イキヅライブ!イフ・デイズ!!   作:まりりん@週刊ミモリ

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こちらでは初投稿になります。男主人公ものなので一応注意喚起しておきます。


もう一度!しゃるうぃー?ダンス!!

──ねえ、キミも踊ろうよ!

 

記憶の中の少女が、僕に手を差し出す。僕はその手を、振り払う。

なんて事はない。勉強やスポーツに興味が無いのと同じで、ダンスにも興味が無い。それだけだ。

彼女も、同じだと思った。何日か無視していれば、いなくなったり、いずれ声をかけてこなくなる。……しかし、彼女に限っては……いなくなったのは、僕の方だった。結局、転校するその日まで彼女は僕に声をかけてきた。

 

 

L高での生活に、早くも慣れてきた。自分に合ったカリキュラムを組み、オンラインの授業で同級生との関わりも少なく済む。正直言って、かなり気楽だ。両親の反対を押し切ってまで選んだ甲斐がある。

L高にはサテライトと呼ばれる、大学で言うところのキャンパス?みたいなものがある。僕は今の住所に近いということで浅草サテライトの所属だが、外に出なくていいので雷門はここ最近全く見ていない。

その日も、授業を終えて授業用のライブ配信ルームの退出ボタンをクリックしようとしたその時。自分宛に同級生からチャットが書き込まれた。

 

『上田くん……だよね?』

 

書き込み主は……高橋ポルカ。

…………忘れもしない。こんな特徴的すぎる名前。

それから数拍おいて、今度はスマホの通知音が鳴る。

慌ててライブ配信ルームを退出し、スマホを確認する。すると、今度はチャットアプリで声をかけられていた。

 

『ね!』

『上田くん、L高だったんだ!』

『(よく分からないスタンプ)』

 

……こちらも、高橋ポルカ。

小学校の頃のクラスメイト。5年生の頃今の街に僕たち一家が引っ越すまで過ごした学校で、いつも同じクラスだった唯一の子。いつかクラスの一軍が声をかけて作ったクラスグループから、僕の個人アカウントにアクセスしたようだ。

これで間違いない。彼女も、L高生ということだ。……小学校時代の知り合いなんてもう会うこともないと思っていたが、世の中何があるか分からないものだ。

 

『うん』

 

……送った後で随分薄情な返信だと思いつつも、それ以外思いつかなかったのでそう反応する。かつてどんな風に話していたか思い返そうにも、スクロールできるようなチャット履歴が無いのだ。

 

『やっぱり!!!!』

『ね、これから会おうよ!』

『浅草サテライトってことは、そんな遠くないんでしょ?』

 

続けて、彼女は近くの駅前のコーヒーチェーン店を指定してきた。確かに、ここならそれほど時間はかからない。僕は反射的に了承し、すぐさま出かける準備をして家を出て駅に──

 

「──なんで、会うのOKしたんだっけ」

高校生となった彼女……高橋ポルカとコーヒーチェーン店で会って最初に出た言葉は、それだった。

「ひっどお!上田くん、即レスしてくれたのに!」

向かいの席で、彼女は握り拳をテーブルに叩きつける。丁度電車が駅を通ってくれたおかげで、周りの視線にはそれほど晒されていない。

「いや、だって……僕、別にポルカ……さんと、そんな絡みあったっけなって」

「あったよ!ポルカ毎日上田くんに話しかけたもん!」

「あれ、絡みのうちに入らなくない?」

「あと、さんじゃなくて呼び捨て!ポルカって呼んで!」

「え、えっと……ポルカ」

小学校時代は呼び捨てだったような気もするが、高校生にもなると女子を呼び捨てするのはそれなりに気恥ずかしい。しかも目の前の少女は、朧げな記憶の中の彼女から随分成長しており……なんと言うか、その、少なくとも見た目は美少女だ。

