力は一度イッセーの中に貯蔵され、それをイッセー自身の意思で硬化へ使用しなければらない。そして……
ああ、そのとおりだ!! しかも貯蔵しただけの力は、精々が自然回復を早める程度にしか使えねえんだよチクショウめ! 凡人にしちゃ上出来だろうが!
「……で、これで終わりってことはないよねぇ? 何か手をうたないと、体力が尽きた瞬間滅多打ちだよッ!!」
「ああ、勿論! 細工は粒々……仕上げを御覧じろってな!!」
「!」
シュババババッ!
木分身によって背後から投げつけられた無数の手裏剣に、マラコーダの意識がほんの僅かにそれた。
その間にもう一体の木分身を突っ込ませ、マラコーダの相手を数瞬任せる事で、硬化を果たすことに成功した。
数合の打ち合いで分身を粉々にした後、空中へ飛んで距離を取ろうとするマラコーダの背後を木分身に塞がせ、前後を挟んで、再び接近戦へ臨む。応戦するマラコーダの表情には、初めてと言っていい焦りが見て取れた。
「一体いつの間に分身を!? 出てくる際には近距離に現れるはずじゃないのかい?」
「よく知ってるな……だが、それはチャクラで実像を作った影分身の場合だ。こいつらは俺の細胞を元に木遁で作った木分身。出す際に俺の身体にくっついてりゃあどこからだって出せる」
例えば……種の状態で足の裏から地面へ潜り込ませて、その後人型に形成させるとかって芸当もな!
「まさか……最初の時に足元から地下に分身を仕込んでいたのか! 地面を蹴って砂埃を立てたのも、少しでもそれを誤魔化す為!!」
「大正解!」
もっと言えば、この二体には二つ別の役割もあったんだが……マラコーダを見る限り、どうやらそれも果たせたらしい。
……カードは揃った。後は切り札のタイミング。それまでは、とにかく全力で抗うしか無い!!
「……なるほど。流石に度を超えた強敵との戦いに慣れてるだけあって、思った以上に強かだね。なら……こっちも早々に終わらせるとしよう」
そう言うと、マラコーダは尾の動きを止めた! 意図は読めないが、これは紛れもないチャンスだ。
木分身と同時に激しく攻勢を強めるが、マラコーダは十二枚の翼と両手足で巧みに防御を固めて、決定打を防いでいる。
そんな中、マラコーダの尾に尋常じゃない魔力が圧縮され始めた!! 更に全身の筋肉が戦闘行為を続けながらゼンマイ式のように運動エネルギーを尾へと集約させ、メキメキと音を立てて尾がパンプアップしていく!
やばい!! どういうつもりかは見て取れるが、だからこそどうしようもない!
こうなったら……こっちも必殺技でいく!
ほんの少しでも防御の手を鈍らせる為に木分身を玉砕覚悟で突っ込ませつつ、体内で気を爆発させ、渾身の奥義を繰り出す!!
「
分身が砕かれた直後、意、心、技、体、覇、欲、色、和の八つの念を込めた拳撃をほぼ同時に繰り出し、それは間違いなくマラコーダの防御を突き抜けて奴の急所へ叩きこまれ、この戦いが始まってから最初となる明覚なダメージを与えてみせた。
ゴボォッ!!
口から多量の血液を吐き出しながらも、マラコーダは蠱惑的に微笑みかけ……尾に込めた全ての力を開放した。だが、転んでもただでは起きん! その瞬間、こっちも左手を打ち鳴らして、服につけた魔力を開放する!
「
「
バシィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィンッッッッ!!
咄嗟に構えた防御は、超速の鞭打によってまったくの無駄と言わんばかりに打ち砕かれ、俺は漫画のように高高度の空へと弾き飛ばされた。
けど、マラコーダの裸体はしっかり万華鏡で捉えてみせた。脳内保存!
あらゆる激痛や衝撃を体感し、とっくに慣れたと思った身体はさらなる傷みに塗りつぶされ、正確にその機能を果たしているのかさえ怪しくなった。
尾に多量の魔力と筋力を溜め込み、全力で振る。単純に言ってしまえば、力を込めて殴るで説明が完了する、児戯にも等しい力技。
しかし、あらゆるものに接触できるマラコーダの反抗の魔力が加われば、それは森羅万象を砕く魔技と化す。現に、あれだけ溜め込んだエネルギーを注ぎ込んで、魔王クラスにまで鎧を硬化させたっていうのに、たったの一撃でほぼ全壊だ。……ていうか、肉体も腹から下が纏めて吹き飛んだ。
また木分身を地下に仕込まれるのを警戒して、空中で終わらせるつもりで服を直してこっちへ向かってくるマラコーダを視認すると、ダメージが響く中、無理やり一瞬で身体の再生を終わらせるが、鎧の再生は間に合わず、呪文によって急場を凌ぐ。
「ニューボルツ・シン・グラビレイ!!」
グシャアアアアア!!
