ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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Life.69 夏です! 水着です! ピンチです!

「イッセー君。たとえ誰が君を狙っていたとしても、僕が君を守る。僕を助けてくれた君を守れなくて、グレモリー眷属の騎士(ナイト)は名乗れないから。今は妙手の端に掛かる程度の僕だけれど、いつか必ず君に比肩する程の領域へ到達する事を誓うよ。……こんな暑苦しいことをいうキャラじゃなかったのに、君の熱血にあてられたのかな。ふふ、不思議と胸の辺りが熱いよ」

「……キモいから、そういう事は女に言えよ。それとなぜそんな話を更衣室(ここ)でするんだお前は」

 

 シャツの前を開けさせ、均整のとれたイケメンな細マッチョの筋肉を見せつける新弟子に、トランクス型の水着を履いて上半身を裸にした俺は素直に告げた。

 

「そ、そんな……ただこういう話って、二人きりじゃないと言いづらいだけだってば」

「お前って、地味にズレてるよな……」

 

 ここは駒王学園のプールの男子更衣室。今、俺達はプール開きの為の掃除を終えて、今まさに一泳ぎしようという直前だった。更衣室に入って服を脱ぎ出すなり、木場はいきなりこんなことを言い出したのだった。

 

 ていうか、こいつ本当にそっちに興味あったりしないよな……向こうのやつは結構どっちもいけるのが多かったし、木場も割りと素質があったりするんだろうか……無いと願いたい。別に同性愛や両性愛を否定するつもりはないし、幾らでも見てきたものではあるけど、自分がそこに加わるのはノーサンキューだ。俺はただのスケベで十分だ。

 

「そういえば俺も聞いておきたいんだけど、お前の師匠って、本当にお前が他の師匠に武術を習うことを許してるのか?」

「うん。お師匠様は他の技術を学ぶ機会があれば積極的にって言ってくれてるよ。増して世界最強の達人に弟子入りしたんだから、きっと今頃笑ってると思うよ」

 

 大らかだなぁ、俺の師匠たちも新しい師が来る度に笑ってはいたけれど……主に俺へ課す修行(じごく)の中身の強化について。

 

「そうか。その内会ってみたいな」

「是非そうして。きっと喜んでくれるよ」

 

 それはいいけど、その親に彼氏を紹介する女子の様な態度は止めろ。

 

 ドバァァァ!!

 

 これ以上のやりとりは本気で薔薇臭くなりそうなので、さっさと更衣室を出ると、既に朱乃さんが魔力によってプールに水を張っていた。アレ、最初は俺が水遁を使おうとしたんだけど、口から吹き出す点を小猫ちゃんに指摘されて「……キモいから止めてください」と却下された。まあ、気持ちは分からないでもないけどさ。

 

「イッセー……私の水着、どうかしら?」

 

 さっと俺の視界に入るなり、部長がそう言ってくるりと一回転しながら白が眩しいビキニと、それによって栄える肢体を見せつけた。

 

「最高っす! これ以上無く!!」

「あらあら、部長ったら張り切ってますわね。余程イッセー君に見せたかったんですのね? うふふふふ……」

「んっ、そういう朱乃こそ、どうなの?」

「うふふ……さあ、どうかしら?」

 

 ぬおおお……朱乃さんの水着も、青と赤の兼ね合いによってより一層エッチな体つきを強調させて……身体運用を極めてなけりゃ、前屈みになってるところだぜ!!