「うんうん、いいね!えっと……それで」

「それで?」

「……何話そっか!」

昔読んだ昭和の漫画なら、今頃僕は席からずっこけて頭を床に打ち付けていただろう。

「何か用事があったんじゃないの!?」

「無いよ!」

「開き直った!」

「上田くんと幼馴染として学校生活送れるかも!って思って、気がついたら今で……」

「えぇ……」

「あ、ポルカも名前で呼ばないと不公平だよね!──(すすむ)くん」

家族以外からの名前呼びに慣れないからか、不意に頬が熱くなる。熱を誤魔化すように、こちらから話題を振る。

「ま、待ってよ。用事が無いって……電車だってタダじゃないんだけど」

電車と言っても山手線一本、数駅だけなので、少額といえば少額だ。しかしそれでも、気にせずいられるほどお金持ちではない。

「うぅ、ごめん。……あ、そうだ!」

切り替えるように、ポルカがぱっと明るい笑顔を浮かべる。

「あるよ、用事!──スクールアイドル、やらない?」

「え?」

 

聞く話によると、L高の経営危機を知ったポルカがスクールアイドルなるもので入学者数を増やそうとしているらしい。まだ具体的な活動はしていないものの既に数人に声をかけ、仲間も増えているそうだ。そしてポルカ曰く、

「今までのスクールアイドルの型に囚われない、男の子のスクールアイドル!そういうのも、L高らしいと思うんだ!」

……だそうだ。

「ね、どう!?進くんもさ、L高無くなったら困るでしょ?」

「そりゃ、そうだけど」

「私達にさ、経営をどうこうするのは無理じゃん?だからさ、学校を盛り上げる的な方向なら──」

「──アイドルなんて、興味無いよ」

「えっ……」

勉強にも、スポーツにも興味無い。だから熱中もしないし、好成績も出ない。そして、他に熱中できるほどハマっているものも無い。だからこそ、僕はL高を選んだ。そしてそのスタンスは、そう簡単には変わらない。

「ポルカ、覚えてる?小学校の時さ、ポルカはいっつも踊ってて。それで、俺とか友達を踊りに誘ってたじゃん」

記憶の中の少女が、僕に手を差し出す。僕はその手を、振り払う。

「……あの時と同じだよ。僕はダンスも、アイドルも……興味が無い」

L高なら、何かに興味を持てるかもしれない。時間だけは空くし、ネットで見た……モラトリアム、ってやつが生まれるから。そう思って、ここに来た。

「いーや、絶対進くんと活動する!」

ポルカは席から身を乗り出し、こちらを覗き込む。

「ポルカ、諦めないから!今度こそ、進くんと……」

踊ってみせる。

そう宣言したポルカの説得は、その日だけでも2時間に及んだ。

 

