「すぐ思いつきで行動しちゃだめ!場合にもよるけど今回のような場合はせめて私に相談してから!ていうかそもそも生徒相手に手を出すとかもってのほかだからね!!」
「「……」」
説教をうけてかなりの時間が経った
もうすでにかなり堪えている
反省したのでもう許してほしいと願うレイヴンとラスティだった
「はぁ、もう……ん?」
先生の端末に通知が来る
「………」
「先生?」
「ごめんね、少し呼び出しが来たみたい」
「……そうか」
「とりあえず、戻るまでジッとしといてね!!」
そうして、先生は外へと出ていってしまった……
こんな時に先生だけ呼び出しとは……ナギサか?
いや、だとしたら俺とラスティ呼び出すはずだ……
「……戦友?」
「先生の後を追うぞ……」
「まて、さっきジッとしていろと言われだろう……」
「……もしかしたら裏切り者が来たかもしれない」
「何?」
「確信は無いが、先生だけ呼び出しは妙だ」
「ナギサなら俺とラスティも呼び出すはずなのに、先生だけとは」
「……それに、メッセージを確認した後の先生の顔、なにか険しい顔だった」
「……だがな、迂闊に動くと先生にバレてしまう」
ここを動かず、先生とその人の会話が聞ける方法は……
「……エア」
『……はぁ』
「先生の端末にハッキングして会話を聞けるようにしてくれ」
『……わかりました』
エアは先生のスマホをハッキングして、盗聴する
『わあっ!水が入ってる!すごい綺麗!ひさびさにここのプールに水が入ってるの見たな~!このあとはプールパーティーでもするの?』
『おまたせ、要件を聞いてもいいかな?』
「……」
「先生と……誰だ?」
「ティーパーティー所属、『聖園ミカ』……」
「ティーパーティーだと?」
なぜ、ミカがこの合宿に来ている?
『……えへへ、先生はうまくやってるのかなって』
『うん、こっちは万事順調だよ』
『そうなんだ!にしてもナギちゃんずいぶんと入れ込んでるみたいだね。施設まるごと貸してるんだもん!そういえば合宿の方はどう?何か楽しいことはやってる?』
『……』
『あはっ、そこまで警戒されちゃうと悲しいかなぁ……私こう見えても繊細なんだよ?けっこう傷つきやすいんだよね……』
『ところで、ここ食事は大丈夫?何か美味しいものでも送ろうか?』
『……そろそろ本題に入らない?あまり時間がなくて』
『ふふっ、ごめんね、先生もあまり長い前置きは好きじゃないかな?じゃあ、本題にはいろっか』
『うん、お願いね』
ただの世間話……ではないよな……
『あっ、ちなみに私がここにいることについてはナギちゃんも知らないから!付き添いもなしの単独行動!』
『……じゃ、改めて本題だけど』
『先生、ナギちゃんから取引とか提案されなかった?』
『取引……というと?』
『例えば、そうだなぁ……トリニティの裏切者を探して欲しい、とか』
「「……ッ!?」」
知っている……だと
いやティーパーティー内では共有されてもおかしくは……
いや、あれはナギサしかし知らないはず……
『……されたけど』
『……ふぅ、やっぱり、もうナギちゃんったら、予想通りなんだから……それで、何か詳しい情報とかは?』
『そういうのは何もなしで、ただ探してって云われた感じ?理由とか目的は?どうして補習授業部がこういうメンバーで構成されているかとか、ナギちゃんは教えてくれなかった?』
『多少は説明されたけど、多くは……』
『そっかー……もう、ちゃんと説明しないで先生にこんな重荷を背負わせる何て……』
『でも私は断る気持ちでいるけどね』
『えっ、そうなの……どうして?自分達の生徒を疑いたくないから?それとも……』
