ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 ――デビルサマナーは大正の夜にバグを穿つ――』 作:ガチャガチャクツワムシ
魘夢との戦いが終わり、列車が横転する惨事となったものの、炭治郎たちの奮闘により乗客は一人として命を落とすことはなかった。
しかし、安堵の息をつく暇もなく、その男は現れた。
突如として響き渡る轟音とともに、地面に巨大なクレーターが穿たれる。土煙の中から現れたのは、上弦の参・猗窩座。その圧倒的な圧力を前に、炭治郎は息を呑み、煉獄は即座に刀の柄に手をかけた。
「……いい闘気だ。練り上げられている」
猗窩座の狙いは、強者――煉獄杏寿郎だった。「鬼にならないか?」という誘いを一蹴した煉獄と、闘争のみを渇望する猗窩座。二人の激突は、常人の目では追えない速度の乱打戦へと発展した。
ドォォォォンッ!!
空気を裂く衝撃波と、土砂が舞い上がる激しい戦闘音が周囲一帯に響き渡る。
――少し離れた列車の残骸付近
駆は、魘夢の消滅地点に残された生体MAGの残滓を調査器具(COMP)でスキャンしていた。
「属性耐性のプログラム……。やっぱりあいつ、こっちの世界の『理』にまで干渉し始めてるねぇ」
独りごちる駆の耳に、遠くから空気を引き裂くような、先ほどまでとは比較にならない激しい戦闘音が届いた。
「……おっと、派手にやってるねぇ。あの熱量、煉獄の奴かな? ……それに、この嫌な空気(プレッシャー)。さっきの鬼の比じゃないな」
駆は調査を切り上げると、ガンプを軽く回して懐に収めた。師匠の教え通り、内心の警戒は表に見せず、しかし脚には確かな魔力を込めて地を蹴る。
「……あーあ。リハビリにしては、ちょっとメニューが重すぎやしないかな」
――激戦地
「術式展開、破壊殺・羅針!」
猗窩座の拳が煉獄の脇腹をかすめ、衝撃波が地面を抉る。煉獄の炎の呼吸もまた、猗窩座の肉体を斬り裂くが、瞬時に再生する鬼の肉体には決定打とならない。
「死んでしまうぞ、杏寿郎! 鬼になれば、その素晴らしい才能を永遠に磨き続けられる!」
「断る! 俺は俺の責務を全うする!」
再び二人が交錯しようとしたその瞬間。
両者の間に、一発の銃声が鳴り響いた。
パァンッ!!
放たれたのはただの弾丸ではない。青白い魔力を帯びたその一撃は、猗窩座が踏み込もうとした足元の地面を正確に穿ち、強制的にその踏み込みを逸らさせた。
「……悪いね。ちょっとお邪魔させてもらうよ」
土煙を割りながら、ポケットに手を突っ込んだままの駆が悠然と姿を現した。
「神代、少年……!?」
驚愕に目を見開く煉獄の前に、駆は平然と立ち、ガンプをクルリと回して猗窩座に向けた。
「……いい闘気だねぇ、お前さん。でも、煉獄は今『俺』と大事な話(仕事)の途中なんだ。……邪魔するなら、代わりの相手をさせてもらうよ?」
駆は不敵な薄笑いを浮かべ、ガンプのシリンダーを軽く弾いた。その瞳には、相手を「掃除対象」として見定める、冷徹なサマナーの光が宿っていた。