ACを作りたい少年とセミナー書記   作:雨垂れ石

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それが、先生、レイヴンさん、ラスティさんの意思なら……


今この瞬間、あなた達は私の敵

 

 

「……ご無沙汰しております、先生、レイヴンさん、ラスティさん」

 

「久しぶりね、ナギサちゃん」

 

「……どうも」

 

「久しぶりだな……」

 

今回、ナギサから定期報告みたいな感じのメッセージが来て

俺達はティーパーティー・テラスへと赴いている

首輪付きはヒフミ達に預けている

 

ナギサに案内され、一同は席につく

 

「あれからお変わりはありませんか? 合宿の方は如何でしょう、何か困った事などあれば遠慮なく仰って下さい」

 

「みんなすごくいい感じ、先生として嬉しい限りよ」

 

「それはそれは……」

 

ナギサは作り笑いを浮かべながら、空のティーカップに紅茶を注ぐと、静かに俺達へと差し出す

先生は、差し出された紅茶を飲むと

 

「……美味しい」

 

「えぇ、此方はトリニティでも中々手に入らない、トワイライト社の高級茶葉を使用しておりますので」

 

「そんな貴重品を私達に?」

 

「勿論です、皆さんの為に用意したものですから」

 

「そうなのね……」

 

「……それで、今日はどんなご用なの?」

 

「ふふっ……この合宿はいうなれば元々、生徒達を良く観察できるようにという配慮でしたので」

 

ナギサはそう告げ、持っていたティーカップを下ろし、気軽に問いかけた

 

「……如何でしたでしょうか? 合宿中、何か判明した事などはありましたか?」

 

「………」

 

「あぁ、もっと直接的に云いましょうか、先生、レイヴンさん、ラスティさん……トリニティの裏切者は、どなただと思いました?」

 

「……ナギサちゃん、私が前に話したことをもう忘れちゃったの?私は私のやり方でやるって……裏切り者なんていない、そう証明するために私は動くって」

 

「………」

 

「……そうでしたね、先生はそう言っていましたね」

 

「……レイヴンさんはどなただと?」

 

「特に目立った行動は無い……現時点での断定は無理だな」

 

「……ラスティさんは…………」

 

「私もレイヴンと同じ意見だ」

 

「そうですか……」

 

「第二次特別学力試験を目の前にして、改めてそこを確認しておきたかったのです、先生に心変わりはないか、気になる点はなかったのか……恐らく、ミカさんも接触して来ましたよね?」

 

「………」

 

「フフッ、沈黙は肯定と見做してよろしいのですね?」

 

「…………い……いえ?……あって、ないわ」

 

先生……

まぁこの人は嘘はつけない性格なのだろう……

 

「声が震えていますよ……そこまで動揺されるとこっちも困ります……ミカさんと何をお話しになったのか……よろしければ、教えて頂けませんか?」 

 

「……それは出来ない相談だね」

 

先生はミカと話した内容について話す気はなかった、話してしまえば、ミカを……生徒を裏切りことになるからだ

 

「それにナギサちゃん、私はあの子達の頑張りが報われるように、最善を尽くす、ただそれだけのために頑張っているの……誰かを疑ったりする時間はないわ」

 

「……一度改めて説明しましょうか、何故彼女達が選ばれたのか、私としても皆さんと対立する事態は避けたいのです、その為にも皆さんにご理解頂ければ……と」

 

「それで納得すると?て言うか対立はしてるはず……」

 

「何事も話さねば始まりません、私達は理解し合える存在だと信じております……皆さんにも情報網はあると思いますが……一先ず、順番にお話ししましょう」

 

ナギサは一人一人、何故選んだのか、何故怪しんでいるのか、それを全て話し始める

 

「……まずコハルさん、彼女はハスミさんを統制するための存在です、ハスミさんはゲヘナの事を酷く憎悪し、いつ何をしでかすか分からない時限爆弾の様な存在ですから、それをある程度コントロールする手段が必要でした、それが彼女です」

 

「そしてハナコさん、彼女は本来誰よりも優秀な才能を持っていたにも関わらず、今はわざと試験で本気を出していません、その気になればどんな派閥でもトップに立ち、率いる事が出来るでしょう……今は何を企んで、何を考えているのか、全く理解出来ない状態です」

 

