ハイスクールD×D 四天龍の王   作:DECADE

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 総合評価が千を超えていました!! 感謝いたします!

 これを励みに、今後も続けていきますので、よろしくお願いします!


Life.82 日常、再開です。

「では、私もこれで。和平についての報告は勿論、禍の団(カオス・ブリゲード)に関しても、対策を講じねばなりませんので」

「……ミカエルさん。二人の件を受け入れてくれて、本当にありがとうございます」

 

 頭を下げる俺に、ミカエルさんは苦笑する。

 

「貴方は今回の件の功労者であり、多くの神話に敵視されている三大勢力にとっては希望に等しい存在です。これくらいでは報償にもなりませんよ」

「そんな事ありません! 俺にとっては、十分すぎるくらい嬉しい事ですよ」

 

 アーシアとゼノヴィアが祈りを捧げられる事で喜んでくれるのなら、多少の無茶は屁でもない!!

 

「……ふふふ。これだけはアザゼルに礼を言わねばならないかも知れませんね。誰かの幸福を心から喜べる貴方の事を、私も信じましょう。では……」

「失礼します。赤龍拳帝殿」

 

 にこやかに微笑みながら、十二枚の翼を広げて浮かび上がるミカエルさん。ガブリエルさんがぺこりと頭を下げてそれに続くと、天使たちは眩い十字の光を放って消えた。

 

「イッセーさん……」

 

 おずおずと近づいてきたアーシアは、瞳を潤ませてもじもじと赤くなっている。

 

 アーシアから溢れる喜びを理解した途端、心に浮かんだ台詞が口から飛び出す。

 

「良かったな、アーシア!!」

「――イッセーさん、大好きですぅッ!」

 

 涙をキラキラと輝かせて飛び込んできたアーシアを優しく抱きしめると、頬にそっとくちづけされた。おおおおおおおおおおお! 瑞々しい感触がもうたまんねぇ! レクナと妲己の表面上は微笑まし気だけどその実猛禽的な視線とかおっかないけど、それはそれで嬉しいから万事OK!

 

 アーシアが離れた所で、こっちを見ているゼノヴィアにも声をかける。

 

「ゼノヴィアも、これからまた思う存分祈れるぞ!」

「えっ……あ、その……ありがとう」

 

 頬をほんのり赤く染めて伏し目がちに礼を言うゼノヴィアに数人が目ざとく反応するが、とりあえずはまあ……。

 

「それじゃあ行くか」

「ええ、皆――行く?」

 

 この場に残った面子へ声をかけようとした部長が、俺に怪訝な顔を向けてくる。しかし、反応は予想済みだ。

 

「勿論……修行に決まってるじゃないか。禍の団に旧ルシファー、なんとも物騒な連中が現れたことだし、やっぱり皆も一日も速く強くなっておくべきだと思うんだ。つーわけでいざ行かん、我らが恋しき修行場へ!!」

 

 即逃げ出そうとするのも予測の範囲内なので妲己へアイコンタクトを実行。的確に意図を汲んでくれた九尾の狐はその九本の尾を持って俺以外のグレモリー眷属を捕縛、拘束してくれた。

 

『じぇろにもぉぉぉぉ!!』

「え、何? 何の呪文!?」

「修行が限界を超えて心身が壊れると思った時に言えと伝えられた合言葉だ! 聞き入れてもらえたことはほぼないがな!!」

 

 騒ぐ皆に狼狽するイリナへ、ゼノヴィアが懇切丁寧に理由を説明する。しかし、単に毎回無視してるだけだと思われちゃ困るぜ。ちゃんと音の響きで限界かそうでないかは判別している。

 

「というより、イ……師匠が誰よりも消耗しきってる筈なのに大丈夫なんですか!?」

 

 木場が敬語になってまでどうにかならないかと懸命にすがろうとするが、生憎どうにもする気はない。

 

「んなもん食って飲めばどうにでもなる。それにまあ、今日は軽く基礎練習だけだから安心しろ」

「修行に関して師匠の軽くとか安心なんて言葉があてになった事は一度としてないんですけど!!」

 

 ゴボボボボ。

 

 早速ワームホールから出したノルン三姉妹の血液を軽く穴を開けて一気飲みすると、俺は木場を始めとする弟子達にそっと笑いかける。

 