『疑いたくないって言うのもあるけど……でもそれ以上に私は、生徒を信じたいの』
『……へぇ』
どこまでも生徒を信じ続ける……
本当に、お人好しな人だ
『それじゃ先生は誰の味方なのかな?」
『……?』
『トリニティじゃないなら、ゲヘナ?それとも連邦生徒会?それとも……』
『私は、生徒たちの味方だよ』
『あ、あぁー…そ、そっかあ、生徒たちの味方かあ……それは予想外…だなぁ』
『てことは、先生は私の味方って考えてもいいのかな?私もこの立場といえど……』
『もちろん、ミカちゃんの味方でもあるよ』
『わーお、さらっとすごいこというね、先生』
すべての生徒の味方……
果たして、仲間だった者に武器を向けられた時
先生はどのような対応をするのだろうな……
AC3のリップハンターの事もあるし……
『……大人の話術だとしても、ちょっと嬉しい……でも、それって誰の味方でもないって解釈できるよね?』
『まぁ、いいや、とりあえず、取引しよっか☆』
『取引?』
『補修授業部にいる裏切り者が誰か、教えてあげる』
「何!?」
「……」
『ッ!?』
『あはは、びっくりした?……ナギちゃんのいう裏切り者、必死に探して退学させて追い出させようとするその相手、実際はもうちょっと複雑な……』
ラスティの耳にはもはやそれ以上の言葉は入らなかった
「裏切り者……だと……」
「その正体を知っている?」
「……なぜ知っているだ?」
……そう来るか
『ああ、裏切り者の話だったね……補修授業部にいる裏切り者』
その答えは裏切り者の名が出されると同時に辿り着く
本当の裏切り者
「……白州アズサ」
裏切り者は二人……そして……
『アズサちゃんが?』
本当の裏切り者が、先生の眼の前にいる
「はぁ……」
ため息をつく……
今すぐナギサに報告するべきか……
いや、それは先生の意思ではない
しかしだ、俺は『依頼』された
トリニティーの裏切り者を見つけろと
「戦友……」
「……ラスティ、お前も確信がついたか」
「……あぁ」
……だがまだ情報がいる
このまま盗み機聞きをつづける事にしたが
すでにいくつか会話を聞き逃していた
『……あるいはもしかしたらセイアちゃんみたいに……あっ』
『……セイアちゃんがどうかしたのかな?』
『……セイアちゃんは入院中だよ、たしか前にも話したよね?』
『どこの病院にいるか、教えてほしいの』
『……』
『先生は、この話、聞きたい?この話をするなら……もう、私は引き返せない、もしこの真実を知った先生が裏切ったら……私は終わり、それでも?』
『生徒を裏切るだなんて……』
『あはは、なら大丈夫だね…さっき、先生は私の味方って言ってくれたし』
『セイアちゃんは入院中じゃない…ヘイローを、壊されたの……』
『……ッ!?』
「どういう……とこだ?」
「ヘイローを壊される、それは間接的に『死』を意味する」
「……なん………だと………」
『嘘じゃないよ、本当のこと、去年襲撃を受けて、対外的には入院してるって、でもほんとは違う……この事を知ってるのはティーパーティーだけ』
『いや、シスターフッドは知ってるかもだけど…あそこ情報網はかなり広いから…』
『犯人は?』
『まだ捕まってない、セイアちゃん事態秘密が多い子で、容疑者とかも……いや、目星はついてるけど推測で話すのはね……』
『話しを戻すけど、アズサちゃんを転校させたのは……私なの』
『ミカちゃんが?』
『うん、ナギちゃんには内緒でね、書類とか諸々全部偽装させたの』
『どうして…?』
『アリウス分校は今もまだ、私たちのことを恨んでる』
……アリウス?