「アズサさんは、そもそも存在自体が色々と怪しいところばかりです、他の生徒達と何度も暴力事件を起こしている統制不能な存在ですし、正直怪しくない箇所を探す方が難しい位で……まぁ、私でなくとも疑念を抱くでしょう」

 

そう丁寧に、意気揚々と喋るナギサ……しかしたった一人

 

「ヒフミさん、は……」

 

「………」

 

ヒフミの話をするときだけは、どこか苦しそうな声をあげていた

 

「ナギサちゃんはヒフミちゃんと……仲が良いって聞いたけど……」

 

「………はい、そうですね、ヒフミさんへの想いは、かなり特別です」

 

ティーパーティー、そのホストである自分と話してくれた相手、話せる相手、少なくともナギサにとってはかけがえのない存在

 

「私は一個人として、ヒフミさんの事をとても大切に想っています、私は、彼女の事を好いている……そのことは、間違いありません」

 

「ならどうして?」

 

「……あの子の正体が、実は恐ろしい犯罪集団のリーダーである、という情報がありました」

 

「……」

 

「こういったお話が、かえって一番恐ろしいのです、信じていたからこそ何かが見えなくなっている……盲目な状態になっているのでは、と」

 

「………」

 

「どれだけ注意を払って築いた塔も、小さな亀裂から簡単に崩れてしまうもの……私はちゃんとヒフミさんの事を理解出来ているのか、それともやはり私が知らない真実があるのか……今の私には、分からないのです」

 

ナギサは追い詰められていた、もはや今の彼女に、誰かを信じると言ったことは……出来ない

 

「……ヒフミちゃんはそんな子じゃないわ、優しい子よ」

 

「……何故、そう云い切れるのですか?ヒフミさんの感情を、思考を、気持ちを、証明出来るのですか?」

 

「その本心を、本音を、心を……一体、どうやって証明するというのです?」

 

「そんな子ではない、誤解だ、事情がある……そんな言葉に、どれだけの意味があるのですか、どれだけの真実性が含まれているのですか」

 

「………先生、あなたは疑う事を悪しき行為だと、そう考えている節が見られます……しかし、私の考えは異なります、疑う事は決して悪しき行為などではありません」

 

疑うことが悪いことか?

許されないことなのか?

そんなわけがないと、ナギサはそう断言する

 

「信頼というものは心地良きものでしょう、けれどそれは時に枷となります、人を信じ、盲目となれば、いつかその信じた人が疑って欲しくないものを持ちだした時……あなたはきっと、疑う事すらしないでしょう」

 

「……信頼を盾に、見過ごすに違いありません、それが誰かの為であれ、自分の為であれ」

 

「………」 

 

「心の中身など、証明出来るものではないのですから」

 

ナギサの言っていることは正論でもある

 

「ヒフミさんは優しい子、えぇ、良く理解していますとも……彼女の優しいところも、礼儀正しいところも、友人想いなところも……」

 

「それらを痛い程知って尚、その本音を知る事は叶いません、当然です、どう足掻いたって私達は所詮……他人なのですから」

 

「だから退学させると?」

 

「えぇ、エデン条約……その成功の為に」

 

「前にもそんなことを言ってたよね……個よりも全を取るって」

 

「はい、それがティーパーティーとしての責務です」

 

「たとえそれが、何の罪もない生徒だとしても?」

 

「はい、それが何の罪もない生徒だったとしても、僅かな可能性があるのならば、私は……」

 

少しの間、今から自分が言う言葉は最悪で、言ってはならない最低なこと……

しかし止まるわけにはいかない、ここで踏ん切りをつけなければならない

 

「私の大切な友人すら、切り捨てましょう」

 

トリニティの平和のために、『悪』になる

 

「それが、ナギサちゃんの覚悟なんだね……」

 

先生はどこか悲しい顔をして、なにか言おうと口を開いた時

 

「やはりあんたとは相容れないようだ」

 

「レイヴン君!?」

 

「戦友……」

 

我慢の限界に達したレイヴンが、バッサリと言う

 

「何でもかんでも信じちゃいけない、重々承知している、何度も経験した事だからな」

 

「では、なぜ……」

 

「たかが1つの平和の為に大事な友人を捨てる奴とは相容れたくはない」

 

「……なっ!?」

 

「誰かの犠牲で成り立った平和とか、誰かを犠牲にして自分たちだけ幸せになろうとか、それは死んでもごめんだ」

 

