すっかり日は落ち、村は夜の底に沈んでいた。
家々の窓から漏れる明かりは少なく、代わりに村の中央広場では、いくつもの篝火が赤々と燃えている。
揺らめく炎が土壁の家々を照らし、集まった村人たちの顔を橙色に染めていた。
その人垣の中心に、ラニアが立っている。
両腕は背中側へ回され、手首から胴にかけて太い縄で何重にも縛られている。
すでに猟師の前で抵抗しない意志を示していたため、今も拘束を解こうとする様子はない。
だが──大人しく殴られるつもりまではないらしい。
「このアマァ!」
ブンッ!
横薙ぎの棍棒が、ラニアの頭を狙う。
スウッ!
しかし、ラニアは上半身をわずかに反らしただけで、棒を鼻先すれすれに通過させた。
続けざまに別の男が突き出した棒には、片脚を高く上げる。
ガンッ!
振り下ろされた棒を足の甲で蹴り上げた。
村人の両手から棒が弾かれ、クルクル回りながら地面へ落ちる。
「このっ……!」
縛られたままの女を囲んでいるというのに、追い詰められているのは村人たちの方だった。
「テメェ、ちゃんと罪を償え!」
棒を拾い直した男が、苛立ちを露わに怒鳴る。
ラニアは息ひとつ乱さず、わずかに首を傾けた。
「村に出没する獣にはツノがないんだろう?」
「ああ? それがどうした?」
「毛並みは黒。大きさも、自分が変じる獣より一回り小さいらしいね」
ラニアは縄に縛られた両腕を動かせないまま、肩を小さく竦める。
「なら、自分とは別物だ」
「そんなもん、姿を変えてるだけかもしれねえだろ!」
「それを言い始めたら、どんな姿をした獣でも自分の仕業にできるじゃないか」
淡々とした反論だった。
「少なくとも、聞かされた特徴は獣になった自分とは一致していないね。
負ってもいない罪を、償う必要はない」
「ふざけんな!」
「何ヶ月こっちが迷惑してると思ってんだ!」
村人たちが一斉に色めき立つ。
誰かが棒を握り直し、別の誰かが石を拾おうと腰を屈めた。
「やめろ、オマエたち」
その騒ぎを割るように、男の声が響いた。
「そ、村長!」
人垣の中から、一人の男が前へ出た。
年の頃は四十ほど。「村長」という肩書きにしては若い男だ。
「そいつを殴ったところで、痛い目に遭わせることはムリだろう」
村長は村人たちを
「オマエは、自分が村を荒らした獣じゃないと言うんだな?」
「そう言っている」
「なら、証明してもらおう。
この村を荒らしている獣の魔人を、お前の手で倒せ」
「……ふぅん」
ラニアは眉を跳ね上げる。
「これはお前の潔白を証明するための依頼だ。
期限は一週間。その間に獣の魔人を倒し、証拠として首をここへ持ってこい。
成功報酬は1万Gだ」
「1万Gか。疑惑の人物に垂らす蜘蛛の糸にしては太っ腹だ」
ラニアが皮肉をこめて感想を漏らす。
彼女の皮肉を受け流し、村長は続けた。
「ただし、依頼を失敗した場合は別だ。
お前が村を荒らしていた罪の清算、それから依頼失敗の違約金として──5000Gをこちらが受け取る」
「…………」
ラニアは黙って村長を見つめた。
潔白の証明と呼ぶには、キナ臭い条件である。
「──ならその話、おれも一枚噛ませてもらおうか」
会話の外から、聞き覚えのある声が飛んできた。
人垣の隙間を縫うように、銀髪の青年が歩いてくる。
その少し後ろには、黒髪の少女が続く。
「頼まれてた荷物だ」
ドサッ。
ハルスフォートは肩に提げていた革袋を外し、ラニアの足元へ置く。
「助かるよ」
「ただ、両手剣だけは持ってこれなかった」
「ああ、問題ない。
恐らく、あれは自分以外には持てないだろうね」
