ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 ――デビルサマナーは大正の夜にバグを穿つ――』   作:ガチャガチャクツワムシ

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無限の檻、観測の瞳

産屋敷への帰還報告を終えた駆は、邸の廊下で炎柱・煉獄杏寿郎に呼び止められた。

「……お、煉獄か。相変わらず声がデカいな」

「うむ! 丁度良いところへ戻ってくれた! これから俺は『無限列車』へ向かう! 下弦の鬼が潜んでいる可能性が高い任務だ! 共に来ないか!」

「……仕事熱心だね。分かったよ、付き合おう。少し用事を済ませてから合流する。リハビリには丁度いい」

――無限列車・車内

「うまい! うまい! うまい!」

 凄まじい声量で弁当を平らげる煉獄の向かいで、駆は車窓を流れる夜景を眺めていた。そこへ炭治郎たちが現れる。

「あ、神代さん! 煉獄さんと一緒だったんですね!」

「やあ、炭治郎。相変わらず騒がしい連れだね。……神代駆だ。よろしくね、少年たち。さて、積もる話は後だ。まずは仕事の話をしようか」

 駆は再会した炭治郎や初対面の善逸、伊之助を飄々といなし、懐にあるガンプの感触を確かめる。

 車掌が切符を切りに現れ、車内に不快な、湿り気を帯びた魔力が漂い始めた。

「……随分と湿気った魔力だ。リハビリの相手にしちゃ、少し退屈そうだな」

 駆は薄笑いを浮かべ、自らの意識を鋭く研ぎ澄ます。師匠の教え通り、内心の警戒は一切表に出さない。

――列車の屋根、あるいは夢の淵

「ああ……素晴らしい。なんて心地よい空気なんだろう」

 列車の屋根に立つ下弦の壱・魘夢は、恍惚とした表情で夜風を浴びていた。

 だが、その時。彼の身体に異変が走る。

 血管が異常な脈動を刻み、自身の血鬼術とは質の異なる、どす黒く強大なエネルギーが全身に溢れ出したのだ。

「ふふ……あははは! 凄い、力が滾る! これほどまでに……!

 ……そうか、あの方(無惨)は、これほどまでに私の働きを期待してくださっているのか」

 魘夢はその異質な力を、鬼舞辻無惨から与えられたさらなる血の恩恵だと思い込み、歓喜に震えた。

 その力が、無惨の呪いすら塗りつぶしかねない「悪魔の魔力」であることなど、微塵も疑わずに。

 

――境界の向こう側、観測者の部屋

 駆の元いた「こちらの世界」。

 薄暗い部屋で、人形遣いは椅子に深く腰掛け、手元にある一体の人形を愛でていた。

 その人形の瞳は、異界の門を超え、あちらの世界にある「何か」と視覚を共有している。

「ふふ……、見えているよ。楽しそうだね」

 人形遣いの指先が微かに動く。

 その糸の先、あちらの世界に潜ませた「何か」を通じて、人形遣いは無惨や魘夢ですら預かり知らない悪魔の能力を、列車の構造そのものに付与していた。

「……気づくかな、ヤタガラスのサマナーは。あるいは、あの鬼たちが先に壊れるか」

 知らずに眠りに落ちる乗客たち。ガンプに手をかける駆。

 人形遣いの「演出」によって、無限列車は鬼の術を越えた、真の魔窟へと変貌を遂げていた。

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