誰もが……キヴォトスに来る前の(境井 仁)みたいになって欲しくないからだ

 

このキヴォトスにいる生徒達は……今の場所が『魂』の場所だから

 

誰かの犠牲の上に、誰かを喪わなければ救われない世界、それがこの世の真実なんだと

理解している……だが……

 

「俺達は、全員が救われる未来を望んでいる」

 

「……それは……それはっ、理想論に過ぎません!」

 

「かもな」

 

ナギサは到底理解できない

たった四名の犠牲で、トリニティ数千の生徒が救われると言うのに

 

「まるで、子どもの夢物語ではありませんか!」

 

 「夢を抱く事に何が悪い」

 

「そんな事……出来るとでも?この世界で……嘘だらけのこの世界で、それが叶うとでも!?」

 

「出来ないのなら捻じ曲げるだけだ」

 

「ナギサちゃん、いくら言っても無駄だよ」

 

「私も、生徒全員を助ける気でいるから」

 

「いくら警句を唱えたといえ、そこに世界を変える力などない」

 

「誰かが、燃え殻に火をつけないとな」

 

意思を激しく燃やし、赤く光るレイヴンの片目

 

決して変わらない先生の姿勢

 

硬い決意を固めるラスティ

 

ナギサはここで理解した……目の前にいるのは……

自分の、敵達だと……

 

ナギサとレイヴン達の関係は、協力者から対立者に変わり……

今現在……敵となった

 

ナギサは個を捨て全のために動き、レイヴン達は全も個も救い出すために動く

 

「どうあっても、その在り方を曲げられないのですね……あなた達は」

 

「承知しました、どうか頑張って下さい、先生、ラスティさん……レイヴンさん……いえ、独立傭兵レイヴン」

 

俺達は席を立ち、テラスを後にしようとドアノブに手を掛け、捻る

 

「……皆さん」

 

振り返ると……優しい顔のナギサはどこにもおらず

 

「どうか……お気をつけて」

 

「……えぇ」

 

「……気をつけるさ」

 

「ご忠告どうも、桐藤ナギサ」

 

「それと……」

 

「かかってこい、レッドガンの流儀で叩き潰してやる」

 

宣戦布告、そう言っているかのような怖い表情で、レイヴン達を見送った

部屋から去ったのを確認すると

 

「………ッ!!」

 

ガッシャーン!!

 

机に上に乗っていたティーカップやポット、皿などを荒々しく手で払いのけ、息を吐きながら唸る

 

「全員が救われる未来……あるはずがない、そんなもの……この世界に……」

 

ティーパーティーのホストとして、見せてはいけないそんな態度

ナギサが怒っているのはレイヴン達の思想、あまりにも夢物語がすぎるだと言うことと

 

「あなたたちの言う、出しちゃいけない犠牲の中に、自身は入っていないのですか?……何故……何故!!……矛盾しているでは……ありませんか!!」

 

必要のない犠牲の中に、彼等が入っていないことに、怒っていた

 

「(生徒の為なら……ね……)」

 

「(誰も、俺みたいに辛い思いはさせたくない)」

 

俺と先生は、出てきた扉の方を向き、そう心の中でもつぶやく

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ふぅー……大分暗くなってきましたね」

 

「うん、そろそろ切り上げた方が良いね」

 

「そうですね、根を詰め過ぎて明日に響いても嫌ですし……今日は、此処までにしましょう!」

 

合宿七日目、最後の勉強を終えた補習授業部

教室の中に、安堵の声が漏れる

 

「これで後は第二次特別学力試験……本番だけ、だよね?」

 

「はいっ、ですが私達はここまでの合宿で、十分に合格できる程の学力を身に着けた筈です!」

 

「うん」

 

「えぇ♡」

 

「っ、そ……そうねっ!」

 

少し弱気になったコハルは、しかし皆の自信に満ち溢れた表情に鼓舞され、気持ちを持ち直す

 

「あとはしっかり試験に合格して、堂々と補習授業部を卒業するだけです、今までの勉強が無駄ではなかった事を、きっちりと証明しに行きましょう! そして最後は、皆で笑ってお別れ出来る様に……!」

 

「……そうか、合格したら……お別れ、なのか」

 