「修行ってのはそういうもんだ。諦めろ」

 

 最早反論の言葉もなく脱出に全力を注ぐ皆を一層しっかり捕まえる妲己を除いた自らの下僕へ、レクナは告げる。

 

「それじゃあ私と妲己はイッセーに付き合うから、今日は解散ってことで」

「……いや、兵藤一誠の指導には私達も興味があるし、同行させてもらうわ。まさか今更部外者扱いって事は無いわよね?」

 

 腰に手を当てて挑発するように笑みを浮かべるミルドレッドに、俺は振り向いて笑いかけた。

 

「好きにしろ」

「じゃあ、私も好きにさせてもらおっか。イッセーの修行かぁ……一体どんな死刑紛いの事させてんのか楽しみだぜ」

 

 美剛が心底楽しそうに笑うが、とりあえず否定はしない。実際、皆最低でも二、三回は心停止まで行ってるし。

 

「リアス……強い子になるんだよ」

「達人からはどう足掻いても逃れられません。お嬢様、ご武運を」

 

 サーゼクスといつの間にかその隣に立っていたグレイフィアさんは、なんか励ましつつも両手を合わせて黙祷してた。イリナもイリナで祈ってるし。

 

「ああ……主よ。私の二人の友を修行からお守りください!」

 

 多分、その祈りは神でも叶えられないと思う。俺がいるから。

 

「ふふふ。学校って楽しそうでいいわね。私も通っちゃおうかな?」

「お姉さま、ご自重下さい。それと、あの光景を学校に含めないでくださいまし」

 

 セラにツッコむ会長に、内心それとなく謝っておく。

 

「それじゃあ皆……楽しく逝こうか!」

『じぇろにもぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

 

 音を封鎖して周辺住民へ迷惑をかけないよう細工した上で、俺達は達人の世界の底へ向けて足を進めた。

 

 

 

 

 

「てなわけで……今日から俺がこのオカルト研究部の顧問になった。まあよろしく!」

 

 翌日の放課後、部室へ入った俺たちを出迎えたのは、会長と副会長、そして部長の椅子にこれでもかと座っているアザゼルだった。

 

「……どういう事かしら?」

 

 困惑しつつも若干低い声で訊く部長へ、アザゼルはあっけらかんと返す。

 

「いや、何。サーゼクスに頼んだら、セラフォルーの妹に言えというんでな。だから頼んだ」

 

 ばっと全員に注目されて、会長は視線を泳がせる。

 

「えっと……でないと姉が代わりに学園に来ると脅さっ、せがまれまして……」

 

 魔王と堕天使の総督がさっそく結託かよ! しかもやることセコ!

 

「要するに、オカ研を売ったのね?」

「では、後はお願いします」

 

 部長の指摘に態度で肯定を示しながら、会長は副会長を伴って部室を出た。……こういう端々の強かさは、実にあれと姉妹だと痛感するぜ。

 

「その腕……メカですか」

「ああ、神器(セイクリッド・ギア)研究のついでに作った万能アームだ。光力式レーザービームに小型ミサイル。無論、ドリルにロケットパンチも搭載している!」

 

 バシュン!

 

 言うなり、アザゼルから離れた左腕が部屋中を飛び回る。うん、見事な仕事だ。

 

 ガキン!

 

 ひと通り飛ばした腕を再装着したアザゼルは、部室内を見回して言う。

 

「俺が学園に滞在する上で、サーゼクスから条件が課せられた。お前らの未成熟な神器を正しく成長させること――まあ、コレクター趣味の凝り性が役に立つって所だな。ククク……未知の進化を遂げ続ける赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)に、その派生であり共同体たる雷龍帝の脚甲(ライディング・ギア)重龍皇の胸甲(ローディング・ギア)透龍皇の篭手(ホロウ・ディバインディング・ギア)、そして聖魔剣に停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)……俺の研究成果を存分に叩き込んで、独自の進化を模索してやる。いいな、これから俺をアザゼル先生と呼べ!」

 

 うわ! 眼が超マッドな光り方してやがる! 気持ちはわかるけどさ!

