ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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 相も変わらずのイッセー無双ですが、お楽しみいただけると嬉しいです。


Life.80 二天龍、激突。

 高まるオーラを叫び声と共に爆発させた赤龍拳帝に、冷や汗が止まらない。堕天使の長として神や魔王と肩を並べ続けた俺がそうなんだから、トップ陣を除いた連中はもっとキツイだろう。無事だった兵隊の中でも、既に半数近くが兵藤一誠の憤怒と気当たりに耐えられず、失神している。最も、身の危険を度外視すればこの場において、一番楽な選択肢ではあるだろう。下手すりゃ恐怖で頭がおかしくなっちまうわ。

 

 ダンテとヴァルブルガ……あの二人の魔女も、兵藤一誠が咆哮した瞬間に転移魔方陣でさっさと逃げ出しやがった。残っているのはヴァーリだけだ。いきなり出てきて一発かました挙句、ビビるなりけつまくって逃げ出すとは馬鹿にするにも程が有るが、その気持ちは俺にも少し分かる。

 

 確かにこれは、状況が許すんなら速攻で逃げ出したくもならぁな。最上級悪魔の軍勢でも殲滅にそこそこ掛かったあのバイオゾイドを、幾ら巨大ロボ任せとはいえ数分足らずで全滅させやがった……そんな男を怒らせたとあっちゃあ、命がいくつあっても足りやしない。だが何よりも恐ろしいのは、あの激しすぎる感情を一旦とは言え抑えこんで見せたところだ。

 

 基本は動のタイプと聞いていたが……あいつ、静の方面も桁違いに極めてやがる。気が狂いそうな程の感情を徹底して制御し、力として扱いこなしている。溜め込み凝縮させるのが素早い上に、解き放つタイミングや、ぶちまけ方がとてつもなく上手いんだ。あれが十七のガキかよ……一体、どんだけひでぇ修行を積めばあんなイカレた芸当ができるんだ。

 

 しかも、これで全盛期には及ばないと来てやがる……心底、あいつの倫理観がまともで良かったと思うぜ。まあ、だからこそ各神話の神々からも見込まれてるんだろうけどな。

 

 それはともかく……親を侮辱されて激怒したとは言え、兵藤一誠もヴァーリの一番触れられたくないところを思い切り抉っちまった。

 

 自慢の父親、誇らしい母親か……自分の考えをそのまま口に出しただけだろうがな、赤龍拳帝。

 

 あいつにとって、それはどんな皮肉よりも見逃せないことだろうよ。

 

 

 

 

 

「全員、トップ陣の作る結界に入ってろ。……こっから俺は、思い切り暴れるからな」

 

 気当たりに耐えられず気絶した連中を全員回収したタイミングで、周囲へそう警告すると、サーゼクス達はこれ以上ないほど強固な結界を張った。……あれなら、結界内を更地にしても問題はないな。

 

「……見ろ、アルビオン。なんて馬鹿げた力の波動だ。殺意も想像を絶する。この俺が震える程、おっかないよ」

神器(セイクリッド・ギア)は単純で強い想いを力の糧とする。兵藤一誠の怒りは純粋過ぎるほどお前に向けられているのさ。真っ直ぐな者。それこそ、ドラゴンの力を引き出せるものの真理。奴はそれを極めた体現者だ』

「そうか。そういう意味では、俺より彼の方がドラゴンと相性がいいわけだ」

 

 ギィン!

 

 お前の考察に付き合う気はない。超神化と仙人モードを発動し、日留来(ヒルコ)を持って練り上げた炎を吐き出す。

 

「火遁・豪火滅却!!」

 

 ゴゴゴゴゴォ!!!!

