ドクン! ドクン!! ドクン! ドクン!!
……全くもって、下らない。因縁なんざ知った事か。
例え何が切っ掛けであろうとも、俺の戦いは俺のものだ。なあ、そうだろうが、
『……お前に散々付き合ってきた身としては頷くしか無いな。好きにしろ、
疼きが治まると、奴もそれがわかったのか、不敵な笑みを一瞬崩して驚愕に目を見開くと、今度はより深い笑みを浮かべた。楽しくってたまらないって面だなぁ、この野郎。
一触即発とまではいかないが、ともすれば、ワンテンポを置いて殺し合いになってもおかしくない。そんな張り詰めた空気をかいくぐって、木場とゼノヴィアがそれぞれの剣を手にヴァーリへ向かおうとするのを、気当たりで制した。
ゴッ!
ザ。
剣を構えた二人の
「白龍皇。何のつもりかは知らんが、冗談にも程を弁えろ。事を起こして最も困るのは、お前たち
鮮やかな金糸の如き長髪を備えた美貌の神、フレイは微かに輝く程度に光量を抑えた勝利の剣をヴァーリの首もとへ突きつけ……。
「イッセーちゃんは俺らの方でも大人気なんでね。ここで赤白対決とかやらせるわけ無いでしょ、JK」
反対側からハルパーを翳すヘルメスは、茶髪を揺らしながら戯けたように首を傾げた。
静かに威圧する神々に、ヴァーリは少しも動じず――。
「見張りがいることは知っていたが……フレイにヘルメスとは、また大物が付いたものだ」
「生憎、他にも他所の連中は何人かいるぞ。彼は我々にとっても重要人物でな。万が一にもこんなところで傷付けさせるわけにはいかんのだよ」
フレイの言を肯定するように、周囲から幾つもの猛々しいオーラが立ち上り、ヴァーリへ無言の警告を促す。
「そういう事。つーわけでここは退いてよ白いの君。俺らも面倒はゴメンだからさ」
スッ。
一歩後ずさるヴァーリに対し、一斉に威圧感が収まっていく。フレイとヘルメスも武器を収めて俺の前に立つと、ヴァーリは挑戦的な眼差しで俺を貫いた。
「兵藤一誠。君は、今の自分が世界で何番目に強いと思う?」
突然の問いかけに、俺は素直な考えを吐き出した。
「適当に言って……鎧を身につけた状態で、ざっと二百前後くらいだとは思ってる。影響とか被害とか一切考えなけりゃ、例外以外は倒せるとは思ってるけどな」
例外とは……無限のオーフィスと夢幻のグレートレッド。そして破壊神シヴァ。
これらの存在は、他と比べることが不可能な強さから厳密に強さを比べるのならば意味を成さない。故に例外。かつて、
血の気の多い返答に、ヴァーリは気を良くしたように含み笑いをする。
「……兵藤一誠は、余りに希少過ぎる存在だ。主といえど、捨てられない様注意した方がいい、リアス・グレモリー」
警戒態勢の朱乃さんと小猫ちゃんと一緒に俺の背後まで来ていた部長は、背中越しにピリピリするほどの不機嫌さだった。
「白龍皇、何のつもりかしら? 貴方が堕天使とつながりを持っているのなら、必要以上の接触は――」
「――二天龍と称されたドラゴン。
「煩え」
ゴッッッッ!!!!