 

「そう言えば兵藤一誠。白龍皇、いや、透龍皇の力はあれから使えるのか?」

 

 返事代わりに右手に透龍皇の篭手を出して、説明する。

 

「一応はこの通り。ただ、半減の消耗がめちゃくちゃでかいですね。幸い消滅の呪文の燃費とかは今まで通りですけど、半減と奪取に関しては今のところ、いざって時の隠し札が関の山です」

 

 透龍皇となったクリアに取り込まれたとしても、白龍皇の力と属性はやはり赤龍帝には負担なんだろう。

 

「そこまで扱えりゃ十分過ぎると言いたいが、お前は満足しちゃいないんだろう? まあ、今後の修行と透龍皇の調整次第じゃマシになっていくはずさ。少し気長にやれ。あんまり短期間に気張りすぎると死ぬぞ?」

 

 それは分かってますけどね。俺だって時間かけて鍛えられるようならそうしたいですよ。それじゃあ死ぬから、今の今まで気張りまくってきただけです。

 

「ところで兵藤一誠……いや、もうイッセーでいいか?」

「ああ、構いませんよ。アザゼル先生」

「じゃあイッセー。お前、ハーレムを作るのが夢なんだよな?」

「ええ、そうっスけど……」

 

 正式なメンバーと言っていいのは、まだレクナと妲己くらいなんだけどね。原初の悪魔(オリジナル・デーモン)に白面金毛九尾の狐と、名高い面子ではあるけれど……。

 

「なら、女の一人も知っておけ。なんなら、部下の美女、美少女堕天使でもどうだ? 綺麗どころは幾らでも献上するって言っただろ? 強権だなんだと言ってたが、伝説のドラゴンで世界最強の武術家と来れば、喜んで抱かれる女はゴマンといるぜ」

 

 ――喜んで、抱かれる女がゴマン?

 

「……本気(マジ)ですか!?」

本気(マジ)もマジ、大マジよ。参加費無料の童貞卒業ツアーと洒落込もうぜ!」

 

 …………!!! い、いやいやいや、待て待て待つんだ俺の煩悩よ! そりゃ堕天使の綺麗どころはほしいさ。童貞は卒業したいさ! けれど、けれどよぉぉぉぉぉ!

 

「…………非常に、非常にありがたいご提案なのですが、アザゼル先生……大変残念ながら、私めは高校卒業までは女性を抱かぬと決めてまして……」

「ああ? なんだそりゃあ。お前あんだけ女に興味津々で、なんだってんな腰砕けなこと言ってんだ」

 

 ブチ! 堪忍袋の緒が切れた。

 

 腰砕けだと? 俺がどんな気持ちで耐えてると思ってんだ!

 

「しょうがないでしょ! まだ童貞だからどこもかしこもどいつもこいつも牽制しあっておとなしくしてんだ! 一人抱いたらもうタガが外れた連中が次から次へと押しかけて、爛れた性活送ること請け合いなんだよ!!」

「……あー、成る程。それで未だに清いのか。でもやっぱ本音は抱きたい、と」

 

 がくっと床へ四つん這いになって、号泣する脳内に今までであった大勢の美女の誘惑が蘇る。おっぱいも尻も太ももも脚も指も唇も舌も艶めかしく輝いて――ッ!

 

 ――くッ!! この絶大な色気に抗しきれてしまえる鋼鉄の精神力が心底憎い! いっそ本当に性欲任せの獣になれればどれほど楽か!

 

「当たり前だろうがぁぁぁぁ! 何が悲しくて好き好んで美女の誘惑を断らなきゃいけないんだよ!! チャンスも思い当たる節も幾らでもあったさ! けどなぁ……せめて学校くらいちゃんと卒業してからでないと、面と向かって両親に報告できないだろう!? 後ろめたさとか一切なしで孫を抱かせてやりてぇんだよ俺は!!」

 

 まあ仮にめでたく卒業を迎えても、一体何人女が出来るか未知数だけど、部長とアーシアの同居をああも喜ぶ様子なら心配はいらないだろう。むしろ孫が多けりゃ多いほど喜んでもらえると思う。二人共、俺の親だし。

 

「まったく、本当に親孝行なこった。けどまあ、そうか。ドラゴンは自然と一夫多妻を形成するんだもんな。俺が何するまでもねえや。けどよ……堕天使の女が欲しけりゃ何時でも言いな。力量もおっぱいも選りすぐりのを紹介してやる」

 

 ポンと俺の方を叩いて頷くアザゼル先生に、俺は涙で潤んだ瞳を向けて更に感涙の大粒をこぼした。皆の困惑する眼も余所に、俺は熱い思いを吐き出した。

 

