三度目の侍   作:最強系妄想おじさん

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3話投稿3話目です。お気を付けください。


第十話「嵐の前」

 

 

 

眩い光が、視界を焼いた。

 

「光の速度で蹴られた事はあるかい?」

 

声と同時に、光が走る。

蹴り。常識の速度を超えた一撃。

 

だが。侍は動かない。

抜刀。刃が上がる。

 

――激突。

 

光と鋼が噛み合う。

衝撃が空間を歪ませる。

地面が裂け、砂が消し飛ぶ。

 

「ない」

 

静かな声。

火花の中で、目だけが黄猿を見る。

 

「斬った事はあるが」

 

次の瞬間。

斬撃が、光を押し返す。

 

世界が、裂けた。

 

―――

 

海を進むサウザンドサニー号は、世界を分断するレッドラインへ到達する。

 

そこで海兎に襲われ、海兎に食われかけていた人魚ケイミーと、ペットのヒトデ・パッパグを救出する。

 

ケイミーから話を聞いたルフィは、お礼のたこ焼きに釣られ、タコの魚人ハチを助けることを決意。

 

案内のもと、ヤルキマン・マングローブの根に築かれた島――

シャボンディ諸島、41番グローブへ到着する。

 

我慢できないとばかりに、ルフィが飛び出した。

 

「ついたァ!! やる気満々グローブゥゥゥ!!」

 

「このシャボンなんだ!?」

 

チョッパーが便乗する。

 

「ついたー!!」

 

「やだ、ベタベタするわ」

 

ロビンがウソップの服で拭く。

 

「うぉぉい、拭くなよ!!」

 

パッパグが胸を張る。

 

「このシャボンはヤルキマン・マングローブの根から分泌される液体を、木が呼吸することで出来るんだ!」

 

ナミがすぐに動く。

 

「買い出し行くわよ」

 

「ぜったい俺もいくぞ!」

 

ルフィが即答。

 

「いくぞー!!」

 

チョッパーも跳ねる。

 

その時。

リューマが静かに口を開いた。

 

「航海士さん、金を恵んでくれないか」

「得物を調達したくてな」

 

ナミが露骨に嫌そうな顔をする。

 

「……あんた刀どうしたのよ。てか、いるの?」

 

リューマは、ほんの一瞬だけゾロを見てから答える。

 

「未来に貸したのさ」

「今を生きるなら、一本は要る」

 

少し間を置いて。

 

「……まぁ、死んでいるがな」

 

口元だけが緩む。

 

ブルックが肩を落とす。

 

「わ、私のネタが取られました……」

 

ウソップがすかさず突っ込む。

 

「すっげぇ落ち込んでんじゃねぇか!」

 

リューマがさらに続ける。

 

「頼むよ、美人航海士さん」

 

ナミが一瞬だけ照れて、すぐ顔をそらす。

「……しょうがないわね。これで我慢しなさい」

 

小銭を手渡す。

チャリン。

 

「この程度の額で刀が買える世になったのか」

 

素直に感心する。

 

ウソップがナミに小声で言う。

 

「おい、あんなんで買えんのかよ」

 

「知らないわよ。買えるんじゃない?」

 

そんなやり取りの中、探索組は街へ繰り出す。

リューマも一人、刀を求めて街へ消える。

 

―――

 

「武器屋は何処だ」

 

歩いていると、人攫いが絡んできた。

 

「お兄さん、珍しい格好してんなぁ?」

 

ニヤニヤと近寄る。

 

リューマは視線すら向けず、そのまま通り過ぎる。

 

「お、おい……待て――」

 

言葉の途中で、人攫いが崩れ落ちた。

音が遅れて届く。

 

「……確か、こうだったな」

 

鼻歌まじりに、右手を軽く振る。

刀はない。だが。

 

空気が裂ける。

 

「鼻歌三丁矢筈斬り」

 

指先。手刀。

それだけで、斬撃が走る。

 

肉体に刻まれた記憶。

かつてこの身体で振るわれた剣技。

刃がなくとも、形は再現できる。

 

人攫いは声も上げず、その場に崩れ落ちた。

リューマは振り返らない。

 

「……ここか」

 

何事もなかったように武器屋へ入る。

 

「親父、刀を一本」

 

「予算は?」

 

チャリン。

 

「これで頼む」

 

「はァ!? こんなんで何が買えると思ってんだ!」

 

「そうか。何とかならんか」

 

「チッ……なまくらしかねぇぞ」

「そこの籠から一本持ってけ」

 

「ありがたい」

 

迷いなく一本を取る。

 

見ない。比べない。直感だけ。

 

「これで頼む」

 

「ケッ、しけたヤローだ」

 

リューマは外へ出る。

 

――その時。

 

街の空気が変わっていた。

 

ざわめき。

 

「ヒューマンショップで天竜人が殴られたらしい」

「立てこもりだって話もあるぞ」

「海軍が主犯を追ってる!」

「麦わらって言うらしい、三億の賞金首だ!」

 

リューマは足を止める。

 

(少し離れただけで――)

 

ざわめき。悲鳴。逃げる足音。

 

(……やったな、麦わら)

 

口元が、わずかに歪む。

踵を返す。

 

歩き出す速度が、ほんの少しだけ速くなる。

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