A,ユーコ・オルテンシア
(巧妙なステルスマーケティング)
「レオン……レオン! もうすぐ到着するよ。ホラ、07番コロニー跡地。もう外壁も見えてるよ」
「ん……あ……ふぁ。オレ、どれぐらい寝てた?」
「20分ぐらい。珍しいね、トラックの中でそんなにグッスリ眠るなんて」
「そう、かな。そう……かも。うん、大丈夫。別に具合が悪いとかじゃないから」
眠気を追い払うように自分の顔を叩く。
少し、気が緩みすぎているのかもしれない。ゴーレム兵器を操縦できるのはオレしかいないんだから、護衛役として体調管理もしっかりしないとダメだな。
窓を開けて外の空気を吸い込む。埃っぽくて熱っぽい、エアコンが機能している車内と比べて何倍も不快だけど、思ったよりも目覚ましにはちょうどいいかもしれない。
────遠くに、ボロボロの外壁が見えた。
100年だか、200年だかは知らない。ただ、大昔は人類の文明ってヤツはものすごく栄えていたらしい。
空の向こう側、宇宙空間ってトコまで町を作って人が生活していたって話もある。
そういう話は面白いと思う。本当かどうか、は別にどうでもいい。どっちにしろオレには関係の無い話だから。
そこそこ読める程度に綺麗な雑誌とかを読んでいろんなことを想像するだけでも暇つぶしにはなる。
暇つぶし、か。
なんて贅沢な時間の使い方なんだか。
目的地の教会を目指すまで、相変わらず人々の視線が集まって少し鬱陶しい。でもオレもきっと同じような目でマイスターのことを見ていたのだろう。
錬金術師、それもゴーレム兵器を召喚できるゴーレムマイスター。このトラックもマイスターが貸してくれているモノだ。
幸運、なんだろう。きっと。労働力にさえなるなら、きっとオレである必要も無かったんだから。
「神父様、こんちわ。荷物、いつもの場所でいいの?」
「ありがとうございます。お陰様で以前と比べて随分と生活も安定しております。錬金術師様はもちろん、こうして物資を運んでくださる皆さんにはなんと感謝を申し上げればよいのか……」
「まぁ、仕事だから。それにタダで施しやってるワケじゃないし」
変なニオイのしない透明な水。食べやすい食事。
清潔な衣類に、混ざり物の無さそうな医薬品。
物資を待っていた大人たちと一緒にコイツらをまとめて倉庫へ運ぶ。
その代金として貰うのは旧時代の文明遺物を含めたスクラップだ。
錬金術師にとってはゴミもお宝もあんまり代わりない、ってマイスターは言っていたけど……たぶん、違うんだろうな。
スクラップを素材にゴーレム兵器を召喚できるのが普通なら、戦争はもっと酷いことになっていたって、素人のオレでも想像できる。
もっとも、その辺りの事情なんて正直どうでもいいけど。マイスターが優秀なら、雇われているオレたちの生活も安定する。
企業のお抱えになるより好きなだけ昼寝ができる生活のほうが価値が高い、って考え方も、オレはキライじゃないしな。
「へへッ、ウワサ話は本当だったか」
「水も食い物もタップリあるみてぇだなぁ? オイ!」
「ガキの運び屋なんて、いったい何処のバカが任せたりしたんだか」
「まぁいいじゃねぇか。お陰様で俺らのトコにしっかりと“運んで”くれてんだからよ?」
……はぁ。
仕方ない、か。オレたちみたいな子どもが相手ならそうなるのが、手頃な獲物だって考えるのが普通なんだし。
大人たちは動けない。
だから自衛手段ぐらいどうにかしなよ、って散々言ってたのに。
この集落も、いつかは潰れるだろうな。
それで?
相手は4人、拳銃持ち。
なんとなく、ニオイでわかる。コイツら大したことないな。きっと反撃されるような相手とケンカなんてしたことないタイプだ。
「あぁん? どうしたボウヤ、命乞いなら聞いてやるぜ。別に俺たちは殺しを楽しみたいんじゃねぇ、出すモノさえ出してよこしゃあ命までは取らねぇよ」
「そう、優しいんだねアンタ。だからって銃口を向けてきたヤツ相手に手加減するつもりなんてないけど」
「テメェ、なにを言って────」
マイスターが言うには、そのへんのチンピラの格闘能力を【12】とすると、オレの格闘能力は【25】ぐらいあるらしい。
それは連中と比べて2倍の力がある、って意味じゃなくて、それぐらい巧く戦えるってコトなんだとか。
だから。
「ぐぁッ?!」
「あのガキ、銃を蹴り上げて!?」
こういう芸当もできる。
それにしてもコイツら動きが悪いな。態度だけじゃなくて、こうして攻撃だってしてるっていうのに。
仲間がやられたんだから、そこは引き金を引くべきタイミングじゃないのか?