大気が一瞬で燃え上がるような殺気の大爆発に、場の空気が一変する。大量の冷や汗をかいて緊張する部長たちや息を飲む神々、頬から一筋の汗を流すヴァーリ。その全員が落ち着くのを待ってから、深々とため息を吐いた。
「二天龍に関わったのが、過去にろくな生き方をしていないだと? お前がどうだか知らないが、こちとら生憎、呑気に女に囲まれて幸せに生きるっつー大目的があるんだよ。過去なんぞでそれを否定されてたまるかって。それに今、ここに生きているのは俺とお前だ。……喧嘩売るんならテメエで売れよ。過去だの因縁だのに理由付けを求めるんじゃねえ」
睨みつける万華鏡写輪眼を負けじと見返すヴァーリは、硬くなった表情をほぐすように再び不敵な笑みを浮かべた。
「……それは失礼した。成る程、これが赤龍拳帝か。あらゆる神が君から目を離せないのも当然だ。ただ、一つ訂正しておくと、今日は戦いに来たわけじゃない。俺もやることが多いんでな。喧嘩はまた今度にさせてもらおう」
そう言ってヴァーリが去った直後、俺は目の前の二人の肩に手を置いた。
ミシ。
肩が若干軋む音に二人が振り向くが、笑顔で額に血管を浮かべる俺に一気に顔色が悪くなる。
「よお、フレイにヘルメス。久しぶりじゃねえか。ここ数日のお努めご苦労さん。気配だけは感じてても必死で感知をさけまくられて、随分気色が悪かったぜ」
「そ、それは失礼した! しかしだな、正面から護衛を申し出ても蹴られるのが目に見えているのでこっそり行けとおっしゃられたのはオーディン様で、私に当たられてもどうしようもない!!」
「お、俺もイッセーに護衛なんかいらないって言ったよ? けれどガイア様もヘラ様も凄い剣幕でさ! 断ったら何されるかわかんなかったんだって!!」
ふぅ。
必死で言い訳をする二人に対して、下を向いて息を吐きつつ両手の力を緩めて、気の抜けた笑顔を見せてやる。
「わかってるって。とりあえず今回は助かったよ。ありがとうな。つーか、純粋に護衛って目的で付いてるのはお前らだけみたいだしな」
他は姿を見せることに逡巡する辺り、まず俺の動向を気にかける様主神にでも仰せつかったんだろう。小声で謝ってくるけれど、別に動こうとしてくれただけで十分なので、気にするなと音弾を放ってやる。
「それは仕方ないだろう。お前の力を考えれば、三大勢力を敵視する者は気が気でないだろうしな」
「まあ、ゼウス様やオーディン様みたいな方が珍しいって事っしょ? 他のお偉いさんもイッセー君のお陰で随分物腰が柔らかくなってるけど、やっぱ三大勢力に関しては受け入れがたいっつーか身構えちまうってのがあるみたいでさ」
それもそれでしょうがない。世界中を渡り歩いても、聖書の神へ恨み事を吐く神の多さは特筆に値する。神々でも人間みたいなしがらみからは逃れ難いものなんだ。
「あ、あの……」
困惑しつつ声を上げるアーシアに、皆が置いてけぼりを喰らっている事を思い出す。
「ああ、ごめんごめん。紹介が先だよな。名前だけは聞いたことあるかも知れないけれど、北欧神話のアースガルズのフレイにギリシャ神話のオリュンポスのヘルメスだ」
「豊穣の神、フレイだ。貴殿らの事は伝え聞いている。以降、見知り置きを」
「伝令の神ヘルメスで~す。皆は割と有名人なんだよ? よろしくね~」
ぺこりと頭を下げるフレイに、両手を振ってにこやかに笑うヘルメス。一応は大物だからか、皆が少し表情が硬くなるが、すぐに深々と頭を下げた。
「ではイッセー。我らは今後もしばらく見守らせてもらう。済まないとは思っているが、どうか容赦願いたい」
「頼むよほんと。このまま帰ったらマジで女神様達怖いんだってば」
「わかったよ。……にしても、少し意外だな。ロキとかアテナとかが来そうだと思ってたのに、けっこう忙しいのか?」
俺の言葉に、二人が苦笑いで顔を見合わせる。……なんか、察しついたな。
「いや、正直……最初はロキ様が行くと申されて、それにフレイヤやイドゥン、ヘル等を筆頭に我も我もと揉めまくってな。誰ひとりとして一歩も引かず、下手をすれば
「こっちもさ……もうガイア様とかヘラ様とかアフロディーテとかアテナとかアルテミスとか、皆殺気立って刃傷沙汰半歩手前よ? ハーデス様も慌ててたくらいだからね?」
……うん、やっぱり俺はもう一人に絞るとか許されないな。世界滅ぶ。
気苦労の多そうな二人に隠れてる連中とも分けるように言って、人数分の特性弁当を渡しつつ、俺達は改めて校門をくぐった。
「イッセー……ゼノヴィアちゃんがオカルト研究部に入ったのは勿論、氷美神ちゃんも誘われたそうじゃないか!!」
「まったく貴様ばかり、いつもいつもいつもいつもいつも……!!
