この透き通る世界に見透す悪魔を!   作:グラグラント

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権力者、おかしな娘、おかしな鳥

 

 

 

リフラフとバニルはブラックマーケットとは一風変わった街並みを歩いていた。

 

石やレンガを使った建築、白を基調とした上品で洗練された建造物の数々、裕福な高級住宅街だ。

西洋建築と呼ばれるそれらは、我輩をどこか懐かしく思わせた。

 

それにしても、我輩へ向けられる好奇や奇異の目が止まらない。誰も彼もが我輩の容姿と仮面を舐めるようにじろじろと見てくるのだ。リフラフが一緒にいることもその一因だろう。

 

少し話が脱線するが我々がトリニティ自治区に出向く際にリフラフはブラックマーケットの外に出ることを嫌がっていたが、我輩と"お話"をするとすっかりもの静かになり素直について来た、のだが⋯⋯⋯

 

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

 

ふーむ、どうしたものか。周囲の雑音がよく聞こえるな。

思いの外、怯えさせてしまったらしい。今もチラチラと我輩の様子を伺っている。

これは我輩も予想外。此奴が必死に舌を回してギャーギャーと嫌がる様子をやかましく思ったのは事実だが少し圧をかけ過ぎたな。

 

 

「な、なぁ バニル、どうして俺も行かないといけないんだ?その⋯昨日まではそんなこと言ってなかっただろ?」

 

「⋯⋯⋯ハァ、今回の依頼に関しては汝の力が必要である。そう判断しただけだ。」

 

「そ、そうか」

 

もちろん嘘である。

リフラフめ、どうやら何か裏があるんじゃないかと疑っていたようだ。その疑念は間違っていない。依頼はカモフラージュ、正直に言ってこんな依頼、我輩一人で事足りる。

 

リフラフを連れてくる必要など本来無いのだが未来を覗き視たところ、どうやら再び奴がどうにか我輩に会おうと訪ねてくるようだ。

 

我輩が留守にしている間にリフラフに接触され我輩へ伝言の一つでも頼まれる訳にはいかない。そんなトップ・オブ・トップから頼み事など見通すまでもなく厄介事に決まっている。まさか本人がやって来るなどと誰が思うか。

相談の依頼を断ったからか?店の前に置いてあった書き置きをそのまま捨て置いたからか?しかし、これは困った。しつこい、しつこ過ぎる存外 暇なのか連邦生徒会は。

 

内心で巷でなくとも噂の絶えない超人様に悪態をついていると待ち合わせ場所である噴水の前に辿り着いた。あの白い鳥のようなキャラクターのリュックを背負った明るいブロンドのツインテール娘が今回の依頼主だ。キョロキョロと周りを見てようやく気づいたらしい。

 

「あの、もしかして、その仮面は、よろず屋バニルの方ですか?」

 

「如何にも我輩がよろず屋バニルを営む者。我輩の名は店の名と同じバニルである。ちなみにコレは我輩の助手、名はリフラフだ。汝が今回の依頼主ということで間違いないな?」

「⋯⋯⋯⋯よろしく。」

 

「はい。えっと、初めまして、私は阿慈谷ヒフミって言います。今日はよろしくお願いします!」

 

「初めましてはそこそこに確認させていただこう、依頼内容は“護衛”ということで間違いないな?」

 

「はい!ブラックマーケットは危険な場所だと聞いたので依頼を───」

 

「待て、ブラックマーケットだと?」 

 

ぐぬう、力を使うべきだったな、これでは意味がないではないか。せっかく、せっかく、ブラックマーケットから離れたというのに⋯⋯!

 

「ブラックマーケットなら滅多に手に入らない貴重な品が売られてると聞いて目当ての物を買うまでの間だけでも護衛をお願いしたいんです!」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯粗方把握した。ところで目当ての物とは具体的に何を買うつもりなのだ?」

 

「おいバニルあんまり踏み込むのは⋯⋯⋯」

 

「そんなことは知ったことではない。だいたいそれは裏社会ブラックマーケットの掟だろう?我輩は至誠の心で忠実に依頼を────」

 

「ペロロ様です」

 

「「は?」」

 

「ペロロ?」

「何処かで聞いた名だ⋯⋯たしか、我輩の記憶が正しければモモフレンズとか言うキャラクターブランドの内の一体だったはず」

 

「ペロロ様です!」

 

⋯⋯⋯なんだ?脳内がペロロに侵食されて小娘のテンションが妙なことになっておるな。此奴、大丈夫なのか?あの爆裂娘に似たものを感じる。

 

「⋯つまりなんだアンタはそんなグッズのためにわざわざブラックマーケットへ行くつもりなのか?」

 

 リフラフは呆れた様子で理解ができないと、頭を押さえて言った。

 

「そんなグッズ!?聞き捨てなりません!リフラフさんには一度ペロロ様の魅力を理解してもらう必要がありそうです!まず、この何を考えているか分からないこの顔が───────────」

 

 そんなリフラフにヒフミは過剰なまでの反応を示した。

 

 期間限定だったのか買い損ね、探し回っても見つからずそれでも諦めきれずにブラックマーケットならと目星をつけた、というところか。客観的に見て、危険地帯と言われる場所にこんな実績もないような よろず屋に護衛を頼んでノコノコと行くつもりだったなんて⋯⋯⋯⋯いや、本当に大丈夫か?

 

 

 リフラフと阿慈谷ヒフミのやかましい会話を聞き流し、言い放つ。

 

「では、さっさと済ませてしまおうか。向かうぞブラックマーケットに!」

 

 

 

 

  ◤--------------------------------------------------------◥

         【クエスト】                 

  

     ・自称普通の少女を護衛せよ!