超重力の球体がマラコーダの動きを数秒押し留め、その間に鎧の再生を完了させて、篭手から龍一文字を引きずり出して、形状を黄金の長槍へと変化させる。
輝くその身に眠る力を揺り起こし、重力球を砕いたマラコーダへ、当たるという『結果』を創りだしてから動くという『過程』を行う、必中の御業を発動させて投擲する!
ビュォン!!
一筋の閃光となって迫る槍へ禍の尾が振るわれるが、物理法則どころか空間さえも無視しているかの如く出鱈目な軌道を描く槍には掠りもせず……何重にも展開された分厚い魔方陣をあっけなく砕き散らし、マラコーダの心臓へと突き刺さった。
グングニル、ゲイ・ボルク、フラガラッハ、ブリューナク、タスラム、ブラフマーストラと、有名所だけを挙げても必中の武器とは多い。そんな古今東西の伝説の模倣を一つに混ぜあわせた
運命、因果、世界の法則すら干渉できるこの槍に対して、命中前の迎撃や回避は根本的に不可能。ゆえに、あれに晒された者の生き残る道は二つ。槍の攻撃を受けた上で耐え切るか、桁違いの幸運を持って因果を捩じ伏せ、外れさせるか。
後者は駄目だった。なら前者しかないよな、マラコーダ!!
「あッ、ぐ……!!」
槍から聖魔入り混じった莫大なオーラがマラコーダの内部を焼きながら徐々に大きくなる中、俺は胸甲の宝玉の前に両手をかざし、詠唱を開始する。
「
球状の重力フィールドを生み出し、詠唱を続けながら更に重力を一点集中させる!
「
フィールド内部にシュバルツシルト半径が粒子サイズのマイクロブラックホールを作り出し、それを頭上に掲げながら重力フィールドを拡大。約百メートルの大きさとなった黒の球体を見て、狂喜に破顔しながらマラコーダが叫ぶ。
「アハハ! なんだ、普段でも出来るんだ、そのトンデモ占星術!!」
「天龍三体の力を借りてようやく出来る超限定版……ついでに教えといてやると、こいつもその槍もそれぞれ一発限りの必殺技。撃てばほとんどガス欠の、正真正銘奥の手だ!!」
意図を察したのだろう、マラコーダは魔力のオーラを再び尻尾へ集中させ、爆発間近の槍を無視したかのようにブラックホールを待ち望んでいる。
ああ、そうだ……そんなお前だからこそ、俺も一切の加減無く戦うことが出来るんだよなぁ!!!
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッ!!!!
轟音と共に拡散するオーラの中、ブラックホールを中心点へと投げつけ、一気に開放する。
ズアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!
特殊な重力フィールドによって減衰しながらも猛烈な吸収力がオーラごと周囲の全てを飲み込んでいき、仕上げとして左手で握りつぶすような所作を持ってブラックホール内に対消滅反応を起こし、爆発のエネルギーを重力フィールド崩壊でもって制限し、最終的には爆音と衝撃波が結界内部を満たす。
凄まじい余波を受けながらも手元に帰ってきた槍を篭手に収納し、一息をつく。
流石に、これだけの消耗はこたえるなぁ……。万華鏡写輪眼が勝手に解除されちまった。炎水静動轟一もそろそろ時間切れだし……。
ドスッ!!
ッ!!
「――っ流石のイッセーでも、あれ……ハァッだけ、ハァ! ……の、大技の連発直後は……隙を見せてくれたね!!」
背後を振り向くと、そこには確かにマラコーダがいた。
左の両手足は付け根から吹き飛び、右足も膝から下が無い。翼もたった二枚を残してもがれていて、尾に至っては根本から消し飛んでいる様子。唯一表面が傷ついただけで原型を保っているのが、俺の心臓を貫いている、この右腕だった。
頭からもぼたぼたと血を流し、心臓に空けられた穴さえ塞がっていない様子で、マラコーダは蠱惑的な雰囲気を醸し出していた。
それは例えようもなく退廃的かつ背徳的で……涎が出そうなほど、魅力に満ちあふれていた。
「フフ……驚いてるよね? 私も、自分の生命力に呆れるばかりだよ……イッセーから貰った眷属としての再生力がなければ、間違いなく死んでいた。ギリギリだったよ、本当に……全身全霊の尾でブラックホールを叩いて、重力崩壊に飲み込まれる事自体こそ避けたけど、槍と対消滅の余波をまともに食らってこのザマだ……今はろくに再生すら出来ないよ。けど……それはイッセーも同じこと、だよね?」
「ああ、そうさ……できる事っつったら……悪あがきしかねえんだよ!!」
枯渇しかけのチャクラを練り上げ、両手の指で十字を作り、十体の影分身を出現させて、後ろのマラコーダへ殴りかからせる!
「今更……そんな木偶が通じるか!!」
ボン!
