「ラオウ! 兄さん、今こそ決着をつける時だ!!」
「来い、ケンシロウ! 貴様の不敗の拳、このラオウの覇気が飲み込んでくれるわ!」
二人の究極の闘気が激突し、周囲の岩壁が次々と爆裂する。無想転生の静寂が場を包もうとしたその時、その「隙間」を縫うように、シュールな奇声が響き渡った。
「あぁ、あぁ、あぁぁぁ!」
「……!?」「……ぬぅ!?」
二人の超人の間に、銀髪の男・狩人が小走りで割って入った。彼は二人の繰り出す無数の拳を、まるで「判定の消失」を狙ったかのような不自然なステップで回避しつつ、ランダムに選ばれた終末の詩を口ずさむ。
「……目覚めぬ(あぁ、あぁ、あぁぁぁ!)。」
「……瞳を得ん(宇宙は、一つの籠であったのだ)。」
「……悪夢は終わらぬ(素晴らしい!)。」
「えいーっ! 邪魔だぁーっ!!」
二人が同時に放った北斗百裂拳と剛掌波。しかし、狩人はその巨大なエネルギーをあえて正面から受け、そのまま左右の手を二人の腹部へと伸ばした。
ぺち。ぺち。
「……あぶ!?」「……ひでぶッ!?」
メンシス神拳・「兄弟喧嘩の漂白(メンシス・ブラザーフッド・エンド)」!
【技の解説】
北斗神拳二千年の宿命、そして兄弟の愛憎……。それら「人間的な熱量」のすべてを、宇宙規模の「虚無」で急冷する恐るべき一撃!
指先が触れた瞬間、相手の脳内には『北斗神拳の伝承者争い』が『ナメクジの縄張り争い』程度の些細な出来事として処理される。宿命という名の重力から解き放たれ、ただひたすらに「あぁ、あぁ!」と吠えたくなる恍惚感のみが魂を支配するのだ!
「あ、あ, ああ……ッ!? ユリア……!? なぜ、なぜ俺たちの愛するユリアの顔が、無数の瞳を持った巨大なタコに見えるのだぁーっ!!」
「ケンシロウよ……俺が掴もうとした天は……天はただの、暗い海の底だったのかぁーっ!!」
二人の英雄の脳内に、突如として「世紀末の覇権」ではなく、「鏡の迷路で、籠を被った男と永遠に鬼ごっこを続ける」という精神を削る悪夢が強制投影された。剛拳も柔拳も、啓蒙という名の荒波に飲まれ、ただの「運動」へと成り下がる!
「あ……あぁ……。悔いなど、もうどうでもいい。……素晴らしい……すべては夢だったのだ……」
「お前はもう……目覚めている……(悪夢から)」
ラオウは天に拳を突き上げることなく、その場にぺたりと座り込んだ。ケンシロウもまた、破れた服を直す気力すらなく、砂をいじりながら「ゴース……あるいはゴズム……」と呟き始めた。
狩人は満足げに二人を「ぺちり」と撫て、背を向けて小走りに立ち去ろうとした。その時である。
「……ふざけるな」
低く、地を這うような声がラオウの口から漏れた。
「俺たちが……このラオウとケンシロウが、このような『ぺちぺち』などという、わけのわからぬ理屈で終わっていいはずがないのだぁぁーーッ!!」
ドォォォォォン!!
ラオウの全身から、啓蒙を焼き尽くすほどの漆黒の闘気が噴き上がった! 同時に、ケンシロウの胸の七つの傷から、狂気を浄化する究極の悲しみが光となって溢れ出す。
「……お前の『ぺちぺち』、確かに一瞬、俺たちの脳をバカにした。だが……」
ケンシロウが立ち上がり、指先をバキバキと鳴らす。
「やりすぎたな。兄さんの心を二度も弄んだ罪、その体で償ってもらう!」
「……!?(あぁ、あぁ!?)」
驚愕した狩人が振り返る。そこには、悪夢から力ずくでリスポーン(再起)した、怒り心頭の兄弟が立っていた。
「北斗神拳奥義・二指真空把(からの物理)!!」
「北斗剛掌波・連撃ィィ!!」
「……癒えぬ!」
「……見失わぬ!」
「……瞳を得ん!」
狩人は必死にランダム三原則を唱え、回避ステップを踏もうとする。だが、もはやその不条理な動きは、怒りで覚醒した二人の「無想転生」には通用しなかった。
「うぬの三原則など、このラオウには聞こえぬわぁぁ!!」
ドガァッ!!
ラオウの巨大な拳が、狩人の籠の幻影を粉砕し、その顔面にめり込む!
「あ、あぁぁぁーーっ!?(本気の悲鳴)」
「これがお前が無視し続けた、人間たちの『痛み』だ! あたぁーーっ!!」
ケンシロウの百裂拳が、狩人のロングコートに仕込まれた近接武器ごと、その肉体を高速で「ぺちぺち」ではなく「ボコボコ」に叩き伏せていく。
【技の解説】
北斗神拳奥義・「悪夢覚醒(メンシス・ブレイク)」!
二千年の歴史を持つ暗殺拳の怒りが、相手の「宇宙的な理屈」を一切無視し、純粋な物理的暴力によって脳を強制的に現世へと引き戻す。食らった者は、啓蒙がゼロになるまで殴られ続け、最終的には「あぁ、あぁ!」ではなく「痛い、痛い!」という、至極真っ当な人間らしい悲鳴を上げることになるのだ!
「ひでぶッ!! あべしッ!! 素晴らしい……くない! 痛い! 凄く痛いぞぉぉーーっ!!」
銀髪の狩人は、もはやミコラーシュの余裕など微塵もなく、世紀末覇者と伝承者の二人掛かりによる「情け無用、手加減なし、宿命のフルボッコ」によって、荒野の砂に深く沈められた。
「……わが人生に、一片の悔いなし。……と言いたいところだが、うぬのせいで妙な時間を過ごしたわ」
ラオウはスッキリとした顔で拳を下ろした。
「……さらばだ、悪夢の狩人。二度と『ぺちぺち』などと口にするな」
ケンシロウもまた、静かに背を向けた。
ボロ雑巾のように地面に転がり、全身から「血の遺志」ではなく「ただの鼻血」を流しながら、狩人はうめき声を上げた。
「……あ、あぁ。……やはり。……狩りは……、もう、当分いいかな……」
完結゚(゚`ω´ ゚)゚