 

  ※注意事項

  ・とある権力者に会わないこと。    

  ◣--------------------------------------------------------◢

                           

 

 

              

 

 

 

「待てや、コラァ!!」

「逃げんじゃねぇ!」

 

 

 ブラックマーケット中心部付近、リフラフ達は大勢の仲間を引き連れたスケバンに背を向け、ひたすらに走っていた。

 

 事の発端は、ヒフミを狙って誘拐、拉致しようとした数人のスケバンたちをバニルが追い払った事だ。

追い払われたスケバン共は仲間を呼び付け、あわや再度バニルとスケバンが交戦しかける事態となった。これ以上騒ぎが大きくなればマーケットガードが出張って来る、それを恐れた俺はバニルを説得し、逃走という選択を取った。

 

 ところが一方、バニルはと言うと薄ら笑いを浮かべどこかこの状況を楽しんでいるように見える。

 

「フハハハハハハッ!逃げるなと言われて素直に立ち止まる者がいると思うか?それにしても、これほど追っ手の足が遅いとは。罠かと疑いたくなるというものだ!」

 

 

「このッ馬鹿に、しやがって!」

 

 

パパパパパパパパパパパパッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────パパッ!

 

 

 

 

 

 

 背後で発砲音が轟き、刹那足元に着弾する。

 

「おっと、趣味に並々ならぬ情熱を注ぐ娘よ失礼する。しっかりとつかまっておくがいい。それと我が下僕よ、そんなにノロノロと走っていては爆発に巻き込まれるぞ?」

 

「へっ!?バ、バニルさん!?う、うわああああぁぁぁぁ!」

 

 

 そう言い、阿慈谷ヒフミの背中に手を回しもう片方の手は足を支えて抱き上げる。俗に言うお姫様抱っこの状態となった。そのままバニルは「フハハハハッ!」と笑い声を響かせながらぐんぐんと足を速める。

 

 一瞬にしてバニルはスケバンと150mほどの距離を突き放し、到底人間とは思えない走りを見せた。

 

((は?速すぎだろ⋯⋯))

 

 それを目撃した彼らは目を点にして、暫くフリーズする。リフラフがいち早くハッと我に返り、再び走り出し、続く形でスケバンたちも行動を再開する。

その時であった⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 

 

────────────キンッ

 

 

 路地裏に隠れていたであろうスケバンが手榴弾のピンを抜き、リフラフに向けて投げつける。バニルとヒフミは速すぎて無理だと判断したらしい。

 

 この状況下で手榴弾を?やむを得ないこの穢れた地に足をつけたくはないが。

 

───バチバチッッ

 

 その瞬間、爆発の連鎖が始まった。間を置かぬ破裂音。連なる衝撃波が空気を揺らす。しかし、風が吹き抜け土煙が晴れるその時、そこにリフラフの姿はなかった。

 

 

 

 

「あの、お二人ともありがとうございました。おかげさまで無事に限定品のマトリョーシカペロロ様を買えました!」

 再びトリニティ自治区巨大噴水前にて

 

 胸の前で大切そうにペロロを抱き抱え、興奮が抑えられない様子だ。ここに帰ってくるまでも少し上の空だった。そんなヒフミとは対照的にバニルは鬱屈とした空気を纏っている。

 

 スケバンからヒフミと共にリフラフを置いて逃げていた時、我輩はこの日一番の危機に瀕した。

 何ということか、騒ぎを聞きつけたのか進行方向からサングラス型の─魔力に似た何かを感じる─物を着けてフードを被り、お粗末な変装した奴が歩いて来ているではないか!

 

 まあ、なんとかその場をやり過ごすことに成功してリフラフとも連絡を取り無事依頼を完遂したわけだ。

 奴と目が合ったときの我輩の目に映る情報量の多さに軽く目眩を起こした、今度また奴を視る機会があれば少し見通す力をしぼっておかねばなるまい。

 ヒフミから五百円を回収しているとリフラフが口を開いた。

 

「今回の件でもう分かっただろ、あそこはヒフミの様な人が来ていい場所じゃない。今後、ブラックマーケットには近づくな」

 

 ゆっくりと諭すようなその声にはぶっきらぼうながらも確かなやさしさが感じられた。それを聞いたバニルは仮面を押さえて、ヒフミのことをじーっと見ながら呆れたように溜息を吐いた。

 

「無駄だ。このペロロを手に入れるためならどんな手段も視野に入れる娘が、今回の1回限りで終わるはずが無かろう」

「⋯⋯⋯⋯⋯そうか」

「あ、あはは⋯⋯」

「笑い事ではないわッ!ペロロを愛する余り、重要な物事すらほっぽり出しそうな娘よ」

 我輩がそう言うとリフラフも察したようにジト目でヒフミを見る。依頼も終えたことだしそろそろお暇する時間であるな。

「ふぅ、では我々とは此処でお別れだ。暫しの時間であったがご利用有難う御座いました。

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯もし、ブラックマーケットに用がある際はどうぞ『よろず屋バニル』をご贔屓に」

 

 

 バニルは、ゆったりとした丁寧かつ狂い無き所作で右手を胸に当てヒフミに対し、礼をした。

 

 バニルからすればいつものことだが流石は我輩といったところか。目の前少女は違ったらしい、目をぱちくりと瞬きし視線は我輩に釘付けだ。実に感受性の良い目を持ってる。

 

 こうして少し、趣味に熱い想いを持つ者からの依頼を終えたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




権力者?誰なんでしょうね?どうやってやり過ごしたんでしょうね?いずれ分かるはず……
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