一文字違いで誤字しておりました。申し訳ありません。
※2026/03/14情報屋リフラフに改名
計画通り、我輩の下僕に堕ちた──情報屋 リフラフ
そのリフラフの住居兼事務所で、我輩は二人掛け用のソファを占有していた。見通す力を駆使し、手に入れたスマホはリフラフの下僕とは思えないほど無愛想な助言もあってか今ではほぼ文句無しに使いこなしている。
【学園都市キヴォトス】
連邦生徒会がキヴォトス全体の行政を担い、数千の学園が各々運営する自治区と、連邦生徒会が管理する地域「D.U.」で構成される連邦都市である。『生徒』は基本的に銃器で武装しており〜〜〜〜〜
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⋯⋯⋯⋯この記事を読むに、学園一つ一つが一種の国家であり、連邦生徒会はいわゆる学園都市全域の中枢機関。その連邦生徒会が管理しているD.U.はいわば王都のようなもの。
生徒が銃器の武装を行う事は当たり前で揉め事が起これば銃撃戦に発展。この世界では引き金が存外軽いようだ。それもそのはず、たとえ『生徒』に弾丸が命中しても少し痛みを感じるだけで致命傷にはほど遠い。信じられんほど体が丈夫なのだ。
⋯⋯⋯より正確に言うなら『生徒』というよりも【ヘイロー】を持つ者が頑丈なのだ。
ヘイローは彼女たちの頭上に浮かぶ紋様のこと。砂漠で見つけたターコイズブルーの娘や、よく見かけるスケバンたちにヘイローがある事は知っている。我輩はもちろんリフラフや他のオートマタ、ロボット、大将なんかはヘイローなんてものは存在しない。
殆ど生徒しかヘイローを持っていないので生徒が頑丈だと言ってもいいのだが、例外を見ているからな。
思い出すのは砂漠で邂逅した、機械仕掛けの蛇。
ちなみにその蛇についてだが、スマホで調べても何も情報が得られなかった。ネット世界の専門家である情報屋のリフラフにも調べさせたがそれでもやはりダメだった。
あの蛇がこの世界の一般的なモンスターというわけではないようで安堵した。
まあ、結果として謎が深まっただけだがな。
流石の我輩もあのレベルのモンスターが常に蔓延る世界では身が持たない。
もっと、この世界に慣れる必要がある、そう思いスマホと一対一で情報収集していた。そんなとき、リフラフがパソコンを閉じ、怪訝そうな顔をして話しかけてきた。
「おい、アンタいつまでここに居座るつもりだ」
「⋯⋯⋯⋯?」
「なんでそんな心底不思議そうな顔してんだ!
⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯まさか、ここに住むつもりじゃないだろうな」
「その通りだが⋯⋯⋯何?冗談じゃない、だと?汝は我輩の下僕と成ったのだ。これぐらい当たり前だろう」
「ソウデスネ」
リフラフは諦め顔をして、不快の悪感情を滲ませながら席を立ち、一枚の紙───我輩の手描きポスターを指差した。
「その下僕からアンタに聞きたいことがある。これはなんだ?相談料タダ依頼料ワンコインってこんなんじゃ金儲けにならないぞ」
指を差された場所にはデフォルメされたバニル人形に吹き出しで『相談料は無料!依頼料は500円!』と書かれている。
「ああ、何を聞かれるかと思えばそれか。我輩、元よりよろず屋バニルで稼ぐことなど考えていない。」
「あ?どういうことだよ」
「汝、我輩の力については大方予想が付いているのだろう?」
「心まで読めちゃうチート能力だろ」
「まぁ、そんなところだ。しかしながら強力な力にはそれ相応の代償がある、我輩の経験上この見通す力を使い過ぎると反動が溜まり自身に返ってくるのだ。何かを得た分、我輩から代償として払わせようとな」
「なるほど。あんたの目論見はよく分かった。つまり、よろず屋をその代償とやらの受け皿にするってことか?」
「左様。この我輩が他者の為に力を貸して時間を使い依頼に対処するのだ。それも破格の値段でな。数をこなせばそれなりに見通す力との均等は取れるであろう」
我輩は満足げに頷いた。この世界に来てからというもの、かなり力を使っている。杞憂かもしれんが、備えあれば憂いなしだ。アビドス砂漠での一件もあったのでな。
リフラフは複雑そうな顔をしながらも、腕を組んで思案し始める。情報屋として鍛えられた頭はすでに次の問いへと動いていた。
「代償云々はいいんだが。依頼は来るのか?あんな手書きのビラで、そこが問題だろ?」
見通す悪魔はニヤリと笑う。それを見たリフラフは嫌な物を見たと目を細め、次のバニルの言葉に自身の
「安心しろ、依頼は受諾している。」
「⋯⋯⋯⋯本当に?」
眉を上げ思わずと、聞き返す。
「うむ、2件ほど依頼がある」
「こんなビラで依頼が来るなんてどうかしてる⋯⋯」
「フハハハハハハ!あれだけ大々的に大胆な宣伝をしたのだ。どこかの物好きや貧乏人にまで広がったのであろう。」
高らかに笑うバニルを余所にリフラフは依頼をしてきた者たちの考えを理解できなかった。
◐
数日後
俺は依頼内容を確認していた。
タキシードのゴシュジンサマは俺が起きた時には外出中、現在進行形で帰ってきていない。
数年ぶりのように感じる一人での自由な時間、趣味の悪い仮面が視界に映ることもない心穏やかな空間。本当はこんな依頼俺の知ったことじゃねぇのに。
【依頼内容】
建設予定地への資材の運搬から荷揚げ、働きに応じて追加依頼を行う。送付した地図を元に労働に励んてほしい。
「なッ⋯⋯⋯⋯⋯」
添付された地図を見て目を見開いた。
は、はぁ?なんだこれ、遠すぎだろ。
あいつ!仕事はちゃんと選べよ!