こんなザコに弾丸を使うのは正直、もったいないんだけど。
でもなんだか射撃の腕も低そうだし、手入れされてない拳銃の弾なんてドコ飛んでいくかわかんないし。
流れ弾がほかの子たちに当たるのもアレだしな。
懐からオレも拳銃を引き抜く。
スクラップを集めてマイスターから購入した真っ当な造りのヤツ。もちろん手入れだって毎日してる。
「ぎゃッ?!」
「ぴぎぃ?!」
ひとつ。
ふたつ。
「ま、待てッ! 待ってくれッ! お、お、俺たちが悪かったッ!」
みっつ、より先にギブアップか。別に殺したワケじゃない、手元を狙って銃を弾いただけなのにビビり過ぎじゃない?
それにしても、自分でやっといてなんだけどイカれてる腕前だな。射撃能力は格闘より高い【27】って言われたのもそうだけど、オレには先天的な空間を把握する能力? みたいなのがあるらしい。
よく見て狙って撃つよりも、感覚で“当たりそう”ってタイミングで撃てば当たると説明されたときは意味わかんなかったけど。
慣れてしまえば簡単なもので、複数人に囲まれたぐらいじゃ外しはしない。
とはいえ、この能力はコンディションの影響をかなり受けるみたいなのが弱点なんだけど。集中力が途切れるとダメ、ってことなのかもな。
「命までは取らないよ。でも拳銃は迷惑料としてもらっておくから。……いつまで睨んでるのさ。言っとくけど、オレはあとから命乞いなんて聞かないからね。ホラ、逃げるなら早く逃げなよ」
「く、くそがァッ!!」
気の利いた捨て台詞すら無し、か。
どっちかな? アレだけ小物だと反省するかしないか微妙なところだ。
オレに負けた腹いせに別の集落で略奪なりなんなりして憂さ晴らしとかしそうな気もする。
「た、助かりました……。隔壁の外側に、なにやら不審な人影を見かけた、という話は代表からも聞いていたのですが」
「気にしなくていいよ。たまたまオレたちがいたから助けられた、それだけのことだから」
だから、オレたちが居ないときに襲われて死人が出ても自己責任ってことで諦めてくれ。……とは、さすがに声には出さない。
自衛手段を強化するように、という忠告は何度かしている。というよりマイスターからある程度までは繰り返しするように言われた。
それでも、この集落の連中は備えなかった。
オレたちに守ってもらうつもりで一生懸命にスクラップを集めている。
瓦礫の山だって無限にあるワケじゃないのに、モノが無ければ縁なんて簡単に切れるだろうに。
「……あぁ、どうやらスクラップの積み込みも終わったようですね。本日の取引も、どうもありがとうございました。きっと代表も喜んでいることでしょう。次回も是非、よろしくお願いします」
「うん、神父様。またね」
交流する価値がある間はもちろん、オレたちだって仲良くするよ。価値がある間はね。
あとは姿も見せない顔も見せない代表とやらが先のことまで考えているかだけど……別に、そこにオレの責任は無いし。
「レオン。拳銃、貸してくれよ」
「いいよ。どう? 使えそう?」
「ちょい待ち。……あー、こりゃスッゲーびみょいな。ちゃんと手入れされてねーっぽい。ギリ予備にできなくもない、か? 一応修理してみっけど」
「使えるなら使おう。ダメなら資源としてマイスターに売ればいいよ。それにしてもユリアン、相変わらず手際イイね」
「んー? そう、だな……慣れってのもあるし、あとは気持ちの問題?」
「気持ちでいきなり器用になるワケ?」
「誰だって褒められりゃ嬉しいだろ。オマエだってゴーレム兵器を動かせるなんて、想像もしてなかったじゃん。特別な訓練が必要とかいう触れ込みはなんだったんだか」
「それも……そう、か」
これもマイスターの不思議な数字の話。
ゴーレム兵器を基準にして、まともに整備ができる能力の最低ラインを【5】とした場合、ユリアンの整備は【11】ぐらいあるとか。
仲間の中では1番器用だったし、壊れた発電機とかも昼間に拾っていたヤツを夜までに修理終わってたりしてたから、普通の2倍スゴいってのも納得かな。