「だからって、なんでいきなり殴りかかってくるかな、お前ら」
教室に入った途端、殴りかかってきた松田と元浜を返り討ちにしたら、今度はこの昼休みまで延々と恨み事を囁くようになりやがった。わかりやすい奴らだぜ。
「いやぁ、スマン。余りにお前の周囲に美少女が集まるため……」
「ただ、この憤りを何かにぶつけたいだけなんだ!!」
「壁でも殴ってろ」
コンクリートを吹っ飛ばせる程度に鍛えてから出直して来い。
「とにかくだ! お前はゼノヴィアちゃんには手を出していないだろうな!?」
元浜の発言に、先日のプールでの騒動が浮かび上がる……。うん、ヤってませんよ?
「当たり前だろ」
「イッセー」
いつの間にか、群がる俺らの前に、さっきまで女子に囲まれていたゼノヴィアが。
やっぱり黙っていればかっこいい系の美少女だからか、ゼノヴィアは男女ともに高い人気を誇る。教室にいるときは、大抵クラスメートの女子が二、三人。下手すりゃ他のクラスの女子も混ざるくらいだ。
「先日は、突然あんなことを言って申し訳なかった」
ゼノヴィアの言に顔を見合わせる悪友二人を余所に、俺はゼノヴィアに耳打ちする。
「ま、まあいいから、その話はまたあとで……」
一体何処で爆弾投下するか、こいつは本気で分からない。だってこいつ脳筋だもの。
「だからこそ――まずはこれを用いて練習しよう」
さっと、手品のようにゼノヴィアの左手から現れたのは……小さな袋に入ったゴム製品。俗にいう、避妊具だった。
アーシアを始めとし、クラス中の奇異の視線がゼノヴィアと、その手の持ち物に集中する。
「バ、バカかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 何をこんな所で取り出してんの!?」」
最悪を想定して、そりゃ俺だってどことなく持ってはいますよ!? でも公衆の面前に晒しちゃ駄目だってば! ほら、皆また俺に注目してんじゃん! 氷美神がいないのが不幸中の幸いだよ! もし居たらまたややっこしいことになる! 冷たい殺気で俺の周囲の空気が凍る!!
「ゼノヴィアさん、どうしたんですか?」
「ん、アーシアも使うといい」
そう言って、寄ってきたアーシアに袋をひとつ手渡した! やめろってば! 本当の本気でお願い止めて!!
「? ありがとうございます」
よくわからない様子で袋を見つめるアーシアの視線は、一切の穢れも無く……なんでだろうか、胸が痛い。
「なになに? また兵藤がやらかした?」
メガネを光らせながら、楽しそうに桐生がアーシアに近づいた。
「桐生さん、これなんですか?」
「ん? ああ、これはね――」
耳元で桐生に品名と使用用途を囁かれたアーシアは……。
「……うぅん」
顔を真赤にして俯いちゃいました! そりゃそうだよ!
「でも、いいのかなー。ゼノヴィアっちを抱いちゃったらアーシアが可愛そ――」
「桐生さぁぁぁぁぁんっ! やめてくださいぃぃぃぃぃぃ!!」
焦るアーシアが桐生の口を塞ぐが、途端に背後のバカ二人が俺の後頭部めがけて拳を振り上げた!
「「このウンコ野郎!!」」
ゴ!