スマホを取り出し、呼び出し音が嫌に響く。
クソッ電話も繋がらねぇ!
俺は深呼吸した。落ち着け俺。感情的になっても何も変わらない。
情報屋というのは冷静が売りだ。どんな案件が転がり込んできても、クールに頭を使って対処する。
あいつが受けた依頼とはいえ、事務所の名前が出ている以上ちゃんとこなさないといけない。情報屋リフラフの看板は、俺が自分で磨いてきたものだ。バニルの手描きビラと相乗りさせられているのは死ぬほど不服だが、依頼を反故にして評判を落とすのはもっとごめんだ。
俺は地図データをスマホに落とした。
目的地の座標、周辺の道路状況、
万が一を考えても。
─────行くしかないか。
コートを羽織り、事務所に鍵を掛けた。
◐
依頼の現場は、ブラックマーケットから離れた山中の建設予定地だった。
地図を頼りに車を走らせると、砂混じりの荒れ地が広がる一角に、いくつかのコンテナと資材が積まれた場所が見えてきた。
俺が車を止めると、作業着姿のオートマタが数人こちらに振り返る。しばらくこちらを見ていた。俺の顔を見て、少し戸惑っているのが分かった。
「依頼を受けたよろず屋バニルの者だ。資材というのはこれを運べばいいのか?」
「バニルさんとこの?何で来たのか知らないがもう手はいらないよ、ほれあっちを見てみい。」
見れば黒くて小さな小人のような奴が、どんどんと積み上がっている資材を運んでいた。統率の取れた動きで資材が列を成し、動いている。
小人をよく見ればバニルのように白黒に分かれた仮面を付けている。
たしかポスターにもこんなのが描かれていた気がする。
───ということは⋯⋯⋯⋯
「おや!誰かと思えば!電話に出ない我輩を心配し、仕事も手につかずにソワソワしていた我が下僕ではないか!」
「心配してねぇし、適当言ってんじゃねぇぞ!てか、気づいてたんなら電話に出ろや!」
「その悪感情、実に美味である!」
振り返ればコンテナ一つを丸ごと持ち上げたバニルがムカつくニヤけ顔を向けていた。
どうなっているんだ?力が強いってレベルじゃないだろ。
「色々聞きたいことはあるけど、俺が手伝う必要は無いってことでいいんだな?」
「そうだな。元々依頼を受けていた分の仕事は終えている。今行っているのは追加分の仕事だが⋯⋯⋯いや、手伝ってもらおうか。」
なんだ今の間は。
「なんでだよ。手は足りているんだろ?」
「主人からの命だぞ?」
こいつ!ここぞとばかりに主従関係を使いやがって。
拒否権は無いな⋯⋯⋯
「はいはい分かりましたよ。」
「バニルさんや話はついたかい?」
こうして、丸一日資材運びと何故か建設の手伝いや現場の雑用まで行う羽目になり、俺の貴重な時間は溶けてしまった。
◐
俺はあの自称見通す悪魔のことが分からない。
そりゃそうだ、まだ一週間と少しの付き合いだ。
でも、俺が言いたいのはそういうことじゃない。
あいつは、俺がカイザーのシステムに侵入したことを知っていたにもかかわらず、スマホ一つもろくに使えなかった。それに、認めたくないが見ていないのに俺の行動を言い当てた。帰って隠しカメラや盗聴器の類がないか調べたがそんなことをしても無駄だと言われた、その発言通りどこにもそんなものは無かった。
ダメだな、ひょっとすると見通す力が本物であるなんて荒唐無稽な考えに陥っていまう。
まぁ、それが正しいのかもしれないけど。
名前は⋯⋯バニル人形だっけ?
あんな物を見せられたらそんな考えにもなってしまう。
本当に摩訶不思議で説明の付かない現象だった。
バニルが地面に座り込み、粘土のように土をこねて人型の形を作った。ただ、それだけで鉄骨を運ぼうと土人形が動き出したのだから。
──────訳がわからない。
もちろんこの後バニルを問いただした。
なんで動いているのか?どんな技術を使ったのか?地面があればいくらでも作れるのか?
どの問いも上手いように煙に巻かれたけど。
すっかり日が落ち空が暗くなってきたころ、俺は労働から解放された。現場監督と思わしきロボが本来の依頼分と追加依頼分の合計金額で払おうとしていたが、バニルに500円で良いと言われて逆にバニルを心配していた。あまりに心配するその想いが強すぎたのかバニルが少し戸惑っていた。
それを見て少し安心した自分がいた。
謎の多いバニルにも感情があるのだと、俺と一つでも共通する物があるのだとそう思うことで俺が無意識に感じていた圧迫感が薄れた気がした。
そう考えてしまう自分が少し悔しかった。