アズサはレイヴンからもらったチャティ人形を抱きしめ、思わず呟く

ここは成績が不振の生徒を救済する為の部活

皆が学力試験をクリアすれば、この部活の存在意味はなくなり自然に消える

 

「ちょ、ちょっとアズサ!? どうして急にしんみりする訳!?」

 

「ふふっ、合宿含め、何だかんだで凄く楽しかったですもんね?」

 

「……うん、でも、それでもやっぱり、出会いがあれば別れもある、全ては……そう……全ては……」

 

虚しい、そう言おうとしていたアズサだったが

 

――そうか?俺はAC、友人と夢があれば虚しくないがな

 

――好きなように生き、好きなように死ぬ、誰の為でもなく

 

――人が楽しいと思えることがある限り、人が生きている限り

 

――虚しいことなんて無い

 

 

「………いや、違うな……これで終わりじゃない」 

 

「その通りです……アズサちゃん含めて皆、試験が終わったらどこかに行ってしまう訳ではありません、補習授業部が解散しても同じ学園に居るんですから、逢おうと思えばいつでも会えますよ」

 

「そ、そうよ!ほら!私はいつも正義実現委員会の教室にいるし!ひ、暇な時があったら来れば……!?」

 

「き、気持ちとしては私も同じなんですけれどね……でも、ハナコちゃんの云う通り、私達は同じ学園に通う仲間です、今生の別れではありませんので……!」

 

「えぇ、教室でもどこでも、いつでも遊びに来て下さい」

 

「うん、そうだな、ありがとう、ヒフミ、コハル、ハナコ」

 

そう云って微笑むアズサ

レイヴン達にもまた会える、いつか、必ず……だが……

 

その時のみんなは、自分に、一体どんな目を向けてくるのだろうか……少し怖い

なにを言われるのだろうか……こわい

 

そう思うと自然とアズサの顔は曇ってしまう、それを避けるためアズサは問いかけた

 

「……そう云えば、明日の試験会場は前と同じところなのか?」

 

「あっ、そうですね、確認は大事ですし……えっと、告知は……」

 

ヒフミは端末を取り出すとトリニティ掲示板にアクセスする

特別学力試験の日程や会場も此処に掲載され、試験前には必ず目を通しておかないといけない、じゃないと後々大変なことになる

 

 「……えっ?」

 

すると、その掲示板を見たヒフミが思わず身体を硬直させた

 

「……ヒフミちゃん、どうしたの?」

 

「ヒフミ?」

 

「え、嘘っ!? 嘘ですよね……ッ!?」

 

「ど、どうしたのヒフミ、そんな大声出して……」

 

「こ、これ……」

 

そう云って、震える手で差し出されたスマホ

俺達は恐る恐るその画面を覗き込む

 

「えっと、『補習授業部、第二次特別学力試験に関する変更事項のお知らせ』……?」

 

「普通のお知らせk……」

 

俺は、ある文章をみたい瞬間、固まった……

 

「試験範囲を、事前に掲示した内容より約三倍に拡大」

 

「は、はぁっ!?」

 

「また、合格ラインを六十点から九十点に引き上げとする……」

 

「きゅ、九十点なんて……わ、私も、超えた事なんてないのに……」

 

「ど、どういう事よ、これ……!?」

 

「日付を見るに、先程アップされたばかりだ……試験直前になって……」

 

さまざまな思考を広げ、ある結論に至る……直前になって、試験の内容を変えれる、その力を持った存在……ナギサだ

 

「やりやがった、あのクソアマが……」

 

「レイヴン君!?口調が!?」

 

「……戦友、落ち着いてくれ」

 

「露骨なやり方ですねぇ……どうあっても、私達を退学にしたいと……」

 

「退学?」

 

その一言にピクリとアズサが眉を顰め、コハルは呆然としたあと、驚きの声をあげる

 

「……えっ、た、退学……?ちょ、ちょっと待って、どういう事!?」

 

「……そのお話も、そろそろお伝えしようと思っていましたが……その前に、他にも変更された部分がありますね……」

 

「……試験会場と時間……会場はゲヘナ自治区第十五エリア七十七番街、廃墟一階」

 

「寄りによってゲヘナかよ……」

 

「げ、ゲヘナで試験を受けるんですか!?しかも…廃墟!?」

 

「な、何でよ!? どうしてトリニティの試験をゲヘナで受ける訳!? い、意味わかんないッ!?」

 