 

「イッセーさん。わ、私も着替えてきました」

 

 おお! アーシアは学校指定のスク水か。いいねいいね、なんだか凄い萌えパワーを感じるよ。特に胸の文字がひらがなで「あーしあ」なのがグッと来るよ。

 

「小猫ちゃんもスク水か……マスコットって感じで愛くるしさ全開だな!」

「……卑猥な目で見られないのも、それはそれで複雑です」

 

 ん? それって一体どういう意味かな。問う間もなく歩き出した小猫ちゃんは一旦置いといて、ここでようやく、約一人足りないことを思い出した。

 

「そういや、ゼノヴィアは?」

「水着を着るのに、手間取っているらしくて……」

 

 あ~、あいつ脳筋だしな。多分、水着という概念そのものが脳に存在していなかったであろう生粋の戦士じゃあしょうがないか。

 

「それで、イッセー。貴方に頼みたいことがあるのだけれど」

 

 

 

 

 

「はい、一、ニ、一、二……そうそう、その調子」

「頑張って、小猫ちゃん!」

 

 泳げないという小猫ちゃんの指導のため、俺は今アーシアの声援を受ける小猫ちゃんの手を引いてプールを歩いている。ちなみにアーシアも泳げないので、次はアーシアの番だ。

 

「ぷは。……意外です。問答無用で重りつけて沈められることも覚悟したのに」

「いや、泳げないやつにそれはガチで死ぬから」

 

 確かに俺も、強制されるがままに泳いで太平洋から大西洋を渡ったこともあるけれど、プールで泳ぐだけでいきなりそんな段階を教えたりはしない。

 

 まあそのうち……ノンストップで二百海里くらいはやらせてみてもいいかもな。後ろから調整した大鮫弾の術で追いやれば、割りと緊迫感も保てるだろうし……いや、数の千食鮫も捨てがたいか? ……なら、両方ぶっ放すか!

 

「……あの、いま凄いゾクッとしたんですけど、何を考えたんですか?」

「ん? いや別に?」

「……最近、やらしい顔より優しい顔の先輩の方が怖くなってきました」

 

 大丈夫、俺も弟子入りして少ししたらそうだったから。特にフラワーマスター。

 

「……先輩、付きあわせてしまってごめんなさい」

 

 小猫ちゃんが申し訳なさそうに言ってくると、俺は軽く笑ってみせた。

 

「いやいや、これも師の務めって事でいいさ。っと、端についたよっ!?」

 

 勢いを止めた俺に、小猫ちゃんがそのまま突っ込んできて、思わず抱きとめる形になった。いつもの癖で殴りかかってくるかと思ったが、小猫は底に足をつけて、そのまま止まってしまう。

 

「……イッセー先輩は、変に優しすぎますよね。……ドスケベなのに」

 

 褒められてるのか? それと、顔が赤いのは単に男に触れるのに慣れてないだけだよね、小猫ちゃん。

 

「俺だって、後輩になにかしてあげたいしさ。小猫ちゃんには色々と迷惑もかけてるしね」

 

 水泳帽越しに頭を撫でてみると、小猫ちゃんはくすぐったそうに眼を閉じた。自分で言うのも何だけど、頭を撫でるのは変に得意なんだ。なんか妙に相手が喜ぶ。

 

 ザバン!

 

 水音に目を向けると、そこには他のコースにてクロールで競争する二大おねえさまの姿が!

 

 ギィィィン!!

 

 反射的に万華鏡写輪眼を発動させると急いで水中に潜り、泳ぐ二人の姿を細部まで捉える。

 

 くっ! 先日は本当に色々と有り過ぎたけれど、今この瞬間を迎えられた事でその全てが報われた気持ちだ!

 

 水の抵抗を受けて地上とはまったく異なる跳ね方を見せる二人の乳房! 躍動感あふれるおみ足! 尻に食い込む水着! 何もかもが素晴らしい!!

 

 写輪眼って素敵だ! これこそこの双眼が俺に授けられた最大の理由だと思う!!

 

 脳内保存、完了! よし、今夜は久々に二桁の世界へ……。

 

 グイ!

 

 腕を掴まれて引き上げられたと思ったら、いつの間にかプールサイドに上がっていた小猫ちゃんは俺の二の腕を掴む手に力を込めつつ、不機嫌な様子でぼやく。

 

「……次は、アーシア先輩の方をみるんでしょう?

