仮面ライダーエッガー   作:燃堂極小力

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4.焦熱纏いし牙 後半

 

 聞いておいて良かったです。隊長。

 

 死地に赴きアドレナリンがドバドバに溢れてる。

 

 根拠は無いけれどきっと出てる。

 戦いに熱狂しているのに落ち着いてる。

 

 これがゾーン……なのかな?

 

 知識なんて引き出す力がなければ……

 なんて過去の私は行っていたけれど。

 

 トロッコの方向転換のごとく左右へ避け続けジグザグに前進する私は確かに、触手の動きを読み取っていた。

 

「おぉぉおお……!」

 

 銃剣の引き金を引きながら駆け寄る。

 ……カキンカキンカキン。

 

 まるで石つぶて程度にしか感じていないらしい。

 

「はっ……!」

 

 銃剣の尖端は殻と殻の隙間……きっと攻撃の通りやすいであろう「関節」を目掛けて飛ぶ。

 だけど。あっさりと銃身を鷲掴みにされ、ストローみたいな要領で直角に曲げられてしまう。

 

 一番信頼を置いている武器な分、顔を歪めてしまったけれど、さっき警備員さんのシガイから拝借してきた拳銃が「出番だぞ」と私の太腿のホルスターで叫ぶ。

 

 すばやく引き抜いて殻で覆われていない腹に突きつける。ゼロ距離、どれだけ硬くたって……!

 

「g,h,h……!」

 

 だん!だん!だん! 威力も音もショボいけれど、ダメージはダメージ。ちょうど弾を切らしたのを皮切りに、私の無意識は少し野蛮な攻撃に移る。

 

「z,z,z……ッ」

「効いてないけど……ペースは乱せてる……!」

 

 弾がなくたって、拳銃も鉄の塊。

 メリケンサックの様に銃身で殴りつけた。

 

「……AAAA!!」

「きゃぁぁぁっ!」

 

 激昂したLv3は腕を横に払うだけで私を大きくふっ飛ばしてみせた。あの子のいる用具箱に背中を強くぶつけてしまう。歪んで開かないとか無いと良いけど……。

 荒い息を整えながら用具入れに向かって這う。

 

「ビックリしたね。もうすぐ終わるから……ね?」

「お姉ちゃん……お口から……血が……!」

 

 強そうな掃除用具……?

 そんなんあるわけ無いでしょう、

 

 適当にモップを引っ張り出し、少し乱雑気味に用具入れの扉を閉じてしまった。

 

「……何処からでも来なさいっ! この子には!」

 

「uuuuuuuuuu……ッ!」

 

 さっきの拳銃パンチに激昂してるのか、Lv3は腕を交差させ、大きく広げると両方の手首から紫色の触手が天井目掛けて伸び始めていた。

 

「この子には……指一本触れさせやしないんだからっ!」

 

 ……ダメ! 走馬灯……っ!

 私……死ぬの……!?

 

「mooooooo……っ!」

 

 ――もちろん……アンタにもね?

 

 聞き覚えのあるビューティな声が聞こえると…Lv3の象徴たる2つの触手は突如飛来してきた2個の火球によって焼き切られ、私の前に届くことは在りませんでした……。

 

「見てたよ。やるね」 

 

 さっきの特殊装甲……?に身を包んだ「ダイナソード」さんの姿がそこにはあった。肩をぽんっと叩かれると根拠は無いのに重荷から解き放たれたような安心感で……。

 

「こっからは見てて。私の戦い」

 

 モップを床に置き、膝から崩れ落ちた。

 ハッと我に返り、掃除用具入れへ這う。

 

「さてと。お待たせ、ミスター? 始めようか」

 

 肩アーマーの卵がパカッと展開されていた、底からは煙を吐く砲身が覗いている。なるほど、アレが火球の……

 

「出て来て良いよ。良く我慢できたね」

 

 冷静を装っているけれど今の私は燃えカス。Lv3の出す触手と一緒に闘気もやる気も焼き焦がされてしまった。

 かろうじて残る保護欲と謎の安心感が私を動かす。

 

「riderrrrrr……!!」

「へぇ……知ってるんだ。ご名答」

 

 私が必死に避けていた触手を虫でも払うのとそう変わらない手付きで弾いて行き、真っ直ぐと狭っていく。

 

「……ふっ」

 

 掛け声も無く力強さと優雅さを兼ね備えたフォームで流れるように拳を3発、叩き込む。

 鋭い爪で反撃を試みるLv3。気まぐれなそよ風のような身振りで最低限の回避行動を取っていく。

 

「へぇ。硬いね」

 

 一瞬の隙をついて放った渾身のパンチ!