 

 口から吐き出した火の玉がヴァーリへ襲いかかるが、奴は大量の魔方陣から強烈な魔力の波動を撃って、なんなくそれを相殺させた。

 

 その隙に奴の背後へ転移した俺は、龍一文字を弓へと変形させて左手の宝玉から取り出し、篭手に収納されたアスカロンの龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の属性と聖なるオーラを凝縮させた矢を右手に作り出す。

 

 超抗力オルトニウムと俺の血液を触媒とし、あらゆる呪法や術式を用いた鍛錬によって、アスカロンに施した改良点は主に三つ。赤龍拳帝たる俺のオーラをも纏った単純な出力上昇と、俺の許可さえあれば誰でもある程度は扱えるという使い勝手の向上。そして、オーラや特性を簡単に他へ譲渡できるというものだ。

 

 結果として、今のこいつはエクスカリバー、デュランダル、天叢雲にも比肩できる最高峰の聖剣とも言える自信作に仕上がった。その記念すべき最初の相手、立派に務め上げてみせろ魔王の曾孫!

 

 腹の底で煮えたぎる憤怒を滾らせながら全力で弓を引き絞り、矢を撃ち放つ。

 

「!?」

 

 寸前で気づいたヴァーリが肩の一部を掠らせながらも回避するが、すかさず次々と矢を作り出しては目にも留まらぬ矢継ぎ早で連射する。校舎が多少粉砕されるが、この際気にしてられない。

 

「クッ!」

 

 ヴァーリも負けじと巨大な魔力弾を無数に放つが、一撃一撃の密度も速度も貫通力もこちらの方が上。あっという間に向こうの攻撃を穴だらけにして霧散させ、俺の矢はヴァーリへ迫る。

 

 流石のスピードで回避されるが、その間にも俺は、現在での最大最速で吸収を行う。

 

『LordLordLordLordLordLordLordLordLordLordLordLordLordLord!』

「ヌゥ!?」

「白龍皇の神器の事は、ドライグに聞いて知っている。基本となる能力は相手の力の半減と奪取。そして光の翼による高速飛行。その禁手(バランス・ブレイク)である白龍皇(ディバイン・ディバイディング・)の鎧(スケイルメイル)は物体や空間すら半減させるという。だが、半減させるにはお前が相手に直接触れる必要がある。ならこうして、触れずに終わらせればいい」

 

 バババババババババババ!!

 

 攻撃の手を止めて速度を増すヴァーリに対して、俺は五感をフルに使って奴の移動する軌道を読みながら、その先へと矢を放ち、一定の距離を保ち続ける。

 

 さて、そろそろ硬化は十分だ。行くか!

 

 ヴァーリの動きを封じるように連射を放った後、錬金術と魔術の複合でアスカロンの偽物を作り出し、その力を破裂せんばかりの臨界状態にまで高めて弓へと番え、目の前に開かれたワームホールへ撃ち込む。

 

 一瞬動きが硬直したヴァーリの前方にワームホールを出すも、奴は強引に急上昇してそこから逃れる。

 

 ――その背後に出口となるワームホールを作り、アスカロンが命中した瞬間、俺はその魔術の名称をつぶやいた。

 

壊れた幻想(ブロウクン・ファンタズム)!」

 

 ドォォォォォォォォン!

 

 眩い光を伴う爆発が空中にて巻き起こり、その中で旧ルシファーの末裔は鎧を粉々に吹き飛ばされて、防御の姿勢をとっていた。やがて煙が晴れて俺以外の皆にも見えるようになったヴァーリの姿は、龍殺しの属性と聖なる気、そして赤龍帝のオーラの爆発を間近で食らい、白い装甲の大半を剥がされた無残な有り様だった。

 

 ゴボッ!

 

 口から血の塊を吐き出したヴァーリへ、俺は未だ止めどなく溢れる怒りを抑えながら言ってやる。

 

「流石にまだ余裕があるな。旧ルシファーの末裔って触れ込みも伊達じゃないか……現時点では、お前の地力は俺より遥かに上だ。身体能力、魔力、魔法力、センス、ほとんどお前が優っている。確かに俺とお前には、素養に天地の開きがありすぎた。認めてやるよ、ヴァーリ・ルシファー。お前は強い。そして……だから俺が勝つ」

「何が言いたい、兵藤一誠」

 

 プライドに触れたのか、鎧を修復しながらも余裕の笑みを消して顔を顰めるヴァーリ。俺はため息をついて続ける。

 