拳が当たる直前、頭を引いて戻し、軽く頭突いてやると、二人は拳を抑えてうずくまった。手加減したので痛い以外は大丈夫だ、安心しろ。
「くそう! 中学時代みたくまたやたら強くなりやがって!!」
「病気でも貰っちまえ!」
「怖いわー、さすが野獣ね。いざって時にアーシアにだけは病気移さないでよ?」
煩え、これも役得だ! 今までの人生で何回死んで殺されたと思ってんだ! ひと通りの地獄も味わったし、これくらいの得がなきゃやってられんわ!
「皆さん、イッセーさんは悪い人じゃありません。いじめないでください」
「うぅぅ……俺の味方はアーシアだけだよ……」
「イッセー、それで、性交の予定だが……」
「だから、そういうのを人前で言うのはよせって……」
「おい、イッセ――」
ゼノヴィアに近寄って、袋を取り上げた瞬間、教室に入ってきた氷美神ちゃん。
視線は刹那にて袋と俺の顔、そして俺の周囲のアーシア、ゼノヴィアへと駆け巡り……ボールペンが俺のいた場所を通過した時、俺は教室の窓から飛び降りた。
「待ちやがれこの永年発情期!!!」
背後からの声と投げつけられる文房具を無視して、俺は学園内の森へと全力疾走した。
人目を離れて数秒間。俺は取り敢えず、
『
「……よし、そろそろ人目もないだろうし、ここで迎え撃って……」
「あら、イッセー」
ぶ、部長!? 朱乃さんに、会長、副会長まで! 普通の生徒がいない場所を探るのに夢中で、逆に四人を無視しちまったのか。まだ神話連中が隠れてるから、つい。
「逃すかイッセェェェェェ!!」
「ラウザルク!」
『
グンッ!!
背後から飛び蹴りを見舞ってきた氷美神の上方をすれ違うように飛び上がり、覇気の足場で止まって後頭部から両腕全体でしっかりと首をホールドした後、思い切り横に回転してGによってブラックアウト状態にし、そのまま一瞬で締め上げ意識を失わせる。これぞ日青流柔術、暗外旋風締め。
「お騒がせしてすいません」
「………………白龍皇に会ったそうですね」
凄いなにか言いたそうだったけど、取り敢えず何も言わないことにしたらしい。流石のご判断です。
「あ、はい。ただ、今回は挨拶に来ただけみたいです」
「挨拶?」
「そう言っていたわ。今のところは堕天使の紐付きのようだったし、他の神々も眼を光らせているこの状況で、無茶はしないはずよ」
「そうですか。それは幸いです……私達には、重大な問題が控えていることですしね。それでは」
「ええ、ごきげんよう」
そう言って去っていく会長の背中を見送ってから、朱乃さんに聞いてみる。
「二人共憂鬱そうですけど……やっぱり、公開授業ですか?」
「ええ、大層ご心配な様子で」
サーゼクスにセラ……どっちもシスコン全開だしな。あれが魔王だってんだから、冥界は平和だよ、本当に。
スッ。
「うふふ……イッセー君。龍の気はまだ溜まっていないようですわね。最近、溜まるのが早いのでいつも気が気でないですわ……」
俺の左手をとって、口元へ寄せると艶めかしく舌をのぞかせる朱乃さん! おおおおおお、相変わらず素敵にエロいお姉さま!!
「え、は、はい! なんか、
皆に修行を施す合間を縫って行う俺自身の修行の目下の課題は、新たに得た音の能力の可能性の模索と、重龍皇の鎧の完全掌握。前者は過去の戦いから目ぼしい技に目をつけて、後者はひたすらに修練あるのみ。オルトを相手にひたすら硬化を繰り返して、能力に慣れていくしか無い。
慣れるといえば、消滅の力もそうなんだけど……あれには少し、触れがたいものがある。
なんというか……ひどく希薄なんだ。
どうあがいても俺を操る事が出来ないと悟った後のアレは、俺の中にいるだけの存在になってしまった。引っ張り出せば力は使えるけど、曲がりなりにも意思のある存在を完全な装備扱いは俺の据わりが悪い。とは言え、感謝の言葉にも発破にも反応を見せず、ただ世捨て人の如く奥底で横たわるだけだ。
ドライグ達にも協力を頼んだが、これといった成果は見られない。呼びかけにも生返事を返すだけマシになったという程度だ。
……あれがどういう経緯で今こうなっているのか、俺に詳細を知るすべはない。けれどこうなっちまったからには放っとけないだろう。とことんまで付き合ってやるさ。
「……んむぅ」
チュプチュピ、ジュル。
うぉぁあ!? 耳を襲う粘着音と生暖かい感触に驚くが、どうやら氷美神が寝ぼけるままに耳を口に含んで甘噛しているようだった。その寝てる間の癖、まだ治ってなかったのかよお前は!?