 決まった! なんて思ったけれど……

 

 ダイナソードさんの拳についていた殻が粉々に砕け散り、中の濃い紅の装甲が露出してしまっていた。

 

「ちょっと失礼!」

 

 背中に担いでいたティラノサウルスの尻尾のような巨大な太刀をすばやく抜き、強烈な斬り上げでLv3を弾ける火花と共にふっ飛ばし、狭い通路へと転がす。

 

「衣替えのお時間だ……どうやら……アンタにはお気に召さなかったらしいし。「タマゴマン」の姿は、ね?」

「衣……替え?」

 

 ……あれ? タマゴマン……?

 お気に召さない……?

 

 ダサいって言ってたのと、変なあだ名を付けて呼んでたの……聞かれてた……っ!? 根に持たれてるっ……!

 

「冗談。状況に合わせた姿になるだけさ」

 

 じょ、冗談……?

 そんな私だって頭の中で留めてるのに……!

 

――産まれろ

――『Egg!』

 

 そう呟くとダイナソードさんはベルトの横についているレバーを押し込んだ。それに呼応してベルトも叫ぶ。

 

 彼女(?)を囲うように床から浮上してくる檻のような何か。とても派手な演出で出てきたのは簡易的なラボ……? 少し、形容が難しい。

 

 今度はベルトの斜め上に手を押し当てる。

 背後からじゃ良く見えない……。

 

 ――『Egger!』

 

 エッガー……卵の上位系……?

 ダイナソードさんを囲う檻のパイプをなぞる様に滑る巨大な鋭いピック。あれが、刺さるの……?

 

孵化(クラックアップ)

――『Eggast!Pakkaaaan!!!! 』

 

 巨大なハンマーが現れるとダイナソードさんの頭上からフルスイングで振り下ろされ、ラボが弾け飛ぶ。

 

 頭、肩、肘、手、膝、足、etc.

 

 現れたピックが各部の卵の殻へ突き刺さり、それらから堰を切ったかのように炎が噴出する……。

 

 燃え移ったが正しいのか

 着こなしているが正しいのか

 

 ダイナソードさんは丸々、身体を炎に包まれていた。

 殻が黒い塵になって消えていくのが見える。

 

 ――Awakening.

 ――Dinosaur(ダイナ)×Sword(ソード)

 

 ――Howling!

 

 炎の中を物ともせず。それどころか……。

 ガススモークを割ってステージ入りするスターのよう

 

「綺麗……!」

「カッコいい……っ!」

 

 現れたのはクリムゾンレッドのメカニックな装甲に身を包んだ、さっきよりずっとシャープなシルエットのヒーロー。

 殻を打ち破り降臨した……恐竜(ダイナソー)

 

「お待たせ。ラウンド2だ」

 

 肩と膝と足、それぞれにティラノサウルスの様な鉤爪がついている。よく見るとそれはジェットの噴射口で察するに炎の弾を撃ち出すキャノン砲の役割も持つ。

 

「nnnnnnnnnnnhhhh!!!」

 

 声を荒げ10本の指、手首、全てから大小の触手を勢いよく噴射させ、本気の攻撃を仕掛けるLv3.

 ダイナソードさんは見た目が中の人のスタイルの良さを際立てるタイトな出で立ちになっているようで、より、余裕さと優雅さが増している。

 

 持っていたティラノサウルスの尻尾のような剣がカシャカシャと音を立て、鞭や鎖のような柔軟性を得る。

 

 峰の1ブロック毎に設けられたバーニアが横方向へ火を吹き出し、円を描くようにダイナソードさんの前で高速回転する。

 

 それはバリアみたいに迫り来る触手を高速でスライスして行き、ダイナソードさんはそのまま前進する。

 

「さぁ。弾けるよ」

 

 言葉の意図を理解するのは聞くよりも見た方が簡単だった。断面図から火が段々と走り、Lv3は自らの触手を導火線としてその身体をバチバチと弾けさせる。

 

「GaGaGaaaaa……!!」

 

 さっきの手榴弾の倍は弾けている。

 Lv3がここまで圧倒されるの……初めて見た!

 

「まだまだ……始まったばっかりだろう!?」

 

 下から振り上げた蛇腹状の剣が圧倒的なリーチでシガイを打ち上げる。あまりブンブンしないで欲しい怖い。

 一旦、引き戻し、再び伸ばすとそれは……

 

「……!」

 

 Lv3の全身をぐるぐる巻きにして宙で拘束した。

 バーニアの噴射で勢い良く床に叩きつけられるシガイ。

 フリーフォール系のアトラクションの様に、何度も、何度も上がっては落とし上がっては落としが繰り返される。

 

 叩き伏せられる自由さえ与えないなんて……!

 

「割れたかな? ま、いっか」

 

 無意味に指をパチンと1つ鳴らし、マイペースにシガイへ寄って行く。この人は戦ってるんじゃない……

 

 まるで、遊んでる……!