ラニアの両腕は拘束されたままだったが、
「おい、もういいだろう」
「わ、分かりました」
村長に促された猟師が、彼女に近づいて縄をほどく。
パサッ。
完全に自由にすることには抵抗があるのか、胴へ巻かれた縄は残したまま、腕だけが解放された。
「助かる」
ラニアは素っ気なく返し、革袋を開いた。
中から衣服を取り出し、その場で手早く身につけていく。
その様子を見ながら、村長がハルスフォートたちへ向き直った。
「それで、オマエらは何者だ?」
「ただの旅人だ。こいつとは森で会った」
「その旅人が、どうして話に首を突っこむ?」
「ここに来る途中、獣を見たから口を出してるだけだ」
その言葉に、ラニアの手が止まった。
「ここへ来る途中、川沿いで襲われた。
黒い毛並みの、デカいオオカミみたいな獣だ。
あんたみたいなツノはなかったし、体格も一回り小さかった」
「なら、少なくとも自分とは別の獣が森にいることは確かというわけだ」
「ああ。あんたが村を荒らした犯人じゃないと断言する気はないがな」
ハルスフォートは腕を組む。
「この女とは別に、狂暴な獣がいる。
そこまでは、おれたちが証言できる」
「充分だよ、ありがとう」
ラニアは着替えを終え、革袋から100G紙幣を一枚取り出す。
「報酬だ」
「駄賃として受け取っておこう」
小さな取引を完了させ、ラニアが村長へ向き直る。
「さて。これで、自分とは別の獣がいる可能性は高くなった。
依頼を受けるだけの理由はできたね」
村長はラニアをしばらく見たあと、ハルスフォートたちへ確認する。
「さっきの口振りからすれば、オマエもこの依頼を受けるってことでいいんだな?」
「ああ。獣が実在してるなら、受けてやってもいい」
「なら、条件はそいつと同じだ」
村長はラニアを顎で示す。
「成功報酬は1万G。先に獣の首を取ってきた先着1名様だ。
ただし、1週間以内に獣を仕留められなかった場合──オマエも5000Gの違約金を払ってもらう。失敗すれば合計1万Gということだ」
村長の言葉に、
「わ、わたしも依頼を受けます!」
ハルスフォートの横にいるリスティが、片手を高く掲げている。
「……オマエが?」
村長が目を丸くした。
周囲の村人たちは、一瞬だけ黙りこんだ。
小柄な少女が胸を張っている姿を見て、ほどなく何人かが噴き出した。
「ははっ! こんなガキまで獣狩りに行くのかよ!」
「森歩くだけで泣き出すんじゃねえか?」
「村長、やらせとけよ。失敗すりゃ金が増えるぞ」
村人たちと同じように、村長もまた嘲笑を浮かべる。
「まあいい。こっちの取り分が増えるなら都合がいい」
リスティを戦力として認めたというより、失敗時に金を払う頭数として数えたらしい。
「……問題ありません」
リスティは真面目な顔で頷いた。
ハルスフォートはそんなリスティを見て、小さく息を吐く。
「一つ確認したい」
「あ?」
「その1万G──どこから出す?」
村長の眉が、ぴくりと動いた。
「1万Gってのは、小舟を
十数人規模の小さな村が、獣一匹にポンと出せる額じゃない」
「
村長は肩を竦めると、背後にいる村人の一人へ顔を向けた。
「おい。倉庫から金庫を持ってこい」
指示を受けた男が、人垣を抜けて広場から走り去る。
その男は倉庫らしい小屋に入ると、携帯できるくらいの小さな金庫を運んできた。
村長は懐から鍵を取り出し、錠へ差しこんだ。
ガチャリ。
「ほらよ。ポケットに入れるんじゃないぞ」
ハルスフォートは、手渡されたモノを見下ろす。
100G紙幣が
「これで、1万Gを払えるってのは信じたか?」
「……そうだな」
