ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 ――デビルサマナーは大正の夜にバグを穿つ――』   作:ガチャガチャクツワムシ

24 / 92
目覚めの銃声、冥府の番犬

肉壁と眼球がグチャグチャに蠢く、もはや列車とも呼べない「魔界」。そのど真ん中で、神代駆は欠伸をしながら立ち上がった。

 周りでは、煉獄や炭治郎たちがどす黒い触手に絡め取られ、エナジーをズルズル吸い取られている。

「……随分と、深い眠りだねぇ。悪魔の力が混じっちゃ、自力で起きるのは無理か」

 駆は懐からガンプを取り出し、シリンダーを弾いて装填を確認した。

 師匠の教え通り、内心の警戒はこれっぽっちも表に出さない。ただの「仕事」だと自分に言い聞かせ、飄々とした態度のまま虚空に銃口を向ける。

「……ま、まずはパシリからだ。ザントマン、来なよ」

 ガンプのトリガーを引くと、銃口から魔力が弾け、空間が歪んだ。

 現れたのは、とんがり帽子を被った小柄な悪魔――ザントマンだ。

「ひひっ、お呼びですか、サマナー」

「仕事だよ。ザントマン、お前の『眠りの砂』を使いな。……ただし、寝かせるんじゃなくて、あいつらの『夢』に干渉して、俺の声を無理やり繋げ」

 駆は不敵な薄笑いを浮かべたまま命じる。

「合点承知! ひひっ、お安い御用で、サマナー!」

――夢の中・炭治郎の深層意識

「家族が……みんな、生きてる……」

 炭治郎は温かな家族の輪の中にいた。だが、その光景が悪魔の力でどす黒く歪み始める。本来なら首を斬れば起きられるはずが、その覚醒のエネルギーすらも、人形遣いが仕込んだ【精神吸収】のエサにされていた。

『……よぉ、炭治郎。聞こえてる?』

 その時、炭治郎の脳内に、いつもの駆の食えない声が響いた。

「え……神代、さん……?」

『相変わらず、騒がしい夢を見てるねぇ。……悪いけど、ここからは剣士(きみら)の仕事じゃないんだ。君の首を斬る覚悟も、熱量も、全部あいつらのエサになってる。……だから、ここからはサマナーの領分だ』

「あ……く、ま……?」

『そう。ルールが変わっちゃってるんだよね。……ま、俺が『道』を作るまで、その絶望とやらを精々耐え抜いてなよ』

――無限列車・車内

 ザントマンが役割を終えて消えると、駆はガンプの銃口を、蠢く列車の深部へと向けた。

「呼吸が効かない、物理も吸い取られる。……下弦の鬼にゃ過ぎたオモチャだ。悪趣味なことするなぁ、あいつは」

 駆の瞳に、冷徹なサマナーの光が宿る。

「さて……。パシリの次は、掃除(リハビリ)の相手を呼ぶか」

 駆はガンプのシリンダーを回し、魔力を込めた。

「……冥府の番犬。ケルベロス、来なよ」

 ドォォォォンッ! という轟音と共に、車内を地獄の業火が焼き尽くす。

 そこから現れたのは、白銀の身体を持つ獅子の様な姿をした――ケルベロスだ。

『……サマナー、命じろ。焼き尽くせばいいのか』

 ケルベロスが吐き出す冥府の焔は、人形遣いが付与した悪魔の耐性すら無視して、魔界化した肉壁を消し炭に変えていく。

「……さあ、ケルベロス。リハビリの時間だ。派手にやろうか」

 駆はケルベロスの背を軽く叩くと、ガンプを構えた。

 ヤタガラスのサマナーが、悪魔の混じったこの魔窟を、力ずくで「解体」し始める。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。