それから連日、僕はポルカの勧誘を躱す日々が続いた。彼女はあの手この手で僕にスクールアイドルの魅力を伝えてきた。

魅力があることは理解したが、それを自分がやるとなると話は大きく変わる。いくらスクールアイドルが未経験者歓迎だとしても、向き不向きはあるはずだ。

そんな日々が続くある日、気まぐれに配信授業ではなく直接教室に向かって授業を受けると……授業終わりに、4人の女子生徒に声をかけられた。

1人はポルカ。ほかの3人は、顔も知らない。

「じゃーん!進くん、前に話したポルカの仲間だよ!」

ポルカの少し後ろにいる3人の女子生徒を見やる。反応は様々だ。

「みんな、彼がポルカの話してた上田進くん!」

今度はポルカが、3人の方へ振り向いて声をかける。

「初めまして、お話はかねがね伺っております。私は駒形花火、ぜひごひいきに」

初めに声をかけてきたのは、ストレートの長い黒髪を綺麗に整えた……いかにも、ヤマトナデシコといった感じの女子生徒。何故か着物姿だ。

「えっと、私は五桐玲。まあ、よろしく」

次いで、いかにもスポーツ好きといった雰囲気のポニーテールの少女が声をかけてくる。そういうタイプには珍しく、あまりガツガツした感じは無い。

「麻布麻衣。……ポルカ、こんな頼りなさそうな子で大丈夫なの?」

開口一番辛辣なのは、黒髪を短めに整えた少女。なんというか、いかにも近寄り難い雰囲気だ。

「頼りなくなんかないよ!進くんは……進くんは……」

必死に擁護しようとして口ごもるポルカを見ると、自分でも情けなくなってくる。悲しいほどに、他人に誇れるものがない。そんな僕たちを哀れんだのか、玲さんが口を開く。

「ねえ、どうしても上田くんにアイドルやってもらわなきゃダメなの?」

ポルカが、玲にポカンとした顔を向ける。

「例えば、そうだな──マネージャーとか、裏方みたいな……そういうのじゃダメなの?」

別にそこまでしてポルカに協力したい訳では無いのだが、どうやらポルカはあることないこと彼女達に吹き込んだらしい。そこに、麻衣さんが援護射撃を加える。

「うん、そういうのなら欲しいかも。私たちプレイヤーが運営面とか事務面までやってたら、効率悪いしね」

「マネージャー……進くんが、ポルカ達のマネージャー……」

ポルカがぶつぶつ呟きながら、僕と彼女達を交互に見る。そして、はっと勢いよく跳ねる。

「それもいい!進くん、マネージャーやらない!?」

……確かに、アイドルをやるよりはマシだ。スケジュール管理とか電話とか調整なんかのスキルは、将来就職する時にも役立つだろう。──そんな、軽い気持ちを、つい言葉にしてしまった。

「うん、いいかも」

ポルカの顔がみるみるうちに明るくなっていくのを見て、慌てて口を抑える。しかし、覆水盆に返らず。

 

「いやっ……たあぁぁぁーっ!!!」

 

その場で、ポルカは見たこともない謎の振り付けで踊り出した。……そういえばこんな子だったな、彼女は。

「進くんとっ、スクールアイドルっ!」

「マネージャーだぞ」

思わず口添えするが、またしても失言だ。

「マネージャーは、やって下さるってこと?」

花火さんが、にこやかにほほ笑みかける。

「あはは……私から言っておいてなんかアレだけど、その、ありがとね」

玲さんがトドメを刺す。……ここまで追い詰められた状況から断れるほど、僕のメンタルは強くなかった。

 

その日、5人で軽い打ち合わせを終えて解散すると、ポルカが横についてきた。

「家、こっちの方なの?」

「ううん?駅まで一緒に帰ろうかなって」

「はぁ……」

別に断る理由もないが、何でこんなことをするのかは気になる。付き合ってるわけでもあるまいに。

「えへへっ、あの頃からの夢少し叶っちゃった!進くんの一生懸命な姿、見られるかも!」

「え?」

「ほら、ポルカっていつも進くんをダンスに誘ってたでしょ?あれ、なんていうかさ……クールで静かな進くんが、何かに一生懸命になってる姿を見たかったんだよね」

「僕が?よくわかんない趣味だな」

「それは、だって──」

そこまで言って、ポルカは口ごもる。顔は伏せられ、表情は伺えない。このままでは気まずい沈黙を生みそうだったので、僕の方から言葉を続ける。

「まあいいや、やると決まったからにはやるよ。明日は、他のサテライトの人達とも会うんでしょ?」

話題が変わったことに食いつき、ポルカはぱっと顔を上げる。

「うん!皆すっごく可愛いんだよ!それにそれぞれ個性的で……!」

「えっと、それよりもさ。他のサテライトにもマネージャーとかっているの?」

「え?いないと思うけど」

「え?」

聞き捨てならない。てっきり、各サテライトに1人くらいはそういう存在がいるものだと思って、それならその人たちに手を貸してもらえば……と思っていたのだけれど。どうやら、大変な状況に巻き込まれてしまったらしい。

「進くんが、皆のサポートをするんだよ!大丈夫、私達も協力はするからさ」

 

私達──いきづらい部が!

 

僕と彼女達の、いきづらく青い日々が……始まる。




初めまして。久しぶりにラブライブシリーズにハマったので書きたいように投稿していきます。
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