ハルスフォートは親指の腹で札束の端を押し上げ、パララララッ、と一気に検分した。
紙質、色合い、通し番号の差異などを確認し、おおまかに「全て本物らしい」と判断したようだ。
「だが、次の質問だ。どうしてこれだけの金がある?」
「近くに鉱山がある。オリハルコン鉱山だ」
「オリハルコン、か……」
ハルスフォートが
「この辺りの山から採れる。
オレたちはそれを掘り出したり、加工して売ったりして稼いでる」
「そうか」
ハルスフォートは、札束を村長へ突き返した。
「改めて、依頼を受けよう」
「ああ、逃げずにしっかり働くんだな。
もし逃げたら、オマエらを魔人として国に訴えてやる」
こうして旅人3人は、村を荒らす獣の討伐依頼を引き受けることになった。
夜も更け、ハルスフォートたち3人は、村から寝床として貸し与えられた倉庫にいた。
広さだけなら3人で横になるには充分だが、寝泊まりを想定した場所ではない。
床には乾いたワラが散らばり、壁際には木箱やタルが無造作に積まれている。
先ほど広場へ運び出された金庫は、すでに村長の家へ移されていた。
さすがに大金を抱えた金庫まで、素性の知れない旅人たちと同じ場所へ置いておく気はないらしい。
「やっぱり、この村ってちょっとヘンですよね」
リスティが声を潜める。
「なにか、確たる証拠があれば大いに暴れ回れるんだけど……」
その少し離れた場所では、ラニアが倉庫の中を調べ続けていた。
積み上げられた木箱の隙間を覗きこみ、フタを持ち上げ、壁際の荷物を一つずつ確かめている。
ハルスフォートとリスティは、そんなラニアにも聞こえる程度の声量で話していた。
ただし、倉庫の外までは届かないよう、自然と声は低くなる。
「……あの、ハルスフォートさん」
「なんだ?」
「本当に近くにオリハルコン鉱山があるとしても……十数人くらいの村で鉱石を掘り出すものなんでしょうか?」
リスティは首を傾げる。
「さあな。
別に、おれは金がある理由の
「そうなんですか?」
「おれが依頼を受けた理由は、依頼対象の獣が実在していることと、依頼報酬の金が本物だったからだ」
ハルスフォートは壁に背を預け、腕を組んだ。
「もしあの金を工面したのが後ろ暗い手段だったとしたら、ブンど──押収して、
「今、ブン
小声で掛け合いをしていると、倉庫の奥からラニアの声が飛んできた。
「残念ながら、後ろ暗そうな物はなかったよ」
ラニアは木箱のフタを閉じ、2人のもとへ戻ってくる。
「ひと通り見てみたけど、めぼしい物はないね。
あるのは剣や槍といった武器類、それに服だ。
村なのに畑や農具がないっていうのは奇妙だけど、十数人規模なら狩猟と採取だけで食料を
ハルスフォートが結論づける。
「確かな証拠がない以上、村人を問い詰めても仕方ない。
下手に騒いで魔人だなんだと嫌疑をかけられる方が面倒だ」
ラニアも頷く。
「まずは依頼通り、獣を探す。
村のことは、それからでも遅くない」
あとは眠り、翌日の探索に備えるだけ。
そんな雰囲気が醸成されたところで、ラニアが解放された両腕を軽く伸ばした。
「なら、自分が夜番をしよう。
ここの村の連中を信用する気にはなれないからね。寝ている間に何をされるか分からない」
「却下だ」
ハルスフォートは即答した。
「村を信用できないって点には同意する。
だが、あんたが村人とグルじゃない保証もない」
「なるほど。それはそうだろう」
ラニアは怒るでもなく、あっさり肯定した。
「自分が夜番をして、2人が眠ったところで村人を招き入れる可能性もあるからね。
じゃあ、どうする?」
「おれとリスティで交代しながら夜番する」