「先生……! 俺、俺……いつか、童貞捨てたいです!!」

「イッセー……信じろ。信じていれば、いつか目標は叶うさ」

「…………なあ、茶番は終わりか?」

 

 唐突に振りかかる冷えきった声に入り口のほうを見ると、氷美神が腕組をして俺に絶対零度の視線を放っていた。

 

「氷美神さん、どうしたの? 部室に顔を出すなんて初めてだけど……」

 

 部長の質問に、氷美神はすっと一枚の紙を差し出した。名前が記入された入部届だ。

 

 ということは……。

 

「一ヶ月近く考えてたんだが……どうせ他に部活をする気もないし、オカルト研究部に入ってみるのも悪くないと思ったんでな。入部することにした。どうかな、リアス・グレモリー」

 

 憮然とした無表情の氷美神に対し、部長はにこやかに笑って入部届を受け取った。

 

「勿論、歓迎するわ。榊氷美神さん、ようこそオカルト研究部へ。――今後よろしくお願いするわ。色々と、ね」

 

 差し出された部長の手を、ほぼ反射的に氷美神がぐっと握りしめる。剣呑な笑顔になった二人は、互いに全力を籠めてメキメキと音が鳴るほど堅く握手を交わしている。素の身体能力で劣る部長が少しジリ貧気味だが、伊達に俺にぶっ飛ばされてるわけでもなく、培われた耐久力と根性で負けじと耐える。

 

 そろそろ骨がヤバイかというところで、氷美神の方が力を緩め、すでに限界だった部長も追うように脱力する。互いに額から一筋の汗を垂らしつつ、共に健闘を称え合う。

 

「……ふん。度胸だけは合格点だな。俺の未使用の兵士(ポーン)八つとイッセーをトレードしようと話を持ちかけようと思っていたが、当分保留にしてやる。だが、安穏と構えていられると思ったら大間違いだぞ? リアス・グレモリー」

「……言われなくてもわかってるわよ。貴方こそ、幼馴染だからと言っていつまでも自分がイッセーに一番近いとは思わないことね。それともう一つ……私の事はリアスでいいわ。代わりに私も氷美神と呼ぶから」

「いいだろう……覚悟しろ、リアス」

「覚悟はとうに決めているわ……氷美神」

 

 額を突き合わせて女の情念を燃え上がらせる二人を見て、隣の木場が気まずそうな苦笑顔でトントンと俺の肩を叩いて囁く。

 

「……イッセー君。もうというか元々と言うべきか、君、僕の事をどうこう言えないよね?」

 

 ジュズルルルルル。

 

 何も言い返せず、エオスの血液パックを啜るしか無い俺。

 

 そんな室内を楽しそうに見回すアザゼルは、更に巨大な爆弾を投下する。

 

「そういや、サーゼクスから伝言があってな。『先日、赤龍拳帝の家に宿泊した際、眷属のスキンシップの重要性を確信した。特に赤龍拳帝本人にとっては、力を発揮する重要なキーパーソンとなるだろう。ゆえに、魔王サーゼクス・ルシファーの名において命ず。オカルト研究部、女子部員は全員、兵藤一誠と生活を共にすること』……だとさ」

「――はっ?」

 

 開いた口が塞がらない俺を余所に、氷美神が携帯で何処かへ電話をかける。

 

「もしもし。あ、おばさんですか? ご無沙汰してます、氷美神です。はい、お久しぶりです。早速ですけど、少しお話がありまして」

 

 もうウチに電話かけてやがる! つーか、朱乃さん速攻出ていっちゃったぞ!? 廊下を小走りしながら、必要な荷物を纏める算段してる! ゼノヴィアも遅ればせながら出てったし、リアクションを見せてないのは小猫ちゃんだけだ! 部長とアーシアは険しい表情で寄り合ってるし、もうなんか酷いな!?