「俺がお前を上回っているのは、とことん鍛え上げた武術の技量と武具の扱い、そして経験――特に強敵相手のそれだ。全てに恵まれすぎたお前にとって、苦戦と呼べるものは数える程度にしかあり得なかっただろう?」

「……君に俺の何が分かる」

 

 マスクが覆った口から、泥のように濁りきった感情のヘドロをぶちまけるが、あえて俺はそれを無視して言う。

 

「動きを見ていれば大体分かる。速い上に無駄も隙も少ないが、躊躇がなさすぎる。筋力や経絡、それにオーラの流れもだ。良く言えば思い切りがいいし、悪く言えば慎重さが少し足りない。そりゃあそうだよな。生まれ持ったものだけで、この世の大半の相手は倒せるんだ。小一の頃とは言え、山で遭難して野犬の群れに喰われかけてた俺なんかとはまったく次元が違う」

 

 旧魔王の血筋に加えて伝説のドラゴンを宿したあいつと、一般家庭の出で偶然伝説のドラゴンを宿していた俺。少なくとも、スタートラインでは比べるのも馬鹿らしい差があったのは間違いない。神器を扱いこなす上で求められる全てを持っていた理想の存在に対して、奴の言うとおり、俺には赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)以外何もなかった。

 

 それは認めざるをえない。だが現実問題として、今現在のこの場においては、俺はあいつに負ける気がしない。

 

「その上、お前は本物の天才、神童だ。何人もそう呼ばれる存在と相対してきた俺が断言してやる。一度で出来ないことなんか殆ど無くて、少し取り組めば大体の技術は一流以上に仕上がっただろう。立ち振舞やアザゼルへの一撃を見るに、我流のようだが武術において立派に特A級の達人に相当するよ」

 

 ヴァーリは押し黙るが、構わず俺は口を開く。

 

「そんなお前が、強敵と出来るだけの相手は何人いた? 少なくともそんじょそこらの上級クラスじゃ一撃で終わりにできるお前が。命がけの戦いじゃあ、ほぼいなかっただろ? アザゼルや刃狗(スラッシュ・ドッグ)とはあくまで手合わせ。それ以上の敵とは出会ったことがない。だろう?」

 

 なおも、続ける。

 

「……単なる人間の俺にとって、今まで強敵じゃなかった相手なんかほとんどいなかった。息の根は何度も止まるし、散々修行しても歯が立たないなんてザラ。泥臭く足掻いて足掻いて、なんとかここまで生き延びてきた。……そんな俺にとって、大きく自分を上回る相手なんてのはもうデフォルトなんだ。だから、相手のタイプによって対処できる方法も徹底して仕込まれた。例えば……リア・ウルク!」

 

 フッ。

 

 炎水静動轟一とスピード強化の呪文をかけて弓を刀に戻して、抜き打ちざまにヴァーリの足元から斬りかかる。たやすく回避したヴァーリは拳を突き出してくるが、その一撃を追従して放たれた鞘の横薙ぎが迎撃し、鎧を砕くと共に拳を弾いた。飛天御剣流、双龍閃だ。

 

「グッ!?」

 

 ヴァーリは膨大な魔力を鎧のごとく身に纏い、光速の連撃で俺を打ち砕こうとするが、俺はその一切を最小限の動きで避ける。多少基本性能で劣っている位で避けられずして、超人の位階は名乗れない。どこで見たのかは知らないが、見よう見まねでここまで完成度の高い暗黒魔闘術を扱うとは、やっぱり底知れない才能だな。

 

 にしても……説教臭い事を言われたのを虚仮にされたととったのか、随分感情的になっているな。

 

 それでもフェイントや隙を見出そうと魔力の散弾をかましてくるのは流石だが、いかんせん万華鏡写輪眼を始めとする俺の感覚は騙しきれない。

 

「力の権化たる鎧装着型の禁手(バランス・ブレイカー)は莫大なパワーアップを果たすが、そのパワーアップが過剰なあまり、オーラが全身から迸りすぎる。結果、拳や得物に集中させる事を始めとして、オーラの流れに注視すれば行動が予測しやすい。対応策としては直前までオーラを静めるか、予測が意味を成さない程のパワーとスピードを用いるかだ。覚えておくといい」

 

 ズババババ!

