ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 ――デビルサマナーは大正の夜にバグを穿つ――』   作:ガチャガチャクツワムシ

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無限城・三界の圧壊

 ──パキィィィィィン!! 

 無限城の全域を、耳を劈く「空間が割れる音」が震撼させた。

 人形使いが管理する因果律の糸が、外側からの圧倒的な暴力によって、無造作に、そして無残に引き千切られたのである。

「……おや。あはは、これはまた……。ボクの特等席に、ずいぶんと無作法なゲストが来たものだね」

 人形使いは、焦るどころか、むしろ感嘆のため息を漏らした。彼が見つめるスクリーンの内側、三つの主要戦域のうち2つの「空間」が、内側から強引に抉じ開けられていた。

 炭治郎と義勇が死の淵に立たされたその刹那、漆黒の刺青を輝かせ、虚無の瞳を持つ少年──人修羅が降臨した。

 彼がそこに立つだけで、周囲の重力が増したかのような「物理的な圧」が空間を支配する。

「な、なんだ……この圧(プレッシャー)は……。羅針が、羅針が全く反応しない……!?」

 猗窩座は驚愕に目を見開く。至高の武という概念が、少年の放つ「混沌」によって砂の城のように圧壊を始めていた。

 悲鳴嶼たちの命を刈り取ろうとしたフツヌシの刃を、退魔の緑光が遮った。十四代目・葛葉ライドウ。

 彼が刀の鯉口を切る音一つで、城を満たす呪いが霧散し、静謐だが鋭利な「退魔の圧」が場を凍り付かせる。

「……この気配……。侍ではない……。だが、この……魂まで切り裂くような静かな圧……何者だ……」

 最強の剣士・黒死牟が、生まれて初めて「消滅」の恐怖に身を固くした。

  そして童磨の戦場。カグツチとスルトの二大神火を背負う駆の背後に、二人の戦友の「圧」が時空を超えて伝播する。

「……あの二人、来るのが少し早いんだわ。せっかく、この『ガラクタ教祖』の心を折ってやろうと思ってたのに」

 駆はガンプを肩に担ぎ直し、不敵に笑う。その横では、死の冷気に耐えていたカナヲと伊之助が、熱風の中で目を見開いていた。

「……信じられない。空気が、一瞬で変わった……。あの存在、駆さんの……味方なの?」

 カナヲは、震える手で刀を握り直す。絶望の先に、ありえないほどの巨大な「希望」が降臨したことを悟った。

「カッカッカ! よく分からねえが、すげえ熱気だ! 氷の野郎がビビってやがるぜ! 焼いちまえ、駆のダンナ!」

 伊之助が、スルトの熱風を浴びて咆哮する。

 ⅩⅩⅩ. 終焉の序曲:剥がされる虚飾

 「……この圧は駆さん以上……。ふふ、駆さん……。あなたの周りには、いつも理屈じゃない『奇跡』が集まるのですね」

 しのぶは、薄く微笑んだ。

「……あはは、なんだい、君たちもお友達? とっても強そうだね。でも、ボクの氷は死なないんだよ」

「……悪いな、氷野郎。あんたが自慢してるその『悪魔との融合』、こいつらの前じゃただの『初心者の悪あがき』に見えるんだわ。3年前よりもっと、酷いことにしてやるよ」

 駆の指先から放たれる魔力が、ヒノカグツチとスルトの炎を極限まで膨れ上がらせた。

 「──素晴らしい! 最高だ! 神代駆、君という男は、これだから目が離せない!」

 人形使いは、文字通り飛び跳ねていた。目の前のモニター群は異常値を吐き出し続けているが、彼には心地よい音楽に過ぎない。

「予定調和の悲劇を、外側からの暴力で粉砕する……! あははは! 君は私を喜ばせる天才だよ!」

 人修羅に圧壊される猗窩座、ライドウに切り捨てられる黒死牟、そして二大火神に蒸発させられる童磨。

「さあ、見せてくれ! このまま全てを焼き尽くし、私の目の前まで辿り着いてみせろ! その時、君という『不確定要素』が私をどう殺してくれるのか……私は今、猛烈に感動しているんだ!」

 人形使いの哄笑が、激しく揺れる無限城に響き渡った。

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