「分かった。その方が合理的だね」
ハルスフォートの提案を、ラニアは異論なく受け入れる。
しかし、ハルスフォートの方が不可解に首を傾げた。
「……逆に聞くが」
「なに?」
「あんたは、おれたちが村とグルだとは考えないのか?」
「そっか、そうだね……」
ラニアはそこで初めて気づいたように、わずかに首を捻った。
「貴方たちは、自分が獣になった時、殺せる状況でもすぐには殺さなかった。
頼んだ荷物も取りに行ったし、そこまで手の込んだ芝居をする理由が、今のところ自分には思いつかない」
「なるほどな」
「それに──」
ラニアは一拍置いた。
「最も重視しているのは──勘というものだね。
貴方たちは、ここの村の連中より信じられるよ」
ラニアはそう言って、倉庫の壁際へ腰を下ろした。
ハルスフォートは小さく息を吐くと、入口近くへ移動した。
「じゃあ、最初はおれが見張る。リスティは寝とけ」
「はい。交代する時は起こしてくださいね」
「ああ」
リスティとラニアが寝床を整え始める。
倉庫の外では、夜の村が静まり返っていた。
翌朝。
朝霧の残る森を、3人は探索していた。
木々の隙間から差しこむ陽光はまだ淡い。
ハルスフォートとリスティは、ラニアとは別方向へ足を向けた。
2人は時折しゃがみこみ、湿った地面や下草を確かめながら進む。
しかし、獣らしき痕跡はなかなか見つからなかった。
「……ハルスフォートさん」
「なんだ?」
腰ほどの高さまで伸びた草を剣の鞘で掻き分けながら、ハルスフォートが答える。
「少し、聞いてもいいですか?
魔人って……どうして人を殺すんですか?」
ハルスフォートの足が、わずかに緩んだ。
「どうして、それを訊くんだ?」
「今回わたしたちが探しているのは、獣の魔人ですよね?
魔人になると、そうしたくなる理由があるのかなって」
「……理由なら、一応は研究されてる」
彼の足が、再び動き始める。
「『
魔人の性質についてまとめられているものだ」
「読んだことがあるんですか?」
「おれはこう見えても読書家でな。
魔人の精神についても書かれていた」
手近な枝を避けながら、ハルスフォートが続ける。
「魔人になった直後は、精神性も人間だった頃とそう変わらない。
だが、時間が経つにつれて人間から離れていく」
「元々は、魔人も人間ですからね……」
「初期段階は、『人間が自分を殺しに来るんじゃないか』という不安によるパニックからの殺人。
中期には、『人間を殺したら安心できる』という精神の安定を求めての殺人。
末期になれば、『人間を殺すと楽しい』という純粋な殺人欲に支配される」
ハルスフォートの講義を聞き、リスティはわずかに唇を結んだ。
「……理解できる感情から、どんどん遠ざかっていくんですね。
自分とは全く別の存在である魔王になるのも怖いですけど、自分と地続きに変わっていく魔人になるのも──」
ガサッ。
「──止まれ」
ハルスフォートが低い声を発した。
「…………」
リスティは動作を止め、声を殺して、気配を抑える。
スッ。
ハルスフォートは腰の剣へ手を伸ばした。
リスティが数歩下がり、ハルスフォートの後ろへ位置を移す。
「ガアァッ!」
バキッ!
枝をへし折り、黒い巨体が茂みの奥から飛び出した。
昨日、川沿いで襲ってきたものと同じような獣だ。
「──ッ!」
チャキッ──。
ハルスフォートが剣を抜く。
黒い獣は速度を落とすことなく、真正面から飛びかかってきた。
「ガァッ!」
ガキンッ!
振り下ろされた前脚を、剣の腹で受け流す。
ザッ!
横へ踏みこみ、その鼻先へ剣を叩きつけた。
バシィッ!