 

「migyaaaaaa……!」

「おっと。再生してたか……死んだふりとは、粋だね」

 

今度はダイナソードさんが触手でぐるぐる巻きに!?

 

ど、どうするの……! ふんっ!って拘束を解けるような見た目では無さそうだし……!

 

「ん? ハグをご所望? いいよ。おいで」

「……!」

 

 どんどん手繰り寄せられていっているのになにあの余裕! 策があるの!? シガイがハグだそんなハートフルな事を考えてるはずが無いのに!

 

「ただし……私は熱いよ? 受け止めてね?」

「……ッツ?」

 

 今のティラノサウルスの姿に変身した時と同じか、それ以上にダイナソードさんは深紅に燃え上がった。

 当然、至近距離でどう調理してやろうかと考えていたシガイは逆にこんがりと焼かれていく。

 

「nnnnnnnnnnAAAAAAAAA……ッ!」

 

 やがて、全身の触手もすっかりと燃えカスにされると肩からの炎の噴射が停止される。全身から煙を立てて膝をつくシガイ。きっと関節とかその辺りも焼け焦げて動けなくなるほど弱っている……!

 

 なんでもあり過ぎるよ、この人!

 

「はい。おしまい」

 

 シガイの胸の殻に足を置き、蹴り転がす。

 なんだか可哀想に……いや。ならない……。

 

 トドメと言わんばかりにダイナソードさんは逆手に構えた剣を急降下で突き立てようと飛び上がる。

 けどシガイも流石の生命力。

 

 床を転げて難を逃れた。

 

 ステンレスの床だけが剣に溶断され穴を穿つ。

 

「アツイ……イダイ……」

「ははは、切ないね。最初に学んだ人の言葉がそれ?」

 

 はははっじゃ無いですよっ……!

 四つん這いの謎生物が人の言葉とか怖過ぎ!

 

 ばたばたと四足歩行で壁から天井を這い、シガイは窓へ辿り着く。何をするのかは目に見えて明らか。

 

「ハラヘッタ……ッ!」

「……私も。早く終わらせようよ」

 

 なに当たり前のように意思疎通してんですか!

 逃げられますよ!

 

「って、言いてぇー……っ!」

「お姉ちゃ〜ん?」

 

「……行っちゃった。ま、あそこまで追い詰めたら外にいる人たちでも勝てるか……」

 

 逃げられた……?

 いくらネスト5の皆さんでもアレは流石に……

 

「ねぇ、お姉さん」

 

 は、話しかけてきた!

 

「は、はいっ! な、なんでしょう!」

「競争しようよ、競争」

「きょ、競争……ですか?」

 

 割られた窓に身を乗り出してもたれ、親指で地面に落ちたシガイを指差す。

 

「私が先にアレをブチ殺すのが先か……」

 物騒な言い方……。

 

「アンタがその子を無事にみんなの所へ送り届けるのが先か。どう?面白そうじゃない?」

 ……この人、苦手だ……なんなの? こんな時に……。

 

「自分は! ネストの隊員として! 全霊をもってこの子を守るだけです! 貴方も……そうして頂ければ……!」

 

 い、言っちゃった……っ!

 

「ふむ……怒られちった……」

「い、い、いえ! 決してその様な意図は!」

 

 必死に弁明する私を見て、ダイナソードさんは口に(に当たる部分)へ手を添えて女の人らしく笑った。

 

「ふふっ、冗談だよ。アンタの言う通りだね。私も、全霊をもってアイツをやっつける。ゆっくりおいで。アンタも、心身ともにボロボロでしょ?」

 

 掴みどころの無い飄々とした性格。

 苦手な人と良い人で感情を掻き回される……。

 

「……ダイナソード、ビークルモードだよ」

 

 バックルに装着された何処か可愛らしい卵の殻を被ったティラノサウルスへ優しく呟く。

 ビークルモード……?

 

 上に放られたティラノサウルスは質量保存の法則?だとか、物理法則?だとか、私は詳しく知らないこの世の理を完全に無視した巨大化&変形をし…

 

 大型バイク風のロボット恐竜となった。

 ダイナソードさんは馬を駆るようにそれに跨がる。

 

「じゃ、お先」

 

 手をグーパーとする「バイバイ」のジェスチャーをすると、その恐竜ごとダイナソードさんは窓の外へ飛び去った。オーバーテクノロジー過ぎるよ……。

 

「……さ、もう一息だよ。がんばれる?」

「あたしも走る!」

 

「……そっか。じゃあまず、脚の手当てからね。ちょっと染みるけど、我慢、ね?」

 

 あのヒーローの圧倒的な戦いは私と女の子の緊張や恐怖で凍りついた心を温めてくれた。……らしいです。

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