「あぅぅぅ……」

 

 涙目で唸るアーシアだったが、いざ手を握った途端満面の笑みでバタ足を開始したのだった。

 

 ちなみに木場はひたすら泳ぎ続けていた。……あいつ、一部を除いては本当にストイックだな。

 

 

 

 

 

「うぅん……にしても、冗談じゃないわ。 堕天使の総督が私の縄張りに侵入した挙句、営業妨害していただなんて! あふっ」

 

 ジュズルルルルルル。

 

「けどまあ、現状で俺に何かするってのは無いと思いますよ。そんな事になりゃ、今度という今度こそそこかしこの連中がこれ幸いと堕天使を滅ぼしにかかりかねませんから」

 

 憤慨する部長へ、アフロディーテの血液パックを直接口に咥えて飲みながらフォローを入れるけど、現実として俺に纏わる三大勢力の事情は、相当ヤバいらしい。

 

 俺を人間から転生させてしまった悪魔。

 護衛についていた師匠(グル)を騙されていたとはいえ足止めしてしまった天使。

 極めつけに俺を弄んだ上で殺した堕天使。

 

 聖書の三勢力は元々他の神話からは評判が悪く、蛇蝎の如く嫌っている神様も結構いる。そこへ、あちこちの神話と色々あったこの俺絡みのトラブルだ。

 

 この問題は煽ろうと思えば何処までも拡大できる危険性を孕んでいる。最悪、これが切っ掛けで世界規模の神話大戦が勃発しても何の不思議もないというのが頭の痛い所だ。

 

 挙句、俺はその渦中にいる。今度この街で行われるトップ会談に際して、俺達はコカビエルの一件に関する報告を命じられているが、俺に限定して言えば、その場で三大勢力にそれ相応の要求をしろ、と神さんから言われている。

 

『この場合重要なのはお前の満足度よりも、他から見て『狼藉に相当する対価』かどうかだ。特に堕天使は女神共が未だに激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームと言って過言ではない位の怒り様だからな。面子を丸潰れにしてやるくらいが逆にちょうどいいかもしれないぞ』

 

 激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームとはまた穏やかじゃない。それはヤバいよ、マジで。

 

 女神といえばついこないだあっちこっちから揃いも揃って大量の血液パックを送ってきたけど、あれは非常にありがたかった。

 

 常人の血液も試しで飲んでは見たけれど、やっぱり神の血は格別濃厚だった。まあ、個人差からくる独特な味わいの違いってのは比べがたいものだから、優劣まではつけないけれど。

 

 しっかし、あの性悪ビッチの腐れ女、美の女神だけあって上品な味してるなぁ。本当に本当に身体だけは最高なんだ。

 

 本当に本当に身体だけは最高なんだ。大事なことなので二回言いました。

 

 ジュズルルルルル。

 

「プッ……けど、大丈夫ですよ。何が来ようと、俺が皆を守ります!」

 

 血を全て飲み干した輸血パックを口元に出したワームホールへ放りながらの宣言に、部長が顔を赤くして微笑んだ。

 

「あっ。そう、本当に頼もしいわ、イッセー。う、けど忘れないで。いくら貴方が強くても、私達も、貴方を守りたいのだということを……アン」

 

 艶かしい部長の微かな喘ぎ声に、柔肌に触れる手の精密な動きを維持するのに凄まじい精神力を働かせる。

 

 くぁぁぁ……オイル塗りは慣れてるけど、そこから生まれる激しい感動は何時になっても新鮮そのものだ!!

 

 スベスベの肌に塗りこまれたオイルによる、ぬらりとした光沢が眼に入る度に俺の中の獣性を引きずり出そうと誘惑の手を伸ばす。つぅか興奮のあまり万華鏡がまた発動した。どうやら俺自身の精神が何らかの形で一定のレベルを超えると、抑えない限りは勝手に出てくるらしい。って、そんな考察は今は置いといて!

 

 肌もそうだけど、地に伏せられ悩ましく変形した横乳も俺を誘惑して……おおおおぉぉぉぉぉぉぉっ、何故俺は耐えられているんだ!? 自分の精神力が改めて信じらんねえよ!

