南斗最後の将を守る白き城。その最深部で、海のリハクは静かに、そして自信に満ちた笑みを浮かべていた。
「フフフ……案ずることはない。このリハクの目、あの銀髪の男の『ぺちぺち』を完全に見切った。城内に仕掛けた千の罠が、奴を悪夢の彼方へと葬り去るであろう」
その時、廊下の向こうから聞こえてきたのは、おどろおどろしい足音ではなく、軽快な「小走り」と奇妙な遠吠えであった。
「あぁ、あぁ、あぁぁぁ!」
狩人が現れた。籠の幻影を揺らし、一切の罠を「無駄な装飾」として無視しながら、一直線にリハクへと突き進む。
「今だ! 落とし穴の罠だッ!!」
リハクがレバーを引く。狩人の足元の床が抜け、暗黒の深淵が口を開ける――はずだった。だが、狩人は落ちる寸前、空中に浮遊する「目に見えぬ上位者の触手」を足場にするかのように、虚空を踏んでリハクの目前に着地した。
「な、何ィッ!? 床がないのだぞ! なぜ落ちん! このリハクの目をもってしても、重力の無視は読めなんだ……!!」
狼狽するリハク。彼は慌てて次の罠を起動しようとしたが、狩人の手がすでに彼の肩に置かれていた。
男は、恍惚とした表情(鉄面皮)で、深淵の鐘の音のような声を漏らした。
「……目覚めぬ(あぁ、あぁ、あぁぁぁ!)。」
「……聞こえぬ(我らの祈りが、聞こえぬか?)。」
「……逃がしはせぬ(素晴らしい!)。」
三原則がリハクの鼓膜を震わせ、指先がリハクの額を優しく叩く。
ぺち。
「……あ、あば!? 脳の中に……脳の中に直接、知らないおじさんが『連れ立って、夜の旅に出ようではないか』と語りかけてくるぞぉぉ!!」
メンシス神拳・「軍師の終焉(タクティカル・メンシス)」!
リハクの天才的な脳髄に、突如として「複雑すぎて誰も解けない、しかし答えは全部『脳みそ』である」という、軍師としてのアイデンティティを根底から破壊する超次元的数式が叩き込まれた。
「あ、あ、ああ……ッ!? 罠……!? なぜ、なぜ私が仕掛けた矢の罠が、すべて『瞳』に変わって私をじっと見つめてくるんだぁーっ!!」
リハクは白目を剥き、その場に跪いた。
彼はもはや軍師ではない。「……計算、計算が合わん。宇宙の広さを掛け合わせるのを忘れていた……。私は……私はただの、脳みそを運ぶ器に過ぎなかったのだ……」とブツブツ呟きながら、自ら仕掛けた落とし穴の中へと、吸い込まれるように身を投げた。
「な、なんてことだ! 天才リハク様が、ぺちりとされただけで、自分の存在を計算ミスとして処理しちまった!」
五車星、全滅。
城内に残るのは、ただ一人。南斗最後の将、ユリアのみ。
狩人は、穴の底から聞こえるリハクの「あぁ、あぁ、あぁぁぁ!」というエコーを聞き流し、ゆっくりと最上階の扉へと手をかけた。
「……ああ、やはり。狩りは、まだ終わっていない。」
今回の新奥義:メンシス神拳
軍師の終焉(タクティカル・メンシス)
知略に優れた者の脳を「理解不能な高次元の真理」でショートさせる一撃。策を練れば練るほど、その策がシュールなギャグに変換され、自滅へと追い込まれる。