振り回された翼によって半数が消され、残った五体がマラコーダを殴りつけるが、微かに身体が揺らいだだけで、再び動いた翼によって掻き消された。
『
だが、その隙にマラコーダの右腕から身体を引き抜き、振り向きざまに篭手内の龍一文字へ残されたエネルギーのほぼ全てを譲渡し、オーラを纏わせて勢い良く射出した。
……が、マラコーダはギリギリでそれを回避すると、一気に距離を詰めて今度は俺の腹を貫いた。
「ゴブッ……」
「見事な悪あがきっぷりだ。素直に褒めておくよ。それじゃあ……勝者の特権として、敗者を好きにさせてもらおうか♪」
「……俺を、殺すのか?」
「冗談でも止めてくれよ。縁起でもない。最終確認は文句無しに合格だ。ただ、今は思い切り吸血させてもらって、傷を直したら二人でゆったり逢瀬を味わいたいだけさ。イッセーももみたいでしょ? 私のおっぱい♥」
「そりゃあ、勿論。けどな……おっぱいってのは、自分の意志で揉んでこそ感慨深いんだ。揉まされるもんじゃ……いや、それはそれで嬉しいけど……とにかく自分で揉むもんだ!!」
「こだわるねえ、流石の性欲だ。けど残念ながら勝ったのは私で、その私が揉ませて、君のお初を頂きたいんだ。従うしか無いんじゃないか? ここじゃ邪魔が入るから、そろそろ場所を移したいけれどね。そういうわけで……そろそろ血を貰おうか」
エロい舌使いで唇を舐めた後、吸血鬼の牙を伸ばし俺の首へ噛み付こうとする。
「――いいや、勝ったのは……俺の方だ」
――ズンッ!
……が、俺の首筋をマラコーダが貫くよりも速く、龍一文字が、マラコーダと俺を纏めて貫いた。
刀を両手で握る木遁分身に、目を見開くマラコーダ。
「ど……どうして分身が?」
「最初の木分身が、二体だけなんて誰が言った?」
そう。最初の時点で、俺は木遁分身を三体創りだして、内一体を気配を殺させて、ずっと地下で温存させていたんだ。
「こいつと違って、あの二体は最初の時点で多めにチャクラを分配してあったんだ。お前がチャクラで出来た分身を感知できるかどうかの確認と、比較的チャクラが少ない分身を気づかせない為の撹乱としてな」
そして……影分身が消える時、その情報はチャクラを通じて他の分身にも伝わる。あの影分身は、地下から木分身を出てこさせるための合図でもあったんだよ。
右手をマラコーダの背中へ回し、左手で俺達を貫く刀身を掴む! マスクを展開して首筋に牙を突き立てながら、剣と両方から血と力を俺に吸収する!!
「ッッッッ!!!! ンァアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーッッ!!!」
何をエロい声出してんだ!! いや、気にかけてる暇ないんだけどさ!?
残された全ての力を吸われ、口の端から涎を垂らしながら、マラコーダは笑う。
「……あの必殺技が奥の手って……言ったくせに」
「分身は奥の手じゃない。切り札だ。それに……あの二つの技は、お前だから使えたんだ。俺が最初の眷属として選んだお前が、あの程度で死ぬわけないだろ?」
なにか言いたげなマラコーダを前に、左腕に木分身ごと龍一文字を吸収しながら、最後の力を篭めて構えを取る。
「イッセー……殺したいほど愛してる」
「――ああ、俺も愛してるぜ。マラコーダ」
そのやりとりで、マラコーダは輝くような……今までで、一番綺麗な笑顔を魅せてくれた。
「五十蓮! 覇皇連衝拳!!!」
ドドドドドォォォォォンッ!!
重なる衝撃がマラコーダの全身に響き、地面へと叩きつけてなお、その身を深く大地へ沈める。
衝撃が止んで近づいてみると、確かにマラコーダは一切の意識を失っていた。
微かな呼吸と脈拍の音に安心したのは、こっそり秘密で。
ボロボロのマラコーダを錬成したバスタオルで包み、お姫様抱っこの姿勢で静かに飛行し、皆の所へ帰還する。そっとマラコーダを下ろして、鎧を解除し……後ろへ大の字で寝っ転がる!!
ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!
バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!
ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!
ああああああっ、もう!! 自分の腹の音が煩く思えるだなんて、何年ぶりだ! 疲れた、超疲れた、果てしなく疲れた!!
「あーーーーーーーーッ、もーーーーーーーーーーーーーッッ!!!! 腹減ったぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
「うるさい」
ドゴォ!!
USCが繰り出した、我ながら頑張ったと思う愛弟子への頭部踏みつけによる制裁と、合わせてご褒美と思われるパンチラを堪能しながら、俺は意識を眠りにつけた。
ちなみに、イッセーの禁手状態の基礎能力は、原作現時点の真紅の赫龍帝より若干下です。格闘能力を含めた接近戦ならこちらが上と考えていますが。
ただし、問答無用、ルール無用の殺し合いだと、魔王クラスまで跳ね上がります。
原因は威力、規模共に規格外の『必殺技』が多すぎる為。
格上相手の戦いが多かったため、それに慣れすぎてしまった形です。殴り合いならかなり生かすも殺すも自在ですが。