 

 ヴァーリの攻撃の合間を縫うように関節部を狙いながら刀を振るう。深手は未だに負っていないが、龍一文字に籠められた聖魔と龍殺しの特性に侵され、ヴァーリの動きが少しずつ鈍っている。

 

「どうした? 鎧を身につけておいて関節部を庇う動きが遅れるのは致命的だぞ。まあ並みの使い手ならここまでお前の速さについてこれる奴もそういないだろうし、お前の速さについていける程の強者なら攻撃力もあるだろうから、わざわざ鎧の弱所を狙う必要も無いやつばかりか。――覇皇烈靠撃!!」

 

 ドゴォ!

 

「ゴハッ!!」

『DivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivide!』

 

 刀を鞘に収めると同時に肩口で体当たりをかますと、血反吐を吐いたヴァーリはここぞとばかりに半減の力を発動させる。だが……足りない。

 

『LordLordLordLordLordLordLordLordLordLordLordLordLordLord!』

「神格相手に半減が上手く作用しないのも知っている……お前に俺は倒せない」

 

 柄を握る手に満身の力を籠めながら、腹に滾る怒りのマグマを解放する。

 

 こいつにはギャスパーを利用したことを始めに、禍の団(カオス・ブリゲード)を手引きした責任をとらせないといけない。だから……息の根だけは残してやる!

 

『Half Dimension!』

 

 俺の周囲の空間が歪み、動きが一瞬止まりそうになるが……力ずくでその歪みを振り払い、刀を抜き放つ!!

 

 ズバッッッ!!!

 

 最初の、鞘が本命の陽動とは違う、全速の居合一閃は、物質や空間すら半減させるという白龍皇の能力すらも斬り裂いて、ヴァーリの後方の空間も大きく両断し、防御魔方陣ごと奴の体を右の一番下の肋骨から左肩まで袈裟懸けに真っ二つにした。……いや、かろうじて繋がっているか。心臓もうまい具合に避けている。こっちも生かしてはおくつもりだったとはいえ、大したもんだ。

 

 ドゴォォ!

 

 地面に大の字で落下したヴァーリは、すかさず懐から取り出したフェニックスの涙を自分にふりかけた。流石に回復アイテムくらいは持ってるよな。回復封じの呪いはオフにしていたとはいえ、まだ向かってくる気か。仕方がない……四肢の二、三本は覚悟しろよ。

 

「――フフフフフ。アハハハハハハハ……」

 

 突如、寝っ転がるヴァーリが笑う。心底可笑しそうに、昏い笑い声を学園中に響かせながら、ヴァーリ・ルシファーは笑っている。

 

 この気配……まさか!?

 

「これが俺のライバルか……参ったな。本当に化け物だ。攻撃も防御も回避もまったく次元が違う。力の使い方も見事だ。何より、これだけの力を持ちながらまるで弱者のように小賢しく立ちまわる。最早、異常だよ」

 

 饒舌にそんな事を評したかと思えば、ピタッと。そんな音が聞こえてきそうなほど、ヴァーリは唐突に口を閉ざした。

 

 一秒くらいの間を開けて、ヴァーリは地獄の底から響くような重い声で言う。

 

「……兵藤一誠。君は、両親に遊園地というものに連れて行ってもらったことはあるか?」

 

 言葉に詰まりそうになるが、一呼吸を置いて答える。

 

「あるさ。それがどうした」

「映画館は? デパートは? プールは? 海は? 山は? 親におもちゃをねだったことはあるか? 風邪をひいて看病してもらったことはあるか? 悪いことをして父親に叱られて、その後で涙ながらに謝ったことはあるか? 母親の手料理を食べて、感謝の念を抱いたことはあるか?」

 

 音に色がついたのならば、これはきっと形容しがたいものになる。黒とも赤とも青とも白とも言い切れないグチャグチャの声色に既視感を覚えながら、俺は肯定する。

 