 

「ふぅ……ねえ、イッセー……胸にもオイル、塗りたいでしょ?」

 

 胸にもオイル!? そんな美しい日本語があったのか!!!

 

「よければ後で念入りに塗ってくれない? イッセーは女性のおっぱいが大好きだものね」

「はい、大好きです! 命をいくつ捧げても惜しくない程!!」

 

 実際どんだけ死ねば死ぬのか自分でも分からないですけど! こないだのマラコーダ戦も常人なら五桁は逝ってたし!

 

 だが例え、無限の限りまで殺されようが滅ぼされようが果ててたまるものか! この世におっぱいある限り!!! 俺は絶対不滅だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

 しかし、この部長の積極性、やっぱりこの間、皆の事を知ったからなのか? くそ、傍から見れば俺ってうわさ通りの本当に最低な屑じゃねえか! ……そうはならないことを心がけなければ。

 

「あらあら、部長だけずるいですわ」

 

 むにゅぅぅ。

 

 ――。や、柔らかいボリュームと、小さな固い感触。でもって、肩から顔を出す朱乃さん。これはまさか……直ぁぁぁぁぁ!?

 

 更に身体に手を回し、心音が響くほど強く乳房を押し付けてくる副部長様は、顔をほんのり赤くしていつもどおりの笑顔を浮かべている。

 

「ちょ、ちょっと朱乃! まだ私のオイル塗りは終わってないのよ?」

「ぶ、部長! 見えてます、上が全部!」

 

 部長が身を翻して上半身を起こしたことで、アニメならモヤが掛かるであろうお胸様の全貌が万華鏡の眼にぃぃぃぃぃぃぃぃ!! 本能的に脳内保存だ!!

 

「うふふ……イッセー君。部長のお乳は吸えましたか?」

「い、いやまだ……」

 

 この間の事件で冥界に降りる時、吸わせてくださいって頼んだけれど……明とライリにボコられて有耶無耶にされちまったし! いや、空気読まなかったのは事実だけどさ! 何か声かけなきゃって思ったら咄嗟にアレが出ちまったんだよ!!

 

「それは可哀想に……でしたら、私が代わりに吸わせてあ・げ・ま・す・わ」

 

 ……。

 

 ……え、マジですか?

 

 かみっ。

 

 うお! 呆けた一瞬の隙を突かれて耳を甘咬みされた! しかもしゃぶるように舌でチロチロと舐めてくるし……たまんねぇぇぇぇぇぇぇ!

 

 ボン!

 

 後方での破砕音によって、ピンク色の脳みそが一気に正常稼働する。飛び込み台を消し飛ばしてなお収まらぬ部長は、右手に赤黒い破滅の魔力を滾らせて朱乃さんへ燃え上がるような視線を向けている。

 

「朱乃、あなた最近調子に乗り過ぎじゃないかしら? 誰の下僕ということを忘れていない?」

「あらあら……そっちがその気なら、私も退かないわよ、リアス」

 

 対する朱乃さんも、雷を球状にしつつ冷たい殺気を放って……二人の魔力がぶつかる寸前、俺は素早くその場を飛び退いた。

 

「イッセーはあげないわ。――卑しい雷の巫女さん?」

「可愛がるくらいいいじゃないの。――紅髪の処女姫さま?」

「あなただって処女でしょうが!」

「あら、そんな事を言うのなら、今すぐイッセー君に処女を貰ってもらうわ」

「ダメよ! イッセーは私の処女がほしいって言ってくれたんだもの!! 大体あなた、男が嫌いだったはずでしょ!?」

「あら、そういうリアスも男なんて興味ない、全部一緒に見えるなんて言ってましたわ!」

「イッセーは違うの! 強くて弱くて、優しくて厳しくてカッコよくてカッコ悪くて恐くて……可愛いのよ!!!」

「私だって……おんなじですわ!! やっとそう思える異性に出会えたんですもの! ちょっとぐらいイッセーくんに侍ってもいいでしょう!? この我儘女!!」

「何ですって!? 言ったわねサド女!!」

 

 宙を飛び、破滅と雷の魔力をぶつけあう二人を俺は止めるべきなのかもしれない。だがしかし……主と下僕、弟子と師匠。たとえどんな関係だろうが、古今東西絶対的な不文律というものは存在する。

 

 これもその一つ――女の戦いに男は関わらない。

 

 故にここは……戦略的撤退!!