『私たちはこうして豊かな学園生活を満喫しているのに、彼女達は劣悪な環境の中で、学ぶということが何なのか分からないままでいる』
『私たちからさしのべた手も、連邦生徒会からの助けも拒絶し続けてるの、過去の憎しみのせいで』
『私はアリウス分校と和解がしたかった、でも……彼女たちの憎しみは簡単には拭えないほど大きくて、これまでの間に降り積もった怨嗟はあまりにも多くて、私の手に負えないほど大きかった』
『ナギちゃんもセイアちゃんも私の意見には反対だった、政治的な理由でね……分からないわけじゃない、ナギちゃんたちはティーパーティーだから……』
『私、不器用で政治は得意じゃないけど、今からでもまた仲良くするってそんなに難しいことなのかな?」
『……』
『ずっと昔やったようにお茶会でもしながら、お互いの誤解を解くことはできないのかな?』
『私は……白州アズサ、あの子に和解の象徴になってほしかったの』
『あの子については詳しく知らない……でも、アリウスでもかなり優秀な生徒だったみたいだし、その可能性に掛けたかった』
『ナギちゃんを説得して正式に進めるって手段もあったかもしれないけど……そこについてはちょっと疑っちゃったっていうか……そういうの、多分聞いてくれないなって思って』
『条約が締結したら、もう二度とアリウスとの和解はできなくなっちゃう、だからその前に実現させたかった……』
「……」
「なるほどなあ……そういう事か……」
「戦友、なにかわかったのか?」
「あぁ……」
本当に、この問題はめんどくさい……
「ミカの目的は…アリウスとの和解……」
「だが時間が足りず、情報を結ぶ時間稼ぎのためにアズサはセイアを暗殺」
「……それを手引きしたのは……聖園ミカ本人」
だがアリウスとの和解……そのために、セイアのヘイローを壊してまで和解をしたかったのか?
……本来はその気はなかったのではないのか?
『あ、そういえば先生、なんで補修授業部があのメンバーなのかわかる?あの子達は、ナギちゃんが疑った子』
『ハナコちゃんはすごい優秀な子だったんだけど……急に変わっちゃったの、すごい厳粛な雰囲気の教会に水着でくるほど』
『……?』
『コハルちゃんは……ほんとは全く政治に関係ない子だったんだけど……正義実現委員会、特にゲヘナを恨む子達が自分の管理下にないことを不安に思って……そうだね、人質をとったってところかな?』
『あとは……ヒフミちゃんだね、ナギちゃんも気に入ってたけど、こっそり学園の外にでてブラックマーケットとか、トリニティでは出入り禁止にされているところに行ってたみたいなの』
『おまけにどっかの犯罪者集団との関わりがあるんじゃないかって疑われてるの、すごい純粋そうに見えるのに……』
『ふ、不思議なこともあるもんだね………』
『こんな、ところかな。私が知ってることは』
『情報提供はいろいろありがとうね……そろそろみんなが待ってるだろうし、教室に戻ろうかな』
「エア、切っていいぞ……」
そうして、エアはハッキングをやめ
先生の盗聴をやめる
「……どうする、戦友」
「すぐにでも、ナギサに報告すべきだろうが……」
「……あえて流そう」
「なんだと?」
「……餌を出しておくのさ」
「空腹の獣は、本性を出しやすい」
「……そういう事か」
ミカやアズサはいずれ行動を起こすはずだ
おそらく次の獲物は『ナギサ』
「……」
俺は、スマホを取り出す
画面にはマップが示されている
「少し外へ行く」
「戦友、しかし」
「すまんが、どうしても外せない事なんだ」
「……そうか」
「先生には、セミナーから呼ばれたと言ってくれ」
「……わかった」
そうして、部屋から出て、ある場所へ向かう
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
???????
