ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 ――デビルサマナーは大正の夜にバグを穿つ――』   作:ガチャガチャクツワムシ

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変質する夢、魔界の胎動

無限列車の乗客たちが深い眠りに落ちる中、車内には不気味な粘り気を帯びた魔力が満ち始めていた。

 列車の屋根で、下弦の壱・魘夢は己の内に溢れる「異質の力」に震えていた。

「ああ……これだ。これこそが、あの方(無惨)が私に期待された力……! ただの夢じゃない。夢が現実を喰らい、塗り潰していく!」

 彼の血鬼術は、人形遣いの干渉により悪魔の業**【魔界化(パンデモニウム)】**へと変質していた。もはや術者を倒せば解けるような代物ではない。この列車そのものが、現世から切り離された「実体を持つ異界」へと成り果てようとしていた。

――夢の中・炭治郎の深層意識

「家族が……みんな、生きてる……」

 炭治郎は温かな家族の輪の中にいた。だが、その幸福な光景の端々が、ノイズが走るように歪み始める。

 空はどす黒く濁り、雪は赤く染まり、家族の瞳からは感情が消え、まるで人形のように虚空を見つめ始めた。

「……違う。これは夢だ。起きなきゃいけないんだ!」

 炭治郎は己の首を斬り、強制的に覚醒を試みる。

 だが、現実は変わらない。

「な、何だ……!? 首を斬ったはずなのに、戻れない……!?」

 本来なら覚醒するはずの衝撃は、悪魔の能力**【精神・物理吸収】**によって異界の糧として吸い取られた。炭治郎は目覚めるどころか、体力を奪われ、より深い絶望の淵へと沈んでいく。

――無限列車・車内

 現実の車内でも、異変は加速していた。

 眠りについていた煉獄の身体を、どす黒い肉の触手が締め上げる。煉獄は無意識に気迫で対抗しようとするが、その熱量すらも「耐性」によって無効化され、ズルズルと闇に引き込まれていく。

 その中で唯一、一人の男だけが椅子に座ったまま、退屈そうに欠伸をした。

「……あーあ。案の定、ルールが変わっちゃってるじゃない」

 神代駆は、薄っすらと目を開けた。

 彼には、魘夢の術など最初から効いていない。修行で培った強靭な精神耐性と、人形遣いの「癖」を知るサマナーとしての直感が、干渉を弾き飛ばしていた。

「呼吸が効かない、物理も吸い取られる。……下弦の鬼にゃ過ぎたオモチャだね。悪趣味なことするなあ、あの人は」

 駆は懐からガンプを取り出し、ゆっくりと立ち上がる。

 周囲の空間は、肉壁と眼球が蠢く「魔界」へと変貌し、炭治郎や煉獄たちはその一部として取り込まれようとしていた。

「おーい、炭治郎。煉獄。聞こえてる? ……まあ無理か。悪いけど、ここからは剣士(きみら)の仕事じゃないんだ」

 駆は冷徹な光を瞳に宿し、ガンプの銃口を、空間そのものに向けて固定する。

「ここから先は、サマナーの領分だ。……コイツらを起こす前に、まずは掃除から始めようか」

 駆がシリンダーを弾くと、ガンプから「万能属性」の淡い光が漏れ出す。

 人形遣いの思惑が駆け巡るなか、八咫烏のサマナーによる、異界解体のリハビリが幕を開けた。

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