「ネスト5十三番。保護対象を運搬中です」
片手で女の子の脚を持ちもう片方の手でインカムを抑え報告する。
降りる時にはワイヤーでショートカットをしたけれど登る時は徒歩でキャットウォークを目指ことに。
一世を風靡した進撃するアニメみたいなワイヤーアクションが出来たなら昇り降り楽ちんなんだろうけど。
あ、ワイヤー切ったんだった。
「おねーさん?」
「ご、ごめんね! おっかない顔してたね!」
「んーん? ボーッとしてたよ?」
ボッーっと? 心外かも……まぁいいか。いや、良くない。家に帰るまでが遠足であるように、女の子を無事に送り届けるまでが任務……気を引き締めなきゃ!
スウィングドアの場所まで帰って来た。到着まではまだ遠い。ペースを落とすわけにはいかない。
「お姉ちゃん! あれ!」
「……っ!」
紫色の甲殻類……としか形容できない謎の怪物がフォークリフトをクワガタの様にへし曲げ、壁から脱出していた。Lv3だ……!
「しっかり捕まって!」
「うん!」
「隊長! シガイがLv3に変異! ご指示……きゃっ!」
「きゃぁぁぁぁあー!」
がっしゃーーーん! 大きな音を立てて倉庫から連絡通路へ目掛けてフォークリフトが投げ込まれて来た。
その衝撃で私と女の子は転げる。頭からヘルメットがすっぽ抜け、連絡通路の底へ飛んでいってしまう。
外との通信手段は……絶たれてしまった。
「何か落としたよ!」
「拾えないよ。怪我ない? 先、急ぐよ?」
急ぐ、とは言ったけれど……。
「gAAAAAA……!!」
「も、もう……来たんだ……」
気色の悪い呻き声と共に迫りくるLv3。クマには背中を見せるなとは言うけれど、シガイ相手にはどうだろう?
ゆっくりと後退る。酸を吐かれても、触手を出されても対処出来るように。もう少し、もう少し引き寄せて。
女の子が落としたと言ってたのはヘルメットの事じゃない。このカニかザリガニ見たいなキモい奴を止める……
「点火っ!」
「AAAAaaaggg!!!!」
遠隔起動式の……手榴弾!シガイの細胞組織を高圧電流でズタズタにしてほんの少しの足止めをする。
「効いてる!? いいや。 関係ない!」
死刑囚が電気イスにかけられて震える様ってきっとあんな感じなんだろう。子供になんてものを見せるの?
反省して欲しいものです。バケモノめ……!
カッカッカッカッ……走る音は響き続ける。
「キレイな髪……きんきら……!」
唐突に私の横顔を覗き込んできた女の子。本当に何も出来なかった頃の自分と分かれるべく形から入って染めてみた金髪がお気に召したみたい。
けど、こんな染髪にはなんの戦略的優位性も無い。
「……きゃぁぁああ!!!」
「あぶないっ!」
どうやら足止めにもなっていなかった見たい。手首から紫色のムチの様な触手を伸ばしおぶっている女の子へ向けて飛ばしていた。
女の子が偶然後ろを向いてくれて助かった……。
間一髪、中央の開けた所にある脇道に飛び込み難を逃れる事が出来た。少し乱暴だったから女の子の痛いところを刺激して無いと言いけれど。
……腹、括るか……。
「ここに入っていて? おばちゃんが良いよって言うまでぜっっったいに開けちゃダメだからね?」
お誂え向きと言っては心許ないけれど、飛び込んだ先には掃除用具入れがあった。大慌てでその子を押し込めた。目の前にいるよりはマシでしょう。
「おばちゃ……?」
……なんか、不思議そうだったな。変だったかな? 少なくとも、この子が私の年の頃、私は既にアラフォーな訳で、おばちゃんに何も違和感は無いと思う。
はは、なに……考えてんだろ? 余裕?
良い子そうだな。私が「良いよ」って言うまで絶対に出て来ないんだろうって確信できる。
落ち着け、鳥家蘭丸。
お前がここで負けたなら……
この掃除用具入れが……この子の棺桶になる!
背中にかけていた銃剣を構え、真っ直ぐ見る。