「しかし、行かなければ未受験扱いで不合格、ですね……」

 

「そ、それもそうだけれど……ッ!」

 

コハルは不合格、という言葉に頭を掻き乱し、涙目で叫ぶ

 

「一体何が起きているの!?退学って何!?私達、どうなっちゃうの!?」

 

「…………じ……実は」

 

ヒフミは隠していたことを、全て話した

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「試験に三回落ちたら……退学!?」

 

「……成程」

 

簡潔にまとめ、事情を話したヒフミ

両手で自分の服をギュッと握り顔を下げる

 

「か、隠していてごめんなさい……まさか、こんな事になるなんて……」

 

「ど、どうしよう、どうすれば良いの……!? 退学に何てなったら、正義実現委員会に復帰できない……!」

 

「それは……」

 

ハナコが何かを口にしようとしたその時、アズサは机に背負っていたバックを置き、中に筆記用具などを詰め込んでいる

 

「……状況は理解した、兎に角今は準備をして、直ぐにでも出発しよう」

 

「えっ、今からですか!? でも……」

 

「……試験時間が、深夜の三時と記載されている、今から出発しないと間に合わない」

 

「えっ? あ……ほ、本当だ……!」

 

ヒフミがもう一度掲示を確認すれば、試験時間は翌日の午前三時と書かれている……

そして今の時刻はもう直ぐ十一時を回ろうとしていた

 

つまり、今から動かなければ間に合わず不合格になる

 

「トリニティーからゲヘナまでかなり距離がある……」

 

「どうする……戦友……」

 

「……ラスティ、俺達にはACがあったよな?」

 

「……なるほど、そういう事か!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ゲヘナ自治区周辺

 

 

「残り時間は?」

 

『あと1時間だ戦友!!』

 

「1時間なら間に合うな」

 

俺とラスティはACを操縦し、補習授業部を試験会場まで連れていく事になった

 

徒歩や電車だとギリギリになる

けどACの巡航速度なら早くたどり着けるが

 

OBを使えないため、どれぐらいで着くか分からない

 

「……すごいな」

 

「これなら、間に合いますね!!」

 

俺のACには、ヒフミ、アズサ、首輪付きを乗せ、スティールヘイズにはコハル、ハナコを乗せている

 

先生はと言うと……

 

『ひぃぃ!?』

 

……俺のACの頭部に捕まっている

さすがに大人は乗せれないので、こうして運ぶしかないんだ

頼むから落ちるなよ?

 

「……ゲヘナ風紀委員会については大丈夫なんですか?」

 

「一応、風紀委員長空崎ヒナに話を通してはいる」

 

「なら大丈夫だな」

そうして、試験会場へと向かって行く

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

会場にたどり着き、みんなをACから降ろす

 

「し、試験会場は、ここ……?」

 

「み、みたいです、ね……」

 

「………ボロすぎない?」

 

「試験会場とは到底言えませんね」

 

レイヴン達の前には錆び罅割れ、ボロボロになった廃屋が一件

周囲も似たような建物が立ち並び、落書きと廃材、塵が散乱している、つまりはボロ屋敷

 

「中は……ほ、本当に廃墟って感じですね?」

 

「でも、一応机はある」

 

兎にも角にも、レイヴン達は中へと入り色々と確認

机や教卓、ホワイトボードなどは一通り揃っているが、試験を行う場所として適切とは言い難い状態

ナギサ、なぜここを試験会場にした?

 

「うぅ、暗くて良く見えないんだけれど……」

 

「これ、電気も通っていませんね?あら、でも机にライトスタンドが……」

 

「これで手元を照らせって事でしょうか……あ、試験用紙とかはどうなるんでしょうか?誰か、先生達以外の監督の方が……?」

 

「いや、人の気配はないが」

 

「怪しいものも……ん?」

 

教卓の裏に移動し何かないかを探していると、そこに一つの榴弾があった

 

「むっ、レイヴン、それは……」

 

「えっと、不発弾……ですか?」

 

「……L118、牽引式榴弾砲の弾頭か?」

 

「そうみたいだな……」

 

「L118……という事は、ティーパーティー……つまりナギサさんからのメッセージの可能性が高いですね」

 

ハナコの言葉に頷き、レイヴンが榴弾へと手を伸ばそうとすれば、寸前でアズサが手を翳し制止を口にする

 

「レイヴン、トラップがあったらいけない」

 

