三度目の侍 作:最強系妄想おじさん
倒れた仲間たちの前で、ゾロだけが立っていた。
血を流しながら。
呼吸は荒い。
だが、目は逸れない。
バーソロミュー・くまが、ゆっくりと歩を進める。
倒れているルフィへ向かって。
ゾロが前へ出る。
血を吐き捨てる。
「……ここからは、俺だ」
低い声。
短い宣言。
くまは止まらない。
歩みも、視線も、変わらない。
掌がわずかに上がる。
その瞬間。
一歩。
別の足音が前に出た。
リューマだった。
ゾロの横へ、並ぶ。
何も言わない。
刃も抜かない。
ただ立つ。
くまと視線が合う。
わずかな沈黙。
空気が、重くなる。
くまの動きが、ほんの一瞬だけ止まる。
視線がリューマを測る。
反応があった。
ゾロが、横目で見る。
「……手ェ出すな」
荒い声。
だが拒絶ではない。
船長の前に立つのは、自分だという意思。
剣士としての矜持。
リューマは答えない。
ただ、わずかに口元が緩む。
一歩、下がる。
ゾロの背に道を譲る。
くまが再び歩く。
ゾロの前で止まる。
沈黙。
そして。
「……麦わらのルフィは、お前たちの船長か」
「ああ」
即答。
「……麦わらのルフィの首を差し出せ」
静かな宣告。
場が凍る。
ゾロが息を吐く。
血が落ちる。
それでも、立つ。
「断る」
短い。
それだけ。
くまの掌が、ゆっくりと持ち上がる。
ゾロは動かない。
逃げない。
目も逸らさない。
倒れた仲間の前に立ち、
ただ一人、背中で守っている。
少し離れた場所で、
リューマは何も言わない。
助けない。
割って入らない。
ただ、その背を見ている。
止まる。
それを選ぶ。
ゾロの膝は震えている。
立っているのが不思議なほどだ。
だが、下がらない。
目だけが、燃えている。
あれは技量ではない。
意地でもない。
誓いだ。
船長の背中を見てきた男の、覚悟だ。
くまの圧がさらに重くなる。
空気が軋む。
それでも、ゾロは動かない。
逃げれば楽だ。
倒れれば終われる。
だが、立つことを選んでいる。
リューマは静かに息を吐く。
――強い。
斬れる強さではない。
守ると決めた強さだ。
自分は三度、生きている。
だが、あの一歩は選んでいない。
背負う覚悟。
それは剣の鍛錬とは別のものだ。
ゾロの背が、ほんのわずかに揺れる。
それでも、倒れない。
夜が、張り詰めたまま続く。
強さとは、斬ることではない。
背負うと決めた者を、奪わないことだ。
夜は、まだ終わらない。
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