「全部ある。それがどうしたってんだ!」

「そうか――俺は全部ないよ」

 

 ……ゾッとした。久しぶりに総毛立つという事を実感する。言葉の重さに反して、今の一言は完全な虚無だった。詰まっているのに詰まってない。あえて言うなら無こそがある。

 

 やっぱりそうだ。あいつ、呑まれかけている。

 

 ゆらりと立ち上がって、ヴァーリが嗤う。今度はしっかりと中身が詰まった音だ。ここにいない者に対する果てしない憎悪と、俺に対する強烈な嫉妬。その二つの感情に、ヴァーリは嗤っている。

 

『ヴァーリ、落ち着け! このままでは――』

 

 アルビオンの声も耳に入らないのか、ヴァーリは俺へ狂気の笑みを向けてくる。

 

「アハハハハハハハハハハハ……俺に優れた力と魔王の血統を授けてくれた、君が言うところの自慢の父親は、俺を何の理由もなしに殴りつけていたよ。大層な才能を与えて産んでくれた、誇らしい母親とやらの手料理なんて考えたこともなかった。俺を連れての外出なんて論外さ。両親は、魔王の力と白龍皇の神器を併せ持つこの俺を化け物として忌み嫌っていたからね!」

 

 ヴワァァァ!!

 

 ヴァーリを中心に渦巻く怨念の嵐。内と外の違いはあるが、俺には慣れた感覚だった。

 

「覇龍一歩手前だ……しかも歴代白龍皇の残留思念に呑まれかけてるぞ。あれだけの質と量の魔力なら、制御は可能な筈なのに……」

『誰も彼もをお前と一緒にするな。昔から何度も言うが、お前が覇龍を完全に掌握出来た最大の理由は、肉体以上に精神にある。力と怨嗟の暴雨風で、平然と正気を保てるお前だからこそ覇龍を扱いこなせていたんだ。

 恐らくヴァーリ・ルシファーは魔力を命の代償にすることで、数分程度であれば行使は可能……だが、やはりかなりのリスクはあるのだろう。怨念によって負の感情が増幅されて、半ば暴走している。ただ、これは俺の推測だが、半分辺りは相棒のせいだろうな』

「……やっぱり、そうだよな」

 

 あいつの両親の事に少し触れた時に心が揺れたのは分かってたけど、感情の波は想像以上に大きかったようだ。その後完膚なきまでにズタズタにされた事で自信やプライドにヒビが入ったのが決定打になって、俺への負の感情が爆発したんだろう。そして力を求めた結果、残留思念の声に頷いちまった……。

 

「全てに恵まれただと? なら、どうして俺は親に捨てられた? どうして君のように愛されなかった? ……別に、今更奴らの事なんかどうでもいい。ただ――俺より強くありながら、俺より幸福に生きてきたお前が憎い! ハハハハハハハハ、これが嫉妬というものか!? 案外悪くもないぞ! 兵藤一誠ッッッ!!!!」

 

 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

 

 怨言、狂笑、絶叫。あらん限りに己の泥をぶちまけるヴァーリは、余りに危険なオーラを放っている。質量だけなら、さっきの俺の逆鱗も及ばない。

 

 だが、膨大な力の奔流の中、ヴァーリの瞳に微かに理性の光が戻る。

 

「アルビオン……覇龍をやるぞ。止めてくれるなよ」

『……焦らせてくれるな。だが、ここまで線が切れてしまったお前は私も初めてだ。止められんし、止めはしない』

 

 まじで覇龍をやる気だ。幾らトップ陣が結界を張っているとはいえ、ここでそれは不味い。もし学園を覆う結界が破られたら大惨事だ。あいつを転移させようにも準備が足りない。そもそも、今の俺じゃあ覇龍を相手に手加減はしきれない。やらせたら、俺かあいつのどっちかはほぼ間違いなく死ぬ。

 

「我、目覚めるは――」

 

 複数の声色が重なった詠唱が始まった。ああなったら、例え喉を潰そうが無意味なのは俺が一番良く分かっている。ヴァーリだって棒立ちとはいかないだろう。残留思念に呑まれかけているとはいえ、そう安々と殺せるとは考えにくい。