「あらあら、氷美神ちゃんったら寝ているのに、欲張りですわ。それじゃあ私も……ハム」
ジュルリ。
ぬぁぁぁぁぁぁぁぁ! 朱乃さんまで耳をぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! となれば、当然部長も……。
「くっ、人が悩んでいる間に、貴方達は何をやっているの!? だったら私も……チュッ」
ああああああああああああ! 部長が首筋を吸い上げてキスマークをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
ヤバイヤバイヤバイ!! 最悪、さっき没収した袋の中身の出番が来る! いやいや、耐えるんだってば俺よ!
ああ、でも二点からの絶え間ない唇の動きは容赦なく俺の理性を削りまくってぇぇぇぇぇぇぇぇ――二点?
冷静に探ってみると、最初にくわえ込まれた方の耳が開放されている。
密着する胸から伝わる心音は、むちゃくちゃ早く鼓動を打っている。ついでに、部長と朱乃さんも離れて距離を取り、少し困り顔をしていた。
そっと振り向けば……真っ赤な顔で涙をにじませる、俺の幼馴染の顔がアップで映る。
……えーっと。
「お前ってさ、なんで寝てる時に俺が側にいると俺の体の一部を咥えるわけ?」
「――記憶ごと凍ってしまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!!」
バギィィィィィィィン!!
冷気の爆発によって表面が凍りついた俺は、氷美神の再爆を恐れるあまり、午後の授業を欠席せざるを得なかった。
あー、もう本当に今日も一々疲れることばっかりだった。白龍皇は来るし、氷美神は可愛いけど癇癪起こすし……いや、俺の質問ミスも認めるけどね? けれど、あの恥ずかしがり様、あいつまだオカ研メンバーには慣れてないんだな。
この間、マラコーダと決着をつけた俺が爆睡していつ最中に、氷美神が駒王学園の学生だと知った部長が、オカルト研究部に誘った時も……
『……考えておく』
とだけ答えて逃げるように去っていったらしい。あいつの人見知りは筋金入りだからと説明したけれど、部長はあまり気にしていない様だった。むしろあの気の強そうな氷美神が人見知りだということを可愛らしいと評したくらいだ。
……アーシアを可愛がる様子からもそうだけど、部長ってもしかして、割りとそっちもイケるんだろうか? アフロディーテやフレイヤを筆頭に気に入れば男女問わずってのはかなりいるし、幻想郷に至っては俺の知り合いの大半は女性同士の夫婦で子供まで作ってるくらいだ。
ま、まあ悪魔だし? 両性に手を出すってのもありだとは思うよ? それに部長は俺の事が……
『イッセー……愛してる』
――ああ。リアスは、俺を命がけで愛してくれている。その愛情に、俺は全力で応えよう。
その為に、俺は死んでも死ぬ訳にはいかない。もっともっと強くなる。……ピンク色の未来の為に!!
ガラ。
「あれ、イッセーさん?」
!!!
考え事しながら風呂に入ろうとしたら、そこにはちょうどブラを脱ぎ捨てパンティー一枚になったアーシアがおりましたとさ。めで……たいわけねえだろうが!