 

 騒ぎの発端でもあるアザゼルは、腕を組んで俺を見ながら、興味深そうにつぶやいた。

 

「白は力を。赤は女を。――どちらも驚くほど純粋で単純なもんだ。――神がいなくとも、世界は回るのさ」

 

 

 

 

 

 次の休日、早速皆はウチへ来た。

 

「イッセー君。朱乃、ただいま貴方の元へ到着しました」

 

 玄関から大荷物を床へ置くなり、朱乃さんが抱きついてくる。その横を通り過ぎた氷美神は一瞥だけで首をはねられるかと思う程鋭い視線を向けた後、母さんへにこやかに挨拶する。

 

「おばさん――いや、お義母さん。今日からお世話になります」

「やだわ、氷美神ちゃんったら! お部屋はこっちよ」

 

 ゼノヴィアと小猫ちゃんも、ちらりとこっちを一瞥しながら奥へ進む。

 

「私は、アーシアと同じ部屋でいいのかな?」

「……イッセー先輩。部屋を覗いたり下着を盗んだら、許しません」

 

 さっさと引っ越しを完了させようとする皆に対して、朱乃さんはひたすら俺に抱きついて、弾むような声で耳打ちする。

 

「イッセー君♪ 私、今日は一緒に寝ますわ。今度は二人っきりで……」

 

 ググッ。

 

 鼻の下を伸ばす俺の頬を、部長と氷美神が左右から思い切り引っ張る。なんだか、抜群のコンビネーションだ。この間から二人で激しい組手をやっていたけど、色んな意味でライバルとして大分仲が深くなっているようだ。

 

 レクナや妲己も、時々訪れてはオカ研の皆と仲良く話し込んだり修行をつけたりしてるし……。うぅん……いがみ合うよかはよっぽどいいけれど、なんだかこれはこれで俺の包囲網が完成しそうな……結託して迫られたら、マジで理性にヒビが入るやも知れん。

 

 一足先に手を離した部長は、嘆息した後、顎に指を当てて考えこむ。

 

「ふぅ……にしても、流石にこの人数は多過ぎるわね……決めたわ。お兄様に頼んで、このお家を増築しましょう!」

 

 増築と来ましたか! 確かにこの家で九人生活するのは狭苦しいですけど、隣近所の関係上、そんなに大きく出来るのかな? とは言え、それは俺が気にしてもしようのない事だ。

 

 夏休みまで、後数週間……出来ればそこまでは平和にいきたいところだけど……まず不可能だよな。

 

 経験上、夏休みの間は勿論、前後ってのはとにかく色々起こりやすい。もうとにかく、色々だ。

 

 ただ一つ確かなのは……平穏無事に夏休みを迎えたことは、今までの学生生活で一度もないということのみ。

 

 今年こそ、と期待するのは愚かしいと思いながらも止められない。

 

 そんな事を考えながら、ようやく離れた朱乃さんの荷物を運ぶ俺だった。

 

 

 

 

 

「……確かじゃな。その話」

「ええ、間違いありません。『青い騎士』は、既に目覚めかけています。眠っている場所も、ほぼ把握しました」

「成る程成る程……じゃあ、口実は手に入れたわけだ。順番も決めたし、後はタイミングだけ。まあ、そう遠くはならないだろう。それまで精々、英気を養おうじゃないか」

「アルカード。一番手というのに、随分余裕じゃな? よもや、多少力が落ちた程度であの小僧を侮ってはおらぬか? ならば忠告するが、あれに力の大小で勝敗が決まるなどという分かりやすい常識は通用せぬぞ」

「わかっているとも、櫛灘。ただ単に私は、君らと違って勝敗に興味が無いだけだ。ただ、あの化け物に化け物というものを教授してやりたいのさ。そのまま殺してしまうかも知れないが、闘争とはそういうものだ。文句は言うなよ――ランスロット」

「遠慮には及びません。そんなものは不可能だと考えていますから。それにもし、万が一にも彼を殺した時は……私が貴方を殺します」

「……ほう? 言うじゃないか、二千もいかない小娘が。ならば試してみようか。私は構わんぞ?」

「貴女が相手では手加減は出来かねますが……死んでも構いませんね?」

「やめよ。これでは何のために我らが手を組んだのか分かりはせぬ。誰よりも戦いたい相手と戦う算段がついたのに、その前に感情任せに身を削ってどうするのじゃ」

「……まあ、そのとおりか」

「……すいません。軽率でした」

「やれやれ。兎にも角にも面倒な女共じゃ。まとめて面倒を見切れるかのう? なあ、兵藤一誠よ――」




少し間にはいって、その後で新章開始です。お楽しみにしていただけると嬉しいです。
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