 

「覇の理に全てを奪われし二天龍なり――」

 

 今のところ、選択肢は二つ。覇龍を発動したヴァーリと自他の危険を覚悟して殺しあうか……一か八かの賭けに出るか。

 

 後者の場合、要になるのはバオウとクリア、お前たちだ。

 

 心に思い描いたものを四人へ伝達させると、まずドライグが盛大に笑い出す。

 

『フハハハハハハハハハハハハハハハッ! 十年以上も付き合って、本当に厭きがこないな、お前は!? 危険や無謀なんてものじゃない。なのに躊躇のちの字もなしだ! お前は最高のイカレだよ!!』

『正 気 ?』

「はは……今更すぎるぜ、バオウ。生憎こちとらとうの昔に、正気なんて高尚なものとは無縁だね!」

『ヤツハ運命、奇跡ガ自分ノ為ダトヌカシテイタガ……ダッタラ馬鹿ト阿呆ト助平ハオ前ノ為ノ言葉ダナ』

『新参の僕が言えた事かはわからないけれど……君って本当に面白いね。というか、その考えなら別にバオウじゃなくてドライグでもいいんじゃないかな? その方が安定すると思うけど……』

「かもな……けど、こういうだろ。鉄は熱いうちに打て、思い立ったが吉日ってな!!」

 

 キィィィィィィィィィィ!!!

 

 俺の高まる熱に反応してか、鎧の脚部が雷龍帝の脚甲(ライディング・ギア)に変化し、紅い宝玉がドンドンその輝きを増していく。

 

 そのボルテージが最高潮に達した時、アザゼルから貰った腕輪を外し、脚甲の宝玉へと叩きこむ!

 

 ヴァゴオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッッ!!!!!

 

 荒れ狂う金色の雷。白龍皇の残留思念に突き動かされている筈のヴァーリですら、その輝きに目を奪われる余り、詠唱を中断して見入っている。

 

 弾け飛びそうな熱と力が脚甲を中心に圧縮されて――音声とともに解き放たれた。

 

Velocity(ヴェロシティ) Dragon(ドラゴン) Over(オーバー) Rider(ライダー)!!!!』

 

 バチチ!

 

 最初の派手な放出が嘘みたいに雷が収束した結果、俺の全身を光よりも速く覆い、黄金の鎧となって顕現した。

 

「やっぱりな……代価の代わりになるんなら、赤龍帝の篭手じゃなくて雷龍帝の脚甲でもうまくいくと思ったんだけど、ビンゴだった。とりあえず、雷龍帝の鎧(ライディング・ギア・スケイルメイル)と名づけたところか。ヴァーリ・ルシファー……失言は詫びる。埋め合わせと言っては何だが……雷龍帝バオウの真価を、たらふく味わってくれ」

 

 ゴクリ。

 

 生唾を飲み込んだヴァーリのマスクの下の顔は、きっと戦意に染まった無邪気な笑みだと、俺は確信した。




 少しヴァーリが簡単にボコられ過ぎとお考えの方も多いと思いますが、超人級と特A級なら多少の性能差があってもこれくらいはいくかと。加えて、イッセーには龍一文字・八百万にアスカロン、万華鏡写輪眼もありますので。イッセーの剣術自体は特A級の上ですが、身のこなしは普通に超人級です。

 ちなみに鎧装着型の弱点は神から教わりました。原作でもイッセーが指摘していましたけれど、対応する側に実力が伴っているからこそ意味のある弱点です。

 そして正直、ヴァーリはイッセーに対してこれだけの負の感情を抱いても不思議はなかったと考えます。圧倒的に自分が強いからこそイッセーの成長を喜べるだけの余裕はあるけど、もし生まれ持ったもの故に辛い幼少期を過ごした自分より強い同年代のライバルが、自分より幸せに生きていたら……アザゼルとの関係、実父や祖父への感情を見るに、家族というものに未練や執着が全くないわけではないヴァーリなら、残留思念に煽られたとはいえこうなってもおかしくはないかな、と。
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