転生したらスライムだった件 × ELDEN RING:惨劇編   作:願望ちゃんねる

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ジュラ・テンペスト騎士団

雷鳴が止み、硝煙と黄金の残光が漂う戦場に、静寂が戻った。

足元に転がるのは、鉄壁の守護に絶望し、雷霆に焼かれた侵略者たちの残骸。

ローデイル騎士たちは、血に汚れた剣を一度振り、流れるような動作で鞘に収めた。その一挙手一投足には、洗練された礼節と、揺るぎない誇りが宿っている。

リムルは一歩前に出ると、騎士たちの中心に立つ、一際重厚な鎧を纏った騎士団長へと声をかけた。

「……助かった。あんたたちの守りがなけりゃ、間に合わないところだった。俺はリムル=テンペスト。この国の主だ」

騎士団長は、カチャリと鎧の音を鳴らして深く一礼した。その礼は、魔物に向けられる侮蔑など微塵も感じさせない、一人の王に対する真摯な敬意だった。

「名乗るほどの身ではございませぬ。我らは、今はなき黄金の都の残滓。守るべきものを失い、狭間の地を彷徨う亡霊に過ぎませぬ」

兜の奥から響く声は、どこか寂しげで、それでいて鋼のような芯があった。

「亡霊、ね。けど、あんたたちが今日守ったのは、間違いなく『生きた命』だ。それは誇っていいことだと思うぜ」

リムルの言葉に、騎士団長の肩がわずかに揺れた。

リムルは続ける。

「もし行く当てがないなら、この国を助けてくれないか。あんたたちの『盾』を、この国の盾として。代わりに、俺たちがその『黄金の意志』を繋ぐ場所を提供する」

騎士団長はしばし黙考し、やがて跪いた。背後に控える五十の騎士たちも、波が引くように一斉にその場に片膝を突く。

「……我らが黄金樹は焼かれ、主は去った。なれば、この清き意志を宿す地を、新たな寄る辺と定めましょう。リムル殿、貴殿が守るべきもののために盾を掲げる限り、我らローデイルの騎士、貴殿の不抜の壁となりましょう」

「ああ、頼りにしてる。……そうだ、あんたたちに相応しい『名前』を考えないとな」

リムルが「名付け」を口にした瞬間、大気に膨大な魔素が渦巻き始める。

黄金の騎士たちが、この世界で真の意味での「住民」となり、更なる力を得る瞬間だった。

 

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リムルとローデイル騎士団が結んだ同盟の噂は、風に乗り、狭間の地から迷い込んだ「はぐれ者」たちの元へと瞬く間に広がった。

テンペストの広場に、異様な軍勢が集結していた。

黄金の鎧とは対照的に、煤け、傷つき、それでもなお歴戦の猛者の気配を纏う者たち。

「……何だ、このごった煮の軍勢は?」

ベニマルが警戒を強める中、最前列に進み出たのは、嵐を纏った一人の失地騎士だった。

「……我らは家を、主を、そして戦う理由を失った者。だが、あの黄金の盾が再び掲げられたと聞き、ここへ至った」

彼の背後には、各地方の軍旗を掲げた者たちが並ぶ。

赤燃えるタバードを纏った赤獅子城の兵、魔術学院の青を帯びたカッコウの騎士、呪われた炎を宿すゲルミアの軍勢。そして、腐敗の病に侵されながらも気高さを失わぬ貴腐騎士の姿までもがあった。

本来ならば狭間の地で互いに刃を交え、憎しみ合ったはずの陣営。それが今、リムルという「異世界の王」の元に集っている。

「リムル殿。我らは貴殿の敵ではない。ただ、あのローデイルの騎士たちが認めた『守るべき価値のある地』を、我らもまた守りたいのだ」

失地騎士が兜を脱ぐと、そこには幾多の死線を越えた老兵の顔があった。

「……我らの剣は重いぞ。もはや、名誉のためにも、神のためにも振るわぬ。ただ、今日を生きる者たちのために振るいたい」

リムルはその異様な熱量に圧倒されながらも、ふっと口角を上げた。

「……いいぜ。出身も、これまで戦ってきた理由も関係ない。俺の国で『誰もが笑って暮らせる世界』を作る手助けをしてくれるなら、全員歓迎だ」

その瞬間、異なる色の軍旗が一斉に掲げられた。

君主軍の兵たちは槍を突き立て、騎士たちは剣を捧げる。

テンペストという異郷の地に、狭間の地の全勢力が集う「多国籍騎士団」が誕生した瞬間だった。

「ベニマル、リグルド! 宴会の準備だ! 盛大に迎えてやろうぜ!」

リムルの号令に、新参の騎士たちは戸惑いながらも、どこか安堵したように顔を見合わせた。

 

