三度目の侍 作:最強系妄想おじさん
3話投稿3話目です。お気を付けください。
眩い光が、視界を焼いた。
「光の速度で蹴られた事はあるかい?」
声と同時に、光が走る。
蹴り。常識の速度を超えた一撃。
だが。侍は動かない。
抜刀。刃が上がる。
――激突。
光と鋼が噛み合う。
衝撃が空間を歪ませる。
地面が裂け、砂が消し飛ぶ。
「ない」
静かな声。
火花の中で、目だけが黄猿を見る。
「斬った事はあるが」
次の瞬間。
斬撃が、光を押し返す。
世界が、裂けた。
―――
海を進むサウザンドサニー号は、世界を分断するレッドラインへ到達する。
そこで海兎に襲われ、海兎に食われかけていた人魚ケイミーと、ペットのヒトデ・パッパグを救出する。
ケイミーから話を聞いたルフィは、お礼のたこ焼きに釣られ、タコの魚人ハチを助けることを決意。
案内のもと、ヤルキマン・マングローブの根に築かれた島――
シャボンディ諸島、41番グローブへ到着する。
我慢できないとばかりに、ルフィが飛び出した。
「ついたァ!! やる気満々グローブゥゥゥ!!」
「このシャボンなんだ!?」
チョッパーが便乗する。
「ついたー!!」
「やだ、ベタベタするわ」
ロビンがウソップの服で拭く。
「うぉぉい、拭くなよ!!」
パッパグが胸を張る。
「このシャボンはヤルキマン・マングローブの根から分泌される液体を、木が呼吸することで出来るんだ!」
ナミがすぐに動く。
「買い出し行くわよ」
「ぜったい俺もいくぞ!」
ルフィが即答。
「いくぞー!!」
チョッパーも跳ねる。
その時。
リューマが静かに口を開いた。
「航海士さん、金を恵んでくれないか」
「得物を調達したくてな」
ナミが露骨に嫌そうな顔をする。
「……あんた刀どうしたのよ。てか、いるの?」
リューマは、ほんの一瞬だけゾロを見てから答える。
「未来に貸したのさ」
「今を生きるなら、一本は要る」
少し間を置いて。
「……まぁ、死んでいるがな」
口元だけが緩む。
ブルックが肩を落とす。
「わ、私のネタが取られました……」
ウソップがすかさず突っ込む。
「すっげぇ落ち込んでんじゃねぇか!」
リューマがさらに続ける。
「頼むよ、美人航海士さん」
ナミが一瞬だけ照れて、すぐ顔をそらす。
「……しょうがないわね。これで我慢しなさい」
小銭を手渡す。
チャリン。
「この程度の額で刀が買える世になったのか」
素直に感心する。
ウソップがナミに小声で言う。
「おい、あんなんで買えんのかよ」
「知らないわよ。買えるんじゃない?」
そんなやり取りの中、探索組は街へ繰り出す。
リューマも一人、刀を求めて街へ消える。
―――
「武器屋は何処だ」
歩いていると、人攫いが絡んできた。
「お兄さん、珍しい格好してんなぁ?」
ニヤニヤと近寄る。
リューマは視線すら向けず、そのまま通り過ぎる。
「お、おい……待て――」
言葉の途中で、人攫いが崩れ落ちた。
音が遅れて届く。
「……確か、こうだったな」
鼻歌まじりに、右手を軽く振る。
刀はない。だが。
空気が裂ける。
「鼻歌三丁矢筈斬り」
指先。手刀。
それだけで、斬撃が走る。
肉体に刻まれた記憶。
かつてこの身体で振るわれた剣技。
刃がなくとも、形は再現できる。
人攫いは声も上げず、その場に崩れ落ちた。
リューマは振り返らない。
「……ここか」
何事もなかったように武器屋へ入る。
「親父、刀を一本」
「予算は?」
チャリン。
「これで頼む」
「はァ!? こんなんで何が買えると思ってんだ!」
「そうか。何とかならんか」
「チッ……なまくらしかねぇぞ」
「そこの籠から一本持ってけ」
「ありがたい」
迷いなく一本を取る。
見ない。比べない。直感だけ。
「これで頼む」
「ケッ、しけたヤローだ」
リューマは外へ出る。
――その時。
街の空気が変わっていた。
ざわめき。
「ヒューマンショップで天竜人が殴られたらしい」
「立てこもりだって話もあるぞ」
「海軍が主犯を追ってる!」
「麦わらって言うらしい、三億の賞金首だ!」
リューマは足を止める。
(少し離れただけで――)
ざわめき。悲鳴。逃げる足音。
(……やったな、麦わら)
口元が、わずかに歪む。
踵を返す。
歩き出す速度が、ほんの少しだけ速くなる。