ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 ――デビルサマナーは大正の夜にバグを穿つ――』 作:ガチャガチャクツワムシ
不死川の苛烈な連撃が空を裂き、無惨の肉体を捉える。しかし、斬ったそばから黄金の光が傷口を塞ぎ、確かな手応えすら残さない。
「……何だ、この手応えのなさは。斬った端から戻っていきやがる!」
苛立ちを露わにする不死川の傍らには、上弦の参との死闘を生き延びた炎柱・煉獄杏寿郎の姿もあった。
「うむ! 再生というよりは、攻撃そのものが無効化されているようだな! 実に不可解だが、放置はできん!」
煉獄の放つ「昇り炎天」が、スルトやヒノカグツチの業火と共鳴し、無惨の肉体を大きく抉る。だが、無惨の内に潜むヴリトラの禍々しい気配が周囲のMAG(マグネタイト)を強引に吸い上げ、瞬時に欠損を修復してしまった。
「ハハハ! 無駄だと言っているだろう。この体はあらゆる災厄を撥ね退ける!」
無惨の背から伸びる触手には、触れるものすべての活力を奪い去る「渇き」の黒い雷光が奔る。
繋がれる連携、決死の足止め
「南無阿弥陀仏……。これほどまでの不浄、もはや鬼の範疇を超えている」
岩柱・悲鳴嶼行冥が数珠を強く握り、眉をひそめた。バルドルの「不倒」の権能を前に、宇髄や実弥、炭治郎たちの刃がことごとく弾かれていく。
「……ちっ、バルドルとヴリトラか。神と龍を同時に詰め込みやがって。あの人形師め、どこまでも悪趣味な設定にしやがる」
駆はガンプのバレルをスライドさせ、禁忌のプログラムを起動させた。
「悲鳴嶼さん! 煉獄、 天元、実弥!他の皆も 少しの間だけでいい、時間をくれ。奴をその場に縫い留めておいてほしい!」
駆の叫びに、戦友たちが即座に呼応した。
悲鳴嶼の鉄球が無惨の進路を砕き、煉獄の紅蓮の龍がその身を焼き尽くす。その猛攻に呼応し、時透無一郎が霧の如き速さで触手を削ぎ、伊黒小芭内と甘露寺蜜璃が死角から無惨の動きを封じていく。さらに、冨岡義勇の「凪」が触手の突進を無効化し、その隙を突いてカナヲと伊之助が地を駆ける。
「花の呼吸、終ノ型……見えてる、この攻撃の隙間!」
「猪突猛進! わけわかんねえ結界ごとブチ抜いてやるぜッ!」
伊之助の二刀が火花を散らし、カナヲの鋭い突きが無惨の急所を捉え続ける。炭治郎と善逸もまた、神速の連撃で無惨に一歩も引かせない。
その絆が作った僅かな空白。駆はガンプを天に掲げ、極限の合体シーケンスを開始した。
「ハヤタロウ! 核になれ! ……スルト、ヒノカグツチ、ドミニオン! さらにコウリュウ、大菩薩! 今ガンプにいるすべてを仲魔を一つに、深淵の底から這い上がれ!」
ガンプから放たれた無数の電子の鎖が、悪魔と霊獣たちを絡め取り、ハヤタロウを中心に凄まじい密度の魔力へと圧縮していく。光と闇が混ざり合い、爆発的な衝撃波が戦場を駆け抜けた。そこに現れたのは、六翼を広げ、漆黒の装甲と神聖な法衣を纏った異形の巨神——堕天使の王アザゼル。さらにその傍らには、機械仕掛けの巨大な翼と歯車を背負った、神の右座サンダルフォンが降臨した。
「待たせたな。……こいつらが、俺の出す『答え』だ」
駆の瞳には、一切の迷いのない冷徹な殺意が宿っている。彼はガンプに特殊なカートリッジを装填し、バレルを最大まで延長した。
「バルドル、テメエの『不倒』を概念ごと撃ち抜く『ヤドリキ』。そしてヴリトラの『吸魔』を無効化する『万能の弾丸』。……そして、俺の仲魔たちの、裁きの光だ!」
「アザゼル、サンダルフォン! 一気に終わらせるぞ! ……ターゲットロック、ファイア!」
駆のガンプから放たれたのは、黄金と漆黒が螺旋を描く特異な弾丸。同時に、アザゼルは巨大な魔銃から万能属性の裁きの光を、サンダルフォンは天の理を体現する光子を放った。
「ぐ、あああああッ!!」
三つの破壊の光が同時に無惨に激突する。「ヤドリキ」の弾丸が無惨の肉体を黄金の光から切り離し、二体の天使の光が無惨の中に巣食うヴリトラの闇を灼き尽くした。
「な、何だ……、この力は……! バルドルの、ヴリトラの力が……、剥がれていく……!!」
無惨の咆哮と共に、融合していた神と龍の気配が強引に引き剥がされた。黄金の輝きは霧散し、禍々しい闇は消滅する。剥き出しになった無惨の本来の肉体に、三つの光が致命的なダメージを叩き込んだ。
「ハハ……、どうだ、人形師。テメエの作った『不倒』の神話は、今ここで終わったぜ」
駆はガンプのバレルを戻し、煙を吐く銃口を人形師の声が響く虚空へと向けた。無惨は血を吐きながら崩れ落ち、その再生能力はかつてないほどに低下していた。