三度目の侍   作:最強系妄想おじさん

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第二話「終わらない夜」

 

霧を抜けた先で、地面が揺れた。

 

轟音。

 

砕ける瓦礫。

 

裂ける石畳。

 

ゾロが速度を上げる。

 

「……決めに入ってる」

 

それだけで十分だった。

 

ブルックも、フランキーも続く。

 

リューマは一歩後ろを保ったまま走る。

 

無理に並ばない。

 

ただ同じ方向へ向かう。

 

広場に出る。

 

中央で、ルフィとモリアが向かい合っていた。

 

互いに満身創痍。

 

だが――

 

終わる。

 

それは見ている全員が分かっていた。

 

ナミも、ウソップも、サンジも、ゾロも。

 

誰も踏み込まない。

 

チョッパーが小さく呟く。

 

「……ルフィなら……」

 

ナミが息を吐く。

 

「任せるわ」

 

それだけ。

 

信じている。

 

船長の戦いだから。

 

ルフィの体が膨れ上がる。

 

蒸気が噴き出す。

 

ギア3の質量。

 

ギア2の速力。

 

空気が震える。

 

「――ゴムゴムの」

 

一歩。

 

地面が割れる。

 

「JET砲弾(ジェット・シェル)!!」

 

巨体が弾丸のように突っ込む。

 

モリアの巨体へ、全身ごと叩きつける。

 

衝撃。

 

空気が爆ぜる。

 

地面が砕ける。

 

影が弾ける。

 

モリアの体が吹き飛び、崩れ落ちた。

 

静寂。

 

誰も、すぐには動かない。

 

ウソップがへたり込む。

 

チョッパーがその場に座る。

 

フランキーが大きく息を吐く。

 

ロビンが目を閉じる。

 

ブルックが背筋を伸ばす。

 

サンジが煙草をくわえ直す。

 

ゾロが刀を納める。

 

ルフィが、その場に倒れた。

 

完全に力を使い切っている。

 

チョッパーが駆け寄る。

 

「ルフィ!!」

 

ナミが言う。

 

「大丈夫……勝ったんだから」

 

ほんの一瞬だけ、夜が軽くなる。

 

その時だった。

 

霧の奥から、足音がした。

 

ゆっくり。

 

重く。

 

一定の間隔。

 

全員が振り向く。

 

現れたのは、巨大な男。

 

丸い帽子。

 

無表情。

 

揺れない視線。

 

場の空気が沈む。

 

ナミの顔色が変わる。

 

触れられた瞬間、消えたペローナ。

 

ゾンビたちが口にしていた言葉。

 

七武海。

 

「……あれは……七武海……!」

 

息が詰まる。

 

「触られたら終わりよ!!」

 

一味が反射的に距離を取る。

 

リューマは外側に立ったまま、目を細める。

 

ただ立っているだけで、場が沈む。

 

剣とも力とも違う圧。

 

武人の本能が静かに告げる。

 

(強い)

 

斬れる。

 

だが――今ではない。

 

これは俺の戦ではない。

 

男は倒れたモリアを一瞥する。

 

そして胸元の電伝虫を取る。

 

『状況を報告せよ』

 

「ゲッコー・モリア、敗北」

 

短く告げる。

 

沈黙。

 

『麦わらのルフィをその場で処分しろ』

 

通信が切れる。

 

くまは何も言わない。

 

ただ電伝虫を閉じる。

 

ゾロが前へ出る。

 

サンジが並ぶ。

 

ブルックが剣を抜く。

 

フランキーが腕を上げる。

 

ロビンが身構える。

 

ナミがルフィの前に立つ。

 

ウソップが震える手で武器を握る。

 

チョッパーが歯を食いしばる。

 

勝った直後。

 

それでも、誰も退かない。

 

くまの掌が、ゆっくりと持ち上がる。

 

その瞬間。

 

一歩。

 

リューマが前へ出た。

 

刃は抜かない。

 

ただ立つ。

 

空気が止まる。

 

くまの視線が、わずかに動く。

 

互いに測る。

 

沈黙。

 

次の瞬間。

 

ゾロが踏み出した。

 

「待て」

 

低い声。

 

リューマは、退く。

 

一歩、元の位置へ。

 

輪の外。

 

船長を守ろうとする輪。

 

無言の連帯。

 

言葉はない。

 

だが迷いもない。

 

(……信じている)

 

剣の強さとは違う。

 

背を預ける強さだ。

 

くまがゆっくりと手袋に指をかける。

 

外す。

 

掌に現れる肉球。

 

空気が歪む。

 

圧が、さらに重くなる。

 

夜が張り詰める。

 

戦いは、終わっていなかった。

 

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