「蘭丸。お前って、学校のドッジボールとかで最後まで生き残るタイプだったんじゃないか?」
いつかの休憩時間。あまり訓練の成果を得られず落ち込んでいた私に隊長が聞いてきた。
正直な感想としては「いきなりなんやねん。学校なんて行ってへんわ」だったんだけど。
「言われてみれば…確かにそうかもです!凄いですね!どうして分かったんですか?!」
通えてた頃の中学とか小学の記憶を手繰り寄せた。
隊長が無意味にそんなことを聞くとは思えなかった。
「はは!か……勘、かなぁ……?」
誤魔化すように笑ってるけれど。
私という人間を冷静に分析した結果だろう。
「……その生存本能から来る反射、磨きさえすれば戦闘でも必ず活きて来る。恥じるな」
恥じるなと言われましても。
勝手に恥ずかしがってるって事にされましても……。
「そ、そんな。子供のボール遊びとシガイの攻撃を比べられても……」
弾丸と遜色ないスピードで触手を飛ばしてくるような連中だ。顔面に当たったらセーフじゃない。完全にアウトだ。隊長がそんなことを知らないはずは……。
「違わないさ。見とけ」
「いてっ!」
隊長がおやつに食べていたピーナッツをデコピンで弾き、それを額にぶつける。
そこそこ痛い。目が><ってなってたに違いない。
「今、どこ見てた?」
「い、いきなり過ぎてどこも……」
どこも見てない。見てたかもだけどそんな瞬間瞬間を必死に生きてはいないから秒単位の記憶はしていない。
豆痛い。その記憶で全部吹っ飛んでる。
「強いて!視線……どこだった?」
強いられても見てないものは見てない。
でも、当てずっぼうで……。
「う、うーん……お豆……かも……」
「そいつだ。既に放たれた物を目で追って対応するなんて不可能だ。そんなもん、マトリックスとかターミネーターとかの世界だろ? アレ面白いぞ」
金曜日劇場でたまに放送されてたけど……!
私はグロい洋画とか無理なんで……!
「見たことありません……っ!」
「そこはいいの! 俺が言いたいのは飛来物を視認してからじゃ遅いってこと! 豆だから良かったが、これが弾やビームだったなら何かしようと思った時点でお前のデコは風穴だ」
人差し指を私のおでこに押し当てグリグリとする隊長の指からは私を気遣うたしかな心配が伝わる。
「なら、そうならない為にはどうするか、分かるな?」
知識なんて引き出す力がなければ頼りにならない。
けど、それは訓練兵時代に何回も聞いた!
「予備動作を見て…軌道上や着弾地点にいないようにする……ですね!」
感心したように頷くと隊長は続ける。
「正解だ。バケモノと言えどシガイも生物。無から攻撃を発生させるなんて芸当、まず不可能だ。まぁ……例外もいるだろうが。観察は怠るな」
備えて、備え過ぎると言うことは無い。
こと、常識の通じないシガイ相手にはいつもそうだ。
隊長の言葉は、しかと心に焼き付けた。
でも隊長は、最後にこんな言葉も添える。
「釈然としないか?人間の動体視力や観察眼に限界があるのは確かだ。でもな、守るべき者を背にした時、俺たちは限界を超えた強い意思でそれを補って、世界を観る必要に迫られる。ムリだダメだ言ってたらおしまいだぞ」