だとしても、揺れるトラックの荷台で砂山を崩すみたいにサラサラっと拳銃を分解できるのは、もう、そういう天才なんじゃないかって気もする。機械いじりが上手とか、そういうのとは違うスキルじゃないかコレ。
『あー、あー、レオン。聞こえっか? レーダーに反応。残念だけど色は“赤”だ』
「……そう。さっきの連中かな?」
『かもな。ウワサ話がどうとか言ってたし、子どもの運び屋の話を聞いて流れてきたってんなら』
「ゴーレム兵器ぐらい用意してる、か。適当なタイミングで出るから、離れててよ」
『あいよッ!』
「ちょっと考えれば違和感に気づきそうなモンなんだけどな。テメェらより先に俺たちのこと、狙ったヤツはいなかったのかって」
「考えないから襲ってきたんじゃない? もし、同じ連中だとしたら、さっきのは偶然だから……えーと、ガキになんて」
「負けるはずがないッ! って、アレみんな打ち合わせでもしてんのかってぐらい同じコト言うよな。捻りが効いてないぜ、捻りがさ」
「仕方ないよ。本とか読みそうな感じじゃなかったし。じゃ、オレ。ちょっと潰してくるね」
「うぇ〜い。整備は今日もバッチリだぞ〜い」
高さ、だいたい3メートルぐらい。
たけど胴体に触れて魔力を繋げれば拡張空間に引き込まれ、そこには車の運転席ぐらいの広さがある。
ゴーレム兵器が戦車とかと比べて強力な兵器って言われてる理由がコレなんだって、自分で操縦するとズルいのが良くわかる。
だから、さっきの連中も……うん? それなら最初からゴーレム兵器に乗ったまま脅しにくれば早かったのに。
ま、どうでもいいか。
トラックのハンドルの代わり、丸っこい大きなガラス玉に手のひらで触れて魔力を流し込む。オレからゴーレムへ、そしてゴーレムからオレに、お互いの繋がりを強く認識する。
何度、繰り返しても不思議な視界だ。操縦席を見ているオレと、ゴーレムの視点で外を見ているオレ。ふたつの景色なのにオレの身体はひとつ、だけどそれぞれを認識して動かせる。
もしかしたら、コレに慣れるための訓練ってヤツが本当は必要なのかもしれない。
それとも、コレがマイスターが言っていた空間を把握する能力ってヤツがあるから見える景色なんだろうか?
「レオン。少しイジった感じ、前の戦いのときにゴーレムが成長したぶん出力もちょっとだけ上がってるかもしんねぇ。蹴りを使うときにバランス崩さないよう気をつけてな!」
「ん、わかった。ゴードン」
『おう! ブレーキ踏むぞ、つんのめるなよッ! 3、2、1ッ!』
「────レオン・ストレイド【ザクⅡJ型デザートカスタム】出るよ……ッ!」
《おいッ!? ゴーレムが出てきたぞッ!?》
《バカな、ガキの運び屋だって話じゃなかったのか!?》
《テメェら落ち着けッ! どうせ見掛け倒しに決まってるッ!》
困惑、かな?
なんとなく感情が伝わってくる。
ハハッ、楽な仕事だと思って甘く見てたワケだ。ありがたいことだ、立ち直る前に先に一発ブチ込めるんだから。
拡張空間からバズーカ砲を取り出す。
安く量産されているゴーレムが使うニードルガンとは違う、太さが20センチはある高級品だ。遠慮しないで食らいなよ?
狙い、1番手前。
旧式のハンマーポーンか。
《は? なんであんな武器を──ヒギャァァッ?!》
一撃。当然だね。
問題はコイツがどれだけ魔力を蓄えてたかって話だけど……まぁ、一発でパイロットごとバラバラになってるし。案の定、奪える魔力の量は大したことないかな。
ま、塵も積もれば山となるって言うし。コイツら全員ブッ壊せば、オレのザクも少しは成長してくれるだろう。少なくとも【蟲】をチマチマ狩るよりは期待できるはず。
さぁて。
頼むから、途中で逃げないでよ?
〚Mission START〛
☆The サブキャラクターズ☆
レオン・ストレイド
一般ランクD
魔力P380,性格:冷静
射撃値 27(+9)
格闘値 25(+9)
回避値 18(+9)
??? 3
指揮値 4
魅力値 8
通信 3
操舵 7
整備 2