 

 

 

 

 

 用具室の前に腰を下ろしつつ、盛大に溜息をつく。

 

「ふぅ……相変わらず、我が身の未熟さを痛感するぜ」

 

 ああいう事態は陥る前に収めてしまうのが一番なんだけど、どうにも部長たち相手だとうまくいかない。そういや、俺が相手してたのって大体俺より遥かに年上の女神や妖怪、魔女ばっかりだったもんな……その為に荒事に発展する間際に独特の空白が出来るというか、付け入る間があるんだけど、部長たちはどうしても若い分、血の気が多いんだろうか。

 

 いや、長生きしてても瞬間沸騰かってくらい気の短いのはいくらでもいるんだけどね。そういうのはもう言って聞かなきゃこっそり力づくで止めるか甘い殺し文句で宥めるしかない。

 

 ……あれ? それって普通にタラシじゃね? いやいや、でも誑し込むってのはだます際に用いる言葉で、俺は一応相手はそれなりに真剣に見ているわけで……あれぇ?

 

「ヤバい……俺って本当に最低かもしれない」

「そんな事はないと思うが、時折見せる恐ろしい一面は絶望の一言だな」

 

 ふと、自然に漏れでた心中の苦悩に打たれた相槌に横を見れば、立っていたのは中々に刺激的なビキニを身につけたゼノヴィアだった。

 

「お前、今までずっと着替えてたのか?」

「こういうのは慣れなくて、ずいぶん手間取ってしまったんだ。似合うか?」

 

 ……ほぼ紐で出来たビキニは、ゼノヴィアの健康的な色気を引き立てて余りある。更に緑の配色が青髪を更に映えさせて、かなり眼を惹かれること請け合いだ。

 

「ああ、似合うよ。それより水着も初めてって、そんなに教会って厳しかったのか?」

 

 俺の知ってる教会の人間が……デュリオを筆頭にアレだもんな。むしろ即襲ってこない分、あのバカがマシな部類に入るというのが頭が痛い所だ。

 

「まあ、こういうものに私自身、興味がなかったというのもあるんだが。それより、似合うというのは本当か? いわゆるリップサービスというやつじゃないのか?」

 

 なんでそこを追求してくるかなぁ。つくづく俺に関わる女子は変わってるのが多いと思い知る。

 

「勿論。可愛いゼノヴィアがもっと可愛く見えるんだから、間違いない」

「――。成る程、確かにある意味最低かもしれないな」

 

 ……おい、なんで顔を赤くして近づいてくるんだ。あと、雰囲気が急に引き締まった気がするんだけど、どうしましたか脳筋娘。

 

「イッセー、折り入って頼みがあるんだ」

「ああ、なんだ? 俺に出来ることなら可能な限りで叶えてやらない事もねえよ」

「それはありがたい。この頼みはイッセー以外では不可能……というより、私が嫌だからな」

「嫌?」

 

 俺も嫌な予感と良い予感が混じりあったという慣れた感覚が襲ってくるんだけど。

 

「イッセー、私と、子作りをしよう」

 

 ……………………。

 

 バタン。カチャ。

 

 思わず後ろの用具室へ飛び込み、鍵を掛けてしまった。

 

 ガチャ。バタン。

 

 にも関わらずゼノヴィアが悠々と鍵を開けて入ってきた! 今のスムーズさ、お前鍵開け慣れすぎだろ!? 学校の鍵なんて所詮その程度だけどさ!