「ギャンッ!」
斬るのではなく、殴りつけるような一撃。
「グルル……!」
ハルスフォートが踏みこもうとした瞬間、獣は身を翻した。
「あっ!」
リスティが声を上げる。
黒い巨体が茂みを突き破り、そのまま森の奥へ走り去っていく。
「また逃げやがった!」
ハルスフォートも地面を蹴った。
「リスティ、来い!」
「はいっ!」
ダッ!
2人が獣を追う。
巨体のくせに、獣は速い。
足場も視界も悪い森の中でも、ほとんど速度を落とさず駆けていく。
「だったら──」
ハルスフォートが地面を強く踏みこむ。
「──
タッ!
空気を蹴り、一気に宙へ跳び上がった。
低木や地面の起伏を無視して追えば、追いつける。
──はずだった。
ゴンッ!
「ぐえっ!?」
真横へ伸びていた太い枝が、ハルスフォートの額を直撃した。
空中で身体が反り返る。
「ハ、ハルスフォートさん!?」
「ぐおおぉぉぉ……!」
着地したハルスフォートが額を押さえる。
「だ、大丈夫ですか?」
「……おれは別にいい、獣は!?」
2人が慌てて前方を見る。
すでに黒い巨体の姿はない。
「……追うぞ」
「……はい」
何事もなかったことにして、2人は追跡を再開した。
幸い、痕跡そのものは残っている。
獣が通った場所では枝が折れ、背の高い草が踏み倒されていた。
柔らかな地面には、大きな四つ脚の跡も続いている。
2人は痕跡を辿って森の奥へ進んだ。しかし、
「……あれ?」
先を歩いていたリスティが立ち止まる。
「どうした?」
ハルスフォートはまだ額をさすっている。
リスティは、その足元を指さした。
「足跡がありません」
「なに?」
ハルスフォートもしゃがみこむ。
確かに、それまで一直線に続いていた足跡は中断していた。
「魔術かもしれんな」
ハルスフォートは立ち上がり、周囲を見回す。
「
ハルスフォートは近くの木の幹や枝も確認した。
獣だけが、途中で忽然と消えたようだった。
「……ハルスフォートさん。
もう一つ、気になったことがあるんですけど」
「言ってみろ」
「さっきの獣──右の前脚、普通にありましたよね?」
「…………」
ハルスフォートの動きが止まった。
「昨日、拳銃で撃った獣と同じなら、右の前脚の先がなくなっているはずです」
「…………」
「でも、さっきは傷も見えませんでした」
「……も、もちろん分かっていた。右前脚がなくなっていたな」
「やっぱり、気になりますよね」
「ああ。そこが一番気になっていた」
リスティは素直に頷いた。
ハルスフォートはさりげなく視線を逸らし、額を掻く。
「……考えられるのは2つだ」
今度は何事もなかったように指を一本立てる。
「1つ。あの獣が、生命力や再生に関係する魔能を持っている」
「昨日の傷が、もう治ってしまったということですか」
2本目の指を立てる。
「2つ。そもそも、昨日の獣とは別物だった」
「同じような獣の魔人が、何体もいる……?」
「可能性はある」
だが、もう一つ。
ハルスフォートの頭には、3つ目の可能性が浮かんでいた。
ただ、それは口には出さなかった。
この森にいるのが、自分たち3人と獣だけとは限らないからだ。
再び獣の探索を始めようとした、そのとき。
ゴゥン……!
乾いた破裂音が、森の奥から響いた。
鳥たちが一斉に木々から飛び立つ。
「今のは……昨日と同じ音……!」
「おれが、ラニアの拳銃で撃ったのと同じ──銃声だ」
ハルスフォートは銃声のした方角を見る。
地上から近づけば、知らずに射線へ入りこむ危険がある。
「リスティ。上から行くぞ」
「分かりました!」
ハルスフォートは、リスティの体を脇に抱える。
「──
タッ!
空気を蹴る。
今度は枝をちゃんと避けるように意識し、木々の間を一気に駆け上がった。
樹冠を抜けると、一気に視界が開けた。
2人は上空から、銃声の聞こえた方角へ近づいていく。