三度目の侍   作:最強系妄想おじさん

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第四話「止まる強者」

 

倒れた仲間たちの前で、ゾロだけが立っていた。

 

血を流しながら。

 

呼吸は荒い。

 

だが、目は逸れない。

 

バーソロミュー・くまが、ゆっくりと歩を進める。

 

倒れているルフィへ向かって。

 

ゾロが前へ出る。

 

血を吐き捨てる。

 

「……ここからは、俺だ」

 

低い声。

 

短い宣言。

 

くまは止まらない。

 

歩みも、視線も、変わらない。

 

掌がわずかに上がる。

 

その瞬間。

 

一歩。

 

別の足音が前に出た。

 

リューマだった。

 

ゾロの横へ、並ぶ。

 

何も言わない。

 

刃も抜かない。

 

ただ立つ。

 

くまと視線が合う。

 

わずかな沈黙。

 

空気が、重くなる。

 

くまの動きが、ほんの一瞬だけ止まる。

 

視線がリューマを測る。

 

反応があった。

 

ゾロが、横目で見る。

 

「……手ェ出すな」

 

荒い声。

 

だが拒絶ではない。

 

船長の前に立つのは、自分だという意思。

 

剣士としての矜持。

 

リューマは答えない。

 

ただ、わずかに口元が緩む。

 

一歩、下がる。

 

ゾロの背に道を譲る。

 

くまが再び歩く。

 

ゾロの前で止まる。

 

沈黙。

 

そして。

 

「……麦わらのルフィは、お前たちの船長か」

 

「ああ」

 

即答。

 

「……麦わらのルフィの首を差し出せ」

 

静かな宣告。

 

場が凍る。

 

ゾロが息を吐く。

 

血が落ちる。

 

それでも、立つ。

 

「断る」

 

短い。

 

それだけ。

 

くまの掌が、ゆっくりと持ち上がる。

 

ゾロは動かない。

 

逃げない。

 

目も逸らさない。

 

倒れた仲間の前に立ち、

 

ただ一人、背中で守っている。

 

少し離れた場所で、

 

リューマは何も言わない。

 

助けない。

 

割って入らない。

 

ただ、その背を見ている。

 

止まる。

 

それを選ぶ。

 

ゾロの膝は震えている。

 

立っているのが不思議なほどだ。

 

だが、下がらない。

 

目だけが、燃えている。

 

あれは技量ではない。

 

意地でもない。

 

誓いだ。

 

船長の背中を見てきた男の、覚悟だ。

 

くまの圧がさらに重くなる。

 

空気が軋む。

 

それでも、ゾロは動かない。

 

逃げれば楽だ。

 

倒れれば終われる。

 

だが、立つことを選んでいる。

 

リューマは静かに息を吐く。

 

――強い。

 

斬れる強さではない。

 

守ると決めた強さだ。

 

自分は三度、生きている。

 

だが、あの一歩は選んでいない。

 

背負う覚悟。

 

それは剣の鍛錬とは別のものだ。

 

ゾロの背が、ほんのわずかに揺れる。

 

それでも、倒れない。

 

夜が、張り詰めたまま続く。

 

強さとは、斬ることではない。

 

背負うと決めた者を、奪わないことだ。

 

 

 

夜は、まだ終わらない。

 

 

 

 

 

 

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