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「……なんという練度だ。これほど多様な技が、一つの意思で動くとはな」

訓練場に立ち込める砂塵の中、ハクロウが感心の声を漏らした。

合同演習は、テンペストの幹部たちにとっても驚きの連続だった。

失地騎士が巻き起こす「嵐の足跡」が戦場を撹乱し、赤獅子の騎士が大弓で巨岩を粉砕する。その後ろから、魔術の輝きを纏ったカッコウの騎士が援護し、貴腐騎士が毒と腐敗を無効化する祈祷で前線を支える。

「ローデイルの盾」を中心に、かつて敵対した者たちが互いの背を預ける光景。

それは、凄惨な「惨劇編」の戦火の中で、リムルが夢見た「多種族共生」の究極の形でもあった。

演習が終わり、リムルは彼らを「シュナの炊き出し」と「大浴場」へ招待した。

「……待て。これは本当に『炊き出し』なのか? 王都の晩餐の間違いではないのか?」

君主軍の兵士たちは、配られた温かい豚汁と真っ白な米を前に震えていた。狭間の地で彼らが口にしていたのは、干し肉や凍り付いた木の実といった、生き延びるための「糧」でしかなかったからだ。

「この『コメ』という粒の輝き……まるで黄金樹の恩恵を受けているかのようだ」

一口食べた赤獅子の騎士が、兜も脱がずに感極まっている。

さらに彼らを震撼させたのは、温泉だった。

「……貴公、正気か? 鎧を脱げと言うのか? この無防備な姿で?」

当初は暗殺を疑い、大盾を抱えたまま入浴しようとしたローデイル騎士たちも、お湯に浸かった瞬間に「……おお……」と声を漏らして蕩けてしまった。

「戦い、食い、眠る。こんな当たり前のことが、これほど幸福だったとはな……」

湯船で並ぶ失地騎士と貴腐騎士。昨日までの敵対関係は、立ち昇る湯気の中に溶けて消えていった。

「リムル様。彼ら、すっかり馴染んでますね」

シュナの言葉に、リムルは満足げに頷く。

「ああ。盾を構える理由が『義務』から『この生活を守るため』に変われば、あいつらはもっと強くなるぜ」

 

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夕食後の穏やかな時間、リムルの執務室には主要な騎士団の代表たちが集まっていた。

かつては相容れなかった黄金、赤、青、そして銀の鎧が一堂に会する光景は、それ自体が奇跡のような調和を見せている。

「さて、みんな。これから一緒にやっていくにあたって、バラバラの軍旗を掲げてるのも不便だろ? 統一した『名前』を決めたいと思うんだ」

リムルの言葉に、ローデイルの騎士団長が静かに居住まいを正した。

「……我らは今や、狭間の地の亡霊に非ず。この地の王に剣を捧げた身。名を賜るは、武人としてこれ以上の誉れはございません」

失地騎士や赤獅子の騎士たちも、期待と緊張の入り混じった面持ちでリムルを見つめる。リムルは少し考え込み、執務室の窓から見える広大なジュラの森、そして活気あふれる街の灯りに目を向けた。

「あんたたちは、かつてそれぞれの主や国のために戦ってきた。けど、今は違う。このジュラの森を愛し、テンペストの仲間を守るために盾を構えてる。……なら、これしかないだろ」

リムルは羽ペンを走らせ、一枚の紙にその名を記した。

「『ジュラ・テンペスト騎士団』。これが、あんたたちの新しい名前だ」

その瞬間、部屋を満たしていた魔素が激しく波打ち、騎士たちの体に流れ込んでいく。大規模な「名付け」による進化の波動だ。

「ジュラ・テンペスト……。森の加護を受け、嵐の如き武威を振るう者たち、か」

赤獅子の騎士が、その名を噛みしめるように呟く。

「かつての所属も、恩讐も、すべてはこの名の下に統合される。我らはもはや、失地騎士でも、カッコウの騎士でもない。リムル様がおわす『嵐(テンペスト)』の盾なのだな」

ローデイルの騎士団長が、新調された黄金の盾を掲げた。そこには既に、黄金樹の紋章と重なるように、テンペストの国章が刻まれ始めている。

「……気に入ってくれたか。これから先、もっと厳しい戦いが待ってるかもしれない。けど、この『ジュラ・テンペスト騎士団』なら、どんな惨劇だって跳ね返せると信じてるぜ」

「御意! 我らが命、新たなる旗印と、この嵐の国のために!」

五十の騎士、そして集った百を超える兵たちの声が、夜の街に響き渡った。それは、この凄惨な時代に終止符を打つ、世界最強の騎士団が産声を上げた瞬間だった。

 

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