ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 ――デビルサマナーは大正の夜にバグを穿つ――』   作:ガチャガチャクツワムシ

66 / 92
降臨、堕天使と神の右座

 不死川の苛烈な連撃が空を裂き、無惨の肉体を捉える。しかし、斬ったそばから黄金の光が傷口を塞ぎ、確かな手応えすら残さない。

「……何だ、この手応えのなさは。斬った端から戻っていきやがる!」

 苛立ちを露わにする不死川の傍らには、上弦の参との死闘を生き延びた炎柱・煉獄杏寿郎の姿もあった。

「うむ! 再生というよりは、攻撃そのものが無効化されているようだな! 実に不可解だが、放置はできん!」

 煉獄の放つ「昇り炎天」が、スルトやヒノカグツチの業火と共鳴し、無惨の肉体を大きく抉る。だが、無惨の内に潜むヴリトラの禍々しい気配が周囲のMAG(マグネタイト)を強引に吸い上げ、瞬時に欠損を修復してしまった。

 「ハハハ! 無駄だと言っているだろう。この体はあらゆる災厄を撥ね退ける!」

 無惨の背から伸びる触手には、触れるものすべての活力を奪い去る「渇き」の黒い雷光が奔る。

 繋がれる連携、決死の足止め

 「南無阿弥陀仏……。これほどまでの不浄、もはや鬼の範疇を超えている」

 岩柱・悲鳴嶼行冥が数珠を強く握り、眉をひそめた。バルドルの「不倒」の権能を前に、宇髄や実弥、炭治郎たちの刃がことごとく弾かれていく。

「……ちっ、バルドルとヴリトラか。神と龍を同時に詰め込みやがって。あの人形師め、どこまでも悪趣味な設定にしやがる」

 駆はガンプのバレルをスライドさせ、禁忌のプログラムを起動させた。

「悲鳴嶼さん! 煉獄、 天元、実弥!他の皆も 少しの間だけでいい、時間をくれ。奴をその場に縫い留めておいてほしい!」

 駆の叫びに、戦友たちが即座に呼応した。

 悲鳴嶼の鉄球が無惨の進路を砕き、煉獄の紅蓮の龍がその身を焼き尽くす。その猛攻に呼応し、時透無一郎が霧の如き速さで触手を削ぎ、伊黒小芭内と甘露寺蜜璃が死角から無惨の動きを封じていく。さらに、冨岡義勇の「凪」が触手の突進を無効化し、その隙を突いてカナヲと伊之助が地を駆ける。

「花の呼吸、終ノ型……見えてる、この攻撃の隙間!」

「猪突猛進! わけわかんねえ結界ごとブチ抜いてやるぜッ!」

 伊之助の二刀が火花を散らし、カナヲの鋭い突きが無惨の急所を捉え続ける。炭治郎と善逸もまた、神速の連撃で無惨に一歩も引かせない。

 その絆が作った僅かな空白。駆はガンプを天に掲げ、極限の合体シーケンスを開始した。

「ハヤタロウ! 核になれ! ……スルト、ヒノカグツチ、ドミニオン! さらにコウリュウ、大菩薩! 今ガンプにいるすべてを仲魔を一つに、深淵の底から這い上がれ!」

 ガンプから放たれた無数の電子の鎖が、悪魔と霊獣たちを絡め取り、ハヤタロウを中心に凄まじい密度の魔力へと圧縮していく。光と闇が混ざり合い、爆発的な衝撃波が戦場を駆け抜けた。そこに現れたのは、六翼を広げ、漆黒の装甲と神聖な法衣を纏った異形の巨神——堕天使の王アザゼル。さらにその傍らには、機械仕掛けの巨大な翼と歯車を背負った、神の右座サンダルフォンが降臨した。

 「待たせたな。……こいつらが、俺の出す『答え』だ」

 駆の瞳には、一切の迷いのない冷徹な殺意が宿っている。彼はガンプに特殊なカートリッジを装填し、バレルを最大まで延長した。

「バルドル、テメエの『不倒』を概念ごと撃ち抜く『ヤドリキ』。そしてヴリトラの『吸魔』を無効化する『万能の弾丸』。……そして、俺の仲魔たちの、裁きの光だ!」

 「アザゼル、サンダルフォン! 一気に終わらせるぞ! ……ターゲットロック、ファイア!」

 駆のガンプから放たれたのは、黄金と漆黒が螺旋を描く特異な弾丸。同時に、アザゼルは巨大な魔銃から万能属性の裁きの光を、サンダルフォンは天の理を体現する光子を放った。

 「ぐ、あああああッ!!」

 三つの破壊の光が同時に無惨に激突する。「ヤドリキ」の弾丸が無惨の肉体を黄金の光から切り離し、二体の天使の光が無惨の中に巣食うヴリトラの闇を灼き尽くした。

「な、何だ……、この力は……! バルドルの、ヴリトラの力が……、剥がれていく……!!」

 無惨の咆哮と共に、融合していた神と龍の気配が強引に引き剥がされた。黄金の輝きは霧散し、禍々しい闇は消滅する。剥き出しになった無惨の本来の肉体に、三つの光が致命的なダメージを叩き込んだ。

 「ハハ……、どうだ、人形師。テメエの作った『不倒』の神話は、今ここで終わったぜ」

 駆はガンプのバレルを戻し、煙を吐く銃口を人形師の声が響く虚空へと向けた。無惨は血を吐きながら崩れ落ち、その再生能力はかつてないほどに低下していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。