 

 抜け目なく扉を閉めたゼノヴィアは、俺にしなだれかかると、ゆっくりと話し始めた。

 

「私は子供の頃から、神や宗教へ奉仕し、身を捧げる事こそが夢であり、生きがいだった。それが神の死を知り、教会からは異端として追放された今、私は生きる目的とでも言うものをすべて失った」

 

 ……ゼノヴィアの眷属入りの時は、本当に驚かされた。孤児たちを守る為に闘うデュリオの様に、ゼノヴィアにとっての神や宗教というのは何を持っても守るべきものだと感じていたからだ。

 

 いや、むしろだからこそ、神の不在、及びそれを知ったことによる教会からの排除を受けたゼノヴィアは、それを甘んじて受け止めたんだろう。

 

 生まれた時からの道標であり拠り所を失ったゼノヴィアが、何を思ってグレモリー眷属に駆け込んだのかはわからない。だけど、その事を後悔していないというのは……俺の五感から入る情報からも明らかだった。

 

「何をしたらいいのかもわからないので、部長に訊ねてみたら……」

 

 ――悪魔は欲を持ち、欲を叶え、欲を与え、欲を望む者。好きに生きてみなさい。

 

「それで私は、女らしい新たな夢、目標を持とうと思い立ち、子供を産もうと考えた」

「いやいやいや、話はわかったけどなんで俺なんだよ!?」

「子供を生むのなら、出来るだけ強い子であってほしいと思うんだ。世界最強の武術家であり、生物であり、ドラゴンである男。今の私では到底理解しきれない次元にいる君だぞ? こうして二人きりになれたのも、主のお導き――」

 

 思わず祈りを捧げてダメージを受けるも、素早く持ち直したゼノヴィア。うん、日々ボコられて身体だけでなく心も強靭に鍛えられているようで何よりだ。……って、師匠方向へ逃げるな俺ぇぇぇぇぇ!

 

 氾濫する性欲と理性の争いを繰り広げる間に、ゼノヴィアは水着の上をはらりと落として……綺麗なピンク色の乳頭を押し付ける勢いで俺に抱きついてきた!!

 

「やはり、私では不服か? 部長とアーシア、それに明さんやライリさんのような、特級の女性よりは劣るだろうが、私だって一応の自信はあるんだぞ? ……駄目、なのか?」

 

 あああああああああ、もう! ここまで積極的に動くくせに涙声出すんじゃねえよ! 逃げづらいだろうが聖剣馬鹿娘!!

 

「いや、当然的にそんな事は無いんだけど、俺としてはここで獣性に身を任せるのもやぶさかではないんだけど後のあれこれが心配というかその……」

「それは大丈夫だ。基本子供は私が育てる。ただ、子が父親の愛情を欲しがったのなら遊んでもらえないだろうか。やっぱり両親からの愛情は必要だからな。悪魔は子供が出来にくいと聞くが、イッセーの性欲なら五年以内には達成できると思うんだ」

 

 そこまで考え巡らせられんならもっと悩めよ! 直接的にも程が有るっつーか、なんか最初にあった時より馬鹿っぽくないかお前!?

 

「私は経験が無い。だから、性知識の豊富そうなイッセーに全てを任せよう。抱いてくれ。子作りさえ成し遂げられれば好きにしてくれて構わない」

 

 こいつ、絶対正確な意味わかってない! 大まかな流れだけ把握してじゃあやろうって息巻いてるだけだ! 流されるのは大いに問題なんだけど、けど男としていい加減据え膳喰わぬはってやつで、それに下手に置いてけぼりにしたらなんだか割りとゼノヴィアがダメージ受けそうで……とにかくなんとか誤魔化して――。

 

「……イッセー、これはどういうことかしら?」

「あらあら、ずるいわ、ゼノヴィアちゃん。イッセー君の貞操は私が貰う予定ですのに……」

「イッセーさん酷いです! わ、私だって言ってくれたら……」

「……油断も隙もありません」

 

 うわああああああああ、お約束の展開かよおおおおおおお!!! なんだってこんな状況に俺は陥りやすいんだ!?

 

「? どうした、イッセー? 早く子供を作ろう」

「頼むから空気を読めぇぇぇぇぇ!!」

 

 その後の混乱は……飛ばさしてください、お願いします。

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