ヤタガラス探偵事務所・帝都支部 ――デビルサマナーは大正の夜にバグを穿つ――』 作:ガチャガチャクツワムシ
「……くそっ、体が……重い……」
膝を突き、ガンプを杖にして肉体の崩壊を食い止める駆の視界で、絶望的な光景が広がっていました。権能を失い逆上した無惨の猛攻は、もはや生物の域を超えた破壊の嵐。
「ぐああああっ!」
宇髄の左腕が鮮血に染まり、実弥の腹部が深く切り裂かれる。煉獄は満身創痍の体で炭治郎を庇い、悲鳴嶼は片脚の感覚を失いながらも鉄球を振り回し続けていました。伊黒、甘露寺、時透、冨岡……八柱全員が、その身を削りながら無惨を食い止めています。
「……あ、ああ……みんな、ボロボロだ……」
炭治郎が血を吐きながら立ち上がろうとする姿を見て、駆は震える手でバックの底から「チャクラドロップ」と「生玉」を掴み出しました。しかし、指先が痺れて力が入らない。その時、数人の手が駆の身体を左右から支え、強引に立ち上がらせました。
「神代さん! しっかりしてください!」
「俺たちが支えます! 柱の皆さんに、あいつを倒すための力を……あんたの力を届けてくれ!」
肩を貸したのは、傷だらけの一般隊員たちでした。恐怖に顔を歪ませながらも、自分たちの命を盾にして駆を支える彼らの献身が、駆の凍えかけた魂を叩き起こします。
「……すまない、助かる」
隊員たちに体重を預けながら、駆はチャクラドロップを噛み砕き、生玉を胸に押し当てました。瞬間、枯渇していたMAGが奔流となって神経を駆け巡り、細胞が内側から急速に活性化していきます。
「が、あ、あああああああッ!!」
瞳に再び、すべてを見透かす冷徹な「裁定者」の光が戻りました。立ち上がった駆は、ガンプのシリンダーを叩き、精鋭悪魔たちを次々と召喚(ロード)します。
「……地獄の門を開け。主力ストック、再起動! 来いッ!」
駆の周囲に、これまでとは比較にならない密度の魔法陣が展開されました。
降臨したのは、輝く槍を手に戦場を駆けるケルトの英雄「フィン・マックール」。
大地を震わせる巨躯で無惨の触手をねじ伏せる国造りの神「オオミツヌ」。
物理攻撃をことごとく跳ね返す異形の遮光器土偶「アラハバキ」。
そして、神罰の執行者として燃え盛る剣を振るう「カマエル」と、漆黒の炎を操る地獄の王「ベリアル」。
「神代……殿……。何という、心強い……!」
悲鳴嶼が血の涙を流しながら、新たに現れた仲魔たちの圧倒的な気配に感嘆します。
「悲鳴嶼さん、皆さん……。無理をさせたな。……ここからは、俺の召喚術で奴の再生を完全に封じ込める。……一斉に叩き込むぞ!」
駆は再装填されたガンプを無惨の心臓へと向けました。アラハバキが無惨の触手を反射して自滅を誘い、ベリアルとカマエルの「紅蓮の炎」と「神罰の光」が、無惨の細胞を内側から焼き尽くして再生を否定していきます。
「……逃がさねえぞ、無惨。お前の『夜』は、ここで終わりだ」
駆の宣告と共に、五体の悪魔たちが戦場を蹂躙し、八柱と隊士たちの刃が、夜明けを呼ぶ最後の一閃に向けて研ぎ澄まされました。