ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 ――デビルサマナーは大正の夜にバグを穿つ――』 作:ガチャガチャクツワムシ
無限城の畳を蹴り、瓦礫の山へと着地した神代駆の背後で、召喚されたスルトとヒノカグツチが凄まじい熱波を放つ。鳴女の消滅と共に城は完全に自壊し、夜の市街地へとその断面を晒し出した。
「神代さん! 助かりました、ありがとうございますっ!」
駆け寄る恋柱・甘露寺蜜璃の瞳には安堵と、この場にいないしのぶへの不安に揺れる。その隣で、蛇柱・伊黒小芭内は蛇のような鋭い視線を駆へと向けた。
「……説明しろ。貴様が仕留めたのか。それと、胡蝶はどうした」
駆は愛銃ガンプの熱を逃がしながら、冷徹に告げた。
「鳴女は消した。……それとしのぶだが、人形師に攫われた。俺を誘い出すための人質としてな」
その言葉に伊黒の殺気が膨れ上がる。だが、怒りが爆発するよりも早く、瓦礫の向こうから地を震わせる足音が響き渡った。
「遅れたな! だが、こいつぁ派手に間に合ったぜ!」
爆煙を切り裂き現れたのは、音柱・宇髄天元。その背後には炭治郎たち若き隊士が続く。さらに別の方角からは、地響きと共に岩柱・悲鳴嶼行冥と風柱・不死川実弥が合流した。
それだけではない。霧の中から音もなく姿を現したのは、無表情ながらも瞳に静かな怒りを宿した霞柱・時透無一郎。そして、燃え盛るような羽織を翻し、重傷を負いながらもその闘気を一切衰えさせていない炎柱・煉獄杏寿郎が、富岡義勇と共に現れた。
「水」「炎」「岩」「風」「音」「蛇」「恋」「霞」。
今、この場に「八人の柱」が揃い踏み、神代駆という異邦の戦士と共に無惨を包囲したのだ。
「神代殿、息災で何より……。南無阿弥陀仏、共にこの業を断ち切りましょう」
悲鳴嶼が数珠を鳴らし、宇髄が不敵に笑う。
「遅ェんだよ駆! 派手なモン引き連れてんじゃねェか……。あァ、後で酒奢れよ!」
地獄のような戦場に、一瞬だけ確かな絆が通い合った。だが、それを嘲笑うかのように、人形師のノイズ混じりの「声」が響き渡る。
『おやおや、素晴らしい。これだけの「役者」が一堂に会するとは、まさに壮観だね』
見えない椅子に座り、喉を鳴らす人形師の笑い声。
『安心していい、神代駆。君の「大事な彼女」も、私のすぐ隣で心地よさそうに眠っているよ。この最高の悲劇を、特等席で見届けてもらうためにね』
「テメェ……汚ねェ声で喋ってんじゃねェよォ! どこに隠れてやがる、ブチ殺してやるッ!」
実弥が激昂し、炭治郎が叫ぶ。だが、駆は極限まで研ぎ澄まされた冷徹な怒りで、ガンプを眼前の元凶——鬼舞辻無惨へと向けた。
「……見てるんだろ、人形師。テメエは後回しだ。まずは目の前のこのゴミを掃除して、その後にテメエのところに直接『挨拶』に行ってやる」
左右にスルトとヒノカグツチを構えさせ、駆は集結した柱たちへと短く言い放つ。
「全員、死ぬんじゃねえぞ。……しのぶは、俺が絶対に連れ戻す。そのためにも、まずはこの元凶を消すぞ!」
「……殺してやる。一人残らず、跡形もなくな!!」
無惨の屈辱に満ちた絶叫と共に、背から放たれた無数の触手が夜を切り裂く。それに対し、駆の放つ魔弾、スルトの焔、そして八人の柱による極致の剣技が、一斉に無惨へと叩きつけられた。