「……」

 

「ニャー……」

 

「首輪付き?」

 

「ヤマネコ?」

 

首輪付きは、榴弾に近づき、匂いを嗅ぐ

そして、尻尾を振る

問題は無いというサインである

 

「ニャー」

 

「大丈夫だ、炸薬もなければ……雷管も抜かれている、弾殻だけの張りぼてだ」 

 

「よくやった、首輪付き」

 

「ニャー!」ゴロゴロ……

 

「そ、そうですか……良かった」

 

「賢いな」

 

「……となると、完全にメッセージボックスの役割、という事でしょうか」

 

「あ、中に紙が……これが試験用紙という事ですね!」

 

「その様だが……むっ、こっちは通信機か?」

 

「どれどれ……」

 

レイヴンは榴弾を引っ繰り返し、中身を全て取り出す為に軽く振る

すると用紙と、四角い端末らしきものが床の上に転がった

 

「これは……?」

 

「と、とにかく…慎重に触ってみま……『ニャー!』ヤマネコちゃん!?」

 

「ヤマネコ何やってるの!?」

 

「……ニャー?」

 

「もう、ほらレイヴンの所にいなさい!!」

 

「ニャー……」

 

 

首輪付きは軽くその端末を叩いた、その端末は立体映像を補習授業部の前に投影した、薄暗い部屋の中で、そのホログラムは良く目立っている

 

『……これを見ているという事は、無事に到着されたようですね』

 

「な、ナギサ様!?」

 

「えっと……この方が、ティーパーティーの……?」

 

投影されたホログラムはナギサの姿を象り、虚空に向けて口を開く

 

『ふふっ……恨み辛みの声が聞こえてきそうですね……まぁこれは録画映像なので、リアルタイムでの意思疎通は不可能です、今の私に何を訴えても無意味ですよ?』

 

「おうなら直接言いに言ってやろうか?」

 

「レイヴン君……ステイステイ……」

 

『……一先ず試験会場に辿り着けた事は認めましょう、しかしあなた方にとってはこれからが本番です、第二次特別学力試験は……今より始まるのですから』

 

『約束の時間までに試験を終えて戻って来て下さいね?一応引き続きモニタリングはさせて頂いておりますので、その事をお忘れなく……幸運を祈ります、補習授業部の皆さん』

 

ティーカップを机の上に戻したナギサは、どこか薄ら笑いを浮かべ……告げる

 

『どうか……お気をつけて』

 

最後に、彼女は妙に力強い言葉を残し、ホログラムを消失させた

 

「うぅ……」

 

「何だか、含みのある云い方でしたね……」

 

「気にならないと云えば嘘になるけれど……兎に角今は時間がない、早く席につこう」

 

「そ、そうですね……すぐ、第二次特別学力試験の筈ですから……!」

 

「問題用紙は……こっち……良し、皆、筆記用具だけを出してね」

 

用意されてある机に皆が座ったのを確認した先生は解答用紙と問題用紙を配って歩く

 

 

「……ニャー」

 

「首輪付き……どうした?」

 

「ニャー……」(おぼつかない様子)

 

「……」

 

「戦友……どうにも落ち着かない……」

 

「……だよな、首輪付きですら落ち着きがない」

 

「……なにか察知しているのか?」

 

あの首輪付きが落ち着いていない……

試験会場といい、ナギサの言葉といい……

なにかある……

 

「大丈夫、皆なら乗り越えられると、私はそう信じているから」

 

「っ……は、はいっ!」

 

「えぇ♡」

 

「うん」

 

「とっ……当然っ!」

 

「………よし」

 

なぜ人気の無いこの廃墟を選んだ?

妨害するには……うってつけの場所……

 

「よし、それじゃあ第二次特別学力試験……開始」

 

 

全員の手が、一斉に問題用紙を裏返した

 

 

「「「………ッ!!」」」

 

ダッ……!

 

ドヒャアッ!!

 

二人と1匹は同時に何かを察し

全力で試験しているヒフミ達へ走り出した

 

その時……

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカアアアアアアン!!

 

 

 

 

 

 

レイヴン達がいた場所は爆破され粉々になってしまった

 

 

 




…………レイヴン、キレると口調が悪くなる
ナギサファンの人には申し訳ない……

しかし、やはりACに乗っている人は危険察知能力がすごいっすね
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