ガチャっと扉を開ける
部屋の中は、しっかりと清掃されていてホコリひとつもない
そうして、ある場所に目を向ける
「……前の夢ぶりかな……セイアさん」
目線の先には、ベッドに眠るセイアの姿があった
特に辛い顔をせず、普通に寝ている
「……エア、セイアの容態は?」
『安定はしています、ですが長いこと眠っているので、回復の見込みは……』
「……」
どうしたら、目を覚ましてくれるのか……
「……」
俺は手を伸ばし、セイアさんの額に触れる
パチパチパチパチ……
コーラルを放出して、セイアさんに流す
『レイヴン?一体何を?』
「コーラルで人間の再生機能を刺激して、セイアさんの傷を治す」
『そんな事が……できるのですか?』
「わからん、思いつきだ」
『……はぁ』( 눈_눈)
まぁ後は時間が経てば、セイアさんは回復するだろう
そう、セイアさんを治療?していた時
「誰ですか!?」
後ろから声がかけられる
振り向くと、水色の髪に、髪と同じ色の羽がある
そして盾をもち、ウィンチェスターをこちらに向けている生徒がいた
「一体どうやってここを……ここは誰も知らないはず!!」
「……友人に、ハッキングが得意な奴がいてな、それでここを突き止めた」
「ハッキングで……そんな事で、ここが……」
「あなたは、一体何者ですか……」
「レイヴンっと言う名に聞き覚えは?」
「レイヴン……」
ミネは少し黙り、なにかに気付いたかのようにハッと顔をあげる
「独立傭兵レイヴン……セイア様が仰っていた事を耳にした事があります」
「なぜ、あなたはここに?」
「セイアさんの容態を見に来ただけだ、暗殺されてヘイローを破壊されたと聞いたが……」
「それは、一体誰から……」
「桐藤ナギサ」
「……」
なにか思う事があるんだろうな
「ところでミネ、セイアさんの回復の見込みは?」
「……分かりません、眠ってから大分時間がたっています」
「そうか、ヘイローは破壊されていないんだよな?」
「……はい、セイア様のヘイローは破壊はされてはいません」
「そうか……」
まぁ、それだけを聞けたからいいか
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あの後、合宿所に戻って来て、ラスティから第二次補習授業部試験の結果を聞いた
第二次補習授業部模試・結果
ハナコ・八点・不合格
アズサ・五十八点・不合格
コハル・四十九点・不合格
ヒフミ・六十四点・合格
確実にみんなの点数は上がっている
このまま行けば、全員合格はできるはず
だが、ナギサ側からなにか妨害があるはず
そこが1番の不安要素である
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜
いつもの様に、先生の部屋で資料をまとめている時
扉が開く音がした
ヒフミが来たんだなと思い扉の方へと顔を向けると……
「いらっしゃいヒフ……」
「こんばんは♡」
「……」(´⊙ω⊙`)
「……」(눈_눈)
「……」(; ꒪ㅿ꒪)
先生とラスティは思わず体を硬直させる、ヒフミが来たと思ったら、来たのは水着姿のハナコ
俺はもう呆れた……
「ふふっ、扉の鍵を閉めていないだなんて、不用心ですねぇ♡襲われてしまいますよ?」
「襲われてもルビコニアン空手で撃退するだけだし」
「そうだな、私と戦友のルビコニアン空手なら撃退できるな」
(そう言う……そう言う襲うのでは無いのですが……
ルビコニアン空手?)
「と言うかハナコちゃん……なんで水着?」
「あぁ、これについてはお気になさらず、パジャマなので」
「えぇ……」困惑
「うふふっ、それより先生、レイヴンさん、ラスティさんちょっと相談したい事がありまして……」
「相談?」
「ええ……ふふっ」
「……アズサちゃんの事について、少し」
「………」
その表情は、恰好や雰囲気に反し真剣だった
服装も真剣にしてほしいんだが
そうハナコが、喋ろうとした時
「遅れてすみません、先……」
「……」
ヒフミが扉を開け、入ってきた時ハナコと目があってしまい
「本当に失礼しましたぁ!?ご、ごめんなさい私っ、そ、そんな事をしているとは知らずに……!ぜ、全然知らなかったんです、本当ですっ! え、い、一体いつから皆さんは!?」
「あ、ち、違いますよヒフミちゃん?私たちは別にそんな関係では……待ってください、今、昨日より遅い時間って云いませんでしたか? 云いましたよね? つまり昨晩も来たという事ですよね!? そうなんですよね!?こんな時間に?? この密室でいったい何を!?」
「あの……二人とも、なんの話?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!?またあとで……は駄目ですよねっ!?ど、どうすれば良いですか、今晩はやめた方が良いですか!? 知らなくてごめんなさい、間に入ってごめんなさい、空気壊してごめんなさい……っ!」
「待って下さいヒフミちゃん!!本当に違いますからね!? ただちょっと事情がありまして!……と言うか、ヒフミちゃんの方も説明してください!」
「……二人とも……とりあえず……一度落ち着こ?」
「「はぁ……」」
俺とラスティはため息をついた
なんかここ最近ため息が増えた気がする………
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数分後
「す、すみません、取り乱してしまって……」
「いえ、私の方こそ、早とちりをしてしまいました……」
あの後、わけを話して何とか落ち着いた二人
「それで、ヒフミちゃんは皆さんと……」
「あ、はい、これからの補習授業部について、色々と」
「そうでしたか……夜な夜な抜け出していたのは、そういった事だったんですね」
「はい……一応今は順調に事が進んでいますが、備えあれば憂いなしとも云いますし、油断は出来ませんから……それで、ハナコちゃんも見に相談したい事が?」
「えぇ……アズサちゃんの件で」
「アズサちゃんの……?」
「そういえば話があるって言ってたね」
「よろしければ、ヒフミちゃんも一緒に聞いて頂ければと思います」
「い、良いのでしょうか、その、元々は皆さんに相談したかった事では……?」
「構いません、ヒフミちゃんは私達補習授業部の部長ですし、それに遅かれ早かれ、耳に届く事かと」
「わ、分かりました、そういう事でしたら……」
背筋を正し、緊張気味な面持ちのヒフミ
ハナコはそんな彼女と先生達に視線を向けると、心配げな表情で告げた
「実はアズサちゃん、毎晩のように何処かへ出かけては、夜明けまで戻って来ない事が続いているんです」
「えっ、夜明けまで、ですか……?」
「はい」
「そうなの……?」
「「……」」
俺と、ラスティは顔を見合わせる
……アズサが夜出歩いているのは見張りという理由
これを知っているのは、俺とラスティしかいないから
「それは、確かに心配ね……」
「そうなんです、最初は慣れない場所で眠れないのかと思ったのですが、そうではない様子で……私は、アズサちゃんが夜にちゃんと眠っているところを殆ど見た事がありません」
「そういえば私も……アズサちゃんはいつも先に起床していますし、私より早く寝ている事もなかった様な…」
「……アズサちゃんが一体何をしているのかは分かりません、ですがそろそろ多少無理矢理にでも寝かせて休息をとらせてあげないといけないのでは、と」
「……そっか」
「それに何だかアズサちゃん、どこか……凄く不安そうで」
ハナコはそう言って、アズサを本気で心配し、暗い顔を浮かべる
なんやかんや、ハナコは友達思いなんやなって……
「どんな事情なのかは分かりませんが、補習授業部の仲間として、友人として、どうにかその不安を少しでも軽減してあげたいんです、きっと、このままだと倒れてしまいます」
「それは、確かにその通りですね……」
「それと、皆さんも、ちゃんと寝ないと駄目ですよ? 毎日こうやって夜に集会をして、明日に備えるのは立派だと思いますが、疲労は蓄積しますから」
「あ、あはは……その、仰る通りで」
「確かに試験も大切ですが、ただ落第というだけです、身体の健康と比べられるようなものではないと思いませんか?」
「それは……」
「普通ならそうだったのかもしれないけど……今回は違うの、今回だけはね……」
「先生……?」
「あと2回、これから来る二つの試練…どっちも不合格だった場合は……」
先生は真剣な顔で、ヒフミは歯を喰い縛り、ハナコに告げるか悩んでいた
先生が言わないのなら……
「退学……補習授業部全員な」
「退学?レイヴンさん、それはどういう……いえまさか、その様な事、校則上成り立ちません、退学には様々な手続きと理由が必要で、そんな簡単に……」
「黙っても仕方ない……」
「これからわけを話す、1字1句聞き漏らすな」
「……お願いします」
そうして、俺はハナコに嘘偽りもなく話していく
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……成程、そのような事が」
「はい、これは本当の事なんです……」
「皆さんの様子から、嘘である事は疑っていません、それにしても……残りの試験全て不合格であれば、全員退学だなんて……元々試験の仕組み自体がおかしいと思っていましたが、シャーレの超法規的権限ですか」
ハナコは、この補習授業部自体を彼女自身、疑問は感じていたらしく、レイヴンの話を聞いて疑いが確信に変わった
「あ、そ、そういえばハナコちゃん、本当は成績が良いんですよね? 一年生の時に、三年生の難しい試験まで全部満点でしたし……!」
「………」
ヒフミの、ふと思い立った様な言葉にハナコは思わず口をもごもごとする、その表情を見たヒフミは、はっとして申し訳なさそうに声を潜めた
「あの、ごめんなさい、模試の為に昔のテスト用紙を探していて、その途中で、えっと、見つけてしまって……」
「そう、ですか」
「どうして今は、あんな点数を?わざと、ですよね……?」
「……ごめんなさい、知らなかったんです、失敗したら、まさか全員が退学だなんて」
そう呟くハナコの表情はとても申し訳なさそうで、かなり後悔している顔
自身の成果如何によって、退学が決まるなどと、想像もしていなかったのだ
「……いいえ、知らなかったからと云って、許されるものではありませんね……私は、私自身のエゴで、皆さんを巻き込むところでした、沢山の準備をしてくれた先生にも、レイヴンさんにも、ラスティさんにも、ヒフミちゃんにも……アズサちゃんとコハルちゃんにも、申し訳ない事をしましたごめんなさい」
「い、いえ、その……」
「頭を上げてハナコちゃん、何か考えがあったんだよね?」
「……ええ、個人的な……理由と言いますか」
「理由?」
「そこにはあんまり触れないでおくけど……とりあえず、あのひどい点数はわざとなんだよね?」
「……はい」
「や、やっぱり……!ハナコちゃん、どうしてそんな……?」
「先ほども言いましたように、私の凄く個人的な理由なのです……ですが、それで皆さんが被害を受けてしまうのは、私の望むところではありません」
「ハナコちゃん……」
「安心して下さい、最低限みなさんが退学にならないよう、今後の試験は頑張りますので」
そう云ってハナコは微笑み、今後の試験に於ける尽力を約束した、先生は一安心……教える生徒はアズサとコハルのみ、ならなんとかなるであろうと
「……ところで、この事実を知っているのはここにいる皆さんだけですか?」
「えっと、そうですね、今のところは、私達だけで……」
「そうでしたか、となると、アズサちゃんの不安は試験に起因するものではなさそうですね、何か私がまだ知らない事がある、と……いえ、それ以上に今は、この補習授業部の存在そのものが気になりますね」
気持ちをなんとか切り替えたハナコはそこから、考察や考えをどんどん広げて没頭していき呟いていく
「ミカさん、には無理でしょう、まぁこんな事を企むのは、恐らくナギサさんでしょうか?」
「しかし、どうしてエデン条約を目の前にして、このような……今は内部、外部共に目を光らせ、目が回る程の忙しさでしょうに……」
雰囲気が変わった……
もしや、あれが本来のハナコか?
「寧ろエデン条約が目前であるからこそ……?ある種、これは内部の引き締め……いえ、そうではありませんね、態々シャーレやレイヴンさん達を巻き込んで、退学というカードまで切ったのですから、それ以上に何か、トリニティにとって致命的なものが……」
「わわ……っ」
「……なるほど……そういうことですか」
この間わずか数十秒、ハナコはある推測に辿り着く
「この補習授業部は、大方エデン条約を邪魔しようとしている疑惑のある容疑者達の集い、というところでしょうか」
「その通り……よくその結論まで行けたな……」
「ナギサさんらしいと云いますか、相変わらず狡猾な猫ちゃんですねぇ」
「ね、猫……?」
「この補習授業部に関しても、どうせなら纏めて処理してしまった方が効率的、というロジックでしょうか?何だか私達、洗濯物みたいな扱いですね」
「……そうだな」
実際にナギサが言った言葉は『ゴミ箱』だったが、流石にここでいうのはまずいので黙っていることにした
「先生も、ナギサさんにしてやられた形でしょうか?」
「……そうなるね、元々私は成績が良く無い生徒達を助けて欲しいって言われて、この補習授業部の担任に就いたから」
「俺は元々ナギサに護衛を依頼され断ったら、いい感じにハメられてこの依頼を受けるしか選択肢がなかった」
「ラスティは……普通に何も知らずに巻き込まれたって感じ……」
ある意味本当の被害者はラスティなのかもしれない
「成程、先生の善意を利用して役割を担わせ、その実シャーレの超法規的権限を利用している、先生もレイヴンさんもラスティさんも忙しい身でしょうに、全く……ですが、逆に云えば皆さんは純粋に私達の為に頑張って下さっていたのですね」
「それは、まぁ、私は先生だし、見捨てるとか無いわ」
「受けた依頼だし、最後までやらないといけないしな」
「……嘘偽りのない本当の善意……この善意を、よくもまぁ利用するとは……ふふっ…」
ハナコから黒いオーラが……
「……ありがとうございます、皆さんはやはり良い人ですね、ふふっ♡」
「私は私の仕事をしてるだけだから……そんなに褒めないでもいいのよ」
「……御謙遜を」
「ハナコちゃん、凄いですね……ちょっとした情報から、そこまで考えられるなんて」
「いいえ、元々上層の情報には詳しい方でしたから」
「だとしてもですよ……ナギサ様は、トリニティの裏切者、それを私に探して欲しいと仰っていました」
「ふふっ、トリニティの裏切者ですか……何ともナギサさんらしい表現です、ティーパーティーのホストである彼女の計画を邪魔したら該当する、とも考えられるロジックですし……アズサちゃんは書類の時点で怪しかったので、疑われるのも無理はありませんね」
「コハルちゃんも、正義実現委員会という所属を考えると人質という観点では多少納得が出来ます、しかし……」
ハナコは疑問の顔を浮かべ、ヒフミを見る
「ヒフミちゃんは何故ここに?ナギサさんとも親しかった筈ですし、私にはそれらしい理由も思い当たらないのですが……」
「私も……やっぱり容疑者なんでしょうか……?」
「………………………」
「た、確かに親しくして頂いていましたが……ど、どうして私なのでしょう? その、私にもちょっと、分からなくて」
「えーと……ね」
「先生、何かご存じですか?」
「まぁ、うん、そうだね……」
「せ、先生、私、何かやっちゃいましたか……?怪しまれるようなことをした覚えは……」
「覆面水着団……」
「あっ」
覆面水着団?
……そういえばブラックマーケットに謎銀行強盗集団に襲われたと聞いたな
確かその集団の名前が覆面水着団……
あの時ヒフミはファウストって……
あっ……ふーん……
「え、あ、あれ、アレですか!? アレが原因なんですかっ!?た、確かにやらかしてしまった自覚はありますけれどもっ!?」
「ほんっとにごめんねヒフミちゃん」
「……兎も角、アズサちゃんとは後で少しお話をしてみた方が良いかもしれません、その他についても幾つか、私の方で確認してみます」
「うん、お願い」
「何かありましたら、私達の方でも情報を共有して頂けると嬉しいです」
「分かりました……という事は私も、この深夜の密会に参加させて頂けるという事でよろしいですか? うふふっ、嬉しいです♡」
「し、深夜の密会、ですか」
「えぇ、深夜の密室で、皆さん寄り添って秘密の遊びだなんて……ドキドキが止まりません♡」
「そ、その云い方はちょっと………」
「っと、そろそろ良い時間ね、明日に備えて寝た方が良いね」
「ブレませんね先生」
気づけばもう時間は深夜を回っており、明日のためにも休むべきだと3人は思い、解散することにした
アズサの事や、裏切り者……ミカの事は………
今は伏せておく、まだその時ではないと判断した
ラスティも、それを理解している
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ん……」
目が覚めると、そこは見覚えのある場所
ティーパーティー・テラスである
そうして、テーブルに寄り
「またあったな」
「おお、君か」
席に座り、紅茶を飲む
「不思議だな……夢の中なのに味がするなんて」
「……そうだな、不思議なものだ」
……聞くか
俺はそっとカップを置き、セイアにある事を話す
「いつ目を覚ますんだ?」
「……私は目を覚ますことはないよ」
「……いつまで隠すつもりだ?」
「……はっ?」
「本当はいつでも目を覚める事ができるんだろ?」
「……何を……言って……」
「ヘイローは壊されていないんだろ?」
「なっ……!?」
セイアは思わず立ち上がる
そりゃそうだ、誰も知らないはず、いやミネ以外知らない事を知っているんだから
「なぜ、知っているんだ?」
「会いに行ったからな、セイアさんに」
「何……いや、まさか!?」
「あそこは誰も、いやミネ以外知らないはずだ!!」
「俺の友人にハッキングが得意な奴がいてな、それで突き止めてもらった」
「……」
本当にエアのハッキング力にはびっくりする
「で、なんで目を覚まさない?」
「……それは」
「……聞かせてくれ」
セイアは一呼吸置き、口を開く
「……予知夢で見たんだ」
「このまま私が目を覚ますと、不味い未来へと向かって行くんだ」
「だから、そうなら為にも目を覚ますことはできない」
「……そうか」
「で、いつ目覚めるんだ?」
「……話を聞いていたのかい?私は目覚める事は出来ないと」
「だからなんだと?」
「……ッ」
「あんたが、目を覚ますだけで未来がめちゃくちゃになるだと?」
「そんな未来ねじ曲げてやる」
いつの間にかコーラルが放出されている
夢の中でもコーラルはあるんだな
「たかがあんた一人で未来が変わると言うなら、俺が未来を変えてやる」
「……無理だ、運命は変えられない」
「……前にも言ったよな、俺は予知夢には一度も出てきてないと」
「なら、あんたが見た未来は俺がいない未来だろ?」
「なら俺が関われば未来は変わるかもしれんだろ」
正直分からない、たかが一般生徒で未来を変えられるのか
――なぜあなたがここに、イレギュラーのあなたが!!
もしかしたら、俺はこの世界にとってイレギュラーな存在かもしれない
「……」
「信じてみればどうだ?」
「……本当に、未来を変えられるのか…………?」
「……あんたが諦めない限りな、俺も諦めるつもりもない」
「……そうか」
「わかった、君を信じるよ」
セイアは覚悟を決めた顔をし、そう告げる
「そうか、よか……た……」
「……時間か」
「そう……みたい……だな……」
また時間が来てしまい、意識が朦朧とする
「目が……覚めたら……ミネに説明して……そのまま……隠れてくれ……」
「時が……来たら……連絡する……」
そうして、目を閉じた時……
「ありがとう」
セイアの感謝の声が聞こえ、夢から覚める
これでいい……
あとは、裏切り者の事に集中できる
……気づかれてしまいましたね
やはり、10年も同じ戦場で戦い続けたからですかね(?)
レイヴン、ナチュラルにセイアの脳を焼きにかかっているね……