「ご、ごめん!!」
「あら、イッセー。アーシアも」
いつかの焼き増しみたいな光景だなと思いつつ部屋に戻ろうとすると、今度は部長と鉢合わせる。自分と同じくタオル片手の俺に目をやると、笑顔でコクンと頷いた。
「……二人待つのも何だし、三人で入りましょうか」
「はい!」
「……へ」
「アーシアの肌は綺麗ね」
「そんな……部長さんのお肌の方が白くてキメも細かいと思います」
「あら、嬉しい事を言ってくれるわね」
アーシアの背中を泡立てて洗う部長という構図で、二人が心底楽しく笑い合う。
いつかのアフロディーテとフレイヤと一緒に風呂に入った時を思い出すが、あの時の刺々しいやりとりったら……俺が二人を軽い指圧とマッサージで黙らせるまで続いてたもんな。
しかし、ギリシャと北欧の美の女神を両手に侍らせながらの風呂は実に甘美かつ有意義なものだったので、いうことは何もない。
ザブン!
アーシアを磨き終わった部長が、浴槽へ入って身を寄せる。そう広くもない浴槽で体を預けてくる部長の肢体に万華鏡が浮かびそうになるが、ここはくつろぎの場なのであえて抑えこむ。
「一度イッセーと、こんな風にお風呂に入りたかったのよね。イッセーはどう? 私とお風呂にはいるのは、嫌?」
「そ、そんなことないです! 最高です!」
偽らざる胸の内に、部長が笑う。
「そう。それを聞けただけでも嬉しいわ。こうやって毎日、イッセーと一緒に入りたいくらい。ねえ、そうしましょうよ? 三日……いいえ、五日に一度でいいから。一週間は無理。私が寂しくて耐えられないもの」
筋肉を確認するように胸板を撫でさすり、おっぱいを押し付けてくる部長! グイグイ来てますね!!
「非常に嬉しいご提案なんですけど、そのペースだと、俺の身がもたないっていうか……」
「あらそう……でも昔、夏休みの間中、明さんやライリさんと一緒にお風呂に入ってた事もあるんでしょう?」
!?!?!?
突然の暴露に万華鏡がつい出てしまうが、瞬時に平静を取り戻す。落ち着け、これも二人に囁かれたんだろう! 時々通信とって色々と、ほんっとうに色々と教えてもらってるって言うし! わざわざ二人共家まで来てそのことと一緒に首筋まで晒してったからね! むき出しの愛が恐ろしくも嬉しい!!
「……襲いたい?」
チャプン。
俺に背中を預ける格好でもたれかかった部長が、答えに詰まる事を聞いてくる。
「アーシアがいなかったら、襲われてたかしら。やっぱり、二人きりの時に……」
ザブン!
大きな水音を立てて飛び込んだアーシアが、俺に全力で抱きついた。恐らく、並みの男なら動けなくなる位の腕力はついてきただろう。素晴らしい進歩だ。
「仲間はずれは嫌です! 私だって一緒にお風呂に入りたいのにぃ!!」
「ちょっとアーシア!? この際だからはっきり言うけれど、イッセーは私の
「私のイッセーさんでもあります!」
眉を吊り上げて口論する二人はお湯から身を乗り出し、顔を突き合わせた。もうさっきまでの仲良く互いを洗いっこしていた二人は、お湯とともに流されたようだ。
「大体貴方、普段からイッセーに甘えているんだから、こういう時くらい譲りなさい!」
「嫌です! 私だって、本当はもっともっと甘えたのを我慢してるんです!!」
激しく火花と湯水を散らす女の戦いに業を煮やし、部長が俺の左腕を取って……自分のおっぱいに当てたぁぁぁぁぁぁ!! 反射的に揉んでしまうと、あふんっ、とかエロい声が出ちゃいますよ!
「どう? アーシアにこんなアグレッシブなことが出来て?」
負けじとアーシアも、俺の右腕を美乳に接触させて、揉みしだいた五指に、ふぅん、とか言わされてます!
「イッセーさん、私と部長さんの……どちらがいいですか? お、大きさは負けますけれど、それ以外は負けません!」
「あら、イッセーは大きな胸が大好きなのよ? 私の胸が大好きだって、いつも言ってくれてるわ。ねえ、イッセー?」
迫り来る二人へ、俺が取った選択肢は……敢えて耐えることを諦めて、湯船の